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4章 ブレイントラスト編
第9話 セントラルトライアド
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東京 某レストラン
「それで、あたしが思いきってロイヤルスウィートクラスの
部屋に移りたいって言ったらホントに許可されたの。
アンドロイドバイオニクスが上手くいって功績がてら、
そこが良いなあってダメ元でお願いしたら通っちゃったの」
「そんな待遇までもらったんすか!?」
クロノス、アイザック、アメリア、レイチェル一行は昼食をとりつつ
お互いの研究進行状況について語り合う。
ここ数年ですっかり習慣となった食事会で、この国に定着したかのように
市民と交えて休憩時間を送っていた。
とはいえ、業務としても決して楽ではなく常に意識は削る一方。
科学の近況はそんなもので、やたらスムーズに事は運べない。
3人はすでに結果を生み、ブレイントラストらしく振る舞っている。
出していないのは私のみ、当初から論文を提出するだけで皆とは異なり
これといった実物など創造していない。
そんな特待生として身を置かせてもらっているので、
いつもメンバー達について生きている様なものだ。
内の1人であるレイチェルは別の話題について話し始めた。
「部屋・・・そうですね、最近になってから身の回りも色々と
不安になりがちになってきた感じもあります」
「何か起きたのか?」
「私のベランダで干していた洗濯物が無くなっていた事がありまして、
ひょっとしたら盗まれたかもしれないと」
「アンタが忘れてただけなんじゃないの~?」
「いえ、確かに全て干しておりました。
コインランドリーに費やすのも何なので日光の恩恵を」
「こんな時代でずいぶん珍しい殊勝な心得だな。
レイチェル博士は美人だし、外でもけっこう注目されてるだろうし。
金に困ってるわけじゃないのにドロボウホイホイじゃん?」
「あんたも盗ってたりしてないでしょーね?」
「してませんって! んな事したら国外追放モンですよ」
「外壁をつたって侵入された線だな、交通整備の対応は相変わらずか。
確かに、いつまで経っても変化は見られん」
「でも、政府も本格的な一時的封鎖の案を企画すると聞きました。
ブルーカードも職業枠から居住区に制限を考えているとの事で」
「国が? インフラ完成後ですら今まで何もできなかったクセに。
どうせろくな方法とらないんじゃないの?」
言うならば、抜け道を塞げずにいる状態。
ただの制限などといった手法でその手の輩に安易にくぐり抜けられ、
良からぬ手で悪用を図る結果はいつまでも解決できていなかった。
ニュースなどと他人事ではない、実際関わる場所も襲われていたので
心臓の底が濁る様な、澱みが溜まる様な感覚がある。
あまり頼り甲斐あるとは思えない国の現状に、私などの一科学者の
一手をなかなか講じられずに隔離の一部すらできないのだ。
そこにアイザックがどこで得たのか現地を詳しく語る。
「あ~、もしかしてアレかな。なんか周囲に防壁を造るウンタラとかって」
「また下層階で何か情報を得たのか?」
「あっ!? いえっ、なんつうか独自経路で――!」
「まったく、お前はいつも厄介事に首を入れたがる。
30近くになるのだ、若者の好奇心もそろそろ加減を知るべきだ。
コウシ所長からお咎めを受けるぞ?」
「「は、反省します・・・今度からホドホドにしておきます」」
「若いっていいわねぇ~、体も色々ともてあませるもんだから」
「職業、所得、ほんの少しの差で身分を隔てる手法も気になります。
これは私達も無関係でなく、居住受け入れなど選別化された上より
新たな問題も発生するかもしれません。
ブレイントラスト、コウシ所長の方針はどうなるのでしょう?」
「まあそうよね、被害を受けたらそこで終わりだし。
生物管理所ですらあんな目に遭って」
「クロノス博士が早めにプロファイリングしていなかったら
もっと別のエリアもやられていたでしょうね。
どっからやってくるのかすらマジで想像つきませんよ」
「まあ、私がしなくても連帯でズルズルと捕まってゆく。
奴らの手口は“私がやりました”と主張している事と同義だしな。
まともに掃除もできない者に跡始末の付け方など理解できんのだろう」
俗に言うやり口が動物と変わらないから証拠も十分に残して露になる。
シンプルに想像もしないから、後でどうなるのかすら補おうとしない。
目の前の出来事、光景が全てで動機も結果もその時だけで決まる
刹那のみをモットーに底辺を這いつつ生きている。
こんな所で話をするのも得策ではないが、流れでそうなってしまう。
それはともかくとして、生活基盤を含めた今後はどうなるか
世の情勢がますます追いついて迫りくる中、研究への懸念も安否。
そろそろ就業時間が再開する、それぞれの役目も胸に抱きつつ
会計を済ませた私達はブレイントラストへ戻っていった。
「・・・・・・」
4人から見えない室内コーナーで一部始終を聞いていた者がいる。
気付かれずに相手がレストランを後にした姿を見続けていた。
ブレイントラスト ロビー
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「「先程、立てこもり事件で犯人が逮捕されました。犯行の供述によりますと、
上層階の住民権と人質の交換を要求しており・・・」」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
夕方の休憩時間も恒例というばかり、ニュースを何気なく観ている。
相変わらず下界の事件ばかりで深読みする必要のない内容、
取り上げている画面の様も見飽きた内容の話ばかりだ。
ここと下層階の拗れは未だに解消できずにいた。
対して上層階のひっそりとした静けさときたら、比較にならない。
人入りする数がまったく異なるので当然であるものの、
まるで無人島にいる錯覚がありそうなくらいだ。
ウィーン
所長が入ってくる、ハンカチで頭を抱えながら歩くのはこちらも
恒例のモーションだ。内側の仕事だけでなく外回りもあり、
忙しい立ち回りに組織のTOPに立つのはやはり容易ではない。
ただ、観た顔がいつもと違い、今回は事情が異なるようだ。
「これはまた忙しくなりそうだ」
「ここ最近になって、急がれているようですね?」
「前々からすでに実装していた計画だがな。
共同先が素材不足で製造を遅れさせなければならなくなった。
物が物だけにおいそれと入手できるものでなくてな」
「アールヴォイドですね?」
「うむ、マスターアップ寸前ではある。が、査問会とトラブルが生じて
今後の使用について進まなくなりそうなんだ。
それで、あの2人が来てから急進させようという根端だ。
別に評価や名声などではないぞ、来たるべき安息のため。
それにより、例の三機が完成間近になってきた」
「三機・・・ですか?」
とある3種類の機体の事だという。
数年前、所長から少しだけ聞いていたあるロボットの様な
機械の設計をどこかと共同で行っている話があった。
しかし、所長の扱いが他の研究と同レベルには思えなかった。
今まで実物を一度も見た事がなく、どこのルームにあるのかすら
知らなかったのだ。完成間近について初耳だけに、
何故特別に保管しているのか少し気になる。
「マスターアップ寸前に何か問題でも?
その3機は最高機密情報の1つと聞きましたが?」
「実はそれらのフレーム技術が一部漏洩したのだ。
あれ程膨大なコードを暗記するのも困難、
ディスクの持ち出しでも入口のセンサーに反応せん。
やはり別の場所に移動させるか決めかねている」
「別の所にですか?」
査問会は軍事行為などに関わる備品との製造に否定的な意見を示し、
場合によって取り止める意向をもち始めてきた。
まずは人前に出さない方法をとり、最終手段として緊急出動できる
状態で寝かせておくしかなく、公表もしてはならないと決めたのだ。
アール・ヴォイドも同様の事情で向こうに差し押さえられる懸念があった。
そんな三機の保管場所はどこに置いたのだろうか。
所長はどうやら話したくなさそうな顔で語る。
「それらはどこに・・・?」
「いや、こっちだ」
手持ちのタブレットで映像を見せられる。
屋上と思いきや、所長は地下を指差して案内した。
地下50階分はある深さの設備の一角に、アール・ヴォイドと共に
指定して製造に当たっている。
そこは深く、一部の者のみ入れる区画との事。
「「こ、これは・・・」」
画面に3種類の人型発動機が置かれていた。
1つ目は朱く、2つ目は蒼く、3つ目は黄金の装甲で
造られたロボットだ。
暴徒鎮圧と呼称しているこれらは物理的実行動によって、
現場を静めさせる現実的解決装備なのだ。
「セントラルトライアド、これらを製造していたのは一体?」
「以前にアメノクラミズチを見せた時は個人として製造したと言ったが、
これらはアール・ヴォイド社と共同制作なのだ。
むしろ、最も最初に造られたタイプで性質をどこまで高められるか
互いの見識を出し合った物だ」
「3種類別に分けた理由は様々な状況に応じたケースを想定してですか」
「うむ、骨格や装甲も希少ある物質を用いている。
私自身としては、あくまでも知の追求の一貫だ。
だが、時代を担う者によってはそうも言ってられん。
被害者も日増しに増加している、一刻も早く完成を急がねばならん」
彼らは私軍ビジネスを計画して警備会社になりすましつつ潜ませていた。
自衛隊に提携しないのも漏洩対策のためで、組織規模を小さく保ち
上層世界を汚さないように浄化する。
人型や飛行機など形状が異なる理由も全ては戦略的武力。
つまり、制圧の意味を含むのが理解できる。
対下層階用として造る以外に理由が見つからないからだ。
ただ、政府が私軍を容認してもらえるかどうかが気掛かりだが、
所長は研究権利から規制を乗り越えると言った。
「少々歪かつデリケートな話になるが、銃器を所持する術はある。
オープンキャリーは君も知っているだろう?
公共にあらぬ物を運用するには相応の道理と権利が必要だ。
民間企業から銃の使用を許可される活動は
すでに何年も前から行われている」
「この国でも・・・」
「銃器は基本、警察及び自衛隊にのみ許可された逸物。
だが、人種も昔より大きく変化。
法律は海外による介入で倫理の在り方も変わってきたのだ。
せいぜい猟銃のみ扱っていた物が・・・」
「そして、複雑に絡み合って製造の場を設けてきたのですね。
私のような白人が来国しても違和感のない時代。
所長が武力兵器の開発にも携わっていたとは・・・」
「意外だったかね?」
「いえ、自分は気に掛けておりません。
ダニエル君の研究同様、防御性を求められる時代なので。
これらは他には置けないのですか?」
「実は・・・向こうには保管できん。
最重要機密区域だ、彼らにはまだ内部を公開させておらん」
これらはあのアール・ヴォイドと共同で製造している機体であるものの、
ブレイントラストの最奥まで連れてゆく気がないという。
当然、規格や情報を全て吸い取られてしまう懸念ゆえに
工房で共同作業するわけにはいかないだろう。
あの下層階の手から守るために各社を入念に回り回った果てに、
かのダニエルとアリシアへアプローチが届いた。
しかし、所長はアール・ヴォイドにブレイントラストラボへの介入を拒んだ。
自分が築いてきた情報を全て見られる危険性をはらむからだ。
ようやく見つけた同じ道を目指す繋がりがあるといえど、
何もかもさらけ出す度胸まで持ち合わせていない。
所長の全てが裁量良くある世界に招くのをためらっていた。
正直、私もどこを示しているのか不明。
最奥がどこにあるのかすら理解できないので互いの意味が疎通できず。
「そこは・・・所長の端末の中に?」
「まあ・・・そうだ、政府への公表を寸止めに抑えられる機密事項。
ブレイントラスト云々ではなく、世界への影響が大きく変わるので
決して表に出でないところ。端末のみとも言えんが。
という事で、これらにパスコードを入力しておいた。
サブシステムとしてな」
「ブレイントラストに異常が発生した時の予備システム三機に内蔵を?
ラボの扉など厳重に何かを保管しているような区画を乗っ取られたなど、
外部から強制的に解放させるケースですか」
「例えばだ、メインシステムに何者かが侵入してきて強奪されたとする。
そうなれば、重要物は外に持ってゆくしかなかろう」
「しかし、外部に運び出しても危険では?」
「そう思うだろう、そこでAUROの性質を利用している。
セントラルトライアドの原動力はそれだ、エネルギー内部に情報を
秘匿させて万が一盗用されても発見される恐れがない。
量子CPUから着想を経て関係者のみ閲覧できるようになっている。
案ずるな、メインシステムまでは動かせん。
中枢機能を迂回した外経由のみ対応している。
外装の防衛、ゲートの開閉くらいだな」
「・・・・・・」
つまり、端末機器ではなく動力炉から情報を引き出す事で
エンジンとしか認知できない者達にとって動力消費で情報も消える。
知る者なら消費前に必要に応じて抜き取っていけば良い。
最重要機密区域内で万が一、指示ができなかった場合に
これら3機から操作できるよう仕込んだと言う。
何かしらのきっかけで外側から塞がれた場合、強制的に入口を開かせる
緊急事態を想定した遠隔操作だ。
「ただ、それが可能になるには解放コードを入力せねばならない。
外部への独立させた物の扱いはより慎重に行う必要もある。
当然なまでに知っているのは私だけだ」
「思い切って発表するのはどうでしょうか?
コピーライトを利用した情報保護という手も。
認知を受けた上で世間の目もあります」
「それも考えたが、まだ公にはできんな。
自衛隊も欲しがるこれらに、類似品が世に出回ろうものなら
蛮人すら翻して大きな力を手に入れてしまうだろう。
まだ保存させる方向でいく」
絶対に起きてはならない事は低能への技術漏えい。
所長自身の意志ではまだアール・ヴォイドへの融通を利かせず、
これらをしばらく寝かせておくべきだと提案した。
それにしても新たな戦闘機を目にするとは予想にできず、
今回の話は予想外であったが、深く知ることができた。
しかし、話はここで終わらない。
機械事情はそういった画一的なものだけで終わらずに内面的な側面も、
次は自分の想像を一回りに超えた内容のものを明かされた。
「実は・・・まだ大きな計画もある。
1週間前の話だが、我々はある技術を完成させた。
名はアンドロイドバイオニクス。
これは科学文明として非常に大きな前進といえる分野。
これもセレファイスにおいて重要事項でな」
「機工と生体・・・ですか?」
「うむ、これは主にアメリア君と進めていた事でな。
アンドロイド技術とはまた異なる派生されたもの。
特に希望が強い彼女の生体工学を推進して生み出されたものだ」
アンドロイドバイオニクス、有機体情報を無機物に転移させて
脳内情報、精神もまるごと移植して予め製造しておいた機体に移す。
外見コンプレックスをもつアメリアも参加しているのも
よく理解できるプロジェクトだ。
自分としては理解不能ともいえる内容。
それはある意味、生命を超えた魂を完全否定できる技術で
この時代において科学という混沌の内部で生じた存在に思えた。
身体を交代、あたかも命の尊さが否定されて理学の崇高さが
上回り、塊の概念が価値を丸め込んで覆った。
未だ全て信じ難い技術であるものの、現実に到達できたのは事実で
精神の存在すら創られた凝固体の一部に取り込まれた感じだ。
これら3機の製造目的は理解できたが、規格の形状に少々不審さもある。
戦闘、偵察、警護の性能をもつにしてもフレームがところどころ
似つかわしくない点もあり、完成形にまで至っていないようでも
実働らしい何かが不足しているのではと疑心。
ここで歩く機械を創造する理由も明かされる。
脚をもつ、保有する事の真意を述べた。
「形に関する疑問は確かに不確定に思える部分もあるだろう。
ライオットギアでも何故、脚を採用させるタイプもあるのか。
戦車のような履帯を用いず、わざわざ関節系を付けるのも
不可解なものである。これらを用いたのは・・・失った物への代行だ」
「失った、身体の代行?」
「言葉の意味はよく理解しにくいだろう、生物には何かしら形をもつ。
DNAを継ぎ、形を継続してこの世界へ成す。
だが、身体形成は自然界で必ずしも通用するとは限らん。
他の種によって滅ぼされ、跡継ぎすら許されぬ運命を迎えてしまう。
勿体無い、私もこの国の思念にある言葉に従っている。
ゆえに、失ったという言い方でワードを形成している」
「つまり・・・生物型とみなして製造。
戦略的意味以外でそういった理由があったわけですか。
すみませんが、理解が少々・・・」
「いや、それは仕方のない事。クリエイトソート、物作りには言葉で
説明しきれない時もあり、奥深さのみ端から表現する」
「外観は内面より表に浮かぶ、というのが常識だと思っておりました。
要約すると、消失した物をまた再現する・・・ための理由。
アールヴォイドも同じ意思で?」
「・・・そうだな、無限軌道以外での実用試験としても考慮され、
動物の大半は地に足を着けて生きる、空を飛べる鳥類も等しいが
世界という大地はどんなものであろうと居住する。
歩くという行為は生きる感覚への標の一歩でもあるのだ」
「「生物を・・・機体に転用する・・・私としても信じられず。
そこまで理念を掲げていたとは・・・」」
「新規開拓とは必ずしも理路整然から生じるとは限らん。
地球誕生の様にマグマの混沌から雨で冷静沈着されてゆく過程で
成り立つ時もありえる」
「無数の分野による複合体、ブレイントラストは一種の集合体。
適切な言葉が浮上しませんが、結果を改めて寄せ集めて
更なる発展、成果を生み出すのを理想としてきました。
いわゆる・・・所長にとって本懐ともよぶべき――」
「そうだ・・・私の最終目標は反重力ではない。
まだ生きているこの身が動ける限り、役目を終わらせるわけにはいかん。
宇宙開拓も中止され、生物管理所も焼き討ちされ、すがる行き先も
私の行き場も閉ざされつつある。
そこを再び再現させてみせる、訴えもできずに死滅していった
生物達の楽園をこの手で・・・必ず」
60歳を迎えた彼も責任者の立場だけで終わらせる気概がなく、
微かに消えかけた夢をまだ追求して言葉無き物のために尽力。
たとえ機械化させても“存在していた”証を文明の粋で果たそうとした。
これはコウシ所長の真実の1つ。
彼が信頼できる者のみ伝える極秘事項を教えてくれた自分の立ち位置を
改めて見直す必要性を感じずにはいられない。
彼が内容を打ち明けた瞬間の片鱗を見た時、何かが変わった様な気も感じた。
「という訳だ、やたらと崇高な講釈ばかり述べてしまった。
とにかく、ブレイントラストの道は前後双方向。
脚と等しく、生存への意味や意義はいつまでも問う。
進化と共に守りの術も備えていかねばならんのだ」
「・・・・・・」
「ここまで話したのも、君を信用しているからだぞ?
以っては色々と障るので機密事項に当たるが、
見込みある者には私も大いなるゲートを開いて導かせる。
仕事としてではなくれっきとした共同体としてだ」
「光栄です、機会があれば機械工学も拝見させてもらいます」
「そうだな、君にもいつか教えてあげるとしよう。
ただし・・・例の件の答えを聞いてからだ」
瞬間、所長の目が険しくなった。
ゲート、意味は不明。扉を意味するどこかへの入口を示しているだろう
言葉はまるでどこかへ誘う様な雰囲気を感じる。
例の件、世界を完全に分離する計画。
鳥と等しく地上から隔てた生活なのか、または本物と同様になるのか、
答えとは最初に来た時の誘いと同じ。
ワードこそ単純なものの、必死な気迫で懇願と魂願が混じるかに
求められている様な感覚がした。
「それで、あたしが思いきってロイヤルスウィートクラスの
部屋に移りたいって言ったらホントに許可されたの。
アンドロイドバイオニクスが上手くいって功績がてら、
そこが良いなあってダメ元でお願いしたら通っちゃったの」
「そんな待遇までもらったんすか!?」
クロノス、アイザック、アメリア、レイチェル一行は昼食をとりつつ
お互いの研究進行状況について語り合う。
ここ数年ですっかり習慣となった食事会で、この国に定着したかのように
市民と交えて休憩時間を送っていた。
とはいえ、業務としても決して楽ではなく常に意識は削る一方。
科学の近況はそんなもので、やたらスムーズに事は運べない。
3人はすでに結果を生み、ブレイントラストらしく振る舞っている。
出していないのは私のみ、当初から論文を提出するだけで皆とは異なり
これといった実物など創造していない。
そんな特待生として身を置かせてもらっているので、
いつもメンバー達について生きている様なものだ。
内の1人であるレイチェルは別の話題について話し始めた。
「部屋・・・そうですね、最近になってから身の回りも色々と
不安になりがちになってきた感じもあります」
「何か起きたのか?」
「私のベランダで干していた洗濯物が無くなっていた事がありまして、
ひょっとしたら盗まれたかもしれないと」
「アンタが忘れてただけなんじゃないの~?」
「いえ、確かに全て干しておりました。
コインランドリーに費やすのも何なので日光の恩恵を」
「こんな時代でずいぶん珍しい殊勝な心得だな。
レイチェル博士は美人だし、外でもけっこう注目されてるだろうし。
金に困ってるわけじゃないのにドロボウホイホイじゃん?」
「あんたも盗ってたりしてないでしょーね?」
「してませんって! んな事したら国外追放モンですよ」
「外壁をつたって侵入された線だな、交通整備の対応は相変わらずか。
確かに、いつまで経っても変化は見られん」
「でも、政府も本格的な一時的封鎖の案を企画すると聞きました。
ブルーカードも職業枠から居住区に制限を考えているとの事で」
「国が? インフラ完成後ですら今まで何もできなかったクセに。
どうせろくな方法とらないんじゃないの?」
言うならば、抜け道を塞げずにいる状態。
ただの制限などといった手法でその手の輩に安易にくぐり抜けられ、
良からぬ手で悪用を図る結果はいつまでも解決できていなかった。
ニュースなどと他人事ではない、実際関わる場所も襲われていたので
心臓の底が濁る様な、澱みが溜まる様な感覚がある。
あまり頼り甲斐あるとは思えない国の現状に、私などの一科学者の
一手をなかなか講じられずに隔離の一部すらできないのだ。
そこにアイザックがどこで得たのか現地を詳しく語る。
「あ~、もしかしてアレかな。なんか周囲に防壁を造るウンタラとかって」
「また下層階で何か情報を得たのか?」
「あっ!? いえっ、なんつうか独自経路で――!」
「まったく、お前はいつも厄介事に首を入れたがる。
30近くになるのだ、若者の好奇心もそろそろ加減を知るべきだ。
コウシ所長からお咎めを受けるぞ?」
「「は、反省します・・・今度からホドホドにしておきます」」
「若いっていいわねぇ~、体も色々ともてあませるもんだから」
「職業、所得、ほんの少しの差で身分を隔てる手法も気になります。
これは私達も無関係でなく、居住受け入れなど選別化された上より
新たな問題も発生するかもしれません。
ブレイントラスト、コウシ所長の方針はどうなるのでしょう?」
「まあそうよね、被害を受けたらそこで終わりだし。
生物管理所ですらあんな目に遭って」
「クロノス博士が早めにプロファイリングしていなかったら
もっと別のエリアもやられていたでしょうね。
どっからやってくるのかすらマジで想像つきませんよ」
「まあ、私がしなくても連帯でズルズルと捕まってゆく。
奴らの手口は“私がやりました”と主張している事と同義だしな。
まともに掃除もできない者に跡始末の付け方など理解できんのだろう」
俗に言うやり口が動物と変わらないから証拠も十分に残して露になる。
シンプルに想像もしないから、後でどうなるのかすら補おうとしない。
目の前の出来事、光景が全てで動機も結果もその時だけで決まる
刹那のみをモットーに底辺を這いつつ生きている。
こんな所で話をするのも得策ではないが、流れでそうなってしまう。
それはともかくとして、生活基盤を含めた今後はどうなるか
世の情勢がますます追いついて迫りくる中、研究への懸念も安否。
そろそろ就業時間が再開する、それぞれの役目も胸に抱きつつ
会計を済ませた私達はブレイントラストへ戻っていった。
「・・・・・・」
4人から見えない室内コーナーで一部始終を聞いていた者がいる。
気付かれずに相手がレストランを後にした姿を見続けていた。
ブレイントラスト ロビー
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「「先程、立てこもり事件で犯人が逮捕されました。犯行の供述によりますと、
上層階の住民権と人質の交換を要求しており・・・」」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
夕方の休憩時間も恒例というばかり、ニュースを何気なく観ている。
相変わらず下界の事件ばかりで深読みする必要のない内容、
取り上げている画面の様も見飽きた内容の話ばかりだ。
ここと下層階の拗れは未だに解消できずにいた。
対して上層階のひっそりとした静けさときたら、比較にならない。
人入りする数がまったく異なるので当然であるものの、
まるで無人島にいる錯覚がありそうなくらいだ。
ウィーン
所長が入ってくる、ハンカチで頭を抱えながら歩くのはこちらも
恒例のモーションだ。内側の仕事だけでなく外回りもあり、
忙しい立ち回りに組織のTOPに立つのはやはり容易ではない。
ただ、観た顔がいつもと違い、今回は事情が異なるようだ。
「これはまた忙しくなりそうだ」
「ここ最近になって、急がれているようですね?」
「前々からすでに実装していた計画だがな。
共同先が素材不足で製造を遅れさせなければならなくなった。
物が物だけにおいそれと入手できるものでなくてな」
「アールヴォイドですね?」
「うむ、マスターアップ寸前ではある。が、査問会とトラブルが生じて
今後の使用について進まなくなりそうなんだ。
それで、あの2人が来てから急進させようという根端だ。
別に評価や名声などではないぞ、来たるべき安息のため。
それにより、例の三機が完成間近になってきた」
「三機・・・ですか?」
とある3種類の機体の事だという。
数年前、所長から少しだけ聞いていたあるロボットの様な
機械の設計をどこかと共同で行っている話があった。
しかし、所長の扱いが他の研究と同レベルには思えなかった。
今まで実物を一度も見た事がなく、どこのルームにあるのかすら
知らなかったのだ。完成間近について初耳だけに、
何故特別に保管しているのか少し気になる。
「マスターアップ寸前に何か問題でも?
その3機は最高機密情報の1つと聞きましたが?」
「実はそれらのフレーム技術が一部漏洩したのだ。
あれ程膨大なコードを暗記するのも困難、
ディスクの持ち出しでも入口のセンサーに反応せん。
やはり別の場所に移動させるか決めかねている」
「別の所にですか?」
査問会は軍事行為などに関わる備品との製造に否定的な意見を示し、
場合によって取り止める意向をもち始めてきた。
まずは人前に出さない方法をとり、最終手段として緊急出動できる
状態で寝かせておくしかなく、公表もしてはならないと決めたのだ。
アール・ヴォイドも同様の事情で向こうに差し押さえられる懸念があった。
そんな三機の保管場所はどこに置いたのだろうか。
所長はどうやら話したくなさそうな顔で語る。
「それらはどこに・・・?」
「いや、こっちだ」
手持ちのタブレットで映像を見せられる。
屋上と思いきや、所長は地下を指差して案内した。
地下50階分はある深さの設備の一角に、アール・ヴォイドと共に
指定して製造に当たっている。
そこは深く、一部の者のみ入れる区画との事。
「「こ、これは・・・」」
画面に3種類の人型発動機が置かれていた。
1つ目は朱く、2つ目は蒼く、3つ目は黄金の装甲で
造られたロボットだ。
暴徒鎮圧と呼称しているこれらは物理的実行動によって、
現場を静めさせる現実的解決装備なのだ。
「セントラルトライアド、これらを製造していたのは一体?」
「以前にアメノクラミズチを見せた時は個人として製造したと言ったが、
これらはアール・ヴォイド社と共同制作なのだ。
むしろ、最も最初に造られたタイプで性質をどこまで高められるか
互いの見識を出し合った物だ」
「3種類別に分けた理由は様々な状況に応じたケースを想定してですか」
「うむ、骨格や装甲も希少ある物質を用いている。
私自身としては、あくまでも知の追求の一貫だ。
だが、時代を担う者によってはそうも言ってられん。
被害者も日増しに増加している、一刻も早く完成を急がねばならん」
彼らは私軍ビジネスを計画して警備会社になりすましつつ潜ませていた。
自衛隊に提携しないのも漏洩対策のためで、組織規模を小さく保ち
上層世界を汚さないように浄化する。
人型や飛行機など形状が異なる理由も全ては戦略的武力。
つまり、制圧の意味を含むのが理解できる。
対下層階用として造る以外に理由が見つからないからだ。
ただ、政府が私軍を容認してもらえるかどうかが気掛かりだが、
所長は研究権利から規制を乗り越えると言った。
「少々歪かつデリケートな話になるが、銃器を所持する術はある。
オープンキャリーは君も知っているだろう?
公共にあらぬ物を運用するには相応の道理と権利が必要だ。
民間企業から銃の使用を許可される活動は
すでに何年も前から行われている」
「この国でも・・・」
「銃器は基本、警察及び自衛隊にのみ許可された逸物。
だが、人種も昔より大きく変化。
法律は海外による介入で倫理の在り方も変わってきたのだ。
せいぜい猟銃のみ扱っていた物が・・・」
「そして、複雑に絡み合って製造の場を設けてきたのですね。
私のような白人が来国しても違和感のない時代。
所長が武力兵器の開発にも携わっていたとは・・・」
「意外だったかね?」
「いえ、自分は気に掛けておりません。
ダニエル君の研究同様、防御性を求められる時代なので。
これらは他には置けないのですか?」
「実は・・・向こうには保管できん。
最重要機密区域だ、彼らにはまだ内部を公開させておらん」
これらはあのアール・ヴォイドと共同で製造している機体であるものの、
ブレイントラストの最奥まで連れてゆく気がないという。
当然、規格や情報を全て吸い取られてしまう懸念ゆえに
工房で共同作業するわけにはいかないだろう。
あの下層階の手から守るために各社を入念に回り回った果てに、
かのダニエルとアリシアへアプローチが届いた。
しかし、所長はアール・ヴォイドにブレイントラストラボへの介入を拒んだ。
自分が築いてきた情報を全て見られる危険性をはらむからだ。
ようやく見つけた同じ道を目指す繋がりがあるといえど、
何もかもさらけ出す度胸まで持ち合わせていない。
所長の全てが裁量良くある世界に招くのをためらっていた。
正直、私もどこを示しているのか不明。
最奥がどこにあるのかすら理解できないので互いの意味が疎通できず。
「そこは・・・所長の端末の中に?」
「まあ・・・そうだ、政府への公表を寸止めに抑えられる機密事項。
ブレイントラスト云々ではなく、世界への影響が大きく変わるので
決して表に出でないところ。端末のみとも言えんが。
という事で、これらにパスコードを入力しておいた。
サブシステムとしてな」
「ブレイントラストに異常が発生した時の予備システム三機に内蔵を?
ラボの扉など厳重に何かを保管しているような区画を乗っ取られたなど、
外部から強制的に解放させるケースですか」
「例えばだ、メインシステムに何者かが侵入してきて強奪されたとする。
そうなれば、重要物は外に持ってゆくしかなかろう」
「しかし、外部に運び出しても危険では?」
「そう思うだろう、そこでAUROの性質を利用している。
セントラルトライアドの原動力はそれだ、エネルギー内部に情報を
秘匿させて万が一盗用されても発見される恐れがない。
量子CPUから着想を経て関係者のみ閲覧できるようになっている。
案ずるな、メインシステムまでは動かせん。
中枢機能を迂回した外経由のみ対応している。
外装の防衛、ゲートの開閉くらいだな」
「・・・・・・」
つまり、端末機器ではなく動力炉から情報を引き出す事で
エンジンとしか認知できない者達にとって動力消費で情報も消える。
知る者なら消費前に必要に応じて抜き取っていけば良い。
最重要機密区域内で万が一、指示ができなかった場合に
これら3機から操作できるよう仕込んだと言う。
何かしらのきっかけで外側から塞がれた場合、強制的に入口を開かせる
緊急事態を想定した遠隔操作だ。
「ただ、それが可能になるには解放コードを入力せねばならない。
外部への独立させた物の扱いはより慎重に行う必要もある。
当然なまでに知っているのは私だけだ」
「思い切って発表するのはどうでしょうか?
コピーライトを利用した情報保護という手も。
認知を受けた上で世間の目もあります」
「それも考えたが、まだ公にはできんな。
自衛隊も欲しがるこれらに、類似品が世に出回ろうものなら
蛮人すら翻して大きな力を手に入れてしまうだろう。
まだ保存させる方向でいく」
絶対に起きてはならない事は低能への技術漏えい。
所長自身の意志ではまだアール・ヴォイドへの融通を利かせず、
これらをしばらく寝かせておくべきだと提案した。
それにしても新たな戦闘機を目にするとは予想にできず、
今回の話は予想外であったが、深く知ることができた。
しかし、話はここで終わらない。
機械事情はそういった画一的なものだけで終わらずに内面的な側面も、
次は自分の想像を一回りに超えた内容のものを明かされた。
「実は・・・まだ大きな計画もある。
1週間前の話だが、我々はある技術を完成させた。
名はアンドロイドバイオニクス。
これは科学文明として非常に大きな前進といえる分野。
これもセレファイスにおいて重要事項でな」
「機工と生体・・・ですか?」
「うむ、これは主にアメリア君と進めていた事でな。
アンドロイド技術とはまた異なる派生されたもの。
特に希望が強い彼女の生体工学を推進して生み出されたものだ」
アンドロイドバイオニクス、有機体情報を無機物に転移させて
脳内情報、精神もまるごと移植して予め製造しておいた機体に移す。
外見コンプレックスをもつアメリアも参加しているのも
よく理解できるプロジェクトだ。
自分としては理解不能ともいえる内容。
それはある意味、生命を超えた魂を完全否定できる技術で
この時代において科学という混沌の内部で生じた存在に思えた。
身体を交代、あたかも命の尊さが否定されて理学の崇高さが
上回り、塊の概念が価値を丸め込んで覆った。
未だ全て信じ難い技術であるものの、現実に到達できたのは事実で
精神の存在すら創られた凝固体の一部に取り込まれた感じだ。
これら3機の製造目的は理解できたが、規格の形状に少々不審さもある。
戦闘、偵察、警護の性能をもつにしてもフレームがところどころ
似つかわしくない点もあり、完成形にまで至っていないようでも
実働らしい何かが不足しているのではと疑心。
ここで歩く機械を創造する理由も明かされる。
脚をもつ、保有する事の真意を述べた。
「形に関する疑問は確かに不確定に思える部分もあるだろう。
ライオットギアでも何故、脚を採用させるタイプもあるのか。
戦車のような履帯を用いず、わざわざ関節系を付けるのも
不可解なものである。これらを用いたのは・・・失った物への代行だ」
「失った、身体の代行?」
「言葉の意味はよく理解しにくいだろう、生物には何かしら形をもつ。
DNAを継ぎ、形を継続してこの世界へ成す。
だが、身体形成は自然界で必ずしも通用するとは限らん。
他の種によって滅ぼされ、跡継ぎすら許されぬ運命を迎えてしまう。
勿体無い、私もこの国の思念にある言葉に従っている。
ゆえに、失ったという言い方でワードを形成している」
「つまり・・・生物型とみなして製造。
戦略的意味以外でそういった理由があったわけですか。
すみませんが、理解が少々・・・」
「いや、それは仕方のない事。クリエイトソート、物作りには言葉で
説明しきれない時もあり、奥深さのみ端から表現する」
「外観は内面より表に浮かぶ、というのが常識だと思っておりました。
要約すると、消失した物をまた再現する・・・ための理由。
アールヴォイドも同じ意思で?」
「・・・そうだな、無限軌道以外での実用試験としても考慮され、
動物の大半は地に足を着けて生きる、空を飛べる鳥類も等しいが
世界という大地はどんなものであろうと居住する。
歩くという行為は生きる感覚への標の一歩でもあるのだ」
「「生物を・・・機体に転用する・・・私としても信じられず。
そこまで理念を掲げていたとは・・・」」
「新規開拓とは必ずしも理路整然から生じるとは限らん。
地球誕生の様にマグマの混沌から雨で冷静沈着されてゆく過程で
成り立つ時もありえる」
「無数の分野による複合体、ブレイントラストは一種の集合体。
適切な言葉が浮上しませんが、結果を改めて寄せ集めて
更なる発展、成果を生み出すのを理想としてきました。
いわゆる・・・所長にとって本懐ともよぶべき――」
「そうだ・・・私の最終目標は反重力ではない。
まだ生きているこの身が動ける限り、役目を終わらせるわけにはいかん。
宇宙開拓も中止され、生物管理所も焼き討ちされ、すがる行き先も
私の行き場も閉ざされつつある。
そこを再び再現させてみせる、訴えもできずに死滅していった
生物達の楽園をこの手で・・・必ず」
60歳を迎えた彼も責任者の立場だけで終わらせる気概がなく、
微かに消えかけた夢をまだ追求して言葉無き物のために尽力。
たとえ機械化させても“存在していた”証を文明の粋で果たそうとした。
これはコウシ所長の真実の1つ。
彼が信頼できる者のみ伝える極秘事項を教えてくれた自分の立ち位置を
改めて見直す必要性を感じずにはいられない。
彼が内容を打ち明けた瞬間の片鱗を見た時、何かが変わった様な気も感じた。
「という訳だ、やたらと崇高な講釈ばかり述べてしまった。
とにかく、ブレイントラストの道は前後双方向。
脚と等しく、生存への意味や意義はいつまでも問う。
進化と共に守りの術も備えていかねばならんのだ」
「・・・・・・」
「ここまで話したのも、君を信用しているからだぞ?
以っては色々と障るので機密事項に当たるが、
見込みある者には私も大いなるゲートを開いて導かせる。
仕事としてではなくれっきとした共同体としてだ」
「光栄です、機会があれば機械工学も拝見させてもらいます」
「そうだな、君にもいつか教えてあげるとしよう。
ただし・・・例の件の答えを聞いてからだ」
瞬間、所長の目が険しくなった。
ゲート、意味は不明。扉を意味するどこかへの入口を示しているだろう
言葉はまるでどこかへ誘う様な雰囲気を感じる。
例の件、世界を完全に分離する計画。
鳥と等しく地上から隔てた生活なのか、または本物と同様になるのか、
答えとは最初に来た時の誘いと同じ。
ワードこそ単純なものの、必死な気迫で懇願と魂願が混じるかに
求められている様な感覚がした。
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