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4章 ブラインド編
第4話 蟻から黒豹へ
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サド島ブラインド拠点 アリシア自室
「返して・・・私の子をかえしてええええええええええぇぇぇぇ!
あああ、ああああぁぁぁぁ、イヤアアァァァ!!」
「チーフ、私です、落ち着いて下さいッ!」
「医療班、鎮静剤、早く!」
「しっかり押さえてろ!」
プシュッ
衛生班がアリシアの腕に注射を打って気を静めさせる。
彼女はベッドの上で錯乱状態に陥っていた。
ミゾレ達が何か妙な事をしていたわけでもなく、前触れもなく
時折発作を起こしては突然叫び散らしてこういった様子を見せていて
発言から理由はブレイントラスト在籍時のもの。
ブラインド結成の根源による事だろう。
4人がかりでどうにか彼女の身体ごと抑えて混乱を解決してゆく。
10分後
スーッ スーッ
「「無事、眠れたようです」」
「「ありがとう、今日の20時に会長が来られるから
それまで安静にさせておきましょう」」
そういった後の対処も予定調和の様な感じで問題なしとばかり進む。
度々に起こるから多少手慣れた行為に気持ちの行き処が複雑。
どこに気を回しているのか分からない長に、精神疾患者の看病をする。
赤ん坊の方は問題ない、ポッドは防音室と等しく外の音は聴こえない。
当然、面倒見は彼女以外もいるので母乳の心配など時代遅れの言葉が届く。
サップも様子を見にきてまたかとウンザリする。
「おい、またかよ」
「またよ、記憶のフラッシュバックによる衝動的行為。
起床時か、悪夢か、意識覚醒時によぎった可能性があったみたい」
「アレか、当時に息子を盗られたショックかなんかか。
もう戻せねえんだからいい加減立ち直れってんだ」
「目の前で夫を失って子どもも奪われたのよ。
精神的苦痛は男より遥かに大きいんだから仕方がない。
あんたには女心なんて理解できるわけないから、
プライベートモードの時はかまわなくて良いわよ」
「へいへい」
確かにいつもこんな事ばかり起きても対応に困るばかり。
しかし、精神的管理なら実際にいる。
この点に関してはさらに御上によるお叱りがあるから心配なし。
といった流れで2人、メンバー共に彼女の部屋を後にした。
ブラインド拠点 ロビー
「また取り乱したそうだな・・・」
「「お、お父様・・・」」
当然、先の出来事は会長に知られてしまう。
昼間もずっと寝ているなど睡眠薬服用以外の何物でもなく、
錯乱状態を抑えられた原因なのはとうに分かっていた。
まだ薬の効き目がある間、ボヤけそうになる視界をどうにか
ハッキリさせようとする。身内に寝ているようになんて、
父を前にそんな言い分など絶対に通らない。
口すらまともに動かない状態で、険しい顔つきを目に入れるのみだ。
「「わたしは・・・その・・・弁解の余地はありません」」
「まったく、冷静さ、平然さを保つのは必要だと言ったはずだ。
人も物も失った苦痛はお前だけではない、
こんな状況が続けば息子すら奪還するのは遠くなるぞ?」
「・・・・・・」
言い方は父親らしい、まさにリーダーシップをとり続けてきた
世界的インフルエンサーだけに怒鳴り声でなくとも威厳のある説得。
こういう時は親子の図とばかり組織の体面には思われない対面だ。
直に言われる度に顔すら真正面から見ていられずにすくむ。
「まあ・・・公然で発作を起こさなかっただけ幸運だ。
感情は確かに他より影響を与え、及ぼされるのは常。
どんなに小さな事件であろうと、いずれ大きな発火を生む時もある。
だから、リーダーという気概をしっかりともち続けるのだ」
「「はい・・・」」
「話は代わるが、私の方からも問題が起きてな。
今日は兵士の規格について少し話したい事がある。
兵装スーツの件で不足事項が生じてしまった」
「服・・・ですか?」
「そうだ、体温を維持する素材が足りていない。
50人分をそろえる量がまだクリアしきれていないのだ」
兵士用の備品である物質がいくらか必要になったという。
理由は上の通り、ガラス質で金属性をもちつつ加工しやすい物で
体温調節する機能のために身体へフィットさせて扱う部分。
相手が上空10000mに位置するだけあって低温度に該当するので、
参加者全員分はどうしても用意しておかなければならない。
AUROは様々な物質を合成する事ができる。
しかし、高密度な物程生成させるには多くの時間を必要として
そこだけは早めにクリアさせなければ新兵を配置できない。
せっかく招集しても装備がままならんと思われてはまた脱退されるだけだ。
「私のAUROも今は炭素のみ生成している。
1年前から部隊設計していたとはいえ、当然こんな期間では間に合わずに
加工段階もまだ10%にとどくかどうかだ」
「ええ」
「以前の組織ならもっと大量に行えたが、ここでは微々たるもの。
さらに政府の制限をかけられなければスムーズに越えられたが。
カーボンニュートラル、ダニエル君の生活システムに則り
備品の元となる物しか取り出せんのでな」
(あの人の・・・)
父は生活するための材料を優先して装備にまで回せないと言う。
夫の夢であった人にとって最も安全と提唱したカーボンニュートラル、
人体への悪影響を極力与えない無害物質、物理的防壁を実現しようと
母国にいた時の事を思いだしていった。
10年前 自宅 ダイニングルーム
「向こうの国で炭素の研究を?」
「ああ、ブレイントラストなら完全に実現させられそうだ。
ここは予算制限も大きくかかり、見込みが薄いとまで言われてな」
ダニエルは金の砂の研究を列島の方で続けるという。
日増しに研究費を絞られていた夫は母国での続行を断念、
招待されたブレイントラストで進め直す事にした。
当然、私もついてゆく。子どもが欲しかったのも否定はしないけど、
当時はここ、列島の発展がどうしてそこまで高まりをみせていたのか
よく理解できていなかったゆえに対して関心も多少あったから。
詳しくは夫の以下の言葉より。
「列島という場所がある意味決め手となったかもしれないな。
向こうはここと違って流動性が低く、機密保持もしやすいが
想像力の質がまさに我々と異なる側面をもっている。
サブカルチャーは固定概念から一歩踏み出した表現をもって
私達のこの国までメディア展開したくらいだしな」
「確かにコミックやアニメは独特な表現なのは知っていたけど、
単なるアバウトさだけじゃなく?」
「ああ、その質はシンプルに科学のみでなくありきたりな設計から
未知なるポテンシャルを含めたものを感じたんだ。
確かにこんなものを“科学に適用できるのか?”といったものもあるが、
無関係な要素を継ぎ接ぎして初めて発覚する時もある。
向こうの人達の思考形態は具体でなく抽象から始まる傾向をもつ」
「そう? 少しだけ読んでも御都合的な作りとしか思えなかったけど」
「まあ、他作からの引用もあるにはあるな。
例えば、この国の作品は必ずと言って良いほど政治的主張や
人種差別撤廃を訴えるものばかりでストーリーをなぞる設定も
リアルを徹底してから始めている。現実とは数学、物理学、化学を
モデルにしているものもあるが、どうしてもそれだけでは飛び抜けた
何かが生まれにくい。シナリオもワンパターン化するしな」
「奇を衒い過ぎても理解されにくい。
読者や視聴者は何も分からない状態から始まるから、
身近なリアルさを見せてスタートしないと最後まで観てもらえない。
私にとって何故アッと言わせるのかよく分からないけど。
でも、そんな研究に応用できるの?」
「カンナギ所長のスピーチを観てわずかな先見性に賭けてみようと、
ブレイントラストが最も親和性ある組織だと思ったんだ。
君のお父さんにとってもそうした方が賢明かと」
「そこも考えてくれてたの?」
「あっ・・・ま、まあ、そうかもしれない。
とにかくだ、金の砂も含めて私はそんなポテンシャルをもった
追求心で挑みたいと思ってだな、ゴホン」
「ふふっ、あなたってば」
男の追求心は女よりも強いのは理解できるものの、
どこまでもやり通す意志は未来への発展と希望に溢れていると感じた。
私もそんなダニエルを愛したのだろう、
国云々などどうでも良く、流浪してでも生きてみせる。
世界の完全平和を最も実現できる彼だから、どこであろうと問題なし。
とはいえ、身辺整理も色々としなければならないものだ。
大陸を越えるのに全ての物など現地には持っていけないから。
それらの1つが四つ足でモソモソと歩いてくる。
「パンちゃん」
クロヒョウがトコトコと歩いてくる。
実は本物ではなくロボットで模造された生物型だ。
すでに絶滅した種はこの様になけなしの模造で再構築されていた。
ペット・・・のつもりで買った物だけど、彼にとって事情がある。
さすがに来国するのに連れて持ってこられずに隣人へあげていた。
別に今とは関係はない、必要物というワードであの子の色と重なり
存在が薄れた動物とダニエルの思い出で何故かまた濃くなった。
そして、光景は父へと戻る。
現実問題は黒光りする物質の回収、人の身体を低体温という障害から
守るための衣を設計しなければならない。
実働部隊から整えなければ自身すらの卓上の理論だけで終わってしまう。
「該当物自体はレアでもなく相応に存在する。
これだけでもどうにか周囲を探索して回収するのだ」
「承知しました」
会長は室内から出ていった。
直に下された指示を次なる目標として動かなければならない。
あまり寝てばかりもいられずに、新たな課題をどうにかこなそうと
重くなりがちな身体を上げてメンバー達に呼びかけてゆく。
翌日 ブラインド拠点 会議室
という経緯で再びメンバー達と相談。
部隊のためのアーミースーツを完成させるべく気を持ち直して、
目立たぬ着用を効率よくするための資源回収を始めようとした。
私にとって頼れるのは優秀な知識者だけ。
規格もまともに一から築けずに実行力もない間は練るしかない。
ただ、あくまで昔の時代の話で近代の生産事情はこれといった内容も
分からずに、ネットも断絶されて調べられなかった。
そこへミシェルがある場所が相応しいと提案を出す。
「報告でーす、保温材の物は運が良い事に近場にある事が判明!
調べてみたらある山岳地帯にそれっぽい資源があるみたいだよ」
「よく分かったな!?」
「ニイガタの図書館にあったデータベースにそれっぽいものが
いっぱい載ってたから。貿易で色々とやってたんでしょ。
保温技術なんて大昔からやってたから、やっぱり同じやり方かもね。
現代人って何でもネットばかり頼って足を使わないんだもん」
「いつも歩いてないお前が足っつうのも皮肉だわな」
「比喩の利かないおじさんだね、行動力の話だってば。
いわゆる情報を得てそこで終わりと現地へ行ってないって事!」
「で、どうやって探すんだ?」
「心配ないわ、AUROスキャナーならどんな深い場所でも
何が埋まってるのかすぐ見つけられる」
私達にとってピンポイントさえ捉えれば採掘じたいたやすく行える。
AUROスキャナーを用いれば地中の物はすぐに見つけられるが、
範囲は半径数mの円錐状の枠からでしか確認できないので
先端は数千kmまで視えても外側がはみ出てしまって不可能。
さすがに現地まで行かなければおいそれと発見できない。
「マジか、それなら徳山埋蔵金も見つけられるな」
「もちろん数年前に探索したわ、結果は大判どころか小判もなく
鉱石や死骸くらいしか映っていなかったって。
東京地下に不審な洞窟はあったけど、すでに手を付けられてたみたい」
「んだよ、もう先を越されてんのか。あの天主殻の中も無理か。
おやっさん、いや、会長の道具を他に持ってる奴がいんのか?」
「中つ国に1人候補がいるの。
正確には同じ道具じゃなく透視技術に携わっている人」
「まあ、効率を考えれば確かにどこかのトレジャーハンターみたいに
帽子を放り投げて場所を決めるより質量測定の方が正確だけど、
ずっとモニターとにらめっこばかりして何もできなくなるケースが
目立ってくるもんだよね」
「ふふっ、そうね、私達は狭い画面ばかり観て生きてばかりよ」
ミシェルの言う足といった言葉で行動するという意味が増す。
観てばかりという行為が全身を留めて、そこに何があるのか実体験したい
気持ちもおろそかになり欲求だけの化身となるのが現代の特徴だ。
この時代になっても全て見通せる神の目は誕生しえないもの。
インターネットですぐさま世間の情報が閲覧できるといっても、
地中まで目がとどくなんて一般層には不可能。
中つ国にいる科学者が透過技術に携わっている所もあるが、
実力者達が皆ブラインドへ集まっているわけでもない。
歩幅が狭い状態から進めている今において、何でも都合よく動けず。
一応、近隣の中部は山岳地帯が多く、鉱石関連は豊富に存在。
必要量は不明ながら該当する物も産出する。
時には先んじて動く時もなければ結局できずじまいに終わる。
こればかりはこの子の言う通りで、意外な温床を見つけた。
どこの世界にいようと大抵生物は地上で生息。
という事で、部隊スーツの件から取りかかる。
自身の子を取り戻す糧のためにそこへ調達しに行く事を決定した。
ナガノCN 七ヶ岳
というわけで余分な間を省いて到着。
山林沿いにビークルを止めて傾斜地からは徒歩で入る。
ついでに、ミシェルは面倒くさがって来なかった。
ミゾレもオペレーター役で留守番して待機させる。
最も役割の少ないサップと部下3人を連れてきて事に当たる。
「チーフ自ら現場まで、大丈夫ですか?」
「私なら大丈夫よ、どこに何があるのか直に目で見ていかないと。
いつまでも会長に頼るわけにはいかないわ」
約30cmの青白いフレームの薄い器材で地形を透かす。
アール・ヴォイドは地べたを這いずりつつ資源の集う世界を見渡して
将来に繋がる命を補う塊の要素をじっくりと探し回ってきた。
私達にとって地球の中心部を観察するくらい訳もない。
ブレイントラストにすら提供していなかった技術で地中など
高性能レントゲン撮影とばかり容易に探り入れる事ができた。
岩を削るのもドリルなんてガサツで無粋なツールは使わない。
AUROは電離作用で大きな音を立てずに金属を分けられるので、
住民の耳も気付かれずに済むはず。
欠点を挙げれば反応の影響による青白い光を点々と発してしまうものの、
さずがにふもとまで見つかる事はないだろう。
掘り起こし、埋まっている部分のみ切り分けて無駄なく採取してゆく。
「すごい・・・この山の中にこんな量があったなんて」
「近代から手がとどかなくなって閉山したんだってよ。
深けりゃ岩盤も硬くなっていつかはお手上げになるもんだが、
利用価値が減りゃパッと来なくなって人の気もなくなる。
地元の連中もけっこう見逃してんな」
「歴史より、ここは黒曜石の産出量がTOPクラスで遺跡もあり、
古代より備品の発祥地として有名なエリアです。
どちらかと言えば、現代人より古代人によって用いられた場所で
狩りに用いる矢などの生活品を作られていたようです」
ミゾレの説明で山の内容を飲み込む。
黒曜石は鋭利な性質で大昔では矢尻などの道具で扱われて、
得物を捕える時代として欠かせない生活の一部でもあった。
ミシェルの調べによると付近はすでに閉鎖されて手付かずとされて
建物はおろか獣道すら見えずに誰も立ち寄らない。
もちろん地中内部の様子などアールヴォイドのみ確認できているから、
そこからAUROによってさらに再び起こされたようなものだ。
当然、ここのCNの者達にはまだ気付かれていない。
私達が勝手に横領しているなんて知られたら即捕まるだろう。
登山した時もクロマキーで身を隠しながら入ってきたから、
付近で音でも聴かれない限り、まず察知されるはずもない。
重要区画でもなく、こんな時期にハイキングする者もいないので
ドングリ拾いとばかり調達するのは容易い方だった。
採取量も10kgと軽車両に入れられるくらいに少ない。
ただ、今回の分はノルマを達成できたが次回の事も意識する必要がある。
ミゾレも最低限の機材をあらかじめ置く方が効率が良いと案じた。
「チーフ、ここをブラインド重要箇所の1つとしてチェックしておく
事をお勧めします。複数の金属性物質もあらゆる箇所に点在して、
スーツ製造以外でも資源として多く利用できる可能性があります」
金属類の調達はスーツだけでなくあらゆる物にも利用できる。
しかし、堂々と建築物なんて建てるわけにもいかずに、
クロマキー合成も他所のエリアに敷けば技術流出の恐れも生じる。
立地としては一目につかない所ならいくつかある。
普通に足を着けられない条件なら相応しい場所を選ぶべきだろう。
私は常識なく足場に満たない足場よりの位置を示した。
「ここ近隣・・・そうね、この崖付近に工房を造ろうと考えてるわ。
また増員でいずれ多く必要になる、すぐに行動に移せるよう
隠し扉にして出入りできるようにしたいの」
「崖の途中に入口かよ!?」
「仕方ないでしょ、簡単に通れたらすぐに発覚されるし。
ここの洞窟もめったに来られない地形でおあつらえ向きよ」
ここナガノも中部にそびえる山脈の一部で、おいそれと人が出入りできない
足場も悪く視界の見通しができない所。
ミシェルの指摘以来、中部の資源観念はより濃厚に意識し始めてきた。
黒曜石の他にも採れる鉱石も多く、必要な物資はまだまだあるだろう。
ここで珍しくブラインドモブ兵Aから一言。
「他CNに巣食う、まさにア・・・いや、すみません」
「ん、なんか言ったか?」
「ひいっ、つい無意識の内側からぁ、申し訳ありませんッ!」
「どうしたんだ突然? 悪いモンでも拾い食いしたのかよ?」
中にはこういった変わり者もいて妙な例えを発言したりする。
統率力もあまりない小さなここで小さく蠢く行動は確かに一生物の
行為そのものと思いたくなるだろう。人だって目的のためには餌を漁り、
外見通りに地道なモーションで物を採りにいくもの。
私は叱責せずにありのまま正しいと述べてみせた。
「いいえ、言いたい事はあながち間違っていない。
今、私達の行っている行為そのものがそんな生物に等しい。
身を挺して堂々と主張、行動しようものならあっさりと裏を取られて
どんなに卑しくても叶わなかったらそこで終わりだから」
「で、俺らがこうしてまた装備作成に掘り起こしに来たと。
いつになってもやってる事は一緒だわな」
「元から人は自然の産物を加工して文明を発展させてきた。
許可もなく我が物顔で恩恵を感じずに当然とばかり手にして、
そんな現代人に歴史を学んでいると言えるのかどうか」
「思えば、人は自然界への感謝など念じていませんね。
利用のために肖るという言葉が」
「分かっているわ・・・それでも、他から摂取してでも、目的を、
モラルの削れた獣に成り下がってもやらなければならないのよ。
人間でも元は変わらない生物の一種、どんな物に真似ようと
本能は筆舌しがたい状態にまで形を変えて世界に適応させてゆく。
私達は闇に紛れたクロヒョウになる!」
「「は、はい・・・」」
ブラインドモブ兵が気弱そうに返事。
確かに今まで散々集ってこの国の技術や情報を吸収してきただけあり、
集る行為はまさにアリという名前に相応しいだろう。
正しいという語も本当にそうなのかまだ疑わしいけど、
最初に物作りするのに自然界に許可を申請するなんてしない。
いつも食物連鎖の末端に断りもなく横領して自分の勝手に加工を施して、
今更手段など問いていられずに物事など成しえないからだ。
アリのフリをするのも今日でおしまい。
踏み逃がした小さな生物がどれほど恐ろしいか再繁殖をもって活動、
これからはクロヒョウと化して自ら戦力を生み出してゆく。
女だから、などといった理由も言い訳も不可能。
あらゆる兵器を生み出してでも、目的のために光の無い世界の中で
事に当たらなければならないのだ。
「返して・・・私の子をかえしてええええええええええぇぇぇぇ!
あああ、ああああぁぁぁぁ、イヤアアァァァ!!」
「チーフ、私です、落ち着いて下さいッ!」
「医療班、鎮静剤、早く!」
「しっかり押さえてろ!」
プシュッ
衛生班がアリシアの腕に注射を打って気を静めさせる。
彼女はベッドの上で錯乱状態に陥っていた。
ミゾレ達が何か妙な事をしていたわけでもなく、前触れもなく
時折発作を起こしては突然叫び散らしてこういった様子を見せていて
発言から理由はブレイントラスト在籍時のもの。
ブラインド結成の根源による事だろう。
4人がかりでどうにか彼女の身体ごと抑えて混乱を解決してゆく。
10分後
スーッ スーッ
「「無事、眠れたようです」」
「「ありがとう、今日の20時に会長が来られるから
それまで安静にさせておきましょう」」
そういった後の対処も予定調和の様な感じで問題なしとばかり進む。
度々に起こるから多少手慣れた行為に気持ちの行き処が複雑。
どこに気を回しているのか分からない長に、精神疾患者の看病をする。
赤ん坊の方は問題ない、ポッドは防音室と等しく外の音は聴こえない。
当然、面倒見は彼女以外もいるので母乳の心配など時代遅れの言葉が届く。
サップも様子を見にきてまたかとウンザリする。
「おい、またかよ」
「またよ、記憶のフラッシュバックによる衝動的行為。
起床時か、悪夢か、意識覚醒時によぎった可能性があったみたい」
「アレか、当時に息子を盗られたショックかなんかか。
もう戻せねえんだからいい加減立ち直れってんだ」
「目の前で夫を失って子どもも奪われたのよ。
精神的苦痛は男より遥かに大きいんだから仕方がない。
あんたには女心なんて理解できるわけないから、
プライベートモードの時はかまわなくて良いわよ」
「へいへい」
確かにいつもこんな事ばかり起きても対応に困るばかり。
しかし、精神的管理なら実際にいる。
この点に関してはさらに御上によるお叱りがあるから心配なし。
といった流れで2人、メンバー共に彼女の部屋を後にした。
ブラインド拠点 ロビー
「また取り乱したそうだな・・・」
「「お、お父様・・・」」
当然、先の出来事は会長に知られてしまう。
昼間もずっと寝ているなど睡眠薬服用以外の何物でもなく、
錯乱状態を抑えられた原因なのはとうに分かっていた。
まだ薬の効き目がある間、ボヤけそうになる視界をどうにか
ハッキリさせようとする。身内に寝ているようになんて、
父を前にそんな言い分など絶対に通らない。
口すらまともに動かない状態で、険しい顔つきを目に入れるのみだ。
「「わたしは・・・その・・・弁解の余地はありません」」
「まったく、冷静さ、平然さを保つのは必要だと言ったはずだ。
人も物も失った苦痛はお前だけではない、
こんな状況が続けば息子すら奪還するのは遠くなるぞ?」
「・・・・・・」
言い方は父親らしい、まさにリーダーシップをとり続けてきた
世界的インフルエンサーだけに怒鳴り声でなくとも威厳のある説得。
こういう時は親子の図とばかり組織の体面には思われない対面だ。
直に言われる度に顔すら真正面から見ていられずにすくむ。
「まあ・・・公然で発作を起こさなかっただけ幸運だ。
感情は確かに他より影響を与え、及ぼされるのは常。
どんなに小さな事件であろうと、いずれ大きな発火を生む時もある。
だから、リーダーという気概をしっかりともち続けるのだ」
「「はい・・・」」
「話は代わるが、私の方からも問題が起きてな。
今日は兵士の規格について少し話したい事がある。
兵装スーツの件で不足事項が生じてしまった」
「服・・・ですか?」
「そうだ、体温を維持する素材が足りていない。
50人分をそろえる量がまだクリアしきれていないのだ」
兵士用の備品である物質がいくらか必要になったという。
理由は上の通り、ガラス質で金属性をもちつつ加工しやすい物で
体温調節する機能のために身体へフィットさせて扱う部分。
相手が上空10000mに位置するだけあって低温度に該当するので、
参加者全員分はどうしても用意しておかなければならない。
AUROは様々な物質を合成する事ができる。
しかし、高密度な物程生成させるには多くの時間を必要として
そこだけは早めにクリアさせなければ新兵を配置できない。
せっかく招集しても装備がままならんと思われてはまた脱退されるだけだ。
「私のAUROも今は炭素のみ生成している。
1年前から部隊設計していたとはいえ、当然こんな期間では間に合わずに
加工段階もまだ10%にとどくかどうかだ」
「ええ」
「以前の組織ならもっと大量に行えたが、ここでは微々たるもの。
さらに政府の制限をかけられなければスムーズに越えられたが。
カーボンニュートラル、ダニエル君の生活システムに則り
備品の元となる物しか取り出せんのでな」
(あの人の・・・)
父は生活するための材料を優先して装備にまで回せないと言う。
夫の夢であった人にとって最も安全と提唱したカーボンニュートラル、
人体への悪影響を極力与えない無害物質、物理的防壁を実現しようと
母国にいた時の事を思いだしていった。
10年前 自宅 ダイニングルーム
「向こうの国で炭素の研究を?」
「ああ、ブレイントラストなら完全に実現させられそうだ。
ここは予算制限も大きくかかり、見込みが薄いとまで言われてな」
ダニエルは金の砂の研究を列島の方で続けるという。
日増しに研究費を絞られていた夫は母国での続行を断念、
招待されたブレイントラストで進め直す事にした。
当然、私もついてゆく。子どもが欲しかったのも否定はしないけど、
当時はここ、列島の発展がどうしてそこまで高まりをみせていたのか
よく理解できていなかったゆえに対して関心も多少あったから。
詳しくは夫の以下の言葉より。
「列島という場所がある意味決め手となったかもしれないな。
向こうはここと違って流動性が低く、機密保持もしやすいが
想像力の質がまさに我々と異なる側面をもっている。
サブカルチャーは固定概念から一歩踏み出した表現をもって
私達のこの国までメディア展開したくらいだしな」
「確かにコミックやアニメは独特な表現なのは知っていたけど、
単なるアバウトさだけじゃなく?」
「ああ、その質はシンプルに科学のみでなくありきたりな設計から
未知なるポテンシャルを含めたものを感じたんだ。
確かにこんなものを“科学に適用できるのか?”といったものもあるが、
無関係な要素を継ぎ接ぎして初めて発覚する時もある。
向こうの人達の思考形態は具体でなく抽象から始まる傾向をもつ」
「そう? 少しだけ読んでも御都合的な作りとしか思えなかったけど」
「まあ、他作からの引用もあるにはあるな。
例えば、この国の作品は必ずと言って良いほど政治的主張や
人種差別撤廃を訴えるものばかりでストーリーをなぞる設定も
リアルを徹底してから始めている。現実とは数学、物理学、化学を
モデルにしているものもあるが、どうしてもそれだけでは飛び抜けた
何かが生まれにくい。シナリオもワンパターン化するしな」
「奇を衒い過ぎても理解されにくい。
読者や視聴者は何も分からない状態から始まるから、
身近なリアルさを見せてスタートしないと最後まで観てもらえない。
私にとって何故アッと言わせるのかよく分からないけど。
でも、そんな研究に応用できるの?」
「カンナギ所長のスピーチを観てわずかな先見性に賭けてみようと、
ブレイントラストが最も親和性ある組織だと思ったんだ。
君のお父さんにとってもそうした方が賢明かと」
「そこも考えてくれてたの?」
「あっ・・・ま、まあ、そうかもしれない。
とにかくだ、金の砂も含めて私はそんなポテンシャルをもった
追求心で挑みたいと思ってだな、ゴホン」
「ふふっ、あなたってば」
男の追求心は女よりも強いのは理解できるものの、
どこまでもやり通す意志は未来への発展と希望に溢れていると感じた。
私もそんなダニエルを愛したのだろう、
国云々などどうでも良く、流浪してでも生きてみせる。
世界の完全平和を最も実現できる彼だから、どこであろうと問題なし。
とはいえ、身辺整理も色々としなければならないものだ。
大陸を越えるのに全ての物など現地には持っていけないから。
それらの1つが四つ足でモソモソと歩いてくる。
「パンちゃん」
クロヒョウがトコトコと歩いてくる。
実は本物ではなくロボットで模造された生物型だ。
すでに絶滅した種はこの様になけなしの模造で再構築されていた。
ペット・・・のつもりで買った物だけど、彼にとって事情がある。
さすがに来国するのに連れて持ってこられずに隣人へあげていた。
別に今とは関係はない、必要物というワードであの子の色と重なり
存在が薄れた動物とダニエルの思い出で何故かまた濃くなった。
そして、光景は父へと戻る。
現実問題は黒光りする物質の回収、人の身体を低体温という障害から
守るための衣を設計しなければならない。
実働部隊から整えなければ自身すらの卓上の理論だけで終わってしまう。
「該当物自体はレアでもなく相応に存在する。
これだけでもどうにか周囲を探索して回収するのだ」
「承知しました」
会長は室内から出ていった。
直に下された指示を次なる目標として動かなければならない。
あまり寝てばかりもいられずに、新たな課題をどうにかこなそうと
重くなりがちな身体を上げてメンバー達に呼びかけてゆく。
翌日 ブラインド拠点 会議室
という経緯で再びメンバー達と相談。
部隊のためのアーミースーツを完成させるべく気を持ち直して、
目立たぬ着用を効率よくするための資源回収を始めようとした。
私にとって頼れるのは優秀な知識者だけ。
規格もまともに一から築けずに実行力もない間は練るしかない。
ただ、あくまで昔の時代の話で近代の生産事情はこれといった内容も
分からずに、ネットも断絶されて調べられなかった。
そこへミシェルがある場所が相応しいと提案を出す。
「報告でーす、保温材の物は運が良い事に近場にある事が判明!
調べてみたらある山岳地帯にそれっぽい資源があるみたいだよ」
「よく分かったな!?」
「ニイガタの図書館にあったデータベースにそれっぽいものが
いっぱい載ってたから。貿易で色々とやってたんでしょ。
保温技術なんて大昔からやってたから、やっぱり同じやり方かもね。
現代人って何でもネットばかり頼って足を使わないんだもん」
「いつも歩いてないお前が足っつうのも皮肉だわな」
「比喩の利かないおじさんだね、行動力の話だってば。
いわゆる情報を得てそこで終わりと現地へ行ってないって事!」
「で、どうやって探すんだ?」
「心配ないわ、AUROスキャナーならどんな深い場所でも
何が埋まってるのかすぐ見つけられる」
私達にとってピンポイントさえ捉えれば採掘じたいたやすく行える。
AUROスキャナーを用いれば地中の物はすぐに見つけられるが、
範囲は半径数mの円錐状の枠からでしか確認できないので
先端は数千kmまで視えても外側がはみ出てしまって不可能。
さすがに現地まで行かなければおいそれと発見できない。
「マジか、それなら徳山埋蔵金も見つけられるな」
「もちろん数年前に探索したわ、結果は大判どころか小判もなく
鉱石や死骸くらいしか映っていなかったって。
東京地下に不審な洞窟はあったけど、すでに手を付けられてたみたい」
「んだよ、もう先を越されてんのか。あの天主殻の中も無理か。
おやっさん、いや、会長の道具を他に持ってる奴がいんのか?」
「中つ国に1人候補がいるの。
正確には同じ道具じゃなく透視技術に携わっている人」
「まあ、効率を考えれば確かにどこかのトレジャーハンターみたいに
帽子を放り投げて場所を決めるより質量測定の方が正確だけど、
ずっとモニターとにらめっこばかりして何もできなくなるケースが
目立ってくるもんだよね」
「ふふっ、そうね、私達は狭い画面ばかり観て生きてばかりよ」
ミシェルの言う足といった言葉で行動するという意味が増す。
観てばかりという行為が全身を留めて、そこに何があるのか実体験したい
気持ちもおろそかになり欲求だけの化身となるのが現代の特徴だ。
この時代になっても全て見通せる神の目は誕生しえないもの。
インターネットですぐさま世間の情報が閲覧できるといっても、
地中まで目がとどくなんて一般層には不可能。
中つ国にいる科学者が透過技術に携わっている所もあるが、
実力者達が皆ブラインドへ集まっているわけでもない。
歩幅が狭い状態から進めている今において、何でも都合よく動けず。
一応、近隣の中部は山岳地帯が多く、鉱石関連は豊富に存在。
必要量は不明ながら該当する物も産出する。
時には先んじて動く時もなければ結局できずじまいに終わる。
こればかりはこの子の言う通りで、意外な温床を見つけた。
どこの世界にいようと大抵生物は地上で生息。
という事で、部隊スーツの件から取りかかる。
自身の子を取り戻す糧のためにそこへ調達しに行く事を決定した。
ナガノCN 七ヶ岳
というわけで余分な間を省いて到着。
山林沿いにビークルを止めて傾斜地からは徒歩で入る。
ついでに、ミシェルは面倒くさがって来なかった。
ミゾレもオペレーター役で留守番して待機させる。
最も役割の少ないサップと部下3人を連れてきて事に当たる。
「チーフ自ら現場まで、大丈夫ですか?」
「私なら大丈夫よ、どこに何があるのか直に目で見ていかないと。
いつまでも会長に頼るわけにはいかないわ」
約30cmの青白いフレームの薄い器材で地形を透かす。
アール・ヴォイドは地べたを這いずりつつ資源の集う世界を見渡して
将来に繋がる命を補う塊の要素をじっくりと探し回ってきた。
私達にとって地球の中心部を観察するくらい訳もない。
ブレイントラストにすら提供していなかった技術で地中など
高性能レントゲン撮影とばかり容易に探り入れる事ができた。
岩を削るのもドリルなんてガサツで無粋なツールは使わない。
AUROは電離作用で大きな音を立てずに金属を分けられるので、
住民の耳も気付かれずに済むはず。
欠点を挙げれば反応の影響による青白い光を点々と発してしまうものの、
さずがにふもとまで見つかる事はないだろう。
掘り起こし、埋まっている部分のみ切り分けて無駄なく採取してゆく。
「すごい・・・この山の中にこんな量があったなんて」
「近代から手がとどかなくなって閉山したんだってよ。
深けりゃ岩盤も硬くなっていつかはお手上げになるもんだが、
利用価値が減りゃパッと来なくなって人の気もなくなる。
地元の連中もけっこう見逃してんな」
「歴史より、ここは黒曜石の産出量がTOPクラスで遺跡もあり、
古代より備品の発祥地として有名なエリアです。
どちらかと言えば、現代人より古代人によって用いられた場所で
狩りに用いる矢などの生活品を作られていたようです」
ミゾレの説明で山の内容を飲み込む。
黒曜石は鋭利な性質で大昔では矢尻などの道具で扱われて、
得物を捕える時代として欠かせない生活の一部でもあった。
ミシェルの調べによると付近はすでに閉鎖されて手付かずとされて
建物はおろか獣道すら見えずに誰も立ち寄らない。
もちろん地中内部の様子などアールヴォイドのみ確認できているから、
そこからAUROによってさらに再び起こされたようなものだ。
当然、ここのCNの者達にはまだ気付かれていない。
私達が勝手に横領しているなんて知られたら即捕まるだろう。
登山した時もクロマキーで身を隠しながら入ってきたから、
付近で音でも聴かれない限り、まず察知されるはずもない。
重要区画でもなく、こんな時期にハイキングする者もいないので
ドングリ拾いとばかり調達するのは容易い方だった。
採取量も10kgと軽車両に入れられるくらいに少ない。
ただ、今回の分はノルマを達成できたが次回の事も意識する必要がある。
ミゾレも最低限の機材をあらかじめ置く方が効率が良いと案じた。
「チーフ、ここをブラインド重要箇所の1つとしてチェックしておく
事をお勧めします。複数の金属性物質もあらゆる箇所に点在して、
スーツ製造以外でも資源として多く利用できる可能性があります」
金属類の調達はスーツだけでなくあらゆる物にも利用できる。
しかし、堂々と建築物なんて建てるわけにもいかずに、
クロマキー合成も他所のエリアに敷けば技術流出の恐れも生じる。
立地としては一目につかない所ならいくつかある。
普通に足を着けられない条件なら相応しい場所を選ぶべきだろう。
私は常識なく足場に満たない足場よりの位置を示した。
「ここ近隣・・・そうね、この崖付近に工房を造ろうと考えてるわ。
また増員でいずれ多く必要になる、すぐに行動に移せるよう
隠し扉にして出入りできるようにしたいの」
「崖の途中に入口かよ!?」
「仕方ないでしょ、簡単に通れたらすぐに発覚されるし。
ここの洞窟もめったに来られない地形でおあつらえ向きよ」
ここナガノも中部にそびえる山脈の一部で、おいそれと人が出入りできない
足場も悪く視界の見通しができない所。
ミシェルの指摘以来、中部の資源観念はより濃厚に意識し始めてきた。
黒曜石の他にも採れる鉱石も多く、必要な物資はまだまだあるだろう。
ここで珍しくブラインドモブ兵Aから一言。
「他CNに巣食う、まさにア・・・いや、すみません」
「ん、なんか言ったか?」
「ひいっ、つい無意識の内側からぁ、申し訳ありませんッ!」
「どうしたんだ突然? 悪いモンでも拾い食いしたのかよ?」
中にはこういった変わり者もいて妙な例えを発言したりする。
統率力もあまりない小さなここで小さく蠢く行動は確かに一生物の
行為そのものと思いたくなるだろう。人だって目的のためには餌を漁り、
外見通りに地道なモーションで物を採りにいくもの。
私は叱責せずにありのまま正しいと述べてみせた。
「いいえ、言いたい事はあながち間違っていない。
今、私達の行っている行為そのものがそんな生物に等しい。
身を挺して堂々と主張、行動しようものならあっさりと裏を取られて
どんなに卑しくても叶わなかったらそこで終わりだから」
「で、俺らがこうしてまた装備作成に掘り起こしに来たと。
いつになってもやってる事は一緒だわな」
「元から人は自然の産物を加工して文明を発展させてきた。
許可もなく我が物顔で恩恵を感じずに当然とばかり手にして、
そんな現代人に歴史を学んでいると言えるのかどうか」
「思えば、人は自然界への感謝など念じていませんね。
利用のために肖るという言葉が」
「分かっているわ・・・それでも、他から摂取してでも、目的を、
モラルの削れた獣に成り下がってもやらなければならないのよ。
人間でも元は変わらない生物の一種、どんな物に真似ようと
本能は筆舌しがたい状態にまで形を変えて世界に適応させてゆく。
私達は闇に紛れたクロヒョウになる!」
「「は、はい・・・」」
ブラインドモブ兵が気弱そうに返事。
確かに今まで散々集ってこの国の技術や情報を吸収してきただけあり、
集る行為はまさにアリという名前に相応しいだろう。
正しいという語も本当にそうなのかまだ疑わしいけど、
最初に物作りするのに自然界に許可を申請するなんてしない。
いつも食物連鎖の末端に断りもなく横領して自分の勝手に加工を施して、
今更手段など問いていられずに物事など成しえないからだ。
アリのフリをするのも今日でおしまい。
踏み逃がした小さな生物がどれほど恐ろしいか再繁殖をもって活動、
これからはクロヒョウと化して自ら戦力を生み出してゆく。
女だから、などといった理由も言い訳も不可能。
あらゆる兵器を生み出してでも、目的のために光の無い世界の中で
事に当たらなければならないのだ。
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