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3章 東西都市国家大戦編
第53話 魔都1
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トウキョウCN 手立エリア
レッド率いる関東の軍はトウキョウCNのエリアに侵入していた。
前のサイタマCNでの音沙汰なき無景に、
目標までの空間をじっくり慎重に移動させられている。
より怖げな雰囲気を味わわされるメンバー達。
しっかりと辺りを確認すると、高さ100m以上はある崩れた
道路らしき道がある。
ビークルの通り道だったのだろうか、サイタマから切り離されていた。
「わざと道を壊したのか・・・侵攻ルートはどっちへ?」
「下、上から行っても襲って下さいと言ってるようなもんだ。
どうせなら、目立たない方が良い」
開けたエリアは集中砲火の的同然、少しでも被害を抑えようと
ワタルが下部のルートを勧めた。
元はトウキョウへの直通で、サイタマと経由していたのか
関東軍が来るのをすでに見計らっていたのだろう。
トオルが何かを見つけ道路の端に目を向けた。
「かすれた字で“しゅとこう”と書いてあります」
「地名なのかよく分からないが、この辺りは立体的で入り組んだ足場が多い。
前で観た場所より深く、死角もあるから用心だ」
「偵察の時は別ルートだったし、深入りしなかったから
実際ここに来るのは初めてね」
500mはある灰色の防壁手前は所々道が壊されている。
実際今まで確認できたのはここら辺だけでそこから先は未知の領域。
周辺の関東CNも現地情報は数え切れるくらいしかなかった。
とはいえ、必ず入れるルートがあるはず。交易していただろう景色の
わずかな痕跡を分析して道を探してゆく。
レイチェル総司令が相応しい場所を指摘して進ませた。
「「あの防壁は全て壁でなくチューブ状の物の中から入れると予測。
おそらくはサイタマやカナガワCNと交易するために設けられた
通路です。ワタルさん、コクーンの指示を」」
「例の装置、開放準備」
「はいっ!」
いつ奇襲を受けるのも想定して敵性CN圏内に潜る。
ワタルとトオルも兵器指示役に気を入れて入念に見張り。
侵入ルートは建造物の間のみ。エリア確保のためにそこばかりと
兵士達の塊がそこの隙間に入り込んで行く、そして。
「撃てえ!」
ズドンズドンズドンズドンズドンズドン
待ち伏せしていたトウキョウ兵が出迎える。
すでに付近にいるくらい分かっていて、こちらもすぐにディサルトを撃つ。
一陣が一斉に散らばりだしてコンクリートブロックの影に隠れて、
トオル達、工作兵が弾丸を防ごうとコクーンを広げた。
「コクーンシールド展開!」
キュイン キュイン
灰色の幅10mあるボードが複数広がっている。
これがエリーと共同して造った盾、この日のために備えた物で
高振動により、衝撃吸収する機甲で関東軍を守ろうとした。
イバラギ、トチギ兵も史上最大の作戦として慎重に事を進めようと奮起。
当然、すぐに前方に出られない。アーチャーフィッシュやドラゴンフライで
出先を確かめながら脅威を削りにゆく。
ドゴォン
「いぐぅおああぁ!?」
コクーンからはみ出ていたトチギ兵が吹き飛ぶ。
わずかな隙間も逃さずにエイムされて弱点を突かれたようだ。
コクーン機の1つにトチギ兵達も乗っていて、
エリーがオトリを買って出ようと自身の機体を50m進ませる。
「あっちの攻撃はこっちを崩せていない、もう少し行ける!」
「マジで行くつもり!?」
「行くッ! 向こうは武器をいっぱい持ってるんでしょ!?
ずっと待ってても端からやられちゃうから陽動で崩さないと!」
よせばいいのにまたムチャをしようとして突破口をつくろうとした。
ジリ貧を心配して、どこかに穴を開けようとして進む。
これをトントン拍子と言えば良いのか、確かに破壊はされていない。
タンクを包む白い球状の盾は激しい音をあげて攻撃だけ退けた。
両手を腰に当てて勝利への確信を誇る。
「ワハハハ、私の家はトウキョウだって超えられるのよ!
このまま前進してレッドさん達を中心部へ――!」
「あっ!?」
直前、手前に黒く丸い物が見える。
弾だと認識する間もなく機体の中もろとも無茶苦茶に揺れた。
ドゴオオオオン
半径50mくらいの爆発が起こる。
灰色の塊が次々と落下してトウキョウ兵も数十人巻き添えを受ける。
周囲の建造物も崩壊して味方から確認する事ができなくなった。
ライオットギアに搭乗していたマーヤも拙い言葉ながら
共同で参加して敵の位置を出来る限り伝えてゆく。
トチギ兵の行動で安全ルートが見込めたと連絡がきて、
まだ付近に敵影があるはずとイバラギ兵Bと同伴して索敵を頼んだ。
「どこにいるか分かるだけでも教えて、マーヤちゃん!?」
「は、はい! え~と、正面建物に560人くらい。
屋上に310・・・あ、340人くらいいますかも」
姿は確認できていないものの、やはりいるそうだ。
どこからエイムされているのか事前に知る事が重要で、
彼女の特定も大きく役立てている。敵対CNといえど、もはや歪んだ
ルールに従う者はトウキョウ兵以外にいない。
「間から援護する、死ぬなよ!」
「パルスミノルで散らす、それまで持ちこたえて下さい!」
「みんな、絶対に無理しないで進んでね!
私達もいるんだから!!」
今はまだトウキョウ兵の数が抑えられる程多くない。
しかし、予定調和とは程遠いまでに相手の壁は崩れずに
突破できないようだ。
「6時の方向にも確認、21名が負傷、数が多すぎる!」
「上空からも発動機が数機・・・うあっ!?」
3mの二足歩行ロボットがコンクリート建造物の上から飛び出て、
関東軍のシールドに体当たりする。
ただの撃ち合いに突き合わせずに場崩して戦況を変えにきていた。
雨あられに降り注ぐ銃弾、ワタルは動じずに状況を観察する。
攻撃パターンはこっちと大して変わっていないやり方だけど、
トウキョウサイドを観ている内にある光景に気付く。
(敵が身軽すぎる・・・)
ビークルから身を乗り出してトウキョウ兵を傍観する。
あまりにも身軽そうな兵装に違和感をもっていた。
相手の姿を目に腰の背後に細い箱の様な物が観えているが、何かがおかしい。
同じく弟のトオルもオブジェに注目。
相手の立ち回りの速さについて聞いてみた。
「おいトオル、お前の見解を聞きたい」
「「僕も理由が分からないよ、
背中から突然装備品を取り出して戦っているんだ。
どのトウキョウ兵もそれを所持しているみたいで、
装備箱から直接出している様に観えるけど・・・」」
「あんな容量で、バカでかいランチャーを取り出すか。
ずいぶんとハイセンスな手品が得意の様で・・・。
円周状に位置を取れ、逃げ撃ちだ!」
「了解!」
トウキョウCN古宿エリア 統制論理機関タワー
地上に多くの人だかりといううねりが現れてくる。
そこから離れた中層階から見物していたアメリアがいた。
新たに導入した新装備をジッと眺め、精査する。
「カイラルケース、早目に完成して良かったわ」
「十分な装備を持ちながらも、肉体に負担をかけない。
流石、御手者ですね」
あのヒデキが発案した物質を電子固形した技術を
すでに実現化していたのだ。しかし、アメリアはその言葉に何も応答をせず、
対してベルティナに向かって問答する発言をした。
「感心事を言いに、ここに来たんじゃないでしょ?」
「・・・もちろんです。
副司令のドキュメントを盗難した者を捕えました」
「そう、良くやってくれたわ」
「ですが、尋問する余裕がありません。
多数の敵性CNに侵攻されている今、関東への対処を最優先とします」
「そうね・・・すぐに向かいなさい」
「御健闘を願います、それでは」
「・・・・・・」
アメリアはベルティナに顔を向けず、観戦する。
彼女が立ち去った後でも、No3は静観した姿勢のまま
まだ様子を監視し続けていただけだった。
トウキョウCN 上層階一室
ガスッ
「ぐふっ!?」
クリフが見張りを殴って隙を見計らい、逃走を図ろうとした。
地上の異変に気付いて関東兵が来てくれた願いが通じたのか、
便乗でここから脱出する。だが、兵士はうろたえずに忠告を始める。
「ここから逃げるつもりか?
無駄だ、ここの陸路は普通じゃない」
「・・・・・・」
無理だと言いたげだ。
地方の者では理解できないだろう、ここトウキョウの構造を
攻略するなど不可能だと吹っかける。
しかし、両手でトウキョウ兵を押さえつけたクリフが意外な事を聞いてきた。
「なら、ここは本当に今のままで良いのかよ?」
「何が言いたい?」
「ナリの良い環境に見えても、人そのものが壁にへばりついてんだ。
そんで、パーツの1つみてえに扱われて生気もなく動かされて
一生檻の中の箱庭で生かされるんだ、これからもずっと」
「・・・・・・」
このままで良いのか、トウキョウ兵の何かに刺さる風な言い方をした。
もちろん、事情は当人にしか分からないが、チバの住人による
父親から伝わった何かの説法をしたいようだ。
体格、強さは違えど、あの武闘派の1人息子。
殴られる、と思った瞬間にクリフは手を放す。
先の発言以上に何も言わず、廊下先のエレベーターへ乗り込んだ。
それから中層階へ向かい、格納庫に近い周辺へ下りて行く。
連行されてくる途中の道は憶えていたが、入口付近の道は
やはり記憶しきれない程に混雑でややこしい仕組みだ。
しかも、トウキョウ兵達も慌ただしく動いている。
このまま進むのは確かに難しい。連結通路にある
ウィンドウの外は乗り物が多くある敷地、駐車場が見えた。
(ビークルか)
通路窓は開いており、そこから飛び出した先の足場へ乗って
死角に潜んで隙をみて1台奪い取ろうとした時。
ウィィイン ガタン
「うおっ!?」
俺が乗っていた足場は天井のプレートで上部が開き出し、
急いで下に降りる。ここで往生する暇はない。
どのビークルを選んでさっさと逃げようとする寸前、
声をかけられてしまう。
「どこへ行く気だ?」
「くっ!」
何度も嫌というほど聞いてきた声が前方から耳に入る。
最も見つかってはならない相手が立ちふさがってしまった。
トウキョウ湾海上
トウキョウ湾から南の海上に中部の兵達が侵攻していた。
アイチは戦艦3隻が滞在して、今回ばかりは化学のスペシャリストも同行で
艦内から援護の参加と交えて四国兵やオキナワ兵も共同するのだ。
「「こちらイリーナ、私も無線で陰ながらサポートするわ」」
「「こちら四国CNのスイレン・アクエリアス。
君が中部の代表? 話すのは初めてね!」」
「そんな事はどうでもいい、四国のバックアップは手はず通りだな?」
「「うん、上空から物資の投下、空爆要請も準備は済んでるよ!」」
「分かった、中部も予定通り南部から向かっている」
横と上の挟み撃ちを狙う算段。
一方的な侵攻は通用しないのはすでに承知で、
適切な進路の現状でも南部から向かうしかない。
同行していたタツキも関東の強豪に状況をうかがう。
「そこから進めば安全なのか?」
「そうとも言えない、沿湾部も徹底的に警備されている。
アイチも侵攻する都度、返り討ちされていた」
トウキョウCNには恐るべき砲撃がある。
たとえ海から進軍しようとも、強力な一撃で当然撃墜されてしまう。
上手くかいくぐるには、もちろん地理情報が命だ。
「3Dモール展開、エリアを確認する」
メンバーはトウキョウの表面処理を行う。
モニターの見取り図を見てみると、いたる所に城塞の壁だらけで
構成されたエリアばかりだ。
「黒い帯の部分はほとんど壁だろ?
こんなとこ、どうやって突破するんだ?」
「暗渠になっている所にも道はあるはず。
上からではなく下からの侵入を試みる」
「OK、そこを探ってみる」
複雑な構造が表示されている画面の下をスクロールすると、
海に面するトウキョウ湾の水深部から地下エリアらしき場所を発見した。
「見つけたぞ、水深30mから北に続くルートがある」
「潜水艇の出入口に違いない、そこから潜入する」
「ホントに見つかるとは・・・・」
人が造る以上、どこかしら隙間は存在するはずだ。
わずかな進路を狙い、侵入ルートを見つけていくのみ。
タツキが無数の異なる反応について指摘。
「関東のCNも来ているな、どうする!?」
「放っておく、あいつらもトウキョウがターゲットだ。
こちらも相手にしている余裕がない」
タツキにとって馴染み深い海であるが、故郷とは全く異なり
何かが集まるよどみの濁った水で汚い。この地にやって来てから、
そんな環境の変化を観ていたので、人の多さと比例するかに
劣悪な環境を感じずにはいられなかった。
「技術は進歩しても、人は進歩していないのか・・・?」
「こんな時になんだ?」
「なんでもない、準備する」
意味深なタツキの言葉を伏せつつ、港の水域から底部にある
入口にゆっくり進んでいく。
クロムの予想通り、暗渠から地下エリアに侵入できた。
「ホントに通路があった・・・」
「速度毎秒30cmで前進」
意外な事にトウキョウ兵は待ち伏せしていないようだ。
アイチの空間把握力に驚かされるタツキは後に続き、
ここからが正念場とメンバー達がかたまりながら進んでいた時である。
「何だ貴様は!?」
「や、やめろ、撃つな!」
どさくさに紛れてここから脱出して逃げようとしたらしい。
運が悪ければ、逃走ルートも悪かったこの男に情けをかける
俺は捕縛で留めようと伝えた。
「分かった、命までは取らない」
「あんた、良い奴だな・・・これを持っていきな」
「これは?」
「誤認識デコイだ、ここトウキョウにはアンドロイドも数多くいる。
これを設置すれば、そいつらは敵がそこにいると思いこませられるぜ?」
男は慌てて腰に付けたバッグから道具を取り出す。
試しに1つ開いてみると人型の風船が膨らんでそこで終わる。
そこから別に攻撃もしないが、トウキョウをかいくぐる手段として
使える代物だと言う。ゴーグルにガスマスクを装着しているだけあって
詐欺的な人物に見えたが、実際それを使用すると本当であった。
「・・・・・・分かった、使用させてもらう。
身の安全は保障する、こちらのCNに一度来てもらうぞ」
「へへっ、ありがたいぜ。俺はラメッシュって名だ」
「そうか、こっちだ」
彼はメンバーに連行されてゆく。
さすがにここから同行させるわけにはいかない、情報はできるだけ
教えてもらうが捕虜としてアブダクトすれば良い方向になると思ったから。
そこへイリーナが一言。
「「ホントに使う気?」」
「ああ、これはただのバルーンじゃなさそうだ。
ガスが注入されて普通の物じゃない、きっと役に立つだろう」
ただの模型を見破るなど、このCNでは普通にできるだろう。
でも、いずれ使えると前向きに信じてそうする。
根拠はないが、あんな状況でウソをついた様には見えなかった。
人型、過去の報告で人間と似た何かがいたとされているここで、
対抗できる道具かもしれない。
ただ、トウキョウという異形な世界を見るのは初めてで、
銃や刃で勝てる相手なのか、正直内心不安にもつ。
あの男と同様、妙な外見をしている者がまだ現れるはずだと
この薄暗い地下道をゆっくりと進んでいった。
レッド率いる関東の軍はトウキョウCNのエリアに侵入していた。
前のサイタマCNでの音沙汰なき無景に、
目標までの空間をじっくり慎重に移動させられている。
より怖げな雰囲気を味わわされるメンバー達。
しっかりと辺りを確認すると、高さ100m以上はある崩れた
道路らしき道がある。
ビークルの通り道だったのだろうか、サイタマから切り離されていた。
「わざと道を壊したのか・・・侵攻ルートはどっちへ?」
「下、上から行っても襲って下さいと言ってるようなもんだ。
どうせなら、目立たない方が良い」
開けたエリアは集中砲火の的同然、少しでも被害を抑えようと
ワタルが下部のルートを勧めた。
元はトウキョウへの直通で、サイタマと経由していたのか
関東軍が来るのをすでに見計らっていたのだろう。
トオルが何かを見つけ道路の端に目を向けた。
「かすれた字で“しゅとこう”と書いてあります」
「地名なのかよく分からないが、この辺りは立体的で入り組んだ足場が多い。
前で観た場所より深く、死角もあるから用心だ」
「偵察の時は別ルートだったし、深入りしなかったから
実際ここに来るのは初めてね」
500mはある灰色の防壁手前は所々道が壊されている。
実際今まで確認できたのはここら辺だけでそこから先は未知の領域。
周辺の関東CNも現地情報は数え切れるくらいしかなかった。
とはいえ、必ず入れるルートがあるはず。交易していただろう景色の
わずかな痕跡を分析して道を探してゆく。
レイチェル総司令が相応しい場所を指摘して進ませた。
「「あの防壁は全て壁でなくチューブ状の物の中から入れると予測。
おそらくはサイタマやカナガワCNと交易するために設けられた
通路です。ワタルさん、コクーンの指示を」」
「例の装置、開放準備」
「はいっ!」
いつ奇襲を受けるのも想定して敵性CN圏内に潜る。
ワタルとトオルも兵器指示役に気を入れて入念に見張り。
侵入ルートは建造物の間のみ。エリア確保のためにそこばかりと
兵士達の塊がそこの隙間に入り込んで行く、そして。
「撃てえ!」
ズドンズドンズドンズドンズドンズドン
待ち伏せしていたトウキョウ兵が出迎える。
すでに付近にいるくらい分かっていて、こちらもすぐにディサルトを撃つ。
一陣が一斉に散らばりだしてコンクリートブロックの影に隠れて、
トオル達、工作兵が弾丸を防ごうとコクーンを広げた。
「コクーンシールド展開!」
キュイン キュイン
灰色の幅10mあるボードが複数広がっている。
これがエリーと共同して造った盾、この日のために備えた物で
高振動により、衝撃吸収する機甲で関東軍を守ろうとした。
イバラギ、トチギ兵も史上最大の作戦として慎重に事を進めようと奮起。
当然、すぐに前方に出られない。アーチャーフィッシュやドラゴンフライで
出先を確かめながら脅威を削りにゆく。
ドゴォン
「いぐぅおああぁ!?」
コクーンからはみ出ていたトチギ兵が吹き飛ぶ。
わずかな隙間も逃さずにエイムされて弱点を突かれたようだ。
コクーン機の1つにトチギ兵達も乗っていて、
エリーがオトリを買って出ようと自身の機体を50m進ませる。
「あっちの攻撃はこっちを崩せていない、もう少し行ける!」
「マジで行くつもり!?」
「行くッ! 向こうは武器をいっぱい持ってるんでしょ!?
ずっと待ってても端からやられちゃうから陽動で崩さないと!」
よせばいいのにまたムチャをしようとして突破口をつくろうとした。
ジリ貧を心配して、どこかに穴を開けようとして進む。
これをトントン拍子と言えば良いのか、確かに破壊はされていない。
タンクを包む白い球状の盾は激しい音をあげて攻撃だけ退けた。
両手を腰に当てて勝利への確信を誇る。
「ワハハハ、私の家はトウキョウだって超えられるのよ!
このまま前進してレッドさん達を中心部へ――!」
「あっ!?」
直前、手前に黒く丸い物が見える。
弾だと認識する間もなく機体の中もろとも無茶苦茶に揺れた。
ドゴオオオオン
半径50mくらいの爆発が起こる。
灰色の塊が次々と落下してトウキョウ兵も数十人巻き添えを受ける。
周囲の建造物も崩壊して味方から確認する事ができなくなった。
ライオットギアに搭乗していたマーヤも拙い言葉ながら
共同で参加して敵の位置を出来る限り伝えてゆく。
トチギ兵の行動で安全ルートが見込めたと連絡がきて、
まだ付近に敵影があるはずとイバラギ兵Bと同伴して索敵を頼んだ。
「どこにいるか分かるだけでも教えて、マーヤちゃん!?」
「は、はい! え~と、正面建物に560人くらい。
屋上に310・・・あ、340人くらいいますかも」
姿は確認できていないものの、やはりいるそうだ。
どこからエイムされているのか事前に知る事が重要で、
彼女の特定も大きく役立てている。敵対CNといえど、もはや歪んだ
ルールに従う者はトウキョウ兵以外にいない。
「間から援護する、死ぬなよ!」
「パルスミノルで散らす、それまで持ちこたえて下さい!」
「みんな、絶対に無理しないで進んでね!
私達もいるんだから!!」
今はまだトウキョウ兵の数が抑えられる程多くない。
しかし、予定調和とは程遠いまでに相手の壁は崩れずに
突破できないようだ。
「6時の方向にも確認、21名が負傷、数が多すぎる!」
「上空からも発動機が数機・・・うあっ!?」
3mの二足歩行ロボットがコンクリート建造物の上から飛び出て、
関東軍のシールドに体当たりする。
ただの撃ち合いに突き合わせずに場崩して戦況を変えにきていた。
雨あられに降り注ぐ銃弾、ワタルは動じずに状況を観察する。
攻撃パターンはこっちと大して変わっていないやり方だけど、
トウキョウサイドを観ている内にある光景に気付く。
(敵が身軽すぎる・・・)
ビークルから身を乗り出してトウキョウ兵を傍観する。
あまりにも身軽そうな兵装に違和感をもっていた。
相手の姿を目に腰の背後に細い箱の様な物が観えているが、何かがおかしい。
同じく弟のトオルもオブジェに注目。
相手の立ち回りの速さについて聞いてみた。
「おいトオル、お前の見解を聞きたい」
「「僕も理由が分からないよ、
背中から突然装備品を取り出して戦っているんだ。
どのトウキョウ兵もそれを所持しているみたいで、
装備箱から直接出している様に観えるけど・・・」」
「あんな容量で、バカでかいランチャーを取り出すか。
ずいぶんとハイセンスな手品が得意の様で・・・。
円周状に位置を取れ、逃げ撃ちだ!」
「了解!」
トウキョウCN古宿エリア 統制論理機関タワー
地上に多くの人だかりといううねりが現れてくる。
そこから離れた中層階から見物していたアメリアがいた。
新たに導入した新装備をジッと眺め、精査する。
「カイラルケース、早目に完成して良かったわ」
「十分な装備を持ちながらも、肉体に負担をかけない。
流石、御手者ですね」
あのヒデキが発案した物質を電子固形した技術を
すでに実現化していたのだ。しかし、アメリアはその言葉に何も応答をせず、
対してベルティナに向かって問答する発言をした。
「感心事を言いに、ここに来たんじゃないでしょ?」
「・・・もちろんです。
副司令のドキュメントを盗難した者を捕えました」
「そう、良くやってくれたわ」
「ですが、尋問する余裕がありません。
多数の敵性CNに侵攻されている今、関東への対処を最優先とします」
「そうね・・・すぐに向かいなさい」
「御健闘を願います、それでは」
「・・・・・・」
アメリアはベルティナに顔を向けず、観戦する。
彼女が立ち去った後でも、No3は静観した姿勢のまま
まだ様子を監視し続けていただけだった。
トウキョウCN 上層階一室
ガスッ
「ぐふっ!?」
クリフが見張りを殴って隙を見計らい、逃走を図ろうとした。
地上の異変に気付いて関東兵が来てくれた願いが通じたのか、
便乗でここから脱出する。だが、兵士はうろたえずに忠告を始める。
「ここから逃げるつもりか?
無駄だ、ここの陸路は普通じゃない」
「・・・・・・」
無理だと言いたげだ。
地方の者では理解できないだろう、ここトウキョウの構造を
攻略するなど不可能だと吹っかける。
しかし、両手でトウキョウ兵を押さえつけたクリフが意外な事を聞いてきた。
「なら、ここは本当に今のままで良いのかよ?」
「何が言いたい?」
「ナリの良い環境に見えても、人そのものが壁にへばりついてんだ。
そんで、パーツの1つみてえに扱われて生気もなく動かされて
一生檻の中の箱庭で生かされるんだ、これからもずっと」
「・・・・・・」
このままで良いのか、トウキョウ兵の何かに刺さる風な言い方をした。
もちろん、事情は当人にしか分からないが、チバの住人による
父親から伝わった何かの説法をしたいようだ。
体格、強さは違えど、あの武闘派の1人息子。
殴られる、と思った瞬間にクリフは手を放す。
先の発言以上に何も言わず、廊下先のエレベーターへ乗り込んだ。
それから中層階へ向かい、格納庫に近い周辺へ下りて行く。
連行されてくる途中の道は憶えていたが、入口付近の道は
やはり記憶しきれない程に混雑でややこしい仕組みだ。
しかも、トウキョウ兵達も慌ただしく動いている。
このまま進むのは確かに難しい。連結通路にある
ウィンドウの外は乗り物が多くある敷地、駐車場が見えた。
(ビークルか)
通路窓は開いており、そこから飛び出した先の足場へ乗って
死角に潜んで隙をみて1台奪い取ろうとした時。
ウィィイン ガタン
「うおっ!?」
俺が乗っていた足場は天井のプレートで上部が開き出し、
急いで下に降りる。ここで往生する暇はない。
どのビークルを選んでさっさと逃げようとする寸前、
声をかけられてしまう。
「どこへ行く気だ?」
「くっ!」
何度も嫌というほど聞いてきた声が前方から耳に入る。
最も見つかってはならない相手が立ちふさがってしまった。
トウキョウ湾海上
トウキョウ湾から南の海上に中部の兵達が侵攻していた。
アイチは戦艦3隻が滞在して、今回ばかりは化学のスペシャリストも同行で
艦内から援護の参加と交えて四国兵やオキナワ兵も共同するのだ。
「「こちらイリーナ、私も無線で陰ながらサポートするわ」」
「「こちら四国CNのスイレン・アクエリアス。
君が中部の代表? 話すのは初めてね!」」
「そんな事はどうでもいい、四国のバックアップは手はず通りだな?」
「「うん、上空から物資の投下、空爆要請も準備は済んでるよ!」」
「分かった、中部も予定通り南部から向かっている」
横と上の挟み撃ちを狙う算段。
一方的な侵攻は通用しないのはすでに承知で、
適切な進路の現状でも南部から向かうしかない。
同行していたタツキも関東の強豪に状況をうかがう。
「そこから進めば安全なのか?」
「そうとも言えない、沿湾部も徹底的に警備されている。
アイチも侵攻する都度、返り討ちされていた」
トウキョウCNには恐るべき砲撃がある。
たとえ海から進軍しようとも、強力な一撃で当然撃墜されてしまう。
上手くかいくぐるには、もちろん地理情報が命だ。
「3Dモール展開、エリアを確認する」
メンバーはトウキョウの表面処理を行う。
モニターの見取り図を見てみると、いたる所に城塞の壁だらけで
構成されたエリアばかりだ。
「黒い帯の部分はほとんど壁だろ?
こんなとこ、どうやって突破するんだ?」
「暗渠になっている所にも道はあるはず。
上からではなく下からの侵入を試みる」
「OK、そこを探ってみる」
複雑な構造が表示されている画面の下をスクロールすると、
海に面するトウキョウ湾の水深部から地下エリアらしき場所を発見した。
「見つけたぞ、水深30mから北に続くルートがある」
「潜水艇の出入口に違いない、そこから潜入する」
「ホントに見つかるとは・・・・」
人が造る以上、どこかしら隙間は存在するはずだ。
わずかな進路を狙い、侵入ルートを見つけていくのみ。
タツキが無数の異なる反応について指摘。
「関東のCNも来ているな、どうする!?」
「放っておく、あいつらもトウキョウがターゲットだ。
こちらも相手にしている余裕がない」
タツキにとって馴染み深い海であるが、故郷とは全く異なり
何かが集まるよどみの濁った水で汚い。この地にやって来てから、
そんな環境の変化を観ていたので、人の多さと比例するかに
劣悪な環境を感じずにはいられなかった。
「技術は進歩しても、人は進歩していないのか・・・?」
「こんな時になんだ?」
「なんでもない、準備する」
意味深なタツキの言葉を伏せつつ、港の水域から底部にある
入口にゆっくり進んでいく。
クロムの予想通り、暗渠から地下エリアに侵入できた。
「ホントに通路があった・・・」
「速度毎秒30cmで前進」
意外な事にトウキョウ兵は待ち伏せしていないようだ。
アイチの空間把握力に驚かされるタツキは後に続き、
ここからが正念場とメンバー達がかたまりながら進んでいた時である。
「何だ貴様は!?」
「や、やめろ、撃つな!」
どさくさに紛れてここから脱出して逃げようとしたらしい。
運が悪ければ、逃走ルートも悪かったこの男に情けをかける
俺は捕縛で留めようと伝えた。
「分かった、命までは取らない」
「あんた、良い奴だな・・・これを持っていきな」
「これは?」
「誤認識デコイだ、ここトウキョウにはアンドロイドも数多くいる。
これを設置すれば、そいつらは敵がそこにいると思いこませられるぜ?」
男は慌てて腰に付けたバッグから道具を取り出す。
試しに1つ開いてみると人型の風船が膨らんでそこで終わる。
そこから別に攻撃もしないが、トウキョウをかいくぐる手段として
使える代物だと言う。ゴーグルにガスマスクを装着しているだけあって
詐欺的な人物に見えたが、実際それを使用すると本当であった。
「・・・・・・分かった、使用させてもらう。
身の安全は保障する、こちらのCNに一度来てもらうぞ」
「へへっ、ありがたいぜ。俺はラメッシュって名だ」
「そうか、こっちだ」
彼はメンバーに連行されてゆく。
さすがにここから同行させるわけにはいかない、情報はできるだけ
教えてもらうが捕虜としてアブダクトすれば良い方向になると思ったから。
そこへイリーナが一言。
「「ホントに使う気?」」
「ああ、これはただのバルーンじゃなさそうだ。
ガスが注入されて普通の物じゃない、きっと役に立つだろう」
ただの模型を見破るなど、このCNでは普通にできるだろう。
でも、いずれ使えると前向きに信じてそうする。
根拠はないが、あんな状況でウソをついた様には見えなかった。
人型、過去の報告で人間と似た何かがいたとされているここで、
対抗できる道具かもしれない。
ただ、トウキョウという異形な世界を見るのは初めてで、
銃や刃で勝てる相手なのか、正直内心不安にもつ。
あの男と同様、妙な外見をしている者がまだ現れるはずだと
この薄暗い地下道をゆっくりと進んでいった。
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