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3章 東西都市国家大戦編

第51話  トウキョウ包囲陣

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「「こちら四国CN、トウキョウCN上空1km前まで到着」」
「「こちら中部CN、トウキョウ湾3km前。
  砲撃予測地点手前で停止、作戦開始まで待機する」」
「「こちら東北CN、トチギとグンマ拠点に来た」」
「「こここちら九州の連合、数分後に中部と合流す――あっつ!?
  日光に当たんなよ!」」

 通信が入り乱れる無数の伝手が発散されていく。
これらは全て1つのエリアに向かって進められている。
CNの制御システムが存在するというトウキョウCNへ
人という消費を終わらせようと無線に対して集束していた。
CN境目手前で軍を招集して留まり、これより開始されるだろう
無数の火花に備えて誰もが生存も望みつつ解放への道へ進む。
レイチェルは各司令から攻める位置を再確認させる。

「我々関東CNは侵入各エリアに配置します。
 手立エリアに30、江西エリアに51、世田山エリアに63のチームを
 平行陣形しつつ展開します」
「イバラギ新河エリアはすでに待機完了、境に敵影なし。
 状況に応じて、移動エリアの拡張もありますね?」
「はい、陣形は予定通りに行います。
 あのトウキョウです、容易く侵入するのは困難でしょう」
「我ら東北はエリア確保を優先、関東のサポートに回る。
 蒼き加護で君達を支えさせてもらおう」
「こっちは暖かいから守り火は必要ないわね。
 あんた達は遠慮なく任せておきなさい!」
「グンマの森林に劣らぬ程、トウキョウCNは複雑な地形だ。
 高層エリアの中層階からの攻略を主に担当する」

各地方のリソースも万全に、今までより大きく備えを施している。
大一番という言葉がどこから聞いていたか、相応しい事がそうで
今回のラボリがCNを解放させるための軍事行動であった。

 (・・・・・・)

レッドはもくして上の指示をあおぐ。
周辺はほぼライオットギアとビークルだらけで埋め尽くされる。
今までにないくらいの大規模に思わず眼が熱くなりそうだ。
死に対する恐怖もある。
しかし、以上に自分の事も何か見つかるかもしれない期待も大きい。
黒兵事件からあっという間に流れが変わってこれからまた大きな
出来事がやってくるんじゃないかと内心。
装甲車のシートに乗りながら自分達の進む方向を見つつ思う、
隣のワタルに肩を叩かれた。

ポンッ

「力を抜けって」
「ああ、抜いてる」
「んん~、この肩は普通のモンじゃないな。凝りほぐしてやる。
 やっぱ、心のどこかで緊張感をもってるんじゃないか?」
「まあ、CNの全てを明らかにできればこの世界も分かるらしいからな。
 俺がどこから来たのかも・・・あそこで」
「トウキョウで出生が分かると良いけどな。
 なあ、お前は記憶喪失になったって話だけど、
 ホントに何も覚えていないのか?」
「そうだ、本当に何も覚えていない。
 チバの河川敷にいた事が始まりくらいだからな」
「前々から思ってたが、軍事行動についちゃ
 普通以上の持ち前を発揮している。
 同盟していった間で、噂にされた事もないのか?」
「まったく聴いてない。
 ただ、体だけは何かしら憶えているみたいなんだ。
 条件反射でつい動くというか、なんていうか」

ワタルは以前からレッドの体質に興味があったが、
相変わらず謎の男という印象から進展していなかった。
特殊な能力も同じで一体何者なのかさりげなく聞き出しても、
本人自体が分かっていないので不明のまま終始。
ひょっとしたら彼も、なにかそう言いたげな表情で観ている中、無線がくる。
ロックからだ。

ピピッ

「「まだ作戦は始まってねえよな、調子はどうだ?」」
「車酔い」
「「ああ大丈夫そうだな、東北も直に到着するぞ。
  ここまで来るのは俺も初めてだけどな」」
「人が多いだけで、あんまそっちと変わらんぞ。
 東北の進路はこっちと別なんだってな?」
「「らしいな、2次対策として時間差攻撃を繰り出すんだと」」
「よし、じゃあ向こうでまた落ち合うぞ。死ぬなよ!」
「「そっちもな」」

東北も準備万端にトウキョウへの対策を講じている。
一斉侵攻しようものなら上回る待ち伏せで一気に減らされる恐れもあって、
時間差で攻める手段も講じて練る。
もちろん関東だけでこなせられない相手なのは理解できている。
だから、こうして今までCNどうしを連結して解放を願ってきた。
いよいよ大詰めを迎えているというのか、2900を超えた部隊が
結集して支配する根源を断ちにゆく。
向こうの目標に着いたらどうなるのか、まだ想像しきれない。
総司令官レイチェルの指示通り、まずは関東軍の手先を南へ進出させた。


イバラギCN 新河エリア

 イバラギの最西端に位置するエリアに多くの兵達が集う。
ここから南エリアはもう敵陣のサイタマCNだ。
その先、スレスレの地域いた関東兵。土地勘あるリーダーの
ワタルはいつもと違う表情で部下達に指示をだしていた。

「じゃあ、それぞれ配置に付け!」
「第2部隊、異常なし!」
「第3部隊、準備OK!」
「第4部隊、いつでも出撃可能!」

他のイバラギ兵隊長もタンク内から応答。
近場までなら地理情報は知り尽くしているから道順は問題ない。
当然、道路沿い以外からも続けてチバ兵も乗り出していくが、
レッドは今回乗り物を使用して向かう事になった。

「ここから俺はタンクに乗り込む」

チバCN持ち前の戦車で、トオル達が念入りに整備してくれていた物だ。
曲がりなりにも一応、今作戦の隊長。
自分の乗り込む守りの器を眺めている。
簡単に失わせるわけにはいかない。
そう胸にきかせ、早速乗り込もうとした時だった。

「レッドさん」
「はい」
「お気をつけてください、あなたは作戦のかなめです。
 無理をせずに、周りの方を頼りにして下さい。
 私達もいるのですから」
「はい!」

レイチェル総司令自ら、前線寸前まで出迎えてくれた。
正念場だけあって、自身の目で現場を配っているのだろうか、
真っ直ぐな眼差しで自分を見つめる。
ここすら安全とは言えないはずがおかまいなしに期待をられて直立。
美しい顔立ちにうっとりしていられない状況を不謹慎に感じる
横からカオリに突かれた。

「ほら、行くわよ!」
「12時の方向へ前進! 目標、トウキョウCN!」
「了解、ただちに進軍する!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ライオットギア、タンク、ヘリ、ビークルと白兵が押し寄せてゆく。
こうして、関東はトウキョウを目標に進軍を再開。
世界はどうしてこのようなものに成り立ったのか知るために、
機械と人の交える並列が進み始めていった。


トウキョウCN 地下50階牢獄

「セレッ!?」
「ヒデキ!?」

 エレベーターから入ってきたのは間違いなくセレーネ本人だった。
意外な所で再会してボクの顔肉が引き締まる。
ボクと同じく、何かやらかして送られたのか。
話をしたくても当然まともに立ち会える状況じゃない。
彼女はそのまま引っ張られて暗い奥へ行ってしまう。
思いもよらないところで正面向かいの男が発言を始めた。

「時は満ちた」
 (またなにか言ってるよ・・・)

対の牢獄にいる男の言葉に、ボクは無表情。
誰も得しない妙言は今に始まったわけではない。
檻に入れられて何ができるんだと無関心に細目で観ていた。
しかし、今回はいつもと異なる行動もとっている。
ゆっくりと立ち上がり、鉄格子の前まで進んでいく。

「ちょっ、アンタ何を!?」


スパッ ガラガラガラ

男は帯刀で檻を真っ二つにし、堂々とした風格で這い出てくる。
どこからか、身長と同等といえる程の黒い刀を忍ばせていたのだ。

 (どこからあんな物を・・・?)

背中からスルっと出てきた様にも見えた。
まるで、ボクが想像していた質量収縮的なカイラルケース。
妄想交じりな企画が現実に目の前で起きたのだ。
なわけないと疑っていると、彼は誰かと連絡をし始めた。

ピピッ

「おい、聴こえるか?」
「「ええ、予定通りで何よりです」」

誰かと連絡をとっている。
数分後、男はここから脱出すると言う。
身に付けている物は連行前に全部没収されるはずなのに、
どういう訳かこの人は通信していた。
こんな余裕そうにのうのうと仲間とやりとりしているなんて、
今までわざと捕まっていたのか。
置き去りな立場にいるのに不快に曖昧あいまいな状況が何なのかと迫る。

「一体なんでこんな・・・あんたは何が狙いなんだ!?」
「狙い? 来たるべき時が来ただけだ」
「もうそういった言い回しはいいって!
 どうやって武器を隠し持ってなんで今から出ようとしてるのかって
 ストレートに聞いてるんだ!」
「今、地上に大いなる火のうねりが生じている。
 俺達は人間の根源を更に昇華するため、種油を満たしにゆく」
「?????」

ちょっと何言ってるのか分からなかった。
まるで、人間性を根幹とした風に戦闘論をさとしている。
詩人というワードをヒストペディアで観た気がする。
ただの気取り屋なのか、狂言師なのかはともかく
戦いで満たされる世界、現状からさらに戦争を起こすというのか。
男の妙なポーズをしれっと見ていた時だ。


ドゴン

「うわあっ!?」

破裂音と共に1機のライオットギアらしい色彩の輝きが伸びてきた。
開けられた壁の穴から侵入してきたのだ。
もちろんビックリしたのは独特な擬音が口から出なかっただけあって本当。
機体から1人誰かが降りてくる、その姿を見たボクはよく知っている
トウキョウ幹部、Noの1人だった。

「ここにいましたか」
「遅い」
「ゴールドペインの潜伏先が意外にも離れた山岳地帯にまで潜伏して、
 トットリにまで遠く及んでいた様です」
「まあいい、今上は各CNに包囲されている。
 看守も外部に回され、ここどころではない。脱出するなら今の内だ」
「アーゲイルって・・・No5が!!??」

2人の話も聞かずに、金色の機体と幹部に見入って
口を開けっ放しに一時も視線が離せなかった。
こんなタイプの機体など、今まで見た事がない。
どう見ても塗料の質には思えなく、価値のある物質で有名な純金と
あらゆる鉱石を頭に入れてきてすぐに理解できたからだ。

「なななんでアンタがこの人と!?
 それに、何!? この金々きんきんな機体は!?」

2人の会話からして、この機種の所有者だというのは理解できた。
でも、共通点がバラバラすぎて接点の由縁がどこから?
トットリ鉱山の岩盤が異様な脆さだったとか変な事を言ったり、
ゴールドペインが一度地中に潜り込んでいたからとか。
それはともかく、描写を省いて監視のPDも全て破壊した。
今こそはと、それに乗れば余裕でここから逃げられるだろう。
なんだか別世界の人間が救世主みたいな風格もありそうと思ってしまう。
そんな時、黒い方の人が言い出した。

「・・・来るか?」
「ハッ!?」

ボクは男に勧誘された。
逃げるなら今の内と言いたげなその手をジッと見つめてしまう。
脱出できるチャンスはもう今しかないだろう。
彼の持論などどこ吹く風で、これからするべき決断を迫られていた。

 (ボクは・・・・・・・これから)


サイタマCN 夏日部エリア

 関東、東北軍が踏みしめた場所、サイタマCN。
ほとんど騒音を出さずに人と機械の足音だけでコマが進んでいた。
トウキョウの同盟国であるCNの1つを攻略する段階についたものの、
何かおかしな雰囲気を感じつつある。

「敵影・・・まったくありません」
「いつもなら、CN境に兵を見張らせているはずだ。
 赤外線センサー、人っぽい熱源も反応ないわ」
「敵影がまったくないだと・・・?」

偵察兵はおろか、駐屯地も人っ子1人いなかった。
小川の先に台地が見えて、地理情報ではそこからトウキョウ内。
地面にレーンが敷かれているが、ビークルの通り跡らしき物もある。
勘づかれて、中央区へかくまってもらったのか。

「他方面からの連絡聞いても、同じ風景だと。
 市民街もあるはずだが、その気配もなしか」
「銀色のチューブが各地に設置されている報告が上がってきています!
 内部を見たところ、移動式である可能性があり、それで逃走したと推測」

こうやっていざ攻められても十分対策をとれるようにしていたのだろう。
どのCNであれ、市民置き去りなど普通はしない。
崩壊したなら別だが、どこかが攻撃とかそんな情報も聞いていない。
エリア状況について総司令官の通達が入る。

「「待ち伏せの危険性もあります。
  時速30kmで定速し、遠距離からの砲撃危険性をもちつつ
  そのままトウキョウCNの手立てエリアに向かって下さい」」
「了解!」

おそらく、防衛設備を現地の方で増強させて待っているはず。
例の人間ソックリのロボットもいるらしく、被害を減らすために
一網打尽を狙っているに違いない。
その少し間が空いたエリアに肩透かしを憶えつつも、
得体の知れなさに身を引き締めさせてさらに追進して
トウキョウCNへ隊を進めていった。


トウキョウCN上層階 軍事執行局一室

「・・・・・・」

 グラハムとヘスティアは画面の項目に注視を続けている。
端末から突然開かれたヒストペディアを閲覧していた。
関東から仕掛けられたハッキングによって暴かれてしまい、
トウキョウ全人1人1人の個人情報があらわにされる。
No1のみが管理する最重要項目も周囲に閲覧可能となっていた。
部下のニトベが一部の兵器が起動できないと報告。

「ガレオス、操縦不能・・・全艦動きません」
「全艦もか?」
「はい、電子制御全てに反応がなくチャージャーがかからずに」

飛空艇機能が抑えられてエンジンが起動しない。
元から手動モードを備えていなかったので、統制論理機関からまとまった
規格元を一から見直すために探していた。
しかし、せっかくの機会で確認と見るに、側近達は唖然とする。
そこには何も表記されていなかったからだ。

「どうなっとる、システムベースが全部空ではないか!?」
「データをまるごと別の場所に移したのでしょうか?」
「かもしれんな、統制論理機関にも端末がある。
 軍備計画局もNo5が行方知れずで確認がとれん、若造が」
「No1は今、どの様に?」
「最上階は立ち入り禁止としている、関東軍が来とるというのに。
 それにしても、我がTOPは謎が多すぎる・・・」

誰もがTOPの素性について疑問をもたずにはいられないのも無理はない。
歴代の司令官リストをどれだけ見渡しても、
総司令官の前任者の名前が見当たらない。
No1の先代を誰も知らなかったのだ。
グラハムがNo2に就任した時にはすでに彼がいて、
上層階でも関係者を見かけた事が一度もなかった。

「くっ!」
「まだ治まらんか?」
「はい、ですが大丈夫です」

頭痛がするヘスティアを気にかけたグラハム。
彼女もだいぶ前から頭が痛みだして、
薬すらも効かずに原因不明の症状に見舞われていた。
とはいえ、事態だけに一隊長が抜けるのは統制がとれなくなる。
今こそ大事な時と苦痛を無視して検索を続ける内に、部下から連絡が届く。

ピピッ

「敵兵、手立エリアに侵入した模様!」
「関東軍か、ガレオス無しでも十分対抗してみせる。
 後は作戦通りに動け、私も後で向かう」
「イエッサー!」
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