Condense Nation

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3章 東西都市国家大戦編

第36話  絶対包囲

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オオサカCN 七尾エリア

「ウオッチャアアアア!」

ゾバッ

「ングフッ!」

 オオサカCN東部で近場のトヤマ兵と交戦中だった。
相手は中部の者達。
海岸から侵入されて内陸まで入り込んだ関東軍を食い止めるべく、
廃墟を背に列を成して交えていた。
オオサカ兵が防衛で舞䢮と漸萬の近接武器を用いて対抗していたのだが、
ここのエリアやって来た敵は遠距離攻撃を行わず、
強引に接近戦に持ち込もうとする。
銃が効きにくいと分かって、向かって来ているのが明らかだ。
そんな御近おちかづきはオオサカ兵にとって願った展開なのだが、
今回の戦闘は規模が違いすぎた。

「ここから先には進ませへん、ワシらの土地を荒らすモンに
 伝統たるイカヅチを味わってもらうわいや!」
「ぜってぇ行かせんからのゥ、歯食いしばれやァ!」

単純に数が多く、近接に長けたこっちでも掃ききれずに
物量と物量の臨界を目の当たりにして気を保たせて迎える。
先の知らせで応援に来たリキもたじろがずに挑んでいるが。

「右から1人来てんぞ!」
「ドラッ!」

味方と背中を入れ替えて錯覚斬り。
陣形を機敏きびんに変えて武器の懐を見られないように立ち回る。

ガサッ

「左にも!?」

白黒の格子模様をした軍服の異なる兵もいたのだ。
左から飛び出してきた1人のナガノ兵。
リキが目下の相手に漸萬を振り下ろす。

「ふんごおおおあぁぁぁぁ!!」

バラララッ

「ジュポォホッ!?」

ヘッジホッグによる分散する釘弾を至近距離で受けてしまう。
そこへ近くのオオサカ兵が反撃、一帯の相手を討伐した。
だが、先の不意打ちも非常に痛手をこうむってしまい、
巨漢という盾も金属塊の前に崩されていた。

「すぐに手当てする、こらえろ!」

細長い弾を抜いてグリーンテープを巻く。
そう直ぐに傷が治るわけでもなく、
痛みと共に命の先出となる気を大きくさせようと説得。
しかし、手当と裏腹に様子はかんばしくなく静かな状態で、
普段とは違って小声に変わり、何かを言いかける。

「「堂々巡りなんぞ、戦場いくさばにゃ通用せんわぁ・・・」」
「お前らしくないぞ! 気をしっかりともてェ!!」

豪快さが仇となって隠し玉を見舞われる。
険しかった顔の表情も緩くなり、こんな言葉も初めて聞く。
人ではまともに耐えられぬ瞬間火力に近江で名を上げかけていた
オオサカ兵は漸萬を握ったまま倒れてしまった。



リキ ロスト



オオサカCN 拠点

 関東兵がまばらに侵攻してくる中、
最も多く押し寄せてきたエリアはここ近域だった。
司令部はモニター画面の赤い点の数を減らすべく、対応に四苦八苦しくはっくする。
オペレーターがオオサカエリアにいる兵達に戦況を聞き出す。

「状況は少々押され気味の様です、詳細を報告して下さい」
「「こちらヤエ、オオサカエリアより関東軍と交戦中!
  その内の約1700人に及ぶ分隊がオオサカ湾から侵入。
  ここ本部に向かっている模様!!」」
「第1はどないした?」
「タイムアウト、連絡ありません」

近江の先陣と精鋭部隊の戦況が不明。
オオサカ湾で待ち受けていたはずのギンジ分隊の返事はない。
ここからではサイリンクでも範囲外で届かない。
本来、関東へ侵攻しようとした第1部隊だったが、
出航前に関東軍が先に侵入してきてしまった。
オオサカの烈剣れっけんですら、報告の1つも上がって来ない現状に
オペレーター達は不安な顔になる。
だが、キンイチは音信不通になったエリアを観てピンと思いつく。
ギンジと連絡がとれないのは、ロストされたからではない。
声を出せない環境にあったからではとかんづいたのだ。


オオサカエリア 天玉寺

ドドドドドド ザッザッ

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 無数のライオットギアとタンクと兵士達が歩いている。
第1部隊、ギンジ、ミツルギ、シンヤその他分隊は見つからないように
白い建物の中に隠れていた。
屋根裏の天窓から行進する関東兵を虎視眈々こしたんたんと観るオオサカ兵。
相手の数をしっかりと見計り、総当たり戦では不利と悟ったギンジは
敵侵入前に隠居命令を出していた。
他の部隊もすでに連絡を受けて攻撃される前に撤退。
地元をずかずかと踏まれても堪えて兵装をしっかりと目に焼き付ける、
わずかに聴こえる会話も拾って特徴を得ようとした。

「あれぇ、ここらは関西でも有数のCNのはずなんだが?」
「ビビッてトンズラしちまったか?」
「昼間なのに欠伸あくびでる、夜に来なくても楽勝だな」
「多分、放棄して逃げたんだな。黒兵情報も当然だが、
 美味しそうな資源もついでにいただいちゃいましょう♪」

随分と余裕のある発言ばかりする関東勢。
鼻に着く言動を抑え、地元を踏み尽くす相手に堪忍かんにんし続けてゆく。


 場面は再びオオサカCN拠点に戻る。
本部の目は反応なくも消えていない味方の点滅に取り乱していない。
通信不明の場においても決してうろたえる事なく次に移ろうとする。
ギンジ達は生きている、そう確信したキンイチは
部下達にある作戦を遂行すべく、指示を出した。

「すぐに拠点から退却、全員ここから脱出せい!」
「各隊員に告ぐ、すぐに拠点から離れるように!」
「はいッ!」

部下達は高い反射で返事をして、行動し始める。
CNの要である、ここ本部を放棄するというのだ。
それ程まで、総司令官の号令は信頼性のあるものだと理解した
メンバー達は即座に実行へ移された。


1時間後

 しばらく時間が経った後、関東兵はすでに拠点の前に
足を踏み入れていた。待ち伏せているのではと、角待ち対策で
グレネードのあぶり出しを狙ったが何も反応がない。
数人の偵察兵からの報告も異常はないと言う。

「北側、クリア!!」
「南エリアもクリア!」
「東、クリア」
「西もクリア・・・」

敵はおろか、人っ子1人も遭遇しない。
四方全てから攻め入ったものの、コンタクトがなく
東西南北全てを占拠しても、肝心の敵影の1つもなかった。
逃げられたようだ。

「拠点を放棄したのか?」
「情けねえな、オオサカはこんなモンだったのか」

敵はいないとふんで、構えていた武器を腰に取り付ける。
拍子抜けした関東兵達はオールクリアのサインを出し、
もう大丈夫だろうと無線で本部に連絡しようとした時だ。










空城くうじょうけいって知っとるか?」
「うおああああああああああああああ!!」
「!!??」

1キロ平方外側から現れたオオサカと同盟CNの兵達が
オオサカCN拠点に向かってやって来た。

「囲まれたか!? 退けェ!」
「隊ちょ、背後からも敵が――」
「せいっ!!」

ビリリッ スパッ

「ぎゃああ!」

銃弾をかわしつつオオサカ兵が接近して舞䢮を振るう。
銃器を身構えても、刃線の軌道が素早くて見切れずに粛清しゅくせい

「あー、あんなに固まってりゃ、良い的だわ。
 みんなー、200m発射でいくわよ!」
「練習の成果、再びィ!」

バシュッ  バシュッ

そして、男兵の隙間から女兵達が飛燕を放つ。
今度こそ身を乗り出し過ぎずに作戦ラインを保って打つ。
オオモリ司令の教育より、150m越えは達成できて今回に活かした。

「遠距離攻撃する敵もいる!
 ヘッジホッグの射程距離では・・・うあああぁぁぁ!」
「こいつらは・・・弾が当たらないんだ。
 タンク、機体班なんとかしろ!」
「「第56部隊、砲撃・・・斬られたと」」
「は!?」
「「だから弾が当たらないんだ・・・だから、その・・・何というか。
  ひひぃ、グレネードでなんとかしろぉ!」」

別働隊の戦車が砲弾をまるごと切断された報告があったようで、
引け腰になった工作兵が来てくれないと言う。
前線放棄し始めた部隊も次第に現れて援護に来ようとしない
もう訳が分からない、今まで飛び道具による瞬間決着が全てと思っていた
事が接近で詰められて成す術もなく青白いスパークが飛び散る。
目でどうにか捉えようとしても色はそれだけではない、
さらに何か桃色の物体が飛んできた。

ベチョ ドドゴォン

「ハァァゴオォ!?」

キョウト兵の放ったチェリービーの粘着弾が引っ付き、
グレネードもろとも連爆。
関西の奇怪な兵器に、対抗策を思い付く間もなくあらゆる破片が散る。


「関東兵、3割減!」
「成功や、ようやった」

といった様子で関東兵の手段を抑えてゆく。
内に誘い込ませて周りから包囲。
敵がいなければ武器は構えない余裕をもたせてからの不意が
キンイチの狙っていた戦法だったのだ。
ギンジもその作戦を発令すると判断して、あえて内側まで誘導させて
仕掛けた遠近法により、あっという間に囲まれておつ
まさかとうろたえる関東兵の中心に向けて注がれていく。
いつの時代でも持て余す者は気も抜けて空位にはまってしまう事がある。
火を付けるには余りにも大きすぎる囲炉裏いろりが出来上がり、
混戦はそれからしばらく止む事はなかった。


トウキョウCN 防壁外周

「異常はあったか?」
「「特にありません、監視カメラでも侵入された形跡がない模様」」

 グラハムがニトベにトウキョウ外地の状況を聞きつつ視察。
関東各地で大きな動きを察知してここでも対応していたものの、
敵がやってくる気配すらなかった。
No2が直に現場に出ても脅威度がなく、遠くで爆撃音くらいしか聴こえず。
部下の前でも拍子抜けしたくなる感じだ。
突然と交戦が始まった理由について調べていると関東と関西がお互いに
一斉蜂起したらしく、目標を探している様子もあると報告を受けた。
何かを引き金に起きた事と推測するが、根拠は不明。
対してこちらは無視されている風と言いたくなる程に静かで、
まったくアプローチを受ける節もなかった。
アメリアがやって来た。

「守備はどう?」
「完全無欠モードだ、ここを攻めに来られる猛者もさはおらんようだ。
 まったく張り合いがないな」
「慢心しないでよ、同盟から地方の規格もますます増強していて
 兵力もトウキョウレベルに近づいている。
 発達は目に見辛く視認性が低く、気付けば超えられるケースもあるわ」

何度こんなやりとりをしたか、ほとんど被害も起こらないトウキョウ内で
CNの王者ぶりと言いたげに見下ろすだけだ。
ただ、No3も文句を言いにきたわけでなく、
同様に地方の流れ弾を気にして外地確認ついでにここへ来たようだ。
エドウィンやアーゲイルの若造組も内地を見張らせていざという時に
備えさせていた。
ガレオスは今整備中だが、空域はさらに敵影の気配もなく虚しさのみ。
私は余裕を見せつつアメリアに近況をうかがう。

「ぬかりの無さはどこの所属に劣らず、我々が一番。
 現在、軍事執行局は全部隊活動している。
 こうして私自身も現場に出向くくらいだからな」
「殊勝な心掛け結構な事、相変わらず総動員がけで関心するわ。
 リソース考慮なくバタバタと倒れなければ良いけど」
「そうだな、また死角から意外なのが入ってくるかもしれん。
 まあ、来たら来たで入念に迎えて相手してやるまでだ。
 で、下水道侵入の件についてはどうなった?」
「・・・手応えがないわ、敵性が来たのは確かだけどトウキョウ規格が
 丁寧に分解されて攻略された根拠が不明のまま。
 あの捕縛した7人もここに来た痕跡もなく未だに証拠不十分」

あれから地下水道侵入事件は未解決のままである。
軍備計画局の主任も行方知れずでトウキョウに空けられた穴を埋めて
敵性CNを追撃する予定もなくおしまいだった。
疑惑のNo7もキューブセクション区画で何かやらかしたそうだが
ロストされて真相が闇の中、関与が途切れて辿れない。
これで外周防壁、トウキョアイト管理者もいなくなってしまい、
CN法でNo1が引き継いでかごはそのまま置かれてゆく。
口には出さないが、統制論理機関がより荘厳そうごんになった感じで
歌でアプローチしてきた軽さが無くなり、組織が濃くなったと思う。

「結局、No7と因果関係はなかったわけか。
 代行もNo1が行っていてアナウンスもより固くなったと聞く」
うれしそうね?」
「あんなチャラチャラした奴がNoに就くのが気に入らんだけだ。
 土権といえば、交通局も尻叩きに外地を見直させて補正をかけたが。
 エドウィンはもう封鎖を終えたらしいが、どうするつもりだ?」
「回答保留にして別のラボリを優先するつもり。
 次は内地の兵力を強化改良を施す予定」
「それで今度は3機の超大型を造ったのか?
 正直、女の思いつく規格にしては壮大だぞ」
「性別なんてどうでも良いでしょ! 他地方だってタンクや人型もあって
 無数の砲撃を防ぐモノが要るわけだし。
 ガレオスもA.D50年からコスト軽減で削減してきたから」
「それでアルビノ肌を採用する案も想像を超えてるが。
 特異体質採用など健康診断の概要すら考え直す必要もあろう。
 サイタマ、カナガワ・・・そしてうちらから1人ずつ選出したわけか。
 まさか、私の管轄からも引き抜くとはな・・・ニトベも気の毒に」
「No1からの決定事項よ、現段階でNo5のAURO技術が最も良く、
 無線機動もより円滑に動かせるようになったわ。
 新世代技術こそ他を凌ぐ何よりの要素、ただの若造だとみくびってると
 本当にアッサリと立場を抜かれるわよ。
 わずかな資源による模索に、必要不可欠って言って頂戴ちょうだい
「ふん」

小難しい話に鼻で返事。
No3が造った超大型機体もそろそろCN地上に配置するらしく、
今度は身内固めに勤しむという。
こんな面積の狭い区画に50m級の機体を備えるなど本末転倒で、
またしても人をどかさねばならない場所が増える。
そして、古宿にもさらに新型を設置して今後に備えてゆく。
これもまた無人型でPDと同じAI構想を搭載しているそうだ。
上層はただ、規格の確認連続で知識を優先。
兵器も着々と進化を遂げてどこまでも精密化し、
終わらぬ競争に軍事執行局の者達は遅れととらないよう
肉体を引き締めていつでも戦えるようにしなければならないのだ。
ヘスティアが報告。

「カナガワCNから沿海に中部の戦艦が観られたとの事」
「分かった、1分後にそちらに向かおう」

南部に敵影が観られたようで、次はそちらに移る。
少しの間、仁王立ちしながら外の世界を眺める。
すでに理解していたが、この世界は山が多く急な地形ばかり。
クリフをどうにかこちらに連れてきたのは良かったものの、
登るべき斜面の質が変わってついていくのも気苦労が絶えず。
チバにいた時も高さのある足場ばかりがこの太い脚に応えさせられ、
そこからトウキョウに鞍替くらがえしても山なり構成は同じなのか。

(どんな理由があろうと結局、動くのは人だ。
 技術や文明がどこまで発達しようと築き上げる手がなければ成さん)

ミシミシ

バトルスーツの金属繊維が鳴り、右手を握りしめる。
だからとはいえ、国の塊は強固な程崩壊もしにくい。
500配置している対空速射砲、200製造済みのGAR。
そして、3000部隊と他を圧倒する兵を前に、
トウキョウを覆いつくせる程の絶対包囲は一例すらありえないのだ。
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