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3章 東西都市国家大戦編
第33話 静線
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ニイガタCN 南魚池エリア
低温の世界に潜入したチバとシズオカの一同。
ニイガタCNの外地と思われる位置端で一度止まった。
雪も数m降り積もっており、廃墟と入り混じった障害物の1つと
成り立っているくらいだ。暗さと冷ややかな空気に恐ろしさを感じる。
レッドを含めた30人部隊で報復しに来たと言いたいが、
あくまでも黒兵調査のためでシズオカの彼らのためではない。
しかし、今のところ敵影反応もなく安全そうな場所に着いたが、
シズオカ兵は油断禁物と警告した。
「気を付けて下さい、ここに来たからにはわずかな音すら危険行為。
彼らは静まり返った冷徹な空気の従者そのものです」
「もう暗くなるけど、夜間の侵入は無理なのか?」
「ダメです、彼らの察知力は普通ではありません。
昼夜関係のないニイガタで、我々ではなおさら夜間は不利になるだけです」
本当に不可解な能力をもつというここの兵に背景と同じ感じもする。
相手は明るさに関係なく位置を特定して狙撃をしかける技術をもつという。
理由を聞いてもよく分からずに、彼らの表情を読み取るだけ。
ならば、忠告に従って一夜を明かそうと決めた。
「そうか、なら今日はここらで休憩しよう」
視界的に一方不利なこちら側で夜間は動き回るなと言う。
レッドは待機する場を作ろうと隠れられそうな廃墟があるのを見つけ、
光がもれない場所を選んで進行を一度止めようと決める。
ヘリの着陸時間を見誤ったのも意外だが、数少ない空の足を使えて
ナガノの人達にも都合を作ってもらっている。
身をもって思い知ったシズオカの警告に従った方が身のため。
夜明けを待ってから行動しようと、メンバー達に指示したが
チバメンバーから意外な声が飛んできた。
「おいおい、勝手に決めてんじゃねーよ」
「あんまり、俺達を侮ってくれるなよ?」
一部のチバ兵4人が聞かずに反対する。
こんな時間帯こそ向かうべきだと、夜の得意分野達が認めなかった。
「ここは彼らの意見を尊重しよう。
こんなに暗ければ不利になるのはこっちだ」
「暗くて動きやすいのはこっちもおんなじだろ?
どっちかっていうと、俺らは夜型に特化してんだ。
今行かなくて、いつ行くんだよ?」
「レッドよ、最近お前先陣切って頭ぶってるけど、
少しは自重して俺らに任せるって事もしろよ!」
「そうじゃない、経験者の彼らの言う通りにした方が良いと言ってるんだ。
相手は空気環境に鋭い連中らしく、夜だと逆に危険なんだ」
「んじゃ、その経験上で夜の突破口を探れねーの?
空気ウンタラってんなら昼行ってもいっしょじゃねーか」
「それは・・・」
「まあ、人なんざ暗闇で自由に動けねえのはおんなじだし。
ないならいーわ、俺らだけでも行こーぜ!」
案を無視する彼ら、闇慣れを過信しているのだろうか、
静止も聞かずに4~5人のチバ兵達が先に行ってしまった。
同じCNでも同じ意向ばかりの者だけとは限らない。
そんな彼らも、今まではクリフが面倒を見てきた。
能力ある自分でも、全てのメンバーが言う事を聞いてくれるわけではない。
ワタルも似たような事を言っていたのを思い返される、
実力だけでの統制なんてどこかで綻びが生まれるものだ。
今、力ずくで引き留めて騒ぎを起こせばさらに危険。
この思い上がりが後の場で思い知るなど予想すらできなかった。
残った者達で、死角になりそうな場所でテントを張り、
交代で見張りを立てながら眠りに着く。
こちらに来てからはやたら気温が低く、関東とは違って寒さも増している。
やたらと焚き火も付けられずにランプだけで辺りを照らす。
つい立ってばかりいて束の間の休憩も忘れかける。
黒の空間を見てると、1人の女シズオカ兵から飲み物を差し出された。
「お茶です」
「あ、ありがとう」
両手で受け取るレッド。
出発前に駐屯地で作っていた物をくれるそうだ。
この薄暗さでも分かるくらい緑がかった飲み物で、
熱くて一口飲んだだけでも体が温まる。
ゴクッ
「これは確か・・・グリーンティーっていうんだっけ?」
「グリーンティ・・・ええ、緑茶です」
「なんという渋々感、こういったお茶もあるんだ。
葉っぱを凝らす製造がシズオカの特徴なんだな」
「広がる煎葉は私達の誇りでもあります。
私達の地元は緑生産業も盛んに行っていて中部でもよく飲まれています」
「なるほど、ここら辺はずいぶんと高い山ばかりで関東とは違うと思う。
イバラギ兵から聞いたけど、中部は分裂したとか」
「ええ、元はここニイガタから始まった出来事がありまして
まとめ役だったアイチから分割されたと聞きました。
そして・・・私達シズオカも追従していったんです」
「あんたらシズオカもニイガタと?」
「はい、細かな理由は定かではありませんが
常に隣り合わせだったトウキョウに・・・」
「それで見放されたのか? じゃあ、あんたらも狙われてる恐れがあるな。
あのトウキョウがすぐ東にあるくらいだから大変なんじゃないか?
チバもあんな目に遭ったし、今は市民も同盟CNに移ったらしいけど」
「トウキョウに対する不安感もかなりありましたが、
いつも中部の後ろ盾のおかげで守ってもらっていましたね。
このお茶だってラボリ出動に必ず持参したり、元気だけはあります。
確かにそんなシズオカでも、有望な人がいましたけどね。
オオニシという人が・・・」
「そうなのか・・・その人は?」
「ロストしました」
「ああ、すまない」
つい無神経に放った自分の質問を遠慮なく許すシズオカ兵。
敵対する仲にも関係なく、コミュニケーションをとれる。
非同盟国でも、反目なく団らんとする事ができるのだ。
同族CNですらいざこざを起こすくらいだから、
敵性という言葉も意味も設定しているのが分からない。
こんな戦争を早く終わらせる意志はますます強くなる。
ほんのわずかな憩いの場がここにあるのもそこそこに、
目が活かせる夜明けを待ち続けていた。
数時間後
「畜生、どこに居やがる!?」
先方隊は窮地に立たされていた。
真夜中により、光がほとんど射さない暗黒のエリア。
冷たい氷と壁ばかりが光と視界を遮って、ろくに進められない。
案の定、攻略方法もろくに見つけられないままに、
彼らは観えぬ空間から襲撃される羽目になってしまう。
こっちは見えないのに、奴らだけはきちんと狙って
誰の視線なのか定かではない互いの姿をさらさない対戦ともよべない間、
長い銃口がチバ兵達にそのまま静かに向けられる。
バシュッ バシュッ ドシュッ バシュ
「イイィハオォ!?」
「ゴガアッハァ!?」
カーポを貫かれる。
暗闇慣れなど口先三寸で、目標の姿すら捕捉できずに攻撃を受け続ける。
すぐ側にいると思い込んで走っても誰もいない、弾が当たらないように
近くの壁にカバーしたつもりでも、どこかしらの角度から撃たれる。
交戦が始まるどころか相手の姿をまったく目にすることなく、
先方のチバ兵達は全員ロストされてしまった。
6:00
薄明が訪れて、少しずつ光が地上に差し込んでくる。
あれから夜間の奇襲もなく、無事に過ごせたようだ。
予定通り準備を済ませて行動を開始した。
「時間だな、それじゃあ皆、出発しよう!」
メンバー達が腰を上げ始めてラボリ再開。
目的はあくまでも黒兵情報を手に入れる事が最優先課題で、
できるだけ派手に交戦はしたくない。
エリア中央に足を着けずに端の自然や氷に沿ってゆっくり進む。
約3km移動したところ、前方に廃墟群があった。
構造は氷混じりで、壁に多数の穴が見られる状態でそびえている。
通路として開けられているのだろう。
「もう、ホットゾーンに入ってるな。
それにしては寒いし、建物と氷だらけだ」
「ニイガタ兵は基本、大きく移動する事をしません。
特にスナイパーの割合が高めです」
「ここの兵達も狙撃者ばかりなんだな。
なら、その1発を寸前で避けるしかないな」
「えっ!?」
こういった場所は大抵、やみくもに動き回ったりしない。
通路を曲がった瞬間発砲してくるのが通常だろう。
そこで、自分はシズオカ兵の彼らに“わざと音を立てる”作戦を頼んだ。
「つまり、空砲で大きな音を出してニイガタ兵の気を引いてほしい。
その隙に俺がクリアを狙う」
「そんな・・・危険ですよ!?」
「もう経験済みだ、俺ならできる」
弾避けで囮役をかって出るのはもはや恒例となったレッド。
詳細も知らないシズオカ兵は言われるままに試してみる。
定位置まで着いた後に、わざと空砲を発射すると。
パァン
「・・・・・・」
音に気付くニイガタ兵。
しかし、反応しても監視している向きは変えていない。
チバ、ニイガタ陣営にとっては静かな氷結地帯のままだ。
「動きがないようだな・・・慌てる気配もない」
「「恐らく陽動だと気付かれているでしょう。
射程範囲の影響がないものには徹底的に無視するよう
本部より教わっているからです」」
狙撃には狙撃で返すのがニイガタの戦法だという。
彼らは発砲音でどんな種類の銃か判別し、状況に応じて攻撃できる
タイミングを非常に優先していた。
氷のごとく身を固めて障害にあたるものだけを排除。
場を足すようにずいぶんと距離感に精通しているようだ。
徹底的に定められた位置を保ち続ける強さがあるのは、
ホッカイドウと別の意味で異なる手段かもしれない。
「そういう事か、立ち位置を変えないトーチカみたいな兵とは。
こういった手合いなら・・・待機しててくれ!」
「ちょ、危な!?」
ならば、標的が直に観えていたら?
見えていない者を何かの能力で見つけているなら、わざとさらすのはどうか。
普通ならロスト願望と言いたげな行動をとって出方をうかがおうとする。
完全にこちらを向かせるため、自分は堂々と身をさらして誘い出した。
「俺はここだ!」
「・・・・・・」
バシュッ
弾道を見切って避ける。
この時ばかりはニイガタ兵はしっかり発砲してくるようだ。
目標がそのまま見えているなら撃つのは当たり前か、
射出先が分かれば相手の潜伏場所も見つけやすい。
クリフがいればもっと対処しやすかったのが悔やまれるが、
自分も訓練で多少の特定ができる。
この辺りはブロックのフェンスや荒れた茂みも多くあって、
捉えた方向をさらに回り込むようにしゃがみ歩きして探す。
(位置を特定しても姿を確認しない限り撃たない。
ここは結局同じで敵影の前触れに敏感なんだな)
さすがに遥か遠くの相手まで見える者なんていないだろう、
どんな感性をもつのか生き物らしいモヤモヤ察知も限界があると推測。
200mくらい離れて高所の丘から眺めてみる。
夜だったら本当に観えなくてシズオカ兵の助言のおかげで
動きやすくクリアな視界を確保できた。
いた、1人しゃがみ込んでエイムし続けている者がいる。
自分の位置も察知されているのか、どれだけ移動しても
相手も同じ方向を合わせてくる。
(射程範囲外なら無視するのか・・・なら)
あくまでもスナイパーは姿を捉えてから射撃する習性ならば、
別の感覚である音で判断させてから隙を生み出せないか考えた。
自分は側に落ちている石を拾い上げて、
ニイガタ兵のいそうな角の近くに投げつけてみた。
ポイッ ゴトッ
「!?」
やはり反応した。
機械と違って誰であろうと音か近づけばこうなるだろう。
流石に“自分の近場”の音には気にせずにはいられないのが人というもの。
それさえ分かれば、攻略がスムーズになっていく。
この機会を逃さずに、1人のニイガタ兵に向かって距離を詰める。
「こっちだ」
「!!??」
ガスッ
「むんぐぅ!」
グルカバーン刃裏でニイガタ兵の首を打撃する、
あくまでも命まで奪うような事はしない。
下手にロストさせても、再び報復の連鎖が待っているだけだ。
同様に、周辺の兵達を薙いで気絶でやり過ごすのみである。
(見た感じではただの偵察兵そのものだな、特殊そうな装置もなさそうで
どこにそんな能力を備えているんだろうか?)
率直に言っても外見から珍しくもない人としか思えない。
CNも割り振りされた環境や組織の中で生きるために何かを培って
時には異質なものが生まれてくるのかもしれない。
少なくとも関東の中で自分の出生に関する事が見つからずに、
もしかするとなんて期待もこことは繋げられない。
こんな事を考えている場合じゃないが、特殊な能力もまた色々なもの。
手錠を付けて応援を呼ぶ。
途中から待機していたチバ兵も行動を始めてクリアリング確保してもらい、
それから同じ行動を続けて待ち伏せする兵達を捕縛していった。
「一応、周りの敵は討伐したぞ」
「ええっ!?」
知らせを聞いたシズオカ兵が驚く。
彼らも自分の能力を知らない間で潤滑にラボリをこなしてみせた。
ついでに、先に出て行ったチバ兵達のカーポも発見。
予想はしていたものの、やはり夜襲の万能感など幻にすぎない。
何かを極めたフリをしただけで、現実はもっと大きな性質に塞がれて
身の程を知る前に人生すら終わってしまう。
特殊とは何か、環境に沿った能力も公にすると危ないだろう。
周辺のニイガタ兵もあらかたクリアして、
シズオカを襲った理由を聞き出そうかと思った時だ。
ピピッ
「「レッド!? あんた、今ニイガタにいるんだって?
至急グンマへ援軍に来てくれない!?」」
「突然どうした!?」
マリサが救援要請をしてきた。
まだ目的を達成していないのにもかかわらず、移動しろとの事。
よっぽど人手が足りないくらい劣勢の状況まで追いやられているのか。
理由を聞こうとした矢先、その次にはナミキ司令から連絡がくる。
「「チバCNへ、一度グンマCNに向かうんだ」」
「りょ、了解」
まとめ役からも今のラボリを破棄するよう言われる。
黒兵に関する情報は何も得られなかったが、
やむなくこれ以上の侵攻を切り上げて再びビークルに乗り込む。
数人のニイガタ兵は捕縛して連れていくという。
これで1つの敵討ちはできたかと思っていたが、
対してシズオカ兵達は無表情でずいぶんと静かな様子だ。
「・・・・・・」
「どうした?」
「ニイガタの実力は、こんなものじゃないはず」
「同盟時に訪れた時よりも警備が薄くなっていたような」
「もしかして、あの人はいないのか・・・?」
「あの人?」
先の戦闘で何か違和感をもっているようだ。
誰の事を言ってるのか分からず、彼らは身内事情の様に
シズオカ兵同士の会話で収束する以上、何も語らない。
確かに今回の潜入戦でニイガタの特異な性質の一片が観てとれた。
原因を探るどころか内地まで入る余裕もなく終わってしまったものの、
常識から外れた者を相手にするのはかなりの戦力や運が要るだろう。
黒兵の発見もないまま戻されるのも変だけど、今は関東内に多くの敵も
入り込んでいる。おそらく別働隊が他にいて強敵も来たかもしれない。
少し気になったが、今はそれ程知る必要もないので
一時撤退してそのままグンマCNへ向かった。
低温の世界に潜入したチバとシズオカの一同。
ニイガタCNの外地と思われる位置端で一度止まった。
雪も数m降り積もっており、廃墟と入り混じった障害物の1つと
成り立っているくらいだ。暗さと冷ややかな空気に恐ろしさを感じる。
レッドを含めた30人部隊で報復しに来たと言いたいが、
あくまでも黒兵調査のためでシズオカの彼らのためではない。
しかし、今のところ敵影反応もなく安全そうな場所に着いたが、
シズオカ兵は油断禁物と警告した。
「気を付けて下さい、ここに来たからにはわずかな音すら危険行為。
彼らは静まり返った冷徹な空気の従者そのものです」
「もう暗くなるけど、夜間の侵入は無理なのか?」
「ダメです、彼らの察知力は普通ではありません。
昼夜関係のないニイガタで、我々ではなおさら夜間は不利になるだけです」
本当に不可解な能力をもつというここの兵に背景と同じ感じもする。
相手は明るさに関係なく位置を特定して狙撃をしかける技術をもつという。
理由を聞いてもよく分からずに、彼らの表情を読み取るだけ。
ならば、忠告に従って一夜を明かそうと決めた。
「そうか、なら今日はここらで休憩しよう」
視界的に一方不利なこちら側で夜間は動き回るなと言う。
レッドは待機する場を作ろうと隠れられそうな廃墟があるのを見つけ、
光がもれない場所を選んで進行を一度止めようと決める。
ヘリの着陸時間を見誤ったのも意外だが、数少ない空の足を使えて
ナガノの人達にも都合を作ってもらっている。
身をもって思い知ったシズオカの警告に従った方が身のため。
夜明けを待ってから行動しようと、メンバー達に指示したが
チバメンバーから意外な声が飛んできた。
「おいおい、勝手に決めてんじゃねーよ」
「あんまり、俺達を侮ってくれるなよ?」
一部のチバ兵4人が聞かずに反対する。
こんな時間帯こそ向かうべきだと、夜の得意分野達が認めなかった。
「ここは彼らの意見を尊重しよう。
こんなに暗ければ不利になるのはこっちだ」
「暗くて動きやすいのはこっちもおんなじだろ?
どっちかっていうと、俺らは夜型に特化してんだ。
今行かなくて、いつ行くんだよ?」
「レッドよ、最近お前先陣切って頭ぶってるけど、
少しは自重して俺らに任せるって事もしろよ!」
「そうじゃない、経験者の彼らの言う通りにした方が良いと言ってるんだ。
相手は空気環境に鋭い連中らしく、夜だと逆に危険なんだ」
「んじゃ、その経験上で夜の突破口を探れねーの?
空気ウンタラってんなら昼行ってもいっしょじゃねーか」
「それは・・・」
「まあ、人なんざ暗闇で自由に動けねえのはおんなじだし。
ないならいーわ、俺らだけでも行こーぜ!」
案を無視する彼ら、闇慣れを過信しているのだろうか、
静止も聞かずに4~5人のチバ兵達が先に行ってしまった。
同じCNでも同じ意向ばかりの者だけとは限らない。
そんな彼らも、今まではクリフが面倒を見てきた。
能力ある自分でも、全てのメンバーが言う事を聞いてくれるわけではない。
ワタルも似たような事を言っていたのを思い返される、
実力だけでの統制なんてどこかで綻びが生まれるものだ。
今、力ずくで引き留めて騒ぎを起こせばさらに危険。
この思い上がりが後の場で思い知るなど予想すらできなかった。
残った者達で、死角になりそうな場所でテントを張り、
交代で見張りを立てながら眠りに着く。
こちらに来てからはやたら気温が低く、関東とは違って寒さも増している。
やたらと焚き火も付けられずにランプだけで辺りを照らす。
つい立ってばかりいて束の間の休憩も忘れかける。
黒の空間を見てると、1人の女シズオカ兵から飲み物を差し出された。
「お茶です」
「あ、ありがとう」
両手で受け取るレッド。
出発前に駐屯地で作っていた物をくれるそうだ。
この薄暗さでも分かるくらい緑がかった飲み物で、
熱くて一口飲んだだけでも体が温まる。
ゴクッ
「これは確か・・・グリーンティーっていうんだっけ?」
「グリーンティ・・・ええ、緑茶です」
「なんという渋々感、こういったお茶もあるんだ。
葉っぱを凝らす製造がシズオカの特徴なんだな」
「広がる煎葉は私達の誇りでもあります。
私達の地元は緑生産業も盛んに行っていて中部でもよく飲まれています」
「なるほど、ここら辺はずいぶんと高い山ばかりで関東とは違うと思う。
イバラギ兵から聞いたけど、中部は分裂したとか」
「ええ、元はここニイガタから始まった出来事がありまして
まとめ役だったアイチから分割されたと聞きました。
そして・・・私達シズオカも追従していったんです」
「あんたらシズオカもニイガタと?」
「はい、細かな理由は定かではありませんが
常に隣り合わせだったトウキョウに・・・」
「それで見放されたのか? じゃあ、あんたらも狙われてる恐れがあるな。
あのトウキョウがすぐ東にあるくらいだから大変なんじゃないか?
チバもあんな目に遭ったし、今は市民も同盟CNに移ったらしいけど」
「トウキョウに対する不安感もかなりありましたが、
いつも中部の後ろ盾のおかげで守ってもらっていましたね。
このお茶だってラボリ出動に必ず持参したり、元気だけはあります。
確かにそんなシズオカでも、有望な人がいましたけどね。
オオニシという人が・・・」
「そうなのか・・・その人は?」
「ロストしました」
「ああ、すまない」
つい無神経に放った自分の質問を遠慮なく許すシズオカ兵。
敵対する仲にも関係なく、コミュニケーションをとれる。
非同盟国でも、反目なく団らんとする事ができるのだ。
同族CNですらいざこざを起こすくらいだから、
敵性という言葉も意味も設定しているのが分からない。
こんな戦争を早く終わらせる意志はますます強くなる。
ほんのわずかな憩いの場がここにあるのもそこそこに、
目が活かせる夜明けを待ち続けていた。
数時間後
「畜生、どこに居やがる!?」
先方隊は窮地に立たされていた。
真夜中により、光がほとんど射さない暗黒のエリア。
冷たい氷と壁ばかりが光と視界を遮って、ろくに進められない。
案の定、攻略方法もろくに見つけられないままに、
彼らは観えぬ空間から襲撃される羽目になってしまう。
こっちは見えないのに、奴らだけはきちんと狙って
誰の視線なのか定かではない互いの姿をさらさない対戦ともよべない間、
長い銃口がチバ兵達にそのまま静かに向けられる。
バシュッ バシュッ ドシュッ バシュ
「イイィハオォ!?」
「ゴガアッハァ!?」
カーポを貫かれる。
暗闇慣れなど口先三寸で、目標の姿すら捕捉できずに攻撃を受け続ける。
すぐ側にいると思い込んで走っても誰もいない、弾が当たらないように
近くの壁にカバーしたつもりでも、どこかしらの角度から撃たれる。
交戦が始まるどころか相手の姿をまったく目にすることなく、
先方のチバ兵達は全員ロストされてしまった。
6:00
薄明が訪れて、少しずつ光が地上に差し込んでくる。
あれから夜間の奇襲もなく、無事に過ごせたようだ。
予定通り準備を済ませて行動を開始した。
「時間だな、それじゃあ皆、出発しよう!」
メンバー達が腰を上げ始めてラボリ再開。
目的はあくまでも黒兵情報を手に入れる事が最優先課題で、
できるだけ派手に交戦はしたくない。
エリア中央に足を着けずに端の自然や氷に沿ってゆっくり進む。
約3km移動したところ、前方に廃墟群があった。
構造は氷混じりで、壁に多数の穴が見られる状態でそびえている。
通路として開けられているのだろう。
「もう、ホットゾーンに入ってるな。
それにしては寒いし、建物と氷だらけだ」
「ニイガタ兵は基本、大きく移動する事をしません。
特にスナイパーの割合が高めです」
「ここの兵達も狙撃者ばかりなんだな。
なら、その1発を寸前で避けるしかないな」
「えっ!?」
こういった場所は大抵、やみくもに動き回ったりしない。
通路を曲がった瞬間発砲してくるのが通常だろう。
そこで、自分はシズオカ兵の彼らに“わざと音を立てる”作戦を頼んだ。
「つまり、空砲で大きな音を出してニイガタ兵の気を引いてほしい。
その隙に俺がクリアを狙う」
「そんな・・・危険ですよ!?」
「もう経験済みだ、俺ならできる」
弾避けで囮役をかって出るのはもはや恒例となったレッド。
詳細も知らないシズオカ兵は言われるままに試してみる。
定位置まで着いた後に、わざと空砲を発射すると。
パァン
「・・・・・・」
音に気付くニイガタ兵。
しかし、反応しても監視している向きは変えていない。
チバ、ニイガタ陣営にとっては静かな氷結地帯のままだ。
「動きがないようだな・・・慌てる気配もない」
「「恐らく陽動だと気付かれているでしょう。
射程範囲の影響がないものには徹底的に無視するよう
本部より教わっているからです」」
狙撃には狙撃で返すのがニイガタの戦法だという。
彼らは発砲音でどんな種類の銃か判別し、状況に応じて攻撃できる
タイミングを非常に優先していた。
氷のごとく身を固めて障害にあたるものだけを排除。
場を足すようにずいぶんと距離感に精通しているようだ。
徹底的に定められた位置を保ち続ける強さがあるのは、
ホッカイドウと別の意味で異なる手段かもしれない。
「そういう事か、立ち位置を変えないトーチカみたいな兵とは。
こういった手合いなら・・・待機しててくれ!」
「ちょ、危な!?」
ならば、標的が直に観えていたら?
見えていない者を何かの能力で見つけているなら、わざとさらすのはどうか。
普通ならロスト願望と言いたげな行動をとって出方をうかがおうとする。
完全にこちらを向かせるため、自分は堂々と身をさらして誘い出した。
「俺はここだ!」
「・・・・・・」
バシュッ
弾道を見切って避ける。
この時ばかりはニイガタ兵はしっかり発砲してくるようだ。
目標がそのまま見えているなら撃つのは当たり前か、
射出先が分かれば相手の潜伏場所も見つけやすい。
クリフがいればもっと対処しやすかったのが悔やまれるが、
自分も訓練で多少の特定ができる。
この辺りはブロックのフェンスや荒れた茂みも多くあって、
捉えた方向をさらに回り込むようにしゃがみ歩きして探す。
(位置を特定しても姿を確認しない限り撃たない。
ここは結局同じで敵影の前触れに敏感なんだな)
さすがに遥か遠くの相手まで見える者なんていないだろう、
どんな感性をもつのか生き物らしいモヤモヤ察知も限界があると推測。
200mくらい離れて高所の丘から眺めてみる。
夜だったら本当に観えなくてシズオカ兵の助言のおかげで
動きやすくクリアな視界を確保できた。
いた、1人しゃがみ込んでエイムし続けている者がいる。
自分の位置も察知されているのか、どれだけ移動しても
相手も同じ方向を合わせてくる。
(射程範囲外なら無視するのか・・・なら)
あくまでもスナイパーは姿を捉えてから射撃する習性ならば、
別の感覚である音で判断させてから隙を生み出せないか考えた。
自分は側に落ちている石を拾い上げて、
ニイガタ兵のいそうな角の近くに投げつけてみた。
ポイッ ゴトッ
「!?」
やはり反応した。
機械と違って誰であろうと音か近づけばこうなるだろう。
流石に“自分の近場”の音には気にせずにはいられないのが人というもの。
それさえ分かれば、攻略がスムーズになっていく。
この機会を逃さずに、1人のニイガタ兵に向かって距離を詰める。
「こっちだ」
「!!??」
ガスッ
「むんぐぅ!」
グルカバーン刃裏でニイガタ兵の首を打撃する、
あくまでも命まで奪うような事はしない。
下手にロストさせても、再び報復の連鎖が待っているだけだ。
同様に、周辺の兵達を薙いで気絶でやり過ごすのみである。
(見た感じではただの偵察兵そのものだな、特殊そうな装置もなさそうで
どこにそんな能力を備えているんだろうか?)
率直に言っても外見から珍しくもない人としか思えない。
CNも割り振りされた環境や組織の中で生きるために何かを培って
時には異質なものが生まれてくるのかもしれない。
少なくとも関東の中で自分の出生に関する事が見つからずに、
もしかするとなんて期待もこことは繋げられない。
こんな事を考えている場合じゃないが、特殊な能力もまた色々なもの。
手錠を付けて応援を呼ぶ。
途中から待機していたチバ兵も行動を始めてクリアリング確保してもらい、
それから同じ行動を続けて待ち伏せする兵達を捕縛していった。
「一応、周りの敵は討伐したぞ」
「ええっ!?」
知らせを聞いたシズオカ兵が驚く。
彼らも自分の能力を知らない間で潤滑にラボリをこなしてみせた。
ついでに、先に出て行ったチバ兵達のカーポも発見。
予想はしていたものの、やはり夜襲の万能感など幻にすぎない。
何かを極めたフリをしただけで、現実はもっと大きな性質に塞がれて
身の程を知る前に人生すら終わってしまう。
特殊とは何か、環境に沿った能力も公にすると危ないだろう。
周辺のニイガタ兵もあらかたクリアして、
シズオカを襲った理由を聞き出そうかと思った時だ。
ピピッ
「「レッド!? あんた、今ニイガタにいるんだって?
至急グンマへ援軍に来てくれない!?」」
「突然どうした!?」
マリサが救援要請をしてきた。
まだ目的を達成していないのにもかかわらず、移動しろとの事。
よっぽど人手が足りないくらい劣勢の状況まで追いやられているのか。
理由を聞こうとした矢先、その次にはナミキ司令から連絡がくる。
「「チバCNへ、一度グンマCNに向かうんだ」」
「りょ、了解」
まとめ役からも今のラボリを破棄するよう言われる。
黒兵に関する情報は何も得られなかったが、
やむなくこれ以上の侵攻を切り上げて再びビークルに乗り込む。
数人のニイガタ兵は捕縛して連れていくという。
これで1つの敵討ちはできたかと思っていたが、
対してシズオカ兵達は無表情でずいぶんと静かな様子だ。
「・・・・・・」
「どうした?」
「ニイガタの実力は、こんなものじゃないはず」
「同盟時に訪れた時よりも警備が薄くなっていたような」
「もしかして、あの人はいないのか・・・?」
「あの人?」
先の戦闘で何か違和感をもっているようだ。
誰の事を言ってるのか分からず、彼らは身内事情の様に
シズオカ兵同士の会話で収束する以上、何も語らない。
確かに今回の潜入戦でニイガタの特異な性質の一片が観てとれた。
原因を探るどころか内地まで入る余裕もなく終わってしまったものの、
常識から外れた者を相手にするのはかなりの戦力や運が要るだろう。
黒兵の発見もないまま戻されるのも変だけど、今は関東内に多くの敵も
入り込んでいる。おそらく別働隊が他にいて強敵も来たかもしれない。
少し気になったが、今はそれ程知る必要もないので
一時撤退してそのままグンマCNへ向かった。
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南蛮蜥蜴
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歪なる怪物「害獣」の侵攻によって緩やかに滅びゆく世界にて、「アーマメントビースト」と呼ばれる兵器を操り、相棒のアンドロイド「カルマ」と共に戦いに明け暮れる主人公「真継雪兎」
ある日、彼はとある任務中に害獣に寄生され、身体を根本から造り替えられてしまう。 乗っ取られる危険を意識しつつも生きることを選んだ雪兎だったが、それが苦難の道のりの始まりだった。
次々と出現する凶悪な害獣達相手に、無双の機械龍「ドラグリヲ」が咆哮と共に牙を剥く。
延々と繰り返される殺戮と喪失の果てに、勇敢で臆病な青年を待ち受けるのは絶対的な破滅か、それともささやかな希望か。
※小説になろう、カクヨム、ノベプラでも掲載中です。
※挿絵は雨川真優(アメカワマユ)様@zgmf_x11dより頂きました。利用許可済です。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
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小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。
きのせ
SF
通学の途中で、空から落ちて来た美少女。彼女は、宇宙人に作られたアンドロイドだった。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らすことになったから、さあ大変。様々な事件に巻き込まれていく事に。最悪のアンドロイド・バトルが開幕する
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
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