Condense Nation

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3章 東西都市国家大戦編

第28話  碧炎の甲者

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10:00 クマモトCN 演習場

「今はまだ外地派遣できないんですか?」
「ええ、さすがに侵攻数がこれまでとは比較にならない規模よ。
 フクオカやオオイタだけじゃなくミヤザキやカゴシマにも接近、
 オキナワにも数十隻の飛行体が捉えられているの」

 ミキはリョウコ司令に今回のラボリ概要を伝えられる。
犬兵団は行動範囲をいつもより狭く設定されて内地を中心に展開する
作戦を指示された。
少数への奇襲や味方援護など犬を回らせる方法は同じだ。
だけど、今編成しているメンバーもいつもと少し違っていた。
ここにいるのは私を含めた女兵だけで、男とは時間を分けている。
任務内容が異なる事情をもっていた。

「そして以前伝えた通り、ミキちゃん達だけで行ってきてね。
 まだ外は明るく、視界が開けて見やすい。
 視界が覆われる時間帯を女性が担当するのはさすがに危険とみなして
 男女別にしたの。人入りも多い場所ならすぐに応援も駆けつけて
 当然、あなた達はそこを任せたいと思ったから」
「はい」
「それに市民への不安もできるだけ大きくさせないよう努めたいわ。
 軍用だけでなく動物表現としても安心させやすい。
 こういった場合は男ではなく女が担当した方が良いの」
「なるほど」

という訳で朝昼は女子だけ行動して事に当たっている。
中つ国と違って夜間でも明るく観えるスコープが配布されてないので、
まだ縦横無尽に活動できる余裕さがない。
例の黒兵とよばれる敵もどこかで潜んでいるらしく、
マサキ達男子チームは今寝ている、せめて大きな負担をかけさせないように
起こるかもしれない問題を少しでも減らさなければならない。
性別分けにしてもちょっと大げさな気もするけど、私達のために処世して
身を案じてもらい、司令会議で決まった事だから応じる。
私達女子だけで哨戒しようと周辺区域に向かった。


クマモトCN 御般エリア

スイイイイン

 エリアルボードで犬と共に到着。6人の女犬兵団は近隣の地域に来て
様子がどうなっているのか見回る。いつも巡回している馴染みのルートで、
今でも穏やかな野山がある。関東軍が何をしに来たのか分からないけど、
いずれ荒らしに来る事だけは防がないといけない。
大昔は田舎なんて言われて馬鹿にされていたらしいけど、
人が住める空気の美味しい所こそ健康でいられると思う。
市民のおばさんがいた。

「あら、見回りお疲れ様」
「おばさん、今外出するのは危ないですよ!
 ところで、異常はありませんか?」
「ええ、こっちも皆遠出しないで街で待ってるから。
 あたしも最近足腰が悪くなっちゃってこうして歩いていないと
 すぐに腰曲がりになるし、おふぉふぉ」
「私達もこの子と一緒に目を配って見回っています。
 同盟CNとかに行くのも大変ですね」
「そういえば、あの近江とかいうオオサカの所。
 貿易で向こうに行ってきたんだけど、資源管理している場所がヘンピで」
「ええっ、そうだったんですか!?」
「そうなの、向こうの人達が“風通し良くするんや”って言って
 そのまま筒抜けにした状態で管理してるって」
「あらま」
「それで同じ様子をサクライさんが観たら、なんだか色々おかしな設備で
 電波傍受とか簡単に発生させられそうだって。
 やっぱり、人が多いとオープンになるものなのかしら」

ここで関西最大区についての出来事を聞かされる。
同盟から流通も多く交わし始めて他との都合も観えていると言う。
井戸端会議で言いそうな内容だけど、ちょっとした特徴を教えてもらった。
別にこんな場所で知る重要な情報でもないけど、市民達にとっては
急に世の中が変わってせわしない事でも言いたくなったのだろう。

ブシュッ

橋の真ん中から水が飛び出る。
有るわけがないと思う所に何かが在る。
確かにおばさんの言うように今回の事件は変に思える気がする。

「ワンッ!」
「敵影反応有り!」

メンバーの1匹である犬が威嚇し始める。
姿が確認できないが、どこかの草むらに隠れているかもしれない。
違和感のある臭いに反応する訓練もさせていて、
火薬や金属系の物に警戒するよう不審さを覚えさせてきた。
だけど、こんな大陸中央区にまで侵攻された連絡がきていないのに、
関東兵の足取りにしてはおかしい。
奇襲で潜入している線もありえるけど、油断は禁物。
ディサルトを構えながら散開、サーチをかけさせる。
おばさんをすみやかに安全経路まで連れていこうとした時。


ドシュッ

「ご、ふぉぉ!?」
「おばさんッ!?」

弾丸がおばさんのお腹に直撃、防御態勢もとれずに弾丸を受けてしまう。
白昼からここまでやって来るとは思いたくなかった。
でも、現に起きているので目を背けるわけにもいかずに教えられた
人を助けるという行動に移さないといけない。

「AED!」

どんな事情があってもれっきとした現場が全て。
私はメンバーに援護されつつ救命機器を使わせようとした途端。

ヒュンッ  ボオッ

「キャッ!?」
「危ない!!」

突然、空気を切る様な音がして手にしていたAEDが破裂。
かすめ取る様に着弾、相手にとってまる見えなのか、
緑色の火が燃え上がり蘇生のチャンスを失ってしまった。

「ここは危険よ、おばさんを物陰まで!」

メンバーが代行して救助、残る5人で敵を相手にするために
探知しようと犬に指示。しかし、200m先の丘に生えている草むらが
動いているのを発見。居場所はすぐに分かり、スタンナイフで対処するが。

「ショック!」

プイッ

しかし、行こうとしない。これは無視ではなく無理の意味で、
高い位置にいるので犬がそこまで向かえずに拒否していたのだ。
つい足が止まり、次の手をどう打つか考えも留まってしまう。

ヒュン

「ううっ!?」

さらに狙撃されてメンバーの腕が撃たれる。
スナイパーのようで、有利なポジションが相手に奪われていた。


(このままだと・・・皆も)

犬兵団の特徴が効かない状況に内心追い詰められる。
ならば、背中に備えている物。
あるとすれば他と同じ攻撃方法であった。


「あああああ!」

ズガガガ

「おぼぼぼぉ!?」

ドサッ

ディサルトを土手に向けて撃つ。
銃を掃射して相手にヒットできたようだ。
討伐完了、相手をロストさせて場は静まった。
銃器を下ろすまでに、硝煙の臭いで体の感覚に気付く。

「「ううっ」」
「どうしたの、ミキ!?」
「「だ、だいじょうぶよ・・・気にしないで周りを」」

凄まじい嫌悪感を覚える。
初めて人をロストした事で言葉で表せない消失感に覆われる。
敵といえど人の命を奪う行為はこんなにも気持ち悪いのか、
お互いの軋轢に、ディサルトを支える指先が揺るぎかけていった。


フクオカCN 宗僧エリア

 九州地方のフクオカCNにも東北兵が攻め入っていた。
以前と同じく海岸沿いで防衛ラインを敷いて上陸させないよう
砲撃していたものの、全て撃沈させられずに数隻の巡洋艦から
あらゆる箇所に食い込み、ふとした隙でこのエリアに侵入されてしまう。
部隊長の1人であるエイミー分隊も応戦している陣中で、
対するアキタ兵との交戦のさなかにあった。

「こちら第12部隊、敵兵に上陸を許してしまいました!
 海岸のタンクが2隻破損、間から入られてしまって対処しきれません!
 援軍をお願いします!」
「「第69部隊を10分以内に向かわせます。
  それまで持ちこたえてください」」
「ひいっ、10分も!?」

彼女のいるエリア周辺には含めて200人のメンバーが配置していたが、
攻めてきた東北兵は300人相当で、数的に困難な状況にある。
実はオキナワ方面にも東北軍が来て対応しようとカゴシマへ
分隊、リソースを多めに割いていた。
しかし、さらにここにも来て突破口を開けられて見誤ってしまう。
犬兵団もさすがに超多人数を攻略できないので、広いエリアでの展開に
強く望められない。

グッ

トゥラパノを握りしめてすぐ目前まで迫る敵を待ち構える。
今回はタンクに搭乗できず(許可されなかった)、白兵戦で挑む。


対するアキタ兵は九州大陸北部に入り込み、黒兵情報を探す。
ここに来る道中はホッカイドウ兵のサポートで海岸線の守りを崩して
ようやく踏み込めた。
フクオカは九州最大の工業地域だと古くから知れ渡るらしく、
どこかに製造工房があると捜索しにきた。

「オキナワにも不審な設備がありますが、ホッカイドウが担当しています。
 クマモト方面にもヤマガタ兵が侵入成功した模様」
「良し、こっちは手薄になった。今が攻め時だ!」

コンクリートで舗装ほそうされた道路のつながりを考察する、
視界的に開けているものの、赤外線センサー反応が近隣より少なく
防衛密度の小ささで攻略にふさわしいルートだと判断した。
制圧も考えたがさすがに兵力が不足気味で黒兵工房を優先。
九州大陸は山も多く、鉱山地帯の発見をするべきだと
アキタ兵が、南方面へ向かおうとしたら、回転する巨大なタイヤが現れた。

ゴロゴロゴロ

「何だ、あの丸いのは!?」

半径10mはある円盤型の機体が3機転がってきた。
それはフクオカ所属の車輪型ライオットギアで、今日に備えて登場。
長年の開発成果がようやく今回現場に表れる。
灰色の装甲をもち、見るからに戦闘用だと思われる機体の
内の1人、中心から顔を出してきたのは応援で駆け付けた69部隊長だ。

「アーマーディロ、現地に到着。これより応戦する!」
「エイミー、一度下がってくれ!
 奴らもビークルの類を出してくるだろう。
 ここは俺達に任せるんだ!」
「はい!」

隊長の読み通り、アキタ兵もライオットギアで応戦しようと
指示を出したのだ。離れた場所からそれを見ていたアキタ兵の
隊長は対抗すべきと同様の指示を下した。

「くっ、新型だな。あんな物まで造ってたなら黒も近いはずだ。
 こっちのライオットギアも出せ、あれとやる!」
「隊長、散開指示を。
 わたくしがあちらの部隊と交戦しに向かいます」
「分かった、行け」

狡猾こうかつそうな兵が自らの隊長に侵攻を促して、許可をとる。
機体どうしで戦わせる間で、白兵戦を展開しようとした。
わずか200mにいるの兵が目を向けた先はエイミー分隊だ。

「コンタクト!」
「ひょうっ!」

シュッ キィン

女兵へ飛びかかって攻撃。
同じ槍使いだと分かるや、腕試しに真っ先に挑戦しにきたようで
まるですぐにロストさせない様な態度で細長い獲物を振るう。

「ひょひょひょ!」

シュシュッ キキィン

「くっ!」

アキタ兵が操る槍を巧みに突く戦法に
私は右往左往されて後ろにたじろいでしまう。
相手はかなりの手練てだれだ。

「このっ!」

ギュルルルル

負けじと所持武器である槍のトゥラパノで隙を観て突く。
しかし、さばかれて回転ドリルの根本を槍でつかまれてしまう。
そこから地面まで抑えられる。

ガツッ

「くっ!」

女口調といえど、身体は男。
突きに特化した持ち前は、振りにも優れた東北武器に対抗しにくく
横を取られやすい姿勢にあった。

ガキンッ

「あっ!?」

杖を挟まれて捻り折られて、槍の先が壊れてしまった。
マリーの身体寸前にまで突き付けられた槍を持つアキタ兵が
皮肉な異味言いみごとを放つ。

「お姉さんには悪いが、ここで人生退場してもらいましょう。
 わたくしは女が嫌いでね、ひょ」
「うぐぅっ」

狙われて相手をしにきたのはそれが理由だった。
ここまでかと無念が広がる彼女が覚悟を決めたその時だ。


ドスン

「!?」

そこへ1機のライオットギアが降りてきた。
セピア色の装甲をしたその中から、アンプ越しに声がでる。

「「こちらヤマグチCN、援護に来た」」

ヤマグチ兵の分隊が援軍に駆け付けてくれた。
何故か歩兵も突撃兵もいない、単独行動の兵士だったのだ。
やたらといきり立つのが目立つヤマグチ兵にしては、
落ち着いた雰囲気のある兵士だ。

「「逃げな、お嬢ちゃん」」
「は、はい!」
「待ちやがれ!」

後を追う1人のアキタ兵を巻いて、
マリーは退散してメンバーの元へ向かってゆく。
対して、獲物に逃げられた異口調アキタ兵の矛先ほこさきは彼に向かっていった。

「なんだね君は?
 私の狩場を邪魔しないでもらわないでちょうだい!」
「「そうか・・・なら」」

ボウッ

突然、ヤマグチのライオットギアが全身燃え上がる。
男の一言によりみどり色の炎に包まれた機体は
アキタ兵の目に大きく広がり異様な光景に観えた。

「なんなのコレ・・・みどりに燃えている!?」
「銅の炎色反応を示しに使うのはわしらの得意でな。
 中つ国はそんな色と縁をもつがな」
「それがどうしたってのよ?
 ただ火花を散らすだけじゃ、何の効き目もないわよ!」
「緑はいやしの色って、昔から言われとる。
 うちの若いモンを見鎮みしずめる時にも、
 よくそんな色を見せつつ説得しとるわ」
「?」
「がのぉ、色を見せるだけでは効かんのもおる。
 そん時にゃ、こうやってわからせるんじゃ。
 癒し混じりの熱き揺らぎってモンをな」

火の性質そのものに他と違いはない。
しかし、どういうわけか足がグラつく。
熱く危険な火と綺麗な碧色の差異はどちらか一定の感覚もらがせる。
一回り広がる炎を観続ける内に、異口調アキタ兵の様子が急変。

「はっ・・・あああ・・・ぐひひひぃ!!??」

ジワジワ

失禁したアキタ兵は腰を抜かして地にへたり込んでしまった。
直接戦闘を起こさずに、火を目視しただけで戦意喪失。
彼の言葉と同時に、碧炎へきえんの深さと恐ろしさを目にしたのか
しばらくたたずんで動く事ができなかった。


その頃、先のフクオカ兵隊長が操るアーマーディロはアキタ兵率いる
ライオットギアと戦闘を繰り広げていた。
東北の機体はフットワークが軽いものの、九州の新型は走行に特化して
簡単に攻撃が当てられなかった。
今回、砲撃は上陸時に全て使い果たして補充班も数人やられている。
少しの会話で場は一時停止。

「円滑だけあって、モーションが見切りにくいな」
「そっちの御型おかたも普通のと比べてスピードが速いぞ?
 どんな技術なんだか」
「黒神山地の恵みよォ!」

そして再び再開、アーマーディロが突進しようとした瞬間に東北機は避ける。
軌道が単純なだけに、対処の先読みもとられていた。

ガシッ

正面越しにつかまれてしまう。
冷静にタイミングを見計らって機体の盤部ばんぶ[拳]を後ろに下げる。
東北機体が腕を引き、アーマーディロの車輪部を殴りつけた。

バゴン

「うわおおおおおおおおおお!?」

反動で勢いよく回って転がり続ける。
止まろうにも道路沿いに地続きで障害物がなく、
しかも機体の制御を失っていたのだ。

ゴロゴロゴロ

「ブレーキ損傷、止まれない! メーデー、メーデー!」

要請を出す隊長の機体を止める者はそこにはいなかった。
しかし、転がる先には反対から何も知らずに走ってきた人が1人いたのだ。

ドシン

「ぐおあおおぉぉっ!?」

アーマーディロは人を跳ね飛ばす、ぶつかったのはアキタ兵だった。
後を追われていたエイミーは二度もメンバー達から助けられて
感謝の気持ちに満たされる。

「「ま、また助かっちゃいました・・・」」
「「お前を守るためなら当然・・・だな」」
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