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3章 東西都市国家大戦編
第15話 フロウマテリアル壱
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カガワCN拠点 入口
ピピッ
「こちらタカ分隊・・・仕事ですか?」
タカはカガワ司令官からシガへ出向くよう指示を受けた。
シガCNによる運搬ラボリ活動で、荷物運びの続き。
前回のシガCNによる下請けの件についての連絡で再び来てほしいという。
ヒロも丸い体を起こして準備を始める。
「またあそこか、ある意味、腰にくるな」
「戦闘任務よりはマシだと思うぞ、運搬も命がかかる時もあるが
直接もぎ取られるよりよっぽど平和的なんだしな」
「ま、荷物運びはいつの時代でも男の役目なんだな。
そういや、女神さんはいないか」
「今日は別働だ、運搬の手数なら俺達でも足りてるから
気兼ねなく行こう」
スイレンは圧倒的人手不足になった空港の方で不在。
クローバーは束かがわエリア海岸で船整備に出ていた。
今この場にいる者だけでも十分運べるだろうと、
運搬の任務を待っていたタカ分隊はビークルに乗って
すぐさま例の湖へ向かっていく。
翌日 日輪湖
四国、シガ一行はまた日をまたいで到着した。
今回は着いた時には昼。さすがに夜回収は危険で時間を調整。
近江は自国と違って山の高さで別の地方に来たと分かる。
ちょっとした人生経験でどう変化したか目を活かす。
見渡す限りの水面。言い換えるならば、広大な水溜まりがある。
海と異なり荒だつ波もなく、穏やかで静かな湖畔の光景が観えた。
「これが地方の中じゃ、最も大きいといわれる湖かー」
「見方次第じゃ海だな、初めて来た連中なら勘違いしそうだな。
これなら敵はこっちからやって来るのに手間がかかりそうだ」
陸上としては視界的にクリアすぎて隠密するに適さない所。
向かいのバリケードでいかにも通さない気概をもつ。
A.D50年という大抗争時代に生まれて、こういった配慮のおかげで
余計な侵攻など抑えてくれた事もあって生き残れたのだろう。
今日の作戦展開としては、さほど重要なエリアというわけではないが、
底にある資源を守るための最低限の配慮はしてあるそうだ。
1人のシガ兵が深部にある物の回収方法について説明した。
「お待ちしてました、ではさっそくラボリを始めましょう」
「荷物はどこに?」
「実は日輪湖です、貯蔵物として保管しています」
「湖の中!?」
「ですが、目標の鉱石はそれほど摩耗に強くはありません。
現在、クレーンが故障しておりましてあなた方に直接潜って
回収してほしいのです」
なんと、シガCNは湖の底に資源を蓄えておく習慣があった。
理由は地上建造物などがあればすぐに目を付けられる。
言わば天然の冷蔵庫、ちょっとした環境の差で文明も変わるのだろう。
「なるほど、向こうと違ってこっちは涼しいしな。
水質さえ綺麗に保てば色々と閉まっておけるんだろう」
「水面にまで上げた後、一度船に乗せて岸まで運びますが
引き揚げるためのビークルは大丈夫でしょうか?
事前の報告だと、あなた方は持参の乗り物があるらしいですが・・・?」
「ここで四国自慢の球型機だ、俺達はこれで底まで行く。
馬力は不安なとこあるが、5機あればいけるだろ」
「ホントはカナの嬢ちゃんが中つ国地方から持ってきたものだけどね・・・。
急がば回れってわけか」
「内情御法度ー」
内部事情をさておいて自分達は潜水して取りに行く。
シガ兵は所属専用の小船で水面待機して引き上げ役になるという。
衝撃による破損を防ぐため、垂直に引き上げ。
湖畔に配置してあったそれを見るかに、タカは納得した。
「これだけ広けりゃ、行き来で船の1隻も必要だろうな」
「日輪湖以外でも湖は点在しています。
深さもそこそこで低温なので、保管に相応しい所ですが
魚の資源よりも、腐敗しにくい鉱石の貯蔵庫として
利用されている場合がほとんどですね。
周辺CNと共同で製造した船ばかり配置されています」
「そうか。じゃあ皆、準備OKだな?」
「それじゃ、レッツダイブ」
タカ達はキューに乗り込み、日輪湖へ潜っていく。
ゴボゴボ
水泡が上昇する度に機体が下部へ沈む。
水中はそれほど透明度があるわけでもないが、数m先は見える。
目の前に大きな魚が横切った。割と大き目な魚も生息しているようだ。
隊員達と無線でやりとり。
「「広さもあって、確かに深さも相当だな」」
「「深水約41mだって、確かに深さもそこそこ。
海程じゃないけど近江にこんな場所があるなんて意外だね」」
「「えっと、物は・・・あれか!?」」
最深部にたどり着いた。
凝らして見ると、底部は平面にコンクリート工事で設けられ、
予想よりも綺麗に整備されている。
そこの内側にラベルが貼り付いている塊が包装されていた。
取り方は無線機動で連れてきたキューの中に詰め込み、
そのまま水面まで船まで持っていくだけだが。
「「どれくらいあるんだ?」」
「「およそ0.5t相当はあります、フックは可能で
引き上げる時は気をつけて下さい」」
シガ兵の連絡で500kgくらいあるらしい。
区画線工に合わせて縦積みされている物体が泡越しに見えた。
確かに、ここまで潜り込んで探しに来る奴などいそうにない。
水をトリックとする同類、ビーバーの様な案だと思いつつ
四国の球体で取り囲み、網の上に包んで引き上げようとした時だった。
ズゴゴゴゴ
「「なっ!?」」
「「なにこの音!?」」
地鳴りが聴こえた、地震かと思いきや計器にはその反応がない。
近江東部、中部は火山もありそれが多い情報もある。
数秒後には音がしなくなった、と思いきや
シガ兵が大声で伝令しだした。
「「反応原因確認、ギフの潜水艇です!」」
「敵だと!?」
すでに湖底で停滞してたようで、あたかも自分達がここに
来るのを先読みしていたかに姿勢が向けられていた。
シガ兵も予想しておらず、武装した形状から攻撃しにくる危険性を
伝えてきた。
「どこから入って来た!?」
「「湖周辺から入られた形跡がありません!
0:00以前から侵入された可能性が――」」
「「あらかじめ、待ち伏せしてたってわけか。
アレって味方――?」」
ブシュルルル
「「やっぱり敵みたいだ! タカさん、迎撃する!?」」
「「ミサイル射出口にいるな、周り込め!」」
小窓からでも一応姿は確認できている、端末解析で約15mの長さで
高さもたった2mとどうしても人が入れる大きさに思えない。
水中機の仕様に関しては四国も熟知している。
「「相手位置5-7-2、湖底は岩場だらけで隠れられる場所がある。
向こうもレーダーでこっちの位置を特定しているはずだ。
むやみに動かない方が良い」」
「「兵装はやっぱり・・・魚雷の類だよね、あれって見辛いからなぁ」」
水中、海中のどちらも攻撃する手段は爆撃する物によるのがほとんど。
銃弾などは威力も弱まって遊泳している兵にしか通用しないから。
キューも短魚雷を10発と魚雷フレアを1機まで装填している。
もちろん長期戦に備えられていないから忍びを前提に行う。
5機はとりあえず静かに行動して機を狙ってゆく。
形状を把握して、こちらの小型魚雷を撃ち込もうとした途端。
ブシュルルル
「うおっ!?」
背後からも敵の魚雷が進んできたのだ。
射出口は前だけでなく、横や後ろにも配備してあった。
ここでヒロが反射的に3発撃ち返す。
「やられてたまるか!」
バシュッ バシュッ バシュッ
100mmの水色筒が相手に向かっていく。
しかし、2発は外れて1発だけ後ろに着弾した。前のめりに出過ぎたか、
タカがヒロにもっと下がるよう指示。
「「回避!」」
「「ふんぬっ、遅っ!」」
あわてて思わず湖底の岩場に引っ込む。
地上のライオットギアと違って動きがもっとモッサリしているだけに、
いつもと勝手が違って操作も一苦労だ。
だが、実戦でそんな言い分なんて通用できるわけもない。
相手も常に新型を出してくる線も十分にある、これもそんな種類の1つか、
四国で体験した物と何やら様子がおかしかった。
「「四方八方打ち込んでくる、乱れ撃ちなんて無駄使いもいいとこだ!
だけど、これって・・・」」
「「ああ、おそらく無人操作で動いてるタイプだ。
あの潜水艇、中には誰も乗っていない!」」
潜水型は基本、センサーで相手を探して撃ち出すものだが、
この機体はやみくもにばらまいて撃ち込んでいる。
タカ達は直感で誰かが操縦していないと判断。
魚雷の方向性がバラバラで曖昧な軌道だったからだ。
それにしても撃ち方がずいぶんとおかしい、センサーに反応したとはいえ
あんなに複数撃つ必要もないはず。
おかげでこっちも接近できないが魚雷の軌道だけ少し読めてきた。
だが、突破口が見えないのは相変わらずで撃沈させるにはどこを狙うか。
反撃の隙をうかがおうにも、距離感がうまくつかめずにいる。
メンバー達も位置がまばらにはぐれ始めた。
「「隊長、この距離から当てられるの!?」」
「「無理だ、遠距離すぎればすぐに撃ち落される!
位置2-5-1くらいまで接近できなければ速度遅延で外しやすい。
もっと近づければいけるかもしれないが・・・これじゃあ」」
潜水艇の耐久性は基本、どこも等しくなるよう造っているはずだから
的の大きな胴部に当てれば撃破できるだろう。
キューの砲撃は目標まで十分とどくが、相対速度で外したり
スピード上途中で落とされて手数を減らされる恐れもあった。
無人型のタイミングを見計らった射出はあなどれない。
ただでさえ、こちらは急なスピードで動かせる程起動性能は不可。
水中戦の覚えはすでに経験してきたものの、そう上手くこなせる場合はなく、
むやみに近づけばたちまち撃沈されてしまう。
試しに背後から狙うとどうなのかやってみた。
「「位置3-7-2まで移動するぞ、後方からなら・・・できる!」」
「「でも、レーダーは全方位対応しているけど大丈夫なの?」」
「「前よりは安全だ、そりゃあ背後にも射出口は・・・ある」」
(同じじゃないか・・・)
やっぱり作戦が適当だったようで大した意味もない。
普段からこなれない物で対抗しようなんて考えが甘かった。
一応言われたようになんとか回り込んで撃ってみたが。
ババシュッ スカッ ブシュウウウッ
誤って2連射してしまう、さらにどっちも外れ。タイミングの悪い事に
相手からも1発こちらに向かってくる。
今度は判断も遅く、2人は回避できそうになかった。
「「よけられないッ!」」
「「フレアッ!!」」
ブシュッ ブワッ クルクル スカッ
楕円形の水色機器が傘状に広がって回転。
探知性質をそこ周辺に誘導させてキューへの直撃を避けた。
元はS-001のフレアを基に造られていた装備だったが、
形こそ違うものの、誘導弾を混乱させるために優れた代物だ。
シガ兵から通信が来る。
「「現在位置3-20-2にまで応援が接近しています。
湖面から援護するのでもうしばらくお待ち下さい!」」
「「分かった!」」
ここでやっとシガ兵の助けがやってくる。
戦闘艦ではないものの、多少のオトリと爆撃支援くらいの事だけ
行うと言う。湖で潜水艇を常駐させる習慣もなく、
確かに隣との交戦を行っていた証拠もあまりないと気付かせる。
必ず助かると期待しながら問題の黒い塊をうかがっていると。
「「そうだな・・・ん、アレは?」」
どうしようかと周りの環境に目を向けていると、
薄暗い面に水中を漂う大きな影があった。
なんというか、流線を描くような滑らかな型みたいな物で
障害物にしては敵の物でもなく、作業の分散物にも思えない。
「・・・・・・」
艇は魚の姿を捉えて表示いる。
しかし、他の生物は攻撃も何もしようとせずに沈黙。
様子がおかしく、画像で観ると意外なモノが映っている。
詳しい映像を目にしたタカはその瞬間を逃さなかった。
「「あれは・・・ナマズだ」」
数mはある巨大なナマズの背後に隠れて機会をうかがった。
あまりにも規格外と言いたくなるそれに死角的防御。
魚群探知機ではナマズの情報しか拾っていないのか、
タカは狙われずに艇まで近づく事ができた。
上手く巨大魚の背後に隠れ、センサーをかわす。そして。
ズボオォォォン ゴボゴボゴボ
魚類の皮膚が砲身から逸れたタイミングで魚雷発射。
弾は直撃、潜水艇は沈没して底まで沈んでいった。
拠点
拠点の者達も安堵の声を上げて緊張の糸が次第に緩やかになる。
障害は無事に排除されてラボリは成功にとどく。
無線の向こうから心臓に悪いなどの返答ばかり耳にする。
そこはともかくとして貯蔵品を引き揚げる作業は残っている。
辺りの逃げていく魚が視界を横切る中、連絡をとる。
「障害排除、それじゃあ続きの運搬を!」
「「四国兵、敵性排除。次からは近隣CN情報も求む・・・」」
「・・・・・・」
「「どうした?」」
「いえ、資源は無事の様です。
ネットを張りますので、船まで運搬をお願いします!」
「「いっせーので引き上げるぞ!」」
「「いっせーのほぉ!」」
こうして資源を手に入れたタカ達は積荷を船ににのせて戻る。
平行姿勢を保つままに進んでいく船は難なく陸地に到着した。
シガCN拠点
「た、ただいま戻りました」
「お疲れ様でした、お怪我はありませんか?」
帰還報告を程々に知らせるタカ分隊。
ギフCNによる予想外な展開があったものの、
被害者0で済んだ結果に大喜び。シガ司令官も安心している。
「ご無事でしたか!?」
「ああ、大丈夫だ。にしても・・・あの湖には驚いた。
日輪湖に、あんなデッカイ魚がいるなんてな」
さすがに魚に助けられたなど四国ですら一度たりともない。
シガ兵隊長もオオナマズがいるのは知っていたけど、
あそこまで大きな物がいるのは気付かなかったそうだ。
「ハハハ、そうですね。1mを超える魚はかなり目にしてはいますが、
5m級の大きさなんて見るのは初めてでした。
もはや伝説クラスの大物らしいです!」
「魚を掬っている方が魚に救われたなんてな。
それにしてもギフの奴らはしっかりと襲ってきたじゃないか?
もう安心するわけにはいかなくなっただろうに」
「敵艦につきましては現在調査中です、ギフで潜水艇を製造していた
経歴は未だなかったはずで、他CNの介入もありえるので」
まだ向こうの仕業だと断定しきれていないとの事。
広大な淡水に広大な生物の恩恵で戦闘の事も運べた。
ある意味、魚のおかげで難を逃れた今回。
こうして四国一同は地元に戻ろうと帰り支度をし始めた。
「これにて四国に帰還します、もう他はありませんよね?」
「はい、お気をつけてお帰りください」
「入口まで見送りしましょう、物資は車で固定をお願いします」
「では、ここからは四国の俺達に任せてくれ。
責任もって地元で保管しておく」
メンバー達も次々と乗り物に乗って帰還の準備。
そしてビークルでこの場を離れようとエンジンをかけた時、
シガ兵隊長が何か言いかけようとする。
「あの・・・」
「なんだ?」
「玄の縁をよろしくお願いします」
「そうか・・・大丈夫だ」
シガ兵達の敬礼を返して、タカ分隊は自国へと帰っていく。
船で瀬戸内海を渡っていく彼らをいつまでも見守っていた。
ピピッ
「こちらタカ分隊・・・仕事ですか?」
タカはカガワ司令官からシガへ出向くよう指示を受けた。
シガCNによる運搬ラボリ活動で、荷物運びの続き。
前回のシガCNによる下請けの件についての連絡で再び来てほしいという。
ヒロも丸い体を起こして準備を始める。
「またあそこか、ある意味、腰にくるな」
「戦闘任務よりはマシだと思うぞ、運搬も命がかかる時もあるが
直接もぎ取られるよりよっぽど平和的なんだしな」
「ま、荷物運びはいつの時代でも男の役目なんだな。
そういや、女神さんはいないか」
「今日は別働だ、運搬の手数なら俺達でも足りてるから
気兼ねなく行こう」
スイレンは圧倒的人手不足になった空港の方で不在。
クローバーは束かがわエリア海岸で船整備に出ていた。
今この場にいる者だけでも十分運べるだろうと、
運搬の任務を待っていたタカ分隊はビークルに乗って
すぐさま例の湖へ向かっていく。
翌日 日輪湖
四国、シガ一行はまた日をまたいで到着した。
今回は着いた時には昼。さすがに夜回収は危険で時間を調整。
近江は自国と違って山の高さで別の地方に来たと分かる。
ちょっとした人生経験でどう変化したか目を活かす。
見渡す限りの水面。言い換えるならば、広大な水溜まりがある。
海と異なり荒だつ波もなく、穏やかで静かな湖畔の光景が観えた。
「これが地方の中じゃ、最も大きいといわれる湖かー」
「見方次第じゃ海だな、初めて来た連中なら勘違いしそうだな。
これなら敵はこっちからやって来るのに手間がかかりそうだ」
陸上としては視界的にクリアすぎて隠密するに適さない所。
向かいのバリケードでいかにも通さない気概をもつ。
A.D50年という大抗争時代に生まれて、こういった配慮のおかげで
余計な侵攻など抑えてくれた事もあって生き残れたのだろう。
今日の作戦展開としては、さほど重要なエリアというわけではないが、
底にある資源を守るための最低限の配慮はしてあるそうだ。
1人のシガ兵が深部にある物の回収方法について説明した。
「お待ちしてました、ではさっそくラボリを始めましょう」
「荷物はどこに?」
「実は日輪湖です、貯蔵物として保管しています」
「湖の中!?」
「ですが、目標の鉱石はそれほど摩耗に強くはありません。
現在、クレーンが故障しておりましてあなた方に直接潜って
回収してほしいのです」
なんと、シガCNは湖の底に資源を蓄えておく習慣があった。
理由は地上建造物などがあればすぐに目を付けられる。
言わば天然の冷蔵庫、ちょっとした環境の差で文明も変わるのだろう。
「なるほど、向こうと違ってこっちは涼しいしな。
水質さえ綺麗に保てば色々と閉まっておけるんだろう」
「水面にまで上げた後、一度船に乗せて岸まで運びますが
引き揚げるためのビークルは大丈夫でしょうか?
事前の報告だと、あなた方は持参の乗り物があるらしいですが・・・?」
「ここで四国自慢の球型機だ、俺達はこれで底まで行く。
馬力は不安なとこあるが、5機あればいけるだろ」
「ホントはカナの嬢ちゃんが中つ国地方から持ってきたものだけどね・・・。
急がば回れってわけか」
「内情御法度ー」
内部事情をさておいて自分達は潜水して取りに行く。
シガ兵は所属専用の小船で水面待機して引き上げ役になるという。
衝撃による破損を防ぐため、垂直に引き上げ。
湖畔に配置してあったそれを見るかに、タカは納得した。
「これだけ広けりゃ、行き来で船の1隻も必要だろうな」
「日輪湖以外でも湖は点在しています。
深さもそこそこで低温なので、保管に相応しい所ですが
魚の資源よりも、腐敗しにくい鉱石の貯蔵庫として
利用されている場合がほとんどですね。
周辺CNと共同で製造した船ばかり配置されています」
「そうか。じゃあ皆、準備OKだな?」
「それじゃ、レッツダイブ」
タカ達はキューに乗り込み、日輪湖へ潜っていく。
ゴボゴボ
水泡が上昇する度に機体が下部へ沈む。
水中はそれほど透明度があるわけでもないが、数m先は見える。
目の前に大きな魚が横切った。割と大き目な魚も生息しているようだ。
隊員達と無線でやりとり。
「「広さもあって、確かに深さも相当だな」」
「「深水約41mだって、確かに深さもそこそこ。
海程じゃないけど近江にこんな場所があるなんて意外だね」」
「「えっと、物は・・・あれか!?」」
最深部にたどり着いた。
凝らして見ると、底部は平面にコンクリート工事で設けられ、
予想よりも綺麗に整備されている。
そこの内側にラベルが貼り付いている塊が包装されていた。
取り方は無線機動で連れてきたキューの中に詰め込み、
そのまま水面まで船まで持っていくだけだが。
「「どれくらいあるんだ?」」
「「およそ0.5t相当はあります、フックは可能で
引き上げる時は気をつけて下さい」」
シガ兵の連絡で500kgくらいあるらしい。
区画線工に合わせて縦積みされている物体が泡越しに見えた。
確かに、ここまで潜り込んで探しに来る奴などいそうにない。
水をトリックとする同類、ビーバーの様な案だと思いつつ
四国の球体で取り囲み、網の上に包んで引き上げようとした時だった。
ズゴゴゴゴ
「「なっ!?」」
「「なにこの音!?」」
地鳴りが聴こえた、地震かと思いきや計器にはその反応がない。
近江東部、中部は火山もありそれが多い情報もある。
数秒後には音がしなくなった、と思いきや
シガ兵が大声で伝令しだした。
「「反応原因確認、ギフの潜水艇です!」」
「敵だと!?」
すでに湖底で停滞してたようで、あたかも自分達がここに
来るのを先読みしていたかに姿勢が向けられていた。
シガ兵も予想しておらず、武装した形状から攻撃しにくる危険性を
伝えてきた。
「どこから入って来た!?」
「「湖周辺から入られた形跡がありません!
0:00以前から侵入された可能性が――」」
「「あらかじめ、待ち伏せしてたってわけか。
アレって味方――?」」
ブシュルルル
「「やっぱり敵みたいだ! タカさん、迎撃する!?」」
「「ミサイル射出口にいるな、周り込め!」」
小窓からでも一応姿は確認できている、端末解析で約15mの長さで
高さもたった2mとどうしても人が入れる大きさに思えない。
水中機の仕様に関しては四国も熟知している。
「「相手位置5-7-2、湖底は岩場だらけで隠れられる場所がある。
向こうもレーダーでこっちの位置を特定しているはずだ。
むやみに動かない方が良い」」
「「兵装はやっぱり・・・魚雷の類だよね、あれって見辛いからなぁ」」
水中、海中のどちらも攻撃する手段は爆撃する物によるのがほとんど。
銃弾などは威力も弱まって遊泳している兵にしか通用しないから。
キューも短魚雷を10発と魚雷フレアを1機まで装填している。
もちろん長期戦に備えられていないから忍びを前提に行う。
5機はとりあえず静かに行動して機を狙ってゆく。
形状を把握して、こちらの小型魚雷を撃ち込もうとした途端。
ブシュルルル
「うおっ!?」
背後からも敵の魚雷が進んできたのだ。
射出口は前だけでなく、横や後ろにも配備してあった。
ここでヒロが反射的に3発撃ち返す。
「やられてたまるか!」
バシュッ バシュッ バシュッ
100mmの水色筒が相手に向かっていく。
しかし、2発は外れて1発だけ後ろに着弾した。前のめりに出過ぎたか、
タカがヒロにもっと下がるよう指示。
「「回避!」」
「「ふんぬっ、遅っ!」」
あわてて思わず湖底の岩場に引っ込む。
地上のライオットギアと違って動きがもっとモッサリしているだけに、
いつもと勝手が違って操作も一苦労だ。
だが、実戦でそんな言い分なんて通用できるわけもない。
相手も常に新型を出してくる線も十分にある、これもそんな種類の1つか、
四国で体験した物と何やら様子がおかしかった。
「「四方八方打ち込んでくる、乱れ撃ちなんて無駄使いもいいとこだ!
だけど、これって・・・」」
「「ああ、おそらく無人操作で動いてるタイプだ。
あの潜水艇、中には誰も乗っていない!」」
潜水型は基本、センサーで相手を探して撃ち出すものだが、
この機体はやみくもにばらまいて撃ち込んでいる。
タカ達は直感で誰かが操縦していないと判断。
魚雷の方向性がバラバラで曖昧な軌道だったからだ。
それにしても撃ち方がずいぶんとおかしい、センサーに反応したとはいえ
あんなに複数撃つ必要もないはず。
おかげでこっちも接近できないが魚雷の軌道だけ少し読めてきた。
だが、突破口が見えないのは相変わらずで撃沈させるにはどこを狙うか。
反撃の隙をうかがおうにも、距離感がうまくつかめずにいる。
メンバー達も位置がまばらにはぐれ始めた。
「「隊長、この距離から当てられるの!?」」
「「無理だ、遠距離すぎればすぐに撃ち落される!
位置2-5-1くらいまで接近できなければ速度遅延で外しやすい。
もっと近づければいけるかもしれないが・・・これじゃあ」」
潜水艇の耐久性は基本、どこも等しくなるよう造っているはずだから
的の大きな胴部に当てれば撃破できるだろう。
キューの砲撃は目標まで十分とどくが、相対速度で外したり
スピード上途中で落とされて手数を減らされる恐れもあった。
無人型のタイミングを見計らった射出はあなどれない。
ただでさえ、こちらは急なスピードで動かせる程起動性能は不可。
水中戦の覚えはすでに経験してきたものの、そう上手くこなせる場合はなく、
むやみに近づけばたちまち撃沈されてしまう。
試しに背後から狙うとどうなのかやってみた。
「「位置3-7-2まで移動するぞ、後方からなら・・・できる!」」
「「でも、レーダーは全方位対応しているけど大丈夫なの?」」
「「前よりは安全だ、そりゃあ背後にも射出口は・・・ある」」
(同じじゃないか・・・)
やっぱり作戦が適当だったようで大した意味もない。
普段からこなれない物で対抗しようなんて考えが甘かった。
一応言われたようになんとか回り込んで撃ってみたが。
ババシュッ スカッ ブシュウウウッ
誤って2連射してしまう、さらにどっちも外れ。タイミングの悪い事に
相手からも1発こちらに向かってくる。
今度は判断も遅く、2人は回避できそうになかった。
「「よけられないッ!」」
「「フレアッ!!」」
ブシュッ ブワッ クルクル スカッ
楕円形の水色機器が傘状に広がって回転。
探知性質をそこ周辺に誘導させてキューへの直撃を避けた。
元はS-001のフレアを基に造られていた装備だったが、
形こそ違うものの、誘導弾を混乱させるために優れた代物だ。
シガ兵から通信が来る。
「「現在位置3-20-2にまで応援が接近しています。
湖面から援護するのでもうしばらくお待ち下さい!」」
「「分かった!」」
ここでやっとシガ兵の助けがやってくる。
戦闘艦ではないものの、多少のオトリと爆撃支援くらいの事だけ
行うと言う。湖で潜水艇を常駐させる習慣もなく、
確かに隣との交戦を行っていた証拠もあまりないと気付かせる。
必ず助かると期待しながら問題の黒い塊をうかがっていると。
「「そうだな・・・ん、アレは?」」
どうしようかと周りの環境に目を向けていると、
薄暗い面に水中を漂う大きな影があった。
なんというか、流線を描くような滑らかな型みたいな物で
障害物にしては敵の物でもなく、作業の分散物にも思えない。
「・・・・・・」
艇は魚の姿を捉えて表示いる。
しかし、他の生物は攻撃も何もしようとせずに沈黙。
様子がおかしく、画像で観ると意外なモノが映っている。
詳しい映像を目にしたタカはその瞬間を逃さなかった。
「「あれは・・・ナマズだ」」
数mはある巨大なナマズの背後に隠れて機会をうかがった。
あまりにも規格外と言いたくなるそれに死角的防御。
魚群探知機ではナマズの情報しか拾っていないのか、
タカは狙われずに艇まで近づく事ができた。
上手く巨大魚の背後に隠れ、センサーをかわす。そして。
ズボオォォォン ゴボゴボゴボ
魚類の皮膚が砲身から逸れたタイミングで魚雷発射。
弾は直撃、潜水艇は沈没して底まで沈んでいった。
拠点
拠点の者達も安堵の声を上げて緊張の糸が次第に緩やかになる。
障害は無事に排除されてラボリは成功にとどく。
無線の向こうから心臓に悪いなどの返答ばかり耳にする。
そこはともかくとして貯蔵品を引き揚げる作業は残っている。
辺りの逃げていく魚が視界を横切る中、連絡をとる。
「障害排除、それじゃあ続きの運搬を!」
「「四国兵、敵性排除。次からは近隣CN情報も求む・・・」」
「・・・・・・」
「「どうした?」」
「いえ、資源は無事の様です。
ネットを張りますので、船まで運搬をお願いします!」
「「いっせーので引き上げるぞ!」」
「「いっせーのほぉ!」」
こうして資源を手に入れたタカ達は積荷を船ににのせて戻る。
平行姿勢を保つままに進んでいく船は難なく陸地に到着した。
シガCN拠点
「た、ただいま戻りました」
「お疲れ様でした、お怪我はありませんか?」
帰還報告を程々に知らせるタカ分隊。
ギフCNによる予想外な展開があったものの、
被害者0で済んだ結果に大喜び。シガ司令官も安心している。
「ご無事でしたか!?」
「ああ、大丈夫だ。にしても・・・あの湖には驚いた。
日輪湖に、あんなデッカイ魚がいるなんてな」
さすがに魚に助けられたなど四国ですら一度たりともない。
シガ兵隊長もオオナマズがいるのは知っていたけど、
あそこまで大きな物がいるのは気付かなかったそうだ。
「ハハハ、そうですね。1mを超える魚はかなり目にしてはいますが、
5m級の大きさなんて見るのは初めてでした。
もはや伝説クラスの大物らしいです!」
「魚を掬っている方が魚に救われたなんてな。
それにしてもギフの奴らはしっかりと襲ってきたじゃないか?
もう安心するわけにはいかなくなっただろうに」
「敵艦につきましては現在調査中です、ギフで潜水艇を製造していた
経歴は未だなかったはずで、他CNの介入もありえるので」
まだ向こうの仕業だと断定しきれていないとの事。
広大な淡水に広大な生物の恩恵で戦闘の事も運べた。
ある意味、魚のおかげで難を逃れた今回。
こうして四国一同は地元に戻ろうと帰り支度をし始めた。
「これにて四国に帰還します、もう他はありませんよね?」
「はい、お気をつけてお帰りください」
「入口まで見送りしましょう、物資は車で固定をお願いします」
「では、ここからは四国の俺達に任せてくれ。
責任もって地元で保管しておく」
メンバー達も次々と乗り物に乗って帰還の準備。
そしてビークルでこの場を離れようとエンジンをかけた時、
シガ兵隊長が何か言いかけようとする。
「あの・・・」
「なんだ?」
「玄の縁をよろしくお願いします」
「そうか・・・大丈夫だ」
シガ兵達の敬礼を返して、タカ分隊は自国へと帰っていく。
船で瀬戸内海を渡っていく彼らをいつまでも見守っていた。
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