Condense Nation

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3章 東西都市国家大戦編

第11話  不協和音

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シガCN 君吹山

「こちら第1部隊、現地に着いた。
 展開地域からはみ出ないよう、皆へ通達してくれ」
「「了解、防衛態勢配置完了。
  各CNへ、作戦開始まで定位置から離れないで下さい」」

 君吹山に近江の兵達が再び結集している。
もちろん元凶と思わしき黒兵の対処をするためで、
1人2人と消されていく仲間の仇を討とうと、
改めて同じエリアで見張るように追っていた。
関西最東部、東より出現する上で最も警戒するべきCNゆえに
あらゆる同盟CNがこぞって合同しにやってくる。
ヤエも現場においてどういった所を選んで来るのか地理情報を
つかもうとまた参加するが、なんであたしだけ感も充満。
オオサカ兵も参加しているものの、地元の守りを徹底しているから
大した人数を送り込んでいるわけでもなかった。
それに、今回はセンとライリーもいない。お約束として必ず来るはずの
2人は別の巡回に行ってしまったため、あたしの分隊のみ出向いた。
前回の交戦もそうだったが、エリア情報でも山側からの襲来が多く、
ここも狙われる機会が頻繁ひんぱんにあったため気も許さずに待ち伏せした。

しかし、今日も目標は現れなかった。
特徴から夜間だけ活動していると知って0:00の時に哨戒を始めても
3時間の捜索と張り込みも無駄に終わってしまう。
見直しのため、改めて黒塊の出現ルートと時間の割り出しで
作戦後に再びミーティングを行う事にした。


シガCN短浜エリア駐屯地 会議室

「あんた、出だしに1分遅れたでしょ?」
「立ちションしてた、悪い悪い」

 室内の隅でヤエがアイザックに文句。
定時連絡に遅れた模様で、悪びれる様子がない。
だが、他のCN達の様子もまんざらではないようだ。
行動がバラバラという意味だけど、連携不足が以下の様になっているから。

「・・・なにコレ?」

あきれた目で見ていたヤエ、定時連絡表を確認すると
ものの見事にバラバラな時間帯で連携のレの字もとれてなかった。
現場で散開し始めてから巡回ルートもおかしな方向へ進んだり、
彼のようにダラダラとしてる者がいたりとまとまりが悪い。
シズルも溜息しかでない。

「もはや、伝統行事ですわね」
「だいたい、うちらって最初“こちら○チーム”とか言ってないでしょ?
 声だけでどこのチームか分かってるからって省きすぎじゃない!」

最初のテーマはその議題になったようだ。
理由は当然、前回と違う兵ばかり来るからそうやって細かく崩れてしまう。
今回はロスト者がでなかったものの、身内の固め方が成ってなく
集合や散開が遅れ気味になりつつある。
近江のぎ連携の反省会など、意味があるのかはともかく
これでもかという程に実態のない敵に振り回されるのもウンザリしていた。
あれから出現場所も特定できずにいて、攻めるべきCNも見つからずに
実在する物理的黒い影に翻弄ほんろうされてゆくのみ。
誰もが同じく状況を飲み込めずにいる中において、
1人だけ先陣をきるアイザックが思いもよらない言葉を口にした。


「サイレンスだな」
「え?」

黒い装甲兵をそう揶揄やゆして名付け直す。
“沈黙”という意味をもち、第3言語に変えて意味付けようとした。
普段からの言い回しもだけど、遠ざかる様にわざわざ変換した理由は
相変わらず理解できない。ヤエは意味不明な感で返しを行う。

「何よ、そのサイレンスって?」
「沈黙の装甲兵。今後にネーム決めないなら、
 一応、それをコードネームにしておこうぜ」
「それだけ?」

何の意味があるのか、ここで再登録させようと決めた。

そしてミーティングが終わり、各隊員も拠点を後にする。
草木も眠る時にもかかわらず、人気は多い中で駐屯地から
ぞろぞろとした足取りで帰ってゆく。勢いなのか、オペレーターも
トイレや報告などで席を立ち、一旦部屋から出ていく。
ついモニターが消されずに表示されたまま残ってしまう。
遅れてアイザックの手入れも無事に終わり、ロビーに戻ってくるや
ふとその画面に目を向けた。

「!?」

――――――――――――――――――――――――
Scheduled contact

オオサカCN 0 35 10 45 20 Return
キョウトCN 1 51 42 33    Return
シガCN   0 47 34 22    Return
ナラCN   0  0  0  0    Return
ミエCN   0 43 26  9 52 Return
――――――――――――――――――――――――

各CN兵士の定時連絡の時刻を見て姿勢がピタリと止まる。
数字の並びを1つ1つ凝視していく内に、
彼の中に1つの確信が生まれた。

「「あちゃあ・・・決定的だな、こりゃ」」


数日後 オオサカCN セン家

「というわけで、弾薬リソースの出所の一部がキンイチ司令の許可を
 通してなく持ち運んでいる可能性があると思います。
 ここオオサカのどこからか出てきている証拠です」
「なるほど、裏稼業に手を染めているのがこの界隈かいわいにいるとは」

 ヤエがヒトミにリソース情報を伝える。
黒兵関連から分けて今度は最近の資源貿易について話していた。
大規模同盟から色々な資源が行き来するようになって、
それぞれ関わる場所についてどうなのか感想をうかがう。
しかし、CNを通さずに勝手に流通している不審な動きもあり、
どこがおかしいのかOBと相談しているようだ。
寝そべりながら2人の会話を盗み聞きするライリー。
前で模擬刀の素振りするセンに内容を聞き出した。

「あの2人、何の話してんだ?」
「・・・・・・」

こたえない、聴こえているのは分かっているはずだが
どういうわけか今日は口数が少なく思えた。
理由は分からないが、あいつは何か考え事をしている時とかに
そういった態度に出る。あの話の事で気になるものでもあるのか、
無言のまま練習を終えた後に出かける支度をし始めた。

「ちょっと出かけてくる」
「おい、どうした?」

俺も置いて出かけようとする。
自分だけで解決しようとするはずだと直感ですでに分かる。
しかし、今のこいつはいつもと様子がおかしい。
理由も分からず、行き先へただ追従するだけだ。


市民街

「薄明現るやっこ
 火を見るよりもぉ明らかにぃ♪」

場面は変わり、市民街では多くの人が変わらずに商いをする。
昔の時代でいう文化とよばれる光景はここ、オオサカも1つで
時代に関係なく高所で芸能を披露する市民。
オオサカの者達によって、いつもの通り賑やかに街をいろどっていた。


玉響

「では30Pになります」
「はいよ」

当てはまる1つとなる場所はいつも茶を飲んでいる和菓子屋。
いくつかある飲食店のここは変わっていない外見。
そこそこの人入りで対応しながら店員は精算を済ませて奥へ戻り、
黒い箱に手を伸ばしたその時だ。


ガシッ

「!?」

店員は腕を掴まれた、突然の光景に思わずギョッとする。
腕の先にいたのはセンだ。










「やっぱり、キョウトに輸出していたのはあんたか!?」
「・・・・・・」

俺は以前の店員の態度と資源近況からここを疑った。
かつてキョウトでチェリービーの弾を製造していた話を以前聞いて、
母とヤエ姉の話の一件が絡んでいる線を前から疑っていて、
思い当たりそうな組織を考えていた。
ヒントはケイがオオサカと対戦していた時、“もちが飛んできた”と
珍妙な供述をしていた事で今回の行動を起こした。
もちろん、本物の菓子を戦場で使う大馬鹿なんていない。
弾や部品を造る工場は兵器工房だけとは言い切れない、
例えば、物作り専門が近い技をもっている組織もありえるかもしれないと
わずかな予想をたぐってのり製造業で有名な場所を拾い、
疑いの線は真っ先にここ玉響、いつもの駄菓子屋だった。
ついてきたライリーは理解できずに、理由を説明させる。

「おいセン、事情を説明しろっての!
 なにがなんだか良く分かんねえよ」
「あんたを責めようと思わない。
 でも、教えてくれ。その新兵器の目的は何だ?」
「・・・・・・」

まさか、普段から利用する店が一枚絡んでいたのは誰しもが
意外と思わずにいられない。本部の承諾無しに他CNへの輸出は
許可されていないにも関わらず、余程の事情があるのではと
なかなか口を開かない店員をさらに問い詰めようとしたその時だ。










「その人を放してやれよ」

アイザックが現れる。
このタイミングでやって来たのは偶然か?
いつもはヘラヘラする顔の彼が今回ばかりは無表情そうな顔で忠告した。

「なんでお前がこの人と?」
「取引先だからだ、軍事兵器の末端でな。
 いきなり世話になってる店に来てどうした?」
「今、近江で不明の資源が流れてきてる、CNを通さずにだ」
「ああそれか、単にCNの確認が済む前になだれこんだだけだわ。
 確かにキョウトから未許可したモンも含まれてる。
 この玉響はチェリービーの弾薬製造してもらってるだけで、
 中つ国に警戒されて急にそうしなきゃならなかっただけだ。
 なんだ、母親代わりに来たのか?」
「違う、本当の事を知りたかっただけだ。
 俺は別に店の人をとやかく言うつもりはない。
 ただ、お前は少なからず俺達に話すべきだろ?」
「おいおい、何もそんな細かく伝えなくても良いだろ?
 俺は俺なりの行動をとる時もあるぜ。
 その件については極秘事項だったんだ。
 ・・・こっちの界隈に敵がいる可能性もな」
「何だと!?」

近江にスパイがいるとでも言うのか。
東からの仕業と思っていたものとは真逆な話だ。
ライリーが追及。

「なんで分かるんだよ?」
「ついでに、あれから黒兵をサイレンスと名称した。
 あの君吹山のラボがあったろ?
 当時、そいつは東からやってきたとみなして張り込みしてた。
 あそこは隣のギフへバリケードを張ってんだ」
「・・・・・・」
「最初はギフの奴らかなと思ってたが、反応はない。
 侵入された痕跡も全くない。でも、兵装は西以外の物も含まれていた」
「言ってる事が全然意味分かんねえんだけど?
 こっちに来てねえけど、部品が東ってなんだそりゃ?」
「よく考えてみろ、“東の兵装+侵入跡無し”と食い違うのは
 一か所だけの組織、工房で造っていない可能性が生じる。
 ありえる節じゃ、流通経路に紛れて途中組み立てで造った、とか。
 つまりだ、サイレンスを手引きしたのは東の奴等じゃなく西の誰か。
 ストレートに言って近畿の者によるってことだ」
「!?」

アイザックは黒兵の正体がこちら側の線を主張した。
説明は分かりにくかったが、部品を不特定にかき集めて主犯格の誰かが
タイミングをうかがってなりすまし、奇襲を狙ったという。
でも、物を造るからには何かしらの場所も必ず必要なはずで、
そこら辺の道で加工なんてしてたら一発で見つかるはずだ。
シガで遭遇した時、片腕に付けていた黒い刃もオオサカの幹部達が
どこで造られているか誰1人として答えられなかった。

「黒兵が・・・すでにこっちにいた、だと?
 あんな物、近畿どころか中つ国、四国、九州のどこにだって
 造っていないのは御目付けでとっくに分かってる事だ」
「だからよ、移動式で水石削るみてえにやってるんじゃねーかってワケ」
「どう考えたって無理じゃねえか、朧車おぼろぐるまでもあるみてえな。
 ん、待てよ・・・アイチの奴らもこっちに来てたよな?」
「製造経歴無っし、あったらとっくに追及してるっての」
「なら、どこなんだ!?」
「乱さねえでよ~く聞いてくれよ。
 こちらの上の見解で、黒兵は2人いる事が判明した。
 その1人はな・・・こっち関西にいるんだと」

こいつ及びキョウト兵の結果によると、最近発生した連続襲撃事件の犯人は
全て黒兵である線が濃厚のうこうになってきたと言う。
しかも、よりによって実行者は2人。
ライリーはあの時の様子をなけなしな気持ちで話す。

「「じゃ、じゃあ、あの山の時は・・・相手が2人。
  1人がこっち側の兵士だったってのか!?」
「「こっちに敵がいるなんて・・・馬鹿な」」
「俺だって最初は色々おかしいとは思ってたけどな、
 アレコレ詮索せんさくして確証が近づいてきちまったわ。
 こんだけ人が多いんだ。
 そりゃ、裏切り者の1人くらい現れてもおかしくはないだろ。
 裏屏風うらびょうぶは黒ってな」
「!?」

妙な言い方は頭の悪い俺達ですらすぐに分かる。
その一言を聞いた俺はアイザックに食って掛かった。


「言って良い事と悪い事ってのがあるだろ?」
「あん?」

俺もなんでこんな発言をしたのか分からない。
ただ、つながりに切れ目ができると思ったからだ。
ここは分裂すると抗争もひどくなる。まとまりが壊れたらCNすら
アッサリと無くなる恐れがあった。
それでも、アイザックは一向に動じず、淡々な口調で語る。

「まーた、“仲間を疑うんじゃねー”か?
 こっちにスパイがいる可能性だってあんだろー?」
「「いるはずがねえ、近江に敵がいるはずなど・・・」」
「残念ながら、物的証拠もあんだ。
 あの山で黒兵の腕部のパーツを手に入れた。
 成分分析の結果、近江周辺で採掘できる鉱石が含まれていた。
 製造元がすぐ近くにある証拠だ。
 冷静に見積もって考えりゃ、瞭然りょうぜんだぜ?」
「な!?」

さらに詰めてくる。
それを聞いたライリーはかんに障ったのか、アイザックに聞き返した。

「さっきから聞いてりゃ、ずいぶん知った様な口だが
 ずいぶんと詳しくねえか?
 ウラビョウブだかなんだかで、実は言ってる奴が黒とかよ」
「かもしれねえな~、アレか、第一発見者が犯人っつうオチもあるしな」
「冗談でも面白くねえよ、周りもだんだんとマジになってきてんだ。
 まさかと思うが、黒兵はお前じゃねえよな!?」
「ライリィ!!」

ライリーまでこいつを疑い始めてしまう。
もちろん、キョウトだってそんな異物など造っているわけがない。
こういったのも黒い疑問とでも言うのか、ハッキリした敵も理由も
観えなくなり本当にワケが分からなくなる。
3人共に視線は合わせているが、陰険いんけんさが増してゆく。
沈黙の先、アイザックの口から信じられない言葉を放った。










「俺を疑ってんのか?」
「んなワケじゃねえ・・・ただ、んな事言われりゃ
 納得いかねえに決まってんだろ?」
「おいおい、口から出たものが本当とは限らねえぞ?
 じゃあ、マジで俺がウソついてたらどうすんだ?」

まるで自分が犯人とミスリードさせる言い方だ。
ただでさえ被害が広がって疑心暗鬼を生ずる場なのに、
火に油を注ぐ態度でこの状況を乗り切ろうとする。
そこから先は話題がない、迫ったところで確かに答えなんて
見つけようがなかった。

「まあ、店員の件はホントにその通りだ。
 オオサカもちっと頑固一徹がんこいってつすぎて融通利かねえし、
 作戦展開も多少自由にしてほしいくらいだわ。
 んじゃあ、今日の用件は終わり。あくまでも仕事ってそんなだから、
 この人をあんま悪く思わないでくれ、じゃあな」
「・・・・・・」

そして店から出ていく。2人は追いかけもせずにたたずみ、
そこに残ったのは沈黙と重い空気。
何よりも重いのは、事実を言われて残った者達の心境であった。
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