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3章 東西都市国家大戦編

第2話  紛い物

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ホッカイドウCN拠点 レイチェル個室

カタカタカタ

 レイチェルはヒストペディアでデータ管理と閲覧を操作している。
1つに統合された関東CNの情報を閲覧し、これからの整理のために
装備や兵士の配置を模索していた。
ホッカイドウはA.D0年から100年もの間ずっと独立を続けて、
ひたすら地元のために尽くしてきたものの、不慮の事故により
改めて周囲の助力を求めて命を留める。
軍事協定は成功できて南部と関東、中部と結びつく事ができた。
備品の特徴も本当に特殊でよく発明できたと感心。
自分も何かしら将来のためにできる事はないかと調べている内に、
同盟から他の技術に目を配らせている内に関東兵が装備する技術、
ソリッドワイヤーの情報を観て疑問をもった。

 (伸縮性をもつというワイヤー、グンマCNから群生する木より
 産出している・・・どこからこの様な性質が?)

報告ではリグナムバイタという名の木らしい。
どういうわけか他CNには1本も生えてない事象に興味をもつ。
かなりの強靭きょうじん性ある植物で色合いからして周辺の物とも異なるのは理解。
向こうでは数十mの間隔を立体移動するために用いていて、
現場で観ても伸縮性がゴムと同等に感じてはいた。
にもかかわらず簡単に千切れずに金属性も含めているそうで、
原子顕微鏡で内部を確認すると若干の光が観える。
拠点で管理しているというこれは通常の茎とは異なる繊維質で、
簡単には切れない仕様に、とてもこの時代の文明レベルとは思えない
ほどこしが成されているツールだ。
室温で育てたようで、栽培方法は通常の木と変わらない。
しかも、グンマの関係者以外でワイヤーフレームをすでに利用。
もう関東でも配布されていたそれであったが、噂ではこなれたかのように
巧みに操る熟練者が関東兵としている噂も聴いていた。

 (あら、この子はあの時の?)

兵士の個人情報を調べている内に、チバ兵の情報に目が留まる。
レッドだ。
以前、ホッカイドウに同盟勧告として訪れてきた者だが、
あの子は地元でも鳴り物入りでCNに参加してきた者らしい。
手違いで東北に進出してきたと言っていたが、最終的に同盟まで
成功させた功績もあって自分も少々気になり始めてゆく。
基本情報とは別の項目に内容が付け足されているのを目にした。

 (特異体質をもつ人・・・?)

目の虹彩が赤く、反射神経に優れている性質との事。
原因は不明でチバCN西部の川から流れてきたらしい。
東北同盟時にエリザベートを抑えただけに、かなりの実力者と判定。
最初に会った時も外見が少し変わった子だと思っていたが、
くまなく見ている内にその特徴的な体質に興味をもち始めていた。


チバCN拠点 レッド個室

 寝たまま天井を眺めているレッド。
今日は休暇で特別する事もなく自室で休憩をとっていた。
トウキョウ襲撃から数か月が過ぎて荒れたエリアの整備も
多少復元し直して手伝い続けていたばかりで別の事をする気も減る。
見た目は普通に直せられるけど、人だけは直せない。
必ずと言っていいほど他からの介入で割り込まれて削られているから。

 (人に与えた珠罪しゅざい・・・一体何なんだ?)

そういえば、この言葉の意味もよく分かっていない。
チバCNに従事してからしばらくだが、相変わらず行動理念を
形に目で見られる機会は見えてこなかった。
周りの人達に聞いても誰1人として説明できずに、奇妙な単語の名の下で
軍事行動をやらされて物や人の取り合いが行われる。
罪とは、悪い事をした行為の事で生きているだけで罰せられる。
何もしないのが悪いからか、ナマケモノを取り締まりしたいのか。
そこはまだしも、珠の部分が一番よく納得できずにいた。
トオルの話では丸いという意味をもってそこから先は不明、
罪のどこが丸いのかすら共通点がつなげられずに皆はそのままおざなり。
記憶を失う前の自分は分かっていたのか、生きる目標をどこかで
抱えてそれぞれの生活を送ってきたのかもしれない。

ここに来てからどれだけ経っただろうか。
今までの出来事を振り返り、等し方得た経験をまとめて保つ。
とはいえ、火の粉が全て消えたとは言えずに、
覚えもないまま世界情勢に身を置き続けてきた。
トウキョウの攻撃で壊滅されかけたとはいえ、
どうにか凌げて生き残った人と協力し合ってこの場を保てている。
100年も1つの身だけで今までよく他と敵対し続けてこれたと思う。
手を組んできた他のCNもだいぶ多くなっている。
クリフの救出も課題の1つとしてするべき軍事行動を
今更ながら考えなければならない。
全CNの現状は今どうなっているのかタブレットで調べてみた。


(・・・・・・ほぼ二手に分かれている!?)

最新情報を観て、分けられたエリアの二色に驚く。
東の青、西の赤と同盟国が綺麗なまでに左右表示されていた。
なら、自分が本来いたCNも同じか、向こう側の色か。
出生も思い出せずに、流れてきたチバの一角で身を置き続けて
天主殻CN法の無理矢理な成り行きのまま引きずられている。
ただ1つ思ったのは、こんなに2つどうし膨らんで大きくなったから、
何かのきっかけで衝突も大きく発生するかもしれない。
手を結ぶ事はとても良い事だけど、兵力も火力もその分増していて
もっと大きな影響があるくらい予想が付く。
次はどう動いて変わるのか目で2色の境目を観ていると。

コンコン

「レッドさーん、起きてますか?」

ノック音と同時にトオルが部屋に入ってきた。
同じく休みだったあいつは関東軍備について話があると言う。

「任務がきたのか?」
「いえ、同盟CN達の再配置の結果がでたようです。
 念のために早めに知らせようかと思って来ました。
 ここは今まで通りイバラギ併合のままだと」
「そのままか、てっきり東北に異動させられるかと思ってたけど。
 土地は見捨てられずに組み込まれていくな」
「そうですね、仲間達が増えていくのは良い事ですけど、
 イヤな関係に成らなければ嬉しいです。チバやイバラギの件も・・・」
「ハハハ」

関東では各兵士達が自らの拠点に戻り、体制を整えていた。
各CNの司令官達が集い、会議の結果、新たに総司令官が選ばれたという。
チバはイバラギの傘下といっても東北とも連合、そこも含めて総合する
中でまとめ役を選抜していたらしい。
一応詳しく知るために拠点へ行ってみた。


チバCN拠点 ロビー

「関東の総司令官はレイチェル司令に決まったって?」
「そうみたい、全同盟CNの適性指揮判断力を査定して、
 一番能力が高かったのがその人だったんだって。ホッカイドウの人」

 関東は新たに総司令官を着任する事を決定した。
東北戦の現地で一度会ったあの司令官が選ばれる。
女性でありながら、その施策しさく判断力にひいでた人物。
あの人が関東の総まとめ役になるのだから、頼もしさが増すものではあるが、
同時に貿易や兵士の流れが変わっていくので
またまた部隊編成が行われる可能性が浮いてくるはず。

「確かに敵性から一番離れてるのもあるけど、あんな優れたスナイパーとか
 育てていたくらいだから人材育成に着目したんでしょ。
 かなり面倒見が良くて優しいし」
「そうかもな」

そんな結果のこれからについてどう動くのかが気がかりだ。
続けてカオリが近況を語る。

「あれから整えが終わってここも落ち着いてきたわ。
 トウキョウへ報復しない限りは面目めんぼく丸つぶれよ。
 チバ直接の役目はクリフ隊長の奪還だけどね」
「なんで、クリフを連れ去ったのか心当たりはあるか?
 用があるなら知り合いだと思うが」
「分からない、あの人は家族について何も言った事なかったし。
 だけど、今のあたし達ではどうにもならない。
 ナミキの司令も言ってたけど、単独行動は控えろって。
 今のところは地元で待機していろってさ」

ピピッ

イバラギCNから連絡がきたようだ。
関東近海になにか異変があったらしい。

「噂をすれば、またそのナミキ司令からよ。
 指令室まで来てほしいと」
「何の用だ?」


指令室

「「敵性CN・・・の反応なのだが、なにやら様子が変だ」」

 西からやって来た敵兵の反応があったが、妙だという。
チバCNに数人入ってきたのだが、兵装もなく無力的で
侵攻しに来た様子は見受けられない。
モニター画面の赤い円がゆっくりとチバCNの南部へ
直に近づいてくるので、不気味な感じがした。

「「その反応が君達のエリアへ向かっているようだ。
  現地で確認してもらいたい」」
「了解、でもなんか変よね。いつもと速度が違うし、
 戦艦で来てるようにも見えないけど。
 敵兵達は武器も構えず、ただ移動しているだけ?」
「とにかく行ってみない事に変わりはない。
 俺がすぐに向かって行こう」

陽動作戦の疑いの声もある中、先功をきろうと判断したレッドの
意向をくんだチバ兵は直に会いに行こうと判断した。


チバCN亀川エリア 沿岸部

 そして、レッド含む30人の部隊が海沿いに到着した。
ここの偵察班がすでに待機していて対処の準備が整う。
目前には確かに人の像、どこかの兵士達がいるのが分かる。

 (こんなときに誰が?)

影はますます近づいてくる。
海岸からどこかの兵士らしき者達が数名船から降りてきて
とても悪そうな足取りでトボトボと歩いて来た。
戦意は感じられず、潜入する気すら見られない。
武器も抱えず、弱った足取りで彼らは声をあげてきた。










「た、助けてくれえぇ!」
「!?」

目の前に現れたのは兵達だった。
オペレーター事前情報では中部CNの服装と予測していたが、
言葉からして敵意はなく、兵装もろくに備えていない。
まるで命乞いのちごいをするかのように、近海からここまで辿って
何かにおびえながらやって来たのだ。


キョウトCN拠点 工房

 その頃、関西では各地域でいつも通りの流れを見せていた。
情勢もこれといって大きな動きはなく、割と平穏な状況下だ。
だが、その内のキョウトCNでは数名の者達が資源について注目していた。
アイザックと技術班達が検証を行っているのは以前ラボリの物、
あの黒兵から奪った腕のパーツだ。

「テクタイトってか」
「山周辺の地表で主に採掘可能な鉱石だ、黒く光沢ある特徴をもって
 必ずしもそういった場所で滅多に採れる代物じゃない。だが・・・」

テクタイト、隕石の衝突で生成されて地上付近でまれに採掘できる
ほぼガラスでできている物質だ。大昔でも装飾や器などに用いられて
アート観念をもつ連中に評価されてきた物の一種でもある。
ここ周囲では山岳地帯でたまにしか掘れない代物ではある。
しかし、その性能に解析班達は疑問の山だらけだった。

「実に懐疑的かいぎてきな装甲なんだ。
 正直、防弾はおろか打撃にもまともに対抗できないほどにもろい。
 合金として成り立っていないレベルにだ。
 戦闘としては負担が大きすぎる」
「奴のスピードが速かったのはそのせいなのか。
 が、だからっつってそんな装甲で渡り歩くのもナンセンスすぎるわ」

君吹山で観たあの素早さには見張るものがあったが、
戦闘用として扱うには無理がある性質だ。
黒ければ夜間活動にもってこいなのは分かるものの、ガラス質を合金製に
組み込むのもあまり良い装甲とも言えない。
テクタイトの採取エリアもそれほど多くあるわけでもなく、
まるまる1体分を造り上げるのに相当な回収が必要だろう。
偵察用、奇襲用、いずれの仕様として造ったのは推測できるが
どこで製造したのか判明できない。
キョウトモブ工作兵も貿易関係を探る方を挙げるが、無理があると言う。

「交易内でテクタイトを発注するCNなんてどこにでもある、
 ただ、どこも微量すぎて疑おうにも量が少なすぎて証明しきれないぞ」
「そうだな・・・っていう線なら」

頭をかいた後に自分は何かを思いつく。
そして、技術班に面を向けつつメンバー達にこう発言する。

込みといくか」
「カコイだって?」
「ああ、そのまんまの意味だ。俺的カッコイイが含まれるセンスある
 オブジェを試そうかと。だから、アレを作成してみるわ」

アレという実に簡素な代名詞。
前回でも発想の転換で黒兵を少し追い込んだお手製電磁罠みたいな
アイデアを促す彼の作戦に周囲は反論なく耳を傾ける。
いつも単独行動ばかりしている男の言動も良い意味で磨きを増して、
対黒兵の対抗策を今から移そうと画策かくさくしようとした。


キョウトCN拠点 ロビー

「「そっちじゃ、そういう動きになったの?」」
「しばらくは黒兵を追跡するわ。
 オオサカのお偉いさんに言っといてくれ」

 場所を変えてオオサカの陣営に先の作戦を伝える。
謎が謎をよぶ黒兵の素性すじょうを調査する方向にもっていくと言う。
シガCNでの交戦で手に入れた物の出元を探ろうと貿易ルートを
手当たり次第洗ってみようとまとめCNにも連絡した。
シンプルな話、そういった事をしたいから相談しやすそうな者に言って
強面の司令官からの免除や許可を通させようとするのはキョウト司令官も
含めた要請でもあって、ちょっとした裏技を編み出していたからだ。

「「なに、宛先あてさきでも見つかったの?」」
「まあな、テクタイトっていう鉱石知ってるか?
 オオサカはその出処を調べる気はないか?」
「「私はよく知らないけど、それが原因なのね?
  一応掛け合っておくけど、ソースはあるの?」」
「いや、出元の特定はまだねえけどな。
 まあ言うならば、どさくさ紛れがいるかもしれねえ」
「「黒兵探しね、あれだけ引っかき回したんだから」」
「奴はあまり遠い場所から来たわけじゃなさそうだし、
 石堀り好きの隙を突いてしばらくモグラ叩きするかもな」

一応ダジャレで言ってるつもりだが、生産地関係を調べるという要約。
だから、一応まとめ役であるオオサカにウマを伝えて了承しろと伝えた。

「「なんか引っ掛かる言い方ね、まあいつもの事だけど
  キョウトで何かやるつもりなの?」」
「キョウトだけじゃなく、各地での話だ。
 俺はかなりでかくて厄介な仕掛けを施してる奴がいるとにらんでる。
 CNも短期でこんな同盟しまくって大返し企む奴とかいそうでな。
 前から思ってたが、着火点っつうのは静かに起こるもんだ。
 イキナリ出っ張ってキレイに思わせるのが花火だしな。
 これは俺の勘だが、ワンイベント起こりそうだぜ」
「「というと?」」
「近い内に大きな合戦が起こるかもしれないわ。
 新資源、新技術はいつも火種になるのがつねだからな」
「「ちょ、変な事言わないでよ!」」
「「もしかしてだ、ハハハハハ! んじゃあな」」

ヤエとの通信が終わる。基地の周辺に視線を向けて
いざ外に出ようと思いきや、もう一度通信を始めた。

「あーもしもし・・・できたか?
 分かった、さっそく取りに向かうわ!」

二言三言ふたことみことだけの会話を済ませただけで、通信を切る。
拠点入口の検問所の兵が最近活動的だなと注目して観ている。
再び何か準備を始めようとブーツをみがいた後、
アイザックは拠点を出てどこかへ向かって行った。
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