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2章 関西統一編
第19話 2の帰還
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「眠った!?」
「麻酔!?」
犬兵団が1匹を除き眠っていく犬を見てあっけにとられた。
現れたのは1人の男、森で行方不明になっていたはずの
ヤマグチ兵の姿があった。
「シンジ・・・本当に帰ってきたんだな」
「こちらヤマグチCN偵察兵隊長、ただいま帰還しました!」
「ううっ、ぐすっ」
数歩踏み出して、感極まったケイはシンジを抱き寄せた。
同じCNのヤマグチ兵も驚きの顔をしている。
「おめえ、生きてたんか!?」
最初の火付け役の当人達が最も驚いている。
ロストされたと思っていた男がひょっこりと帰ってきたのだから、
当然であろう。
いつの間にか合流していたエイミーが当時の話を説明する。
「私が森で彼を見つけて救助したんです。
容態もすっかり良くなってなによりです!」
「って訳だ」
「・・・・・・」
つまり、敵に助けられた訳だから攻撃する理由が無くなる。
戦闘という場がこじれてしまった。
闘争心は止まり、状況を先導しようとするシンジが言葉をだし、
撤退しようと言う。
「ここは1つ痛み分けという事で身を引かないか?」
「え?」
「どうせ、またこっちからちょっかい出しに来たんだろ。
ウチらのやり口だから、お生憎様だもんな」
「まあ・・・そうだけど、こんな終わり方で良いのか?
本部から言われなきゃ無理だろう」
「これだけ損害を与えてしまったんだろ?
なーに、こっそりトンズラすりゃバレねーよ」
シンジは今回の規模がどれだけ大きいか分かっていないだけに、
ケイは突っ込みを入れつつ現状を教えてみせる。
変わらずな態度で、やるべき事もそのままスルーを推し通し
メンバー達にすぐに身を引くよう敬礼しながら荒くれ同胞達に
退散する要請をした。
「えー、自分はここ九州兵によって一命を取り留めました。
よって、今回の侵攻を止め、撤退する要請をします!
ヤマグチCNとしてッ!」
「おめぇ、ウチらのモンがやられてんねやぞ?
ここまで来てイモ引けってのか!?」
「そこをなんとか・・・事実、俺は遭難しちゃって
逆にこの人らに助けてもらったので」
「ワレ、ヤマグチの誇りはないんか!?」
「いや、先にちょっかい出したのはアンタ達で――」
「「おい、敵前で身内揉めかよ・・・・・」」
ザワザワ ガヤガヤ ヤンケ
内輪で悶着が始まってしまう。
目線がいっせいに散らばり始めて別の争乱が生まれる。
中つ国のいざこざが続き、九州兵はやり場のない空気に包まれた。
ピピッ
怒声が行き交う中、互いの無線から連絡が入ってきた。
「「こちら近江CN、隊員達全員拠点に戻れ!」」
「「中つ国CNの兵士も撤退して下さい」」
近江と中つ国CN達の通信に撤退の言葉が飛び交う。
突然による司令官の撤退命令。
もとい、ヤマグチ兵の勝手さを司令官達の介入で中止させた。
「なにがどうなってんのかいや!?」
「えー、九州各隊員へ、すぐに帰還しろ。繰り返す、すぐに帰還しろ」
「・・・・・・」
「「前もこんな展開だったな・・・」」
同様に九州兵にも撤退命令がふれ渡りだす。
帰り際、ケイはシンジを助けてくれた女性兵の面の前方に向かっていく。
そして、一礼をして一言告げた。
「あのー」
「はい?」
「シンジを助けてくれてありがとうございました」
「どういたしまして!」
彼女は微笑んで言い返す。
笑顔を見る自分の目からは少なくとも眼鏡奥の彼女の目に
敵性など微塵も感じられない表情だと分かった気がした。
カガワCN ウォーターガーデン
「セイヤッ!」
ガキンッ
「ふんっ!」
ゴスッ
「ごはっ!?」
「すばしっこい奴め・・・」
近畿と四国の攻防はまだ続いていた。
ウォーターガーデンで人型と本物の人における戦闘が展開。
少しずつ絶妙な間合いで舞䢮を振っては距離をとる近江兵。
ライオットギアに有効な手を未だに見いだせない状況下にあった。
センは利用できそうな物、地形を見回す。
(水か・・・)
この辺りは満たされた水で作物を管理しているのは
オオサカの調査で分かっていた。
だが、今の兵装でこなせる事などろくにあるはずもなく、
場を克服するきっかけが欲しいのだ。
(なにか・・・なにかあるはずだ)
頭の良し悪しではなく、“常にフル回転しろ”というかつての
母の言葉を思い出す。
相手を脅かす手段、根拠など大層な具を拭く余裕もないが、
何かしら中型の機械相手に与えられる功を見つけようと
片手にある武器でがむしゃらに振りかざした。
「痺れろォ!」
ビリビリビリ
「感電か!?」
水面から足を放し、舞䢮を突き刺した。
今回は直接感電を狙って機体にダメージを与えようとし、
一瞬にして張り巡らせた電導が複数の機体を通して回る。
「うわあああああ!」
電撃が機体に迫り、鈍い通電の音が聞こえている。
勝機を見出したかと痺れている様を見た時だ。
ガシッ
「!?」
「残念ながら、この機体は耐電でな」
タカの機体の手が3人をわし掴みする。
絶縁体の保護膜で雷撃は中の者までには届かず、効いていなかった。
アイザックは奥の手を発動するつもりで片腕を服の中に入れる。
(ピンチってか・・・こうなったら)
機械の腕力は優に500kgを超える。
打つ手がなくなった近江兵に終止符を打つべく、ヒロが真っ先に
拳を振り下ろそうと腕のモーションをゆっくりと上にあげる。
「これで終わりだ!」
「チクショオオオオオオオオオオオ!!!」
「「ここまでか・・・」」
ピピッ
「ん?」
通信から撤退の指示がきた。
四国CNと近江CNによる撤退という連絡網が行き届く。
グオッ ピタッ
「!?」
機械の拳を寸止めするヒロ。
アイザックの懐の中にある物を止める。
撲死を覚悟していたオオサカ兵に対して重い口調で話を始めた。
「そっちも・・・そっちも好んで命を奪っているわけじゃないのは
分かっている」
「ヒロさん・・・」
「・・・・・」
「まあ、こっちも歳だ。お前達はまだ若い。
こんな単純な手で引っかかるんじゃ何度もロストするぞ」
子どもの命を奪われた親の憎しみは尋常ならざるものではない。
そこをあえて踏みとどまるヒロの心情は“寸止め”という、
聞き出す尋《ひろ》さより動作の中に集約されている。
「隊長、どうする?」
「そうだな、放してやれ」
ポイッ ドサッ
「んおっ!?」
「今日はこれくらいで勘弁してやる。さっさと帰るんだな」
「・・・・・・」
地面に放り投げられた。
四国のライオットギア達は次々と退散する様子が見えてくる。
タカは3人とキョウト兵達を高齢者の貫禄な見逃す態度で
一言告げて去っていった。
「・・・助かったのか?」
「ま、楽しい冒険だったなー♪」
「ふざけるな・・・」
地べたで這いずるのも久しぶりだ。
昔でいう負け戦、命あっての物種は戦争にかけがえのないもの。
若い俺達にとっては幸運とよべるものである。
納得も満足もできないショウタをカルロスは茶化しを混ぜつつも
低センスに慰めながら帰路にたどり着いた。
九州地方上空 星団艦内
上空で中つ国が帰還する姿を見ていた精鋭達がいた。
予定外に下の者達が撤退をしていく姿を見て、
エイジは艇を引き上げるよう指示する。
「邪魔が入った、退くぞ」
「了解」
(良いとこだったのにチクショー)
「・・・・・・」
独自行動していた星団にとって、楽しみを取られただけだが、
地理情報で色々得られたデータもあり、
今後の展開として活かせるチャンスが巡る。
どう動くのかはリーダーのエイジに委ねられているのみ。
カナは星団の活動を見守るだけで静観。
メンバーはいつも通りの作業に戻っていく。
フクオカCN拠点 演習場広場
九州兵の多くが最寄りに近いフクオカに集う。
帰還の確認、収集物の成果など様々な処理もあるが、
中にはあってはならないモノも回収しなければならず。
辺りに悲鳴が響き渡る。
近場とスペースの都合、広場に戦後の遺物は集められる。
もちろん、無機物だけでなく有機物の帰還も同様。
仲間の死に叫ぶ九州人にマサキ達もその1つに含む運命が
あっさりと待ち受けていた。
「シゲ隊長おおおお!」
「「まさか・・・この人が」」
「・・・・・・」
フクオカCNに次々と運ばれてきたロスト者達の遺体。
中にいてはならない1人の姿があった。
前線を務めていたカゴシマCNの隊長シゲだ。
シゲ ロスト
「「守り切れなかった・・・すまない」」
護衛のケンジは言い訳する気もなく、結果の一言を放つのみで後は沈黙。
彼を見たマサキは責めるわけでもなく、どうにか言葉を送る。
「そうでもない・・・よくやってくれたよ」
「「俺には・・・分からねえ。
何故、本部はあの時撤退命令を下したのか」」
「逆に良かったって考えようよ。
あのまま続いていたら、あんたも同じ目に遭ってたのよ」
自分はフクオカで起きた事をミキに話していた。
“同じ目に遭った”、という言葉はケンジにとってより痛くなる。
「・・・・・・くそっ!!」
ミキの言い分は遠からず当たっていた。
中つ国CNの強豪であるトットリ兵とは戦力や武装の相性など
あまりにも分が悪すぎだったのだ。
数日後
戦乱から人々の不安がまだ残されている日にちが過ぎる中、
4つの連合国の間に通知が来た。
内容に兵士達は目を見開いて成り行きの根本不明さに唖然とし、
また怒号を上げる者など騒然とした空気に覆われる。
「なんだそりゃ!」
「九州、中つ国、近江、四国・・・同盟・・・だと!?」
「これ、何なの・・・?」
司令官のアナウンスが流れる。
あれだけ戦い合っていた同士が突然同盟を取り組むというのだ。
「俺は・・・納得いかねーぞ!」
「ケンジ・・・」
ミヤザキ演習場でケンジが叫ぶ。
部下達をかえりみずにどこかへ去ってしまった。
同じく他のCNにも驚嘆の声が上がっていた。
同盟の知らせは四国CNにも届いていて、初老陣複数の耳も
ボケが始まったのかと疑う者が増えてゆく。
「西が・・・全て結合しようとしている」
「何故、いきなりこんなに?」
スイレンとタカも上の方針に疑問。
S-001の墜落もろくにお叱りされる事もなく、
オペレーターからも事務処理で話せないと言われた。
うって代わり、近江CNは意外にも想定内な雰囲気が早く伝わっていた。
というのは、あたかも情勢がそんなに長くもたないと知ってか、
1人のキョウト兵がまるで先読みしてましたと言うばかりに
予告するごとく触れ回っていたからだ。
「な、言った通りだったろ?」
「お前は預言者かよ!?」
自慢げに語るアイザックに周りは関心をもっていた。
また代わり、側で座って目を瞑っているセンは静かだった。
「・・・・・・」
特に何も思っていなかった。ただ、感じてはいた。
同盟の話を聞いた直後に訪れたうねり上がる巨大な何かを。
「あんた、四国で負けたのがよほど悔しかったの?」
「・・・・・・いや」
理由は定かではない。
同盟という上の行動が何故今になってこれ程多く頻繁に締結しているかが
下の連中を納得させずに続いていたのか。
難しい事情など理解できるはずがない俺なりの感性が
第何感という頭のどこかで感じているだけだ。
オオサカCN拠点 指令室
「・・・・・・」
モニター画面に表示されている地図の至る所に同盟の二文字が
多くなる様子を静かに観ているキンイチ。喜びとも不安ともいえない
表情が何を意味しているのかは誰にも分からない。
(あれが締結のカギになったもの・・・なんなんだ?)
オペレーターは司令の顔を見た後にもう1つの画面を見直している。
他のモニターには奇妙な黒い物体が2つ映し出されていた。
「麻酔!?」
犬兵団が1匹を除き眠っていく犬を見てあっけにとられた。
現れたのは1人の男、森で行方不明になっていたはずの
ヤマグチ兵の姿があった。
「シンジ・・・本当に帰ってきたんだな」
「こちらヤマグチCN偵察兵隊長、ただいま帰還しました!」
「ううっ、ぐすっ」
数歩踏み出して、感極まったケイはシンジを抱き寄せた。
同じCNのヤマグチ兵も驚きの顔をしている。
「おめえ、生きてたんか!?」
最初の火付け役の当人達が最も驚いている。
ロストされたと思っていた男がひょっこりと帰ってきたのだから、
当然であろう。
いつの間にか合流していたエイミーが当時の話を説明する。
「私が森で彼を見つけて救助したんです。
容態もすっかり良くなってなによりです!」
「って訳だ」
「・・・・・・」
つまり、敵に助けられた訳だから攻撃する理由が無くなる。
戦闘という場がこじれてしまった。
闘争心は止まり、状況を先導しようとするシンジが言葉をだし、
撤退しようと言う。
「ここは1つ痛み分けという事で身を引かないか?」
「え?」
「どうせ、またこっちからちょっかい出しに来たんだろ。
ウチらのやり口だから、お生憎様だもんな」
「まあ・・・そうだけど、こんな終わり方で良いのか?
本部から言われなきゃ無理だろう」
「これだけ損害を与えてしまったんだろ?
なーに、こっそりトンズラすりゃバレねーよ」
シンジは今回の規模がどれだけ大きいか分かっていないだけに、
ケイは突っ込みを入れつつ現状を教えてみせる。
変わらずな態度で、やるべき事もそのままスルーを推し通し
メンバー達にすぐに身を引くよう敬礼しながら荒くれ同胞達に
退散する要請をした。
「えー、自分はここ九州兵によって一命を取り留めました。
よって、今回の侵攻を止め、撤退する要請をします!
ヤマグチCNとしてッ!」
「おめぇ、ウチらのモンがやられてんねやぞ?
ここまで来てイモ引けってのか!?」
「そこをなんとか・・・事実、俺は遭難しちゃって
逆にこの人らに助けてもらったので」
「ワレ、ヤマグチの誇りはないんか!?」
「いや、先にちょっかい出したのはアンタ達で――」
「「おい、敵前で身内揉めかよ・・・・・」」
ザワザワ ガヤガヤ ヤンケ
内輪で悶着が始まってしまう。
目線がいっせいに散らばり始めて別の争乱が生まれる。
中つ国のいざこざが続き、九州兵はやり場のない空気に包まれた。
ピピッ
怒声が行き交う中、互いの無線から連絡が入ってきた。
「「こちら近江CN、隊員達全員拠点に戻れ!」」
「「中つ国CNの兵士も撤退して下さい」」
近江と中つ国CN達の通信に撤退の言葉が飛び交う。
突然による司令官の撤退命令。
もとい、ヤマグチ兵の勝手さを司令官達の介入で中止させた。
「なにがどうなってんのかいや!?」
「えー、九州各隊員へ、すぐに帰還しろ。繰り返す、すぐに帰還しろ」
「・・・・・・」
「「前もこんな展開だったな・・・」」
同様に九州兵にも撤退命令がふれ渡りだす。
帰り際、ケイはシンジを助けてくれた女性兵の面の前方に向かっていく。
そして、一礼をして一言告げた。
「あのー」
「はい?」
「シンジを助けてくれてありがとうございました」
「どういたしまして!」
彼女は微笑んで言い返す。
笑顔を見る自分の目からは少なくとも眼鏡奥の彼女の目に
敵性など微塵も感じられない表情だと分かった気がした。
カガワCN ウォーターガーデン
「セイヤッ!」
ガキンッ
「ふんっ!」
ゴスッ
「ごはっ!?」
「すばしっこい奴め・・・」
近畿と四国の攻防はまだ続いていた。
ウォーターガーデンで人型と本物の人における戦闘が展開。
少しずつ絶妙な間合いで舞䢮を振っては距離をとる近江兵。
ライオットギアに有効な手を未だに見いだせない状況下にあった。
センは利用できそうな物、地形を見回す。
(水か・・・)
この辺りは満たされた水で作物を管理しているのは
オオサカの調査で分かっていた。
だが、今の兵装でこなせる事などろくにあるはずもなく、
場を克服するきっかけが欲しいのだ。
(なにか・・・なにかあるはずだ)
頭の良し悪しではなく、“常にフル回転しろ”というかつての
母の言葉を思い出す。
相手を脅かす手段、根拠など大層な具を拭く余裕もないが、
何かしら中型の機械相手に与えられる功を見つけようと
片手にある武器でがむしゃらに振りかざした。
「痺れろォ!」
ビリビリビリ
「感電か!?」
水面から足を放し、舞䢮を突き刺した。
今回は直接感電を狙って機体にダメージを与えようとし、
一瞬にして張り巡らせた電導が複数の機体を通して回る。
「うわあああああ!」
電撃が機体に迫り、鈍い通電の音が聞こえている。
勝機を見出したかと痺れている様を見た時だ。
ガシッ
「!?」
「残念ながら、この機体は耐電でな」
タカの機体の手が3人をわし掴みする。
絶縁体の保護膜で雷撃は中の者までには届かず、効いていなかった。
アイザックは奥の手を発動するつもりで片腕を服の中に入れる。
(ピンチってか・・・こうなったら)
機械の腕力は優に500kgを超える。
打つ手がなくなった近江兵に終止符を打つべく、ヒロが真っ先に
拳を振り下ろそうと腕のモーションをゆっくりと上にあげる。
「これで終わりだ!」
「チクショオオオオオオオオオオオ!!!」
「「ここまでか・・・」」
ピピッ
「ん?」
通信から撤退の指示がきた。
四国CNと近江CNによる撤退という連絡網が行き届く。
グオッ ピタッ
「!?」
機械の拳を寸止めするヒロ。
アイザックの懐の中にある物を止める。
撲死を覚悟していたオオサカ兵に対して重い口調で話を始めた。
「そっちも・・・そっちも好んで命を奪っているわけじゃないのは
分かっている」
「ヒロさん・・・」
「・・・・・」
「まあ、こっちも歳だ。お前達はまだ若い。
こんな単純な手で引っかかるんじゃ何度もロストするぞ」
子どもの命を奪われた親の憎しみは尋常ならざるものではない。
そこをあえて踏みとどまるヒロの心情は“寸止め”という、
聞き出す尋《ひろ》さより動作の中に集約されている。
「隊長、どうする?」
「そうだな、放してやれ」
ポイッ ドサッ
「んおっ!?」
「今日はこれくらいで勘弁してやる。さっさと帰るんだな」
「・・・・・・」
地面に放り投げられた。
四国のライオットギア達は次々と退散する様子が見えてくる。
タカは3人とキョウト兵達を高齢者の貫禄な見逃す態度で
一言告げて去っていった。
「・・・助かったのか?」
「ま、楽しい冒険だったなー♪」
「ふざけるな・・・」
地べたで這いずるのも久しぶりだ。
昔でいう負け戦、命あっての物種は戦争にかけがえのないもの。
若い俺達にとっては幸運とよべるものである。
納得も満足もできないショウタをカルロスは茶化しを混ぜつつも
低センスに慰めながら帰路にたどり着いた。
九州地方上空 星団艦内
上空で中つ国が帰還する姿を見ていた精鋭達がいた。
予定外に下の者達が撤退をしていく姿を見て、
エイジは艇を引き上げるよう指示する。
「邪魔が入った、退くぞ」
「了解」
(良いとこだったのにチクショー)
「・・・・・・」
独自行動していた星団にとって、楽しみを取られただけだが、
地理情報で色々得られたデータもあり、
今後の展開として活かせるチャンスが巡る。
どう動くのかはリーダーのエイジに委ねられているのみ。
カナは星団の活動を見守るだけで静観。
メンバーはいつも通りの作業に戻っていく。
フクオカCN拠点 演習場広場
九州兵の多くが最寄りに近いフクオカに集う。
帰還の確認、収集物の成果など様々な処理もあるが、
中にはあってはならないモノも回収しなければならず。
辺りに悲鳴が響き渡る。
近場とスペースの都合、広場に戦後の遺物は集められる。
もちろん、無機物だけでなく有機物の帰還も同様。
仲間の死に叫ぶ九州人にマサキ達もその1つに含む運命が
あっさりと待ち受けていた。
「シゲ隊長おおおお!」
「「まさか・・・この人が」」
「・・・・・・」
フクオカCNに次々と運ばれてきたロスト者達の遺体。
中にいてはならない1人の姿があった。
前線を務めていたカゴシマCNの隊長シゲだ。
シゲ ロスト
「「守り切れなかった・・・すまない」」
護衛のケンジは言い訳する気もなく、結果の一言を放つのみで後は沈黙。
彼を見たマサキは責めるわけでもなく、どうにか言葉を送る。
「そうでもない・・・よくやってくれたよ」
「「俺には・・・分からねえ。
何故、本部はあの時撤退命令を下したのか」」
「逆に良かったって考えようよ。
あのまま続いていたら、あんたも同じ目に遭ってたのよ」
自分はフクオカで起きた事をミキに話していた。
“同じ目に遭った”、という言葉はケンジにとってより痛くなる。
「・・・・・・くそっ!!」
ミキの言い分は遠からず当たっていた。
中つ国CNの強豪であるトットリ兵とは戦力や武装の相性など
あまりにも分が悪すぎだったのだ。
数日後
戦乱から人々の不安がまだ残されている日にちが過ぎる中、
4つの連合国の間に通知が来た。
内容に兵士達は目を見開いて成り行きの根本不明さに唖然とし、
また怒号を上げる者など騒然とした空気に覆われる。
「なんだそりゃ!」
「九州、中つ国、近江、四国・・・同盟・・・だと!?」
「これ、何なの・・・?」
司令官のアナウンスが流れる。
あれだけ戦い合っていた同士が突然同盟を取り組むというのだ。
「俺は・・・納得いかねーぞ!」
「ケンジ・・・」
ミヤザキ演習場でケンジが叫ぶ。
部下達をかえりみずにどこかへ去ってしまった。
同じく他のCNにも驚嘆の声が上がっていた。
同盟の知らせは四国CNにも届いていて、初老陣複数の耳も
ボケが始まったのかと疑う者が増えてゆく。
「西が・・・全て結合しようとしている」
「何故、いきなりこんなに?」
スイレンとタカも上の方針に疑問。
S-001の墜落もろくにお叱りされる事もなく、
オペレーターからも事務処理で話せないと言われた。
うって代わり、近江CNは意外にも想定内な雰囲気が早く伝わっていた。
というのは、あたかも情勢がそんなに長くもたないと知ってか、
1人のキョウト兵がまるで先読みしてましたと言うばかりに
予告するごとく触れ回っていたからだ。
「な、言った通りだったろ?」
「お前は預言者かよ!?」
自慢げに語るアイザックに周りは関心をもっていた。
また代わり、側で座って目を瞑っているセンは静かだった。
「・・・・・・」
特に何も思っていなかった。ただ、感じてはいた。
同盟の話を聞いた直後に訪れたうねり上がる巨大な何かを。
「あんた、四国で負けたのがよほど悔しかったの?」
「・・・・・・いや」
理由は定かではない。
同盟という上の行動が何故今になってこれ程多く頻繁に締結しているかが
下の連中を納得させずに続いていたのか。
難しい事情など理解できるはずがない俺なりの感性が
第何感という頭のどこかで感じているだけだ。
オオサカCN拠点 指令室
「・・・・・・」
モニター画面に表示されている地図の至る所に同盟の二文字が
多くなる様子を静かに観ているキンイチ。喜びとも不安ともいえない
表情が何を意味しているのかは誰にも分からない。
(あれが締結のカギになったもの・・・なんなんだ?)
オペレーターは司令の顔を見た後にもう1つの画面を見直している。
他のモニターには奇妙な黒い物体が2つ映し出されていた。
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