Condense Nation

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2章 関東統一編

番外編第3話  アンラッキーセヴン1

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トウキョウCN下層階 外壁

「「ここを抜ければ・・・俺は・・・自由になる」」

 トウキョウ下級兵が起爆スイッチを片手に1人で呟いている。
コックルバーを外壁に取り付けて子機を壁に貼り付け、
疲れ切った顔をしているにもかかわらず、
自ら壊したPDをよそに不気味な笑顔で見ていた。
当然ながらすぐに増援が来て連行される。
つかまろうものなら営倉行き、望みはもうここから先しかない。
あらゆる法で身を縛るトウキョウから逃げ出そうと、
穴を開けて自由を望みながら親機のスイッチに指を留める、そして。


ピッ ドゴォン

「グゥオェアァ!?」

爆風が30mを越すようにのびる。
安全距離を見誤ったのか、兵は巻き添えを受けてロストしてしまった。


トウキョウCN妾京エリア 軍事ドーム

「君を守る囲いという喜び♪
 Aggregation with you♪」
「キャー!」

 トウキョウの一角にある白く膨れた建物の中で多くの女達が
熱気をこもすくらい集まっていた。
ステージには幹部が歌というメディアを披露ひろうして慰安いあん
見聴きしているのは割合的にほとんど中層階に従事する女。
労働貢献ライヴでラボリ活動後の息抜きを楽しんでいた。
電気代も考慮しない資源消費イベントで輝かしい所に、
安定した人生を味わっている。
守られる側はこうした設備もあり、命の危険もあまり感じられない。

対するドーム外側周辺で下級兵が見張りをさせられている。
内側とは違い暗く、わずかに会場の歌声だけが耳にする場所で
等間隔な並び方で静かに立ち続けていた。

 (なんであいつが・・・?)

女兵キリエが目を閉じて吐露とろする。
またメンバーが1人亡くなったという。
下層階の爆発事故と聞き、何の原因で発生したのか
経緯も分からずに起こった事件で理由を知りたくなるが、
大っぴらに公言できるような口を開く機会すらない。
ここで真相を聞き出す発言の1つも許されないのだ。

ジイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

トウキョウのあらゆる自由を束縛する機械の人。
PDという監視者達も同様に離れず側にいる。
下級兵にもこれらの監視で狭い空間を満たされていた。

これは以前、トウキョウCNで発生した下層階の者達による物語。
自由を夢見た7人の決起で1人の上層者を攻略した話である。


翌日 下層階駐屯所

 そして夜が明け、睡眠から目が覚めて食事後にすぐ任務。
最低限の質素な設備でそれぞれの仕事に出る。
運搬、見張り、鍛錬などのワークを課せられる。
毎日、毎日、毎日も繰り返しボランティア活動、
下級ならではの雑用を強いられていた。
男も女も関係ない。
そこそこの体力があるだけで頭脳労働はこなせず、
雑多な仕事をただただやらされて、その日暮らしを送るのみ。
そんな理由で、ひたすら生きているだけだった。

ある日、外壁付近で謎の破裂音が聴こえたという報告がきた。
ここは中層階直下、合金で支えられたプレートの日も当たらない場所で、
真っ先に奇襲を受けやすい場所。
よって、今いる7人で確認に向かえと指示が下る。

「現場に到着、確認する」

トウキョウ兵1がビークルから降ろされてディサルトを抱えてる。
ここは普段から市民も兵もいない放棄された区画で、
トウキョウを覆う壁以外にあるのは監視カメラだけだ。
対象者は敵も味方も同じで、見張るため。
あたし達はコンクリートだらけの地域を見回っていた。
PDにしっかりと張り付かれながら問題のエリアを探索、
侵入者でもいるのかと気を高めつつクリアリングすると。

「「目標確認」」
「!?」

クイッ クイッ クイッ クイッ クイッ クイッ クイッ

周囲の人型達が一斉に壁一点を向き始めた。
しかし、異常発生らしきものが何1つ見当たらず
敵性を表すモノがまったく見えなかったのだ。

「何もないのに・・・なんで!?」

PDはただの壁しか観ていない。
故障でも起きたのか、何か埋まってるのかと近寄ろうとした時、
正面から1人歩いてきた。




「もう大丈夫だ、好きにしゃべって良いぞ」
「あんたは?」

フードをかぶり、光低減グラスをかけた男が現れる。
自らを中層から来た情報屋だと名乗った。

「安心しろ、俺は敵じゃない。お前達を救いにきた」
「は?」

自分達へ雁字搦がんじがらめに縛られた日常から解放させてやると言う。
誰しも納得しない下級兵達、胡散臭うさんくささに反抗した。
小柄の女メンバーが問う。

「どうしてここにいるんですか?」
「もちろん、隠れ家的に下層までやって来た。
 上にいくほど見つかりやすいからな」
「中層兵がこんな事するメリットあるの?
 あたしら下級に加担するなんて――」
「ああ、トウキョウを1つひっくり返そうと計画している。
 そこで、お前達に1つ協力してほしい」

情報屋は新たな計画を起こすと述べた。
目標はある者から1つの何かを必要とするらしい。

「俺はある人物が所有するブツをターゲットにしている。
 そいつはNo7だ」
「!?」

トウキョウの幹部の1人、No7を指名する。
上下正反対に位置する男を相手に彼らの顔が引きつった。

「冗談じゃない、上層階の者じゃないか!?」
「どうして奴を?」
「理由は・・・これだ」

コンコン

壁をノックする、この硬い物に関する話らしい。
物というより、築いた関係者について用があると言う。

「このトウキョウを囲う分厚い壁を建設した関係者は
 奴の先祖で、土地権を斡旋あっせんして成り上がった一派だ」
「そうなのか?」
「トウキョアイトの発掘と製造で莫大なPを所有する家系で、
 トウキョウ重要役人がてらNoを得たらしい。
 調べだと総資産180億Pはもってる大富豪だ」
「ひゃ、ひゃくはちじゅうおく!?」

No7は古くから栄えた土建屋、トウキョウの有権者の1人で
各所の地権を握るエリアマネージャーだった。
それ程の家系が何故、あんなチャラい男なのかはさておき、
情報屋は関わるものを狙っていると言う。

「あなたは利権が欲しくて?」
「いや、狙いはPじゃなく奴の首にかけているブツ。
 あの中身が欲しい。家系に継ぐという代物だ」
「何が入ってるんだ?」
「シェーライト、あらゆる可能性を秘めたレア鉱石だ」

シェーライト、紫外線を当てると青い光を放つ石で
とても希少価値のある物質らしく、どんな有用性をもつのか
7人にとって価値はまったく分からないが、詳しく話さない。
彼にとっては特別な理由があるようだ。

「正確に言うと、必要としてるのは俺じゃない。
 ある伝手で欲しがってる奴がいてな。
 そいつもそいつだけに何に使うのかは聞かないでくれ」
「だから、あたしらに手を貸せと?」
「俺がわざわざ下層まで来て協力者を求めている。
 ここまで言えばもう分かるだろう?
 No7のシェーライトを奪ってくれ。
 そうすれば、好きなCNへ亡命させてやる。
 すでに、1人逃がしてやった」
「・・・・・」

以上の説明に、少しだけ信憑性しんぴょう性が高まる。
成功例があり、彼らにとっては一遇のチャンス。
未来も幸薄く日頃の仕打ちを思えば、反対する者はいない。
7人は脱出を第一に、男の要求に応じる。
交渉成立と決まり、情報屋に隠れ家へ案内されて移動した。


下層階 アジト

「しばらく、ここを貸してやる。好きに使いな」

 どこのエリアなのかすら分からない、ある一角。
彼ら7人はアジトも与えられた。
ここならPDも監視カメラの影響も受けずに立ち回れる。
ただ、元々配置された7体は置き去りにされたままで
現場へ戻った時のリスクが残っているのが気がかりだ。
大きな体格の男が大丈夫なのか、安全を推す。

「しかしよ、このままバックレて良いのか?
 また代わりの人形が来るぞ?」
「だから、詐称登録でお前達をここに呼んだ。
 一度中層兵になってもらう」
「中層に?」
「下級じゃ、行動エリアも制限されまくりだろ。
 これからコードネームで呼び合う、盗聴された時のために
 使い捨て自由なセーフティネームを名付ける」

7人をθシータπパイμミューλラムダΔデルタγガンマωオメガというネームで動けと指示した。
私はθ、キリエという名前はしばらく消し伏せる。
戸籍も一度中層階の兵として扱われるよう立回らせてくれるという。
立場としては願ったりな待遇だが、肝心の作戦内容が不明だ。
No7に接触する手段が分からない。

「で、これからどうする?」
「まずは下層階にある区画を利用する。
 キューブセクション知ってるだろ?
 おあつらえ向きに、今近くにいる知らせが入った。
 奴は最近、そこに入り浸っているようだ」
「そこで何を?」
「自分勝手に美人女兵を選り好みして呼び出している。
 何してるのか、色々とやってるらしい」
「女兵を!?」

θ、π、μの女3人の顔が険しく変わる。
自分が呼ばれない悔しさ混じりに、怒りを表した。

「ざけんじゃないわ、みつぎ扱いに呼ぶなんて!」
「πさん・・・」
「キューブセクションの行為で奴をどうしたいんだ?」
「CN法による職権乱用の隙を突いていく。
 トウキョウは許可なく命の育みは禁止だ。
 まずは奴をスキャンダルでNoから外せるか試みる。
 俺といえども、易々やすやすと上層階には上がれない。
 奴の立場を下げた瞬間を狙う」

男女均等配置法、人口比率を両性等しく成り立たせるよう
CN法により制定されたルールの1つである。
他地方ではまっったく守られていないデリケートなこの法も、
ここでは厳重に管理されて施行しこうしているのだ。
通常、トウキョウ下で妊娠適齢期は25歳と定めているが、
健全なタンパク質を保持できない者は如何なる場合も不要とされ、
行き場なくシコするだけしかなかった。
ただ、権力者はあらゆる手口で類を取ろうとするが。
No7は10代も呼んでいるというウワサもある。
まるで詰められた世界の中でもやりたい放題回る者がいる。
情報屋はわずかな弱点を周到に目標を手にしようと推したのだ。
大柄なγがチャラ男の画像を睨み付ける。

「許せねえな」
「クズが・・・」
「決まりだな、すぐに殴りたい男性陣には悪いが、
 まずはθとπに動いてもらう」

男はθとπの2人に行動させる。
最初は密偵によってNo7の汚点を見つけ、安全理事局へ通報。
彼女達に小型カメラを持たせた。

「これで撮ってくれば良いの?」
「ああ、トウキョウ民がおもいっきり引くくらいの様子を
 思いっきりズームしてな」

膨大な壁の中で生まれた小さなこじれは別の意味での自由と支配。
下層と上層による静かな対立が始まろうとした。
中層兵の服に着替え、偽装IDチップのネームを胸に着ける。

「行ってくるわ」
「何かあったらお願いよ」
「開始だ」

これよりNo7の所有するシェーライトをアブダクトする。


1時間後

 2人が出てから一時の間、無事を願いつつ第1段階を見守る。
現状がどうか結果を待機し続けていたが、まだ連絡がこない。
鳴り物入りで突然始めた自由への活動は手慣れてなく、
小屋から抜け出して別世界へ挑む気持ちだ。
残るメンバー達が安否を気にする中、
1人の兵が内部について疑問に思っていた。

「・・・・・・」

チームリーダー隊長、スキンヘッドのωが情報屋を凝視ぎょうしする。
No7も大概だが、この情報屋も相当な人物に見えた。
突然現れてPDをあっけなくあしらう立ち回り。
どんな技術を用いたのか、抜け穴を見つけられる器用さ。
ただの中層兵とは思えない振る舞いだ。

「あんた、中層兵と言ったな。
 中層階の者でも、PDを誘導させる力はないはず。
 そんな技術力をもってるなら、上層部への介入も思いつけるだろう?」
「生身の奴がいてデコイでも無理だ、PDの陽動も効かない。
 それに、なんでも上に行けゃ良いってもんじゃない。
 あそこは派閥争いが最も熾烈しれつな場所だ。
 政策もほんの小さなワンミスで落とされる。
 上には上で厄介があるからな」
「こだわるのは自由度か」
「そう、いざという時にスイスイ動けるポジション。
 だから中間っつう普通の位置が動きやすい。
 少なくとも俺にとっては・・・だな」
「・・・・・・」

システムとコードを駆使して人を動かす。
あえて下から吸い続けるやり方が成功しやすいらしい。
中間管理職は普通、板挟みに遭いやすいと思いきや、
持前の器量で立ち回った方が効率的だと言いたいのだろう。
男は凄まじい指さばきで画面をタップ。
情報屋の腕前が確かにそこで表れているような気がした。
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