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2章 関西統一編
第16話 離別ルート
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オオサカCN拠点 会議室
「で、それで部下が勝手に侵攻しに向かったと?」
「「弁明の余地もありません・・・申し訳ない」」
ヤマグチ司令官が各司令官達に事情を説明している。
自軍を止められず、勝手な侵攻を行った件で頭を下げた。
事情を知った他司令官、主にキンイチは結び目逃しとして
中つ国の不祥事として事態を治めるというものの、
近江の重鎮が責任の肩を担ぐようだ。
アキヒコがオオサカを頼るように伝える。
「「同盟直後にこの様な出来事が起こり遺憾ですが、
中つ国で対応を――」」
「「我々ヒョウゴも援護致します。
もはや、中つ国も共存する盟結いなので」」
「「こちらミエも同感します。
何やら事情がおありのようですが、遠慮なさらず」」
「あんたら近江の東は例の件についていてや。
今回はワシら西側で対処してみせるさかい」
近江の総括者は西のCNだけで対処すると言う。
大きくなった連合故に、複数の問題を個別に解決する方針に誰もが賛成する。
そこへ中つ国と近江で取り分けるように采配する中に、
1人、高齢の司令官がいる。
ただ1人の|老婆司令官、オオモリ司令官だけは視線を
シガ司令官に向けて忠告をした。
「「シガ司令」」
「「はい?」」
「「中部地方への哨戒を怠らぬように」」
「「・・・理解しました」」
何かの老婆心を悟ったのか、シガ司令官は返事をした。
話を切り替えて、アキヒコは追って近江の助太刀を請願する。
「「突然の出来事で我々も。
これが中つ国の現状、不均衡の間で揉まれておりました。
手数ですが、ここは1つ助力を願います」」
「了承です」
会議はまとまった、近江は対称的な行動をとる動きで
九州CNと四国CNに向けて大きな塊を造ろうとする。
「これより、近江は中つ国の加勢をもって作戦を遂行する!」
トットリCN拠点 通路
「消してやる!」
「止めな!」
「あいつはもう兄なんかじゃない・・・正真正銘の敵だ。
だから、この手で始末してやる!!」
「隊長、自棄にならないで下さい!!」
荒れているケイを取り押さえ、説得している部下達。
エイジがマナミを手にかけた事で人目もはばからず荒れていた。
怒りに我を忘れ、ここから飛び出さんばかりに叫び声をあげて
殺気をまき散らしていった。周りが言って聞かせようにも
埒が明かず、シーナはここならではの近接手段で抑えにかかる。
「「ああああ、もうしょうがない・・・」」
ガシッ ギュッ
「がふっ!?」
チョークスリーパーで気絶させた。
こんな状況でも、トットリの身体能力は不変。
ぐったりとしたケイの体を持ち上げ、個室へと運んでいく。
「とりあえず、部屋まで運んでおくけど、
起きたらあんた達がなんとかしてやってくれよ」
「了解です」
彼女は背負ってオカヤマ兵の部屋まで運んでいく。
とりあえず場は静まり返り、彼女は帰っていった。
拠点内 貸し部屋
「「うっ、ここは?」」
目が覚めたようだ。
シーナに締め上げられた隊長を見て、復讐を止めさせようと実行。
部下達はすでに周りでケイを取り囲み、起きるのを待っていた。
なんとしても説得して分からせようとする。
「「俺は・・・ニーナに」」
「隊長、話を聞いて下さい!」
部下にとってはいかなる弁を用いても止めるしかない。
思いつく限りに言葉でケイに向かって放った。
「あの時、あんたと司令が2人で行ったのは間違いだったと思います」
「・・・・・・」
「同じくあの時、自分達も砂丘で立ち会っていれば、
彼女を助けられたかもしれません」
「「くっ」」
言い返せなかった。
建前では話をつけるなんていっても、内心では勝手さがある。
マナミを分からせるのは自分1人だけだと、
あの時思ってしまっていたからだ。
アキヒコ司令がいつの間にか彼女を確保してくれて、
本当の理由はチームに戻そうとしただけではなく、
彼女を独占したいという願望があったから。
エイジの下に行ったのが悔しくて仕方がない。
個人的私情で部下を置いていったなんて、
口が裂けても恥が過ぎて言えるはずがないのだ。
つい、顔も下を向いたまま。
そこへ、部下が忘れ物をしていると言いだす。
「受け継ぐのは心得だけではありません。
父上から頂いた物、それもありましたよね?」
「・・・・・・」
父からもらったこの発動機、言葉に反応して動いてくれる。
あのアーロンがぶら下がっていた物と似ている護衛用機械。
これを使えば星団艦内に乗り込める見込みもある。
だが、やはり単身で向かっても返り討ちされる予想くらいついている。
どうあがいても、1人では勝ちようがなく
隊長らしくない振る舞いが返って恥ずかしくなってきた。
「「こういうのって周りが見えなくなるんだな・・・まわり、
あれだ、空にいっぱい浮いてる星・・・みたいな。
時には雲に覆われていくんだ」」
「隊長・・・」
「星って重力があって物が集まるんだろ?
それで、その、なんか、生きるんだぞってばかり固まっていく。
みんなそろって初めて大きくなれるんだっけ、学習したよ」
「おおおお!」
説得が届いたようで、部下は安堵の表情をうかべた。
絶対、上手く解釈できていないだろう。
でも、これがいつものケイで底抜けな性格が一番ふさわしく、
星に負けない明るさが皆好きだった。
今なら上についての情報を伝えても良いだろうと、慎重に言い始めた。
「落ち着いて聞いて下さいね。
あの星団が九州に向かっているとの情報がありました・・・」
「・・・・・・え?」
オオイタCN 拠点
オオイタ司令官の顔が色あせるかのごとくモニター画面を凝らして
水平線の奥からこちらにやってくる黒い点を観ていた。
「相手はどこだ?」
「経路からしていつものヤマグチ兵です、進路も疑いなく通常と一致。
ですが・・・」
敵影反応における数がいつもより倍になる程までに多く、
ただ事ではないその状況に司令官は緊急事態を発令した。
「「緊急事態発生、膨大な数の敵影が確認された!
ヤマグチCN以外の姿も確認。
各班、それぞれ配置に付け!」」
「!?」
アラーム音と同時で流れた放送に一同は驚いた。
警告音のサイレンがけたたましく鳴り、
辺りの兵士達が一斉に目まぐるしく移動し始めてゆく。
エヒメCN 指令室
四国CNも連携強化した間に準備して整いつつある中、
スイレンも攻略の一部で戦闘機S-001の調整を済まして、
エヒメ司令と作戦空域を確認していた。
今回ばかりは規模が大きく、いつもより念を入れて展開を話し合い。
ルートも変化を付けて幅を広げる方針にする。
上空への懸念はやはり中つ国だが、近江の手段も油断できずに
ドラゴンフライなどの爆撃を注意する必要もあった。
「という流れで対応しよう。
君はいつも通り物資補給と侵入者のみ相手をしてほしい」
「OKです、向こうも領空介入なのは了承済みで?
もう同盟したから、九州上空も移動して良いでしょ?」
「ああ良いぞ、向こうも承認済だ。
思う存分に飛び回れ」
「よぉし、新しい領空にワクワクするよ。
タカ隊長、四国の護衛はお願いね!」
「「ああ」」
機体の先陣にいるタカが返事をする。
新たに隊長に任命され、次の展開へまとめてゆく。
今までは彼の後ろで歩き続けてきた。
今度からは自分が先頭に立って歩かなければならない。
エヒメCN 瀬戸内海周辺
場所は変わり、瀬戸内海にもライオットギアが列をなして待機。
来るべき戦闘に備えていた。いつもより会話が少ない。
1人いなくなった隙間を縫うように、代行がやらなければならないからだ。
「タカさん、今度はあんたが隊長なんだ。
みんなの事を頼むぞ」
「タカさん・・・」
トミの遺言はここからすでに始まっていたのだ。
再編成はCNだけの枠組みではない、心の再編成も存在する。
水柱を背に立つ人と人型が新たに立ち上がるのであった。
「エヒメ第1分隊、出動する!」
カゴシマCN 拠点
対する九州兵も各々準備を行っていた。
先陣はすでに出ており、前線にいる突撃兵や工作兵が
防衛役を担って壁を形成している。
犬兵団の出動命令が来る時間もそう遠くはない。
そんな始まりをミキが知らせてきた。
「マサキ、そろそろ時間よ。司令が指令室に来いって」
「すぐ行く!」
予想通りの流れでイイダ司令に呼ばれた犬兵団。
自分も直接ホットゾーンに入る立場ではないとはいえ、
どこの配置に付くのか少し気になっていた。
カゴシマCN 指令室
「えー、我が九州CNは中つ国CNの北側の侵攻、
そして四国CNの南側をサポートする」
(北と南か)
各九州の司令官達によって決まったルートを説明する。
地形の都合上、犬の負担回避として平地付近で展開して
四国近辺のオオイタに回る様に行動するべきだと言った。
リョウコ司令から無線で行き先を示される。
「「犬兵団は左伯エリアに向かってもらうわ。
陸上に上がって散開する敵性を対処」」
「了解です」
海岸から少し離れた場所で展開しろとの事。
前線からあぶれて来る敵を犬でけしかけようと算段する。
シゲ隊長が来た。
「マサキ、ここにいたか」
「シゲ隊長」
カゴシマの先鋭は北側の侵攻防衛を任されたらしい。
海上移動がままならない犬兵団とは別ルートになるが、仕方がない。
シゲ隊長に健闘を称える。
「気をつけてください!」
「安心しろ、パパッと終わらせてやる。
九州の海鳴らしがどれだけか教えてやらないとな」
犬兵団に見守られながらシゲ分隊は出て行く。
宵の中に溶け込む後ろ姿が拠点から遠ざかっていった。
ミヤザキCN 拠点
「俺達も北側ですか?」
ミヤザキでも作戦の内容が伝えられていた。
しかし、ケンジ及びミヤザキ分隊も北ルートに行けという。
イイダ嫁司令はさすがに今回ばかりはイイダ司令の作戦通りに動くらしい。
直接的な軍事行動は経験者に勝るものはなかった。
「あの人曰く、前面にリソースを増やすって。
だから、カゴシマのサポートとして動いてちょうだい」
「分かりました」
23:00 ケンジ自室
作戦行動時間は1日繰り上げとなり、拠点で一泊する犬兵団。
準備も終わり、今夜の一段落を過ごそうとミキの所に行く寸前
ミヤザキCNからケンジが無線で会話をしていた。
「という事だ、今回は別行動だな」
「「お前もか」」
ミヤザキ兵の作戦諸々を話し合う。
ケンジとも海沿いに行動するので、内と外の別ルート。
シゲ隊長だけでなく、散り散りな動きとなる。
「「そうか、今回はけっこう敵が多いらしいけど、
海寸前で食い止めるつもりなんだな」」
「当然、陸に上がられたくないだろうよ。
自由が利かない海の方が見つけやすく対処できて良い」
「「どうにかなりそうか?」」
「大丈夫だろ、人口の多いフクオカが主に海側をサポートする。
だから前衛は俺達に任せて内地で回っておけ、犬だけにな」
「「お、バカにしたな?」」
「冗談だよ、俺だって犬苦労くらい分かる。
足で踏んで嗅ぎ分ける器用さはお前達ならではだしよ」
まあ、これだけ大口を叩くくらいだから万端なのだろう
余計な心配をもたずに事は平気そうだ。
九州大陸は各自ポジションへと分配されてゆく。
それぞれの得意分野は陸と海より一時の分かれ目を描いた。
オオサカCN オオサカ湾
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
海を眺める金髪三人組がいた。
明日は類を見なかった大きな仕事が始まるというのに、
会話の気配すらなく仁王立ちで沈黙。
いつもは五月蠅い3人も、今回ばかりは静かである。
オオサカ第99部隊の2人とキョウトの遊軍部隊の1人は
ほとんど口も交わしていなかった。
(・・・波乱じゃな)
嵐の前の静けさ、ヒトミはその諺に連想する言葉で観ていた。
明日からは大きなラボリが開始される。
それぞれの思いを抱くメンバー達。
今より2つの大陸間である西側に大きな波紋が今起きようとしてゆく。
センが心頭滅却とばかし内心念じる
(西一番の御納めといくか!)
ケイはマナミへの思いを抱きつつ
「マナミの分まで戦ってみせる、必ずだ。」
マサキは仲間の動向を気遣い
「守るための戦い、引き際の守護が一番の策だな。」
スイレンが水柱を背に上空へ高く奮起する
「人生の経験者の腕を見せてあげるわ!」
守るために、禁忌を払拭するために、人の数だけ理由はあろう。
ただ、身を削り合う戦争に健全な理念などはない。
“戦う”共通点を課せられた彼らの意志をただ監視する
天主殻の規律のままに動かされる事実があるのは変わらない。
人とは常に切れそうな琴線の状況下で生かされているものである。
「で、それで部下が勝手に侵攻しに向かったと?」
「「弁明の余地もありません・・・申し訳ない」」
ヤマグチ司令官が各司令官達に事情を説明している。
自軍を止められず、勝手な侵攻を行った件で頭を下げた。
事情を知った他司令官、主にキンイチは結び目逃しとして
中つ国の不祥事として事態を治めるというものの、
近江の重鎮が責任の肩を担ぐようだ。
アキヒコがオオサカを頼るように伝える。
「「同盟直後にこの様な出来事が起こり遺憾ですが、
中つ国で対応を――」」
「「我々ヒョウゴも援護致します。
もはや、中つ国も共存する盟結いなので」」
「「こちらミエも同感します。
何やら事情がおありのようですが、遠慮なさらず」」
「あんたら近江の東は例の件についていてや。
今回はワシら西側で対処してみせるさかい」
近江の総括者は西のCNだけで対処すると言う。
大きくなった連合故に、複数の問題を個別に解決する方針に誰もが賛成する。
そこへ中つ国と近江で取り分けるように采配する中に、
1人、高齢の司令官がいる。
ただ1人の|老婆司令官、オオモリ司令官だけは視線を
シガ司令官に向けて忠告をした。
「「シガ司令」」
「「はい?」」
「「中部地方への哨戒を怠らぬように」」
「「・・・理解しました」」
何かの老婆心を悟ったのか、シガ司令官は返事をした。
話を切り替えて、アキヒコは追って近江の助太刀を請願する。
「「突然の出来事で我々も。
これが中つ国の現状、不均衡の間で揉まれておりました。
手数ですが、ここは1つ助力を願います」」
「了承です」
会議はまとまった、近江は対称的な行動をとる動きで
九州CNと四国CNに向けて大きな塊を造ろうとする。
「これより、近江は中つ国の加勢をもって作戦を遂行する!」
トットリCN拠点 通路
「消してやる!」
「止めな!」
「あいつはもう兄なんかじゃない・・・正真正銘の敵だ。
だから、この手で始末してやる!!」
「隊長、自棄にならないで下さい!!」
荒れているケイを取り押さえ、説得している部下達。
エイジがマナミを手にかけた事で人目もはばからず荒れていた。
怒りに我を忘れ、ここから飛び出さんばかりに叫び声をあげて
殺気をまき散らしていった。周りが言って聞かせようにも
埒が明かず、シーナはここならではの近接手段で抑えにかかる。
「「ああああ、もうしょうがない・・・」」
ガシッ ギュッ
「がふっ!?」
チョークスリーパーで気絶させた。
こんな状況でも、トットリの身体能力は不変。
ぐったりとしたケイの体を持ち上げ、個室へと運んでいく。
「とりあえず、部屋まで運んでおくけど、
起きたらあんた達がなんとかしてやってくれよ」
「了解です」
彼女は背負ってオカヤマ兵の部屋まで運んでいく。
とりあえず場は静まり返り、彼女は帰っていった。
拠点内 貸し部屋
「「うっ、ここは?」」
目が覚めたようだ。
シーナに締め上げられた隊長を見て、復讐を止めさせようと実行。
部下達はすでに周りでケイを取り囲み、起きるのを待っていた。
なんとしても説得して分からせようとする。
「「俺は・・・ニーナに」」
「隊長、話を聞いて下さい!」
部下にとってはいかなる弁を用いても止めるしかない。
思いつく限りに言葉でケイに向かって放った。
「あの時、あんたと司令が2人で行ったのは間違いだったと思います」
「・・・・・・」
「同じくあの時、自分達も砂丘で立ち会っていれば、
彼女を助けられたかもしれません」
「「くっ」」
言い返せなかった。
建前では話をつけるなんていっても、内心では勝手さがある。
マナミを分からせるのは自分1人だけだと、
あの時思ってしまっていたからだ。
アキヒコ司令がいつの間にか彼女を確保してくれて、
本当の理由はチームに戻そうとしただけではなく、
彼女を独占したいという願望があったから。
エイジの下に行ったのが悔しくて仕方がない。
個人的私情で部下を置いていったなんて、
口が裂けても恥が過ぎて言えるはずがないのだ。
つい、顔も下を向いたまま。
そこへ、部下が忘れ物をしていると言いだす。
「受け継ぐのは心得だけではありません。
父上から頂いた物、それもありましたよね?」
「・・・・・・」
父からもらったこの発動機、言葉に反応して動いてくれる。
あのアーロンがぶら下がっていた物と似ている護衛用機械。
これを使えば星団艦内に乗り込める見込みもある。
だが、やはり単身で向かっても返り討ちされる予想くらいついている。
どうあがいても、1人では勝ちようがなく
隊長らしくない振る舞いが返って恥ずかしくなってきた。
「「こういうのって周りが見えなくなるんだな・・・まわり、
あれだ、空にいっぱい浮いてる星・・・みたいな。
時には雲に覆われていくんだ」」
「隊長・・・」
「星って重力があって物が集まるんだろ?
それで、その、なんか、生きるんだぞってばかり固まっていく。
みんなそろって初めて大きくなれるんだっけ、学習したよ」
「おおおお!」
説得が届いたようで、部下は安堵の表情をうかべた。
絶対、上手く解釈できていないだろう。
でも、これがいつものケイで底抜けな性格が一番ふさわしく、
星に負けない明るさが皆好きだった。
今なら上についての情報を伝えても良いだろうと、慎重に言い始めた。
「落ち着いて聞いて下さいね。
あの星団が九州に向かっているとの情報がありました・・・」
「・・・・・・え?」
オオイタCN 拠点
オオイタ司令官の顔が色あせるかのごとくモニター画面を凝らして
水平線の奥からこちらにやってくる黒い点を観ていた。
「相手はどこだ?」
「経路からしていつものヤマグチ兵です、進路も疑いなく通常と一致。
ですが・・・」
敵影反応における数がいつもより倍になる程までに多く、
ただ事ではないその状況に司令官は緊急事態を発令した。
「「緊急事態発生、膨大な数の敵影が確認された!
ヤマグチCN以外の姿も確認。
各班、それぞれ配置に付け!」」
「!?」
アラーム音と同時で流れた放送に一同は驚いた。
警告音のサイレンがけたたましく鳴り、
辺りの兵士達が一斉に目まぐるしく移動し始めてゆく。
エヒメCN 指令室
四国CNも連携強化した間に準備して整いつつある中、
スイレンも攻略の一部で戦闘機S-001の調整を済まして、
エヒメ司令と作戦空域を確認していた。
今回ばかりは規模が大きく、いつもより念を入れて展開を話し合い。
ルートも変化を付けて幅を広げる方針にする。
上空への懸念はやはり中つ国だが、近江の手段も油断できずに
ドラゴンフライなどの爆撃を注意する必要もあった。
「という流れで対応しよう。
君はいつも通り物資補給と侵入者のみ相手をしてほしい」
「OKです、向こうも領空介入なのは了承済みで?
もう同盟したから、九州上空も移動して良いでしょ?」
「ああ良いぞ、向こうも承認済だ。
思う存分に飛び回れ」
「よぉし、新しい領空にワクワクするよ。
タカ隊長、四国の護衛はお願いね!」
「「ああ」」
機体の先陣にいるタカが返事をする。
新たに隊長に任命され、次の展開へまとめてゆく。
今までは彼の後ろで歩き続けてきた。
今度からは自分が先頭に立って歩かなければならない。
エヒメCN 瀬戸内海周辺
場所は変わり、瀬戸内海にもライオットギアが列をなして待機。
来るべき戦闘に備えていた。いつもより会話が少ない。
1人いなくなった隙間を縫うように、代行がやらなければならないからだ。
「タカさん、今度はあんたが隊長なんだ。
みんなの事を頼むぞ」
「タカさん・・・」
トミの遺言はここからすでに始まっていたのだ。
再編成はCNだけの枠組みではない、心の再編成も存在する。
水柱を背に立つ人と人型が新たに立ち上がるのであった。
「エヒメ第1分隊、出動する!」
カゴシマCN 拠点
対する九州兵も各々準備を行っていた。
先陣はすでに出ており、前線にいる突撃兵や工作兵が
防衛役を担って壁を形成している。
犬兵団の出動命令が来る時間もそう遠くはない。
そんな始まりをミキが知らせてきた。
「マサキ、そろそろ時間よ。司令が指令室に来いって」
「すぐ行く!」
予想通りの流れでイイダ司令に呼ばれた犬兵団。
自分も直接ホットゾーンに入る立場ではないとはいえ、
どこの配置に付くのか少し気になっていた。
カゴシマCN 指令室
「えー、我が九州CNは中つ国CNの北側の侵攻、
そして四国CNの南側をサポートする」
(北と南か)
各九州の司令官達によって決まったルートを説明する。
地形の都合上、犬の負担回避として平地付近で展開して
四国近辺のオオイタに回る様に行動するべきだと言った。
リョウコ司令から無線で行き先を示される。
「「犬兵団は左伯エリアに向かってもらうわ。
陸上に上がって散開する敵性を対処」」
「了解です」
海岸から少し離れた場所で展開しろとの事。
前線からあぶれて来る敵を犬でけしかけようと算段する。
シゲ隊長が来た。
「マサキ、ここにいたか」
「シゲ隊長」
カゴシマの先鋭は北側の侵攻防衛を任されたらしい。
海上移動がままならない犬兵団とは別ルートになるが、仕方がない。
シゲ隊長に健闘を称える。
「気をつけてください!」
「安心しろ、パパッと終わらせてやる。
九州の海鳴らしがどれだけか教えてやらないとな」
犬兵団に見守られながらシゲ分隊は出て行く。
宵の中に溶け込む後ろ姿が拠点から遠ざかっていった。
ミヤザキCN 拠点
「俺達も北側ですか?」
ミヤザキでも作戦の内容が伝えられていた。
しかし、ケンジ及びミヤザキ分隊も北ルートに行けという。
イイダ嫁司令はさすがに今回ばかりはイイダ司令の作戦通りに動くらしい。
直接的な軍事行動は経験者に勝るものはなかった。
「あの人曰く、前面にリソースを増やすって。
だから、カゴシマのサポートとして動いてちょうだい」
「分かりました」
23:00 ケンジ自室
作戦行動時間は1日繰り上げとなり、拠点で一泊する犬兵団。
準備も終わり、今夜の一段落を過ごそうとミキの所に行く寸前
ミヤザキCNからケンジが無線で会話をしていた。
「という事だ、今回は別行動だな」
「「お前もか」」
ミヤザキ兵の作戦諸々を話し合う。
ケンジとも海沿いに行動するので、内と外の別ルート。
シゲ隊長だけでなく、散り散りな動きとなる。
「「そうか、今回はけっこう敵が多いらしいけど、
海寸前で食い止めるつもりなんだな」」
「当然、陸に上がられたくないだろうよ。
自由が利かない海の方が見つけやすく対処できて良い」
「「どうにかなりそうか?」」
「大丈夫だろ、人口の多いフクオカが主に海側をサポートする。
だから前衛は俺達に任せて内地で回っておけ、犬だけにな」
「「お、バカにしたな?」」
「冗談だよ、俺だって犬苦労くらい分かる。
足で踏んで嗅ぎ分ける器用さはお前達ならではだしよ」
まあ、これだけ大口を叩くくらいだから万端なのだろう
余計な心配をもたずに事は平気そうだ。
九州大陸は各自ポジションへと分配されてゆく。
それぞれの得意分野は陸と海より一時の分かれ目を描いた。
オオサカCN オオサカ湾
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
海を眺める金髪三人組がいた。
明日は類を見なかった大きな仕事が始まるというのに、
会話の気配すらなく仁王立ちで沈黙。
いつもは五月蠅い3人も、今回ばかりは静かである。
オオサカ第99部隊の2人とキョウトの遊軍部隊の1人は
ほとんど口も交わしていなかった。
(・・・波乱じゃな)
嵐の前の静けさ、ヒトミはその諺に連想する言葉で観ていた。
明日からは大きなラボリが開始される。
それぞれの思いを抱くメンバー達。
今より2つの大陸間である西側に大きな波紋が今起きようとしてゆく。
センが心頭滅却とばかし内心念じる
(西一番の御納めといくか!)
ケイはマナミへの思いを抱きつつ
「マナミの分まで戦ってみせる、必ずだ。」
マサキは仲間の動向を気遣い
「守るための戦い、引き際の守護が一番の策だな。」
スイレンが水柱を背に上空へ高く奮起する
「人生の経験者の腕を見せてあげるわ!」
守るために、禁忌を払拭するために、人の数だけ理由はあろう。
ただ、身を削り合う戦争に健全な理念などはない。
“戦う”共通点を課せられた彼らの意志をただ監視する
天主殻の規律のままに動かされる事実があるのは変わらない。
人とは常に切れそうな琴線の状況下で生かされているものである。
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戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
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小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
ラスト・オブ・文豪
相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。
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