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2章 関西統一編
第12話 翡翠の星
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オカヤマCN アキヒコ邸
「今晩、ケイに会いにいこうか」
「!?」
マナミは突然、司令からケイと会いに行けと言う。
あまりにもいきなりなので、気が引けて返事しにくくなってしまった。
「あたし、あの子に合わせる顔が・・・」
「では、ずっとここに隠居するつもりか?」
「・・・・・・」
チクリとする言葉で返されるマナミ。
確かに、いつまでもここに居られる猶予もない。
しかし、八方塞がりで行く当てもないからどうしようもなく、
なんとかして違う言い訳も放ってしまう。
「でも、外に出たら・・・」
「あいつは今トットリCNで待機している。
実はな、ケイとトットリ司令を説得しておいた。
砂丘の中心部で待ち合わせするのが良いらしい。
それに私も男だ、ついお前に手を出してしまうかもしれないぞ?
そうなったら、ケイはなんて思うか?」
司令の言い分はマナミの気持ちをとうに読み抜いていた。
このまま匿っても、いずれ見つかって営倉行きにされる。
ならば、総司令の実子のケイの元に戻せば家系特権で
少しでも酌量が付いて再配置を見込めるのではと思い、
彼女を彼の元に置いてやるのが最善だと、手を考えていた。
「公に出ていなかったが、最高司令官への反逆行為は相当な厳罰だ。
一司令官の私がどうにか弁護してみせる」
マナミはそれ以上断れず、承諾する。
「・・・・・分かりました、会いに行きます」
トットリCN トットリ砂丘
(マナミが・・・ここに来る)
ケイは司令の予想外の展開に疑いを隠せなかった。
マナミをかくまっていた件に怒りを向かわせたいところだったが、
彼女はCNから指名手配されており、捕まってしまえば
話すらまともにできなくなる。
だから、心情を知るきっかけを考えれば、
アキヒコ司令の采配に返って感謝するべきだと思った。
「というわけで彼女がすぐにここに来る。待っててくれ」
「分かりました」
トットリ司令官と話し合ってここに来させようと配置してもらう。
周りには他の誰もいない。
現地のトットリ兵すら見当たらず、避けるように目を減らして
この場を設けてくれた司令にある意味嬉しい気もするが。
(本当に来てくれるだろうか・・・)
風で砂が舞い上がる。
これから、ここで起こる出来事の予兆といわんばかりの光景だろうか。
自分もこわばりそうな顔をどうにか正常にさせようとする。
彼女はやって来た。
落ち着いた様子、雰囲気でケイの目線から逸らしつつも
また合わせながら挙動不審な態度だ。
司令は2人きりにさせたいのか、一旦ここから離れていく。
「マナミ・・・」
「ケイ・・・」
砂上で5m間隔で佇む。
お互い一言も話さず、しんみりとした空気が続く。
そして、先にとケイが先制して言葉を終わりまで発した。
「あのね、わた――」
「体調はどうだ?」
「えっ?」
ケイは意外な言葉を聞いてきた。
彼の父親についてではなく、自分の近況について聞いてきたのだから。
「大丈夫よ、よく寝ちゃってた。
司令の家が大きくて落ち着けられたから」
「それにしても意外だったな、お前がトットリ出身だったなんて」
「うん、今まで黙っていてごめんね」
「だから、訓練をなんでもそつなくこなしていたんだな」
「うん、私が山陰にいたときにはすでにグラスホッパーや
基礎軍事訓練を行っていたから・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
また静かになった。
本題を言いだせないケイ、本音を言いだせないマナミ。
ここで、先陣切った様に言葉をだすべきなのが男の方だ。
「俺は許すよ・・・お前を」
「ケイ・・・」
自分はマナミのした事を許すと言った。
今回の出来事は俺達に限った話ではないから、
救済措置として慰めようと伝えたいのだ。
「お前もお前なりに辛い事があったんだろ?
元をたどれば、天主殻のイミフなルールで生かされながら
消されるそんな世界が悪いんだしな」
「・・・・・・」
「他のCNだって同じさ。
家族を失っている兵なんてもっとたくさんいる。
でもな、どこの分からない奴にやられるくらいなら、
仲間にやられた方がまだマシなもんだ」
無茶ぶりな説法だが、経験なりの感情論を使う。
口下手だから、まともな説得もできずに比喩な言葉を言う。
「お、俺は山陽の光だ。だから、お前の山陰の影を照らしてやる」
「!?」
彼女は笑い声をあげた。
「ハハハハハ!」
(いつものクセがつい・・・)
正直、恥ずかしい。ケイの顔が赤くなる。
仕方ない、いつものカッコつけた台詞ばかり言ってるのは
今回ばかりではなかったが、場合が場合だからなおさら
変な気持ちになった。
その場しのぎか、振り払うように近接戦闘を申し込んだ。
「その前に・・・前回の試合の借りを返させてもらうぞ!」
「そ、そうこなくっちゃね!」
「このまま負けていたら隊長のメンツもない、リべンジだ!」
「あたしは簡単には負けないわよ」
マナミは受けて立つ姿勢を見せる。
もちろん、素手で戦う。
女だからなんて関係なく、一兵式として臨んだ。
シュッ
パンチと見せかけて後ろに下がる。
前進からの後退するバックアップカウンターは
マナミの得意技なのはもう知っている。
自分は間合いを離してからの胴体を横へ迂回する急襲法を
オオサカ兵から教わったバリエーションを追加する。
(この瞬間だ!)
「!?」
ドスッ
「うっ」
ヒットした、変化技に彼女は不意をつかれたようだ。
「ふぅん、学習したね。バカなのに♪」
「お前は直線的に真面目すぎる、
馬鹿はバカなりのやり方があるんだ」
星団とはいえ、近江の技術までは熟知しきれていない。
まずは一歩、マナミに近づけた。
次はどう対応してくるのか、彼女の立ち位置を凝視していると。
「砂嵐が強くなってきたか」
一気に視界が効かなくなる。
試合を中断しようと思ったが、彼女は依然やる気のようだ。
(このままやってもゴリ押しされる。)
まさか、環境変化が今起こるなんて予想もつかなかったので
早めに片を付けようと1つの賭けにでる。
2人から教わった近江CNに伝わる不動の構えという、
1点から動かないカウンター技で対抗しようとした。
これは中つ国にはないスタイル。
あの近江から仕込まれた技であったものだ。
「ろくに動けなかったら、隙間からカウンターだ。
人は頭と胸が弱点だから身をかがめて隠す型がある」
「隙間から?」
前にライリーから言われた内容を思い返す。
静止から後手の先へ変える巧手が不動の構えだと言う。
動かずに留まり、腰を落として身をかがめて当たり判定を減らす技だ。
元は銃弾から防ぐモーションの派生であったが、
マナミの直進力を逆手にここで活かそうと考えた。
(当然マナミの拳より、銃弾の方が早い。
この砂嵐なら、うまくできるかも)
似たような体術は中つ国でもあるが、距離が違う。
相手が人の場合でも可能性があると前から思っていた。
だが、実現する能力が今まで足らなかったのだ。
オオサカで学んだ新たな体術、圧倒的な能力をもつマナミに
通用させてみせる。
(当たり判定を減らしている、それにこの砂嵐で・・・)
対するマナミはケイの珍妙なモーションに混乱しかけてゆく。
どこで覚えたのか、継ぎ接ぎな型で整合がとれない上に
追加で視界が奪われがちな状況下、戦闘前の意気不足。
体を利かせるあらゆる要素が彼女の判断力を低下させていたのだ。
そして。
「ここだっ!」
「・・・・・あ!?」
打撃ではなく投げ、彼女の打撃カウンターを見計らって腕を掴み、
地に投げた。
ドサッ
マナミを地に押さえ込む、自分の体も接して上からのしかかる。
抵抗する感じがない、この姿勢のまま小声で発した。
「「こんな短期間でここまでやられちゃうなんて、ケイのクセに・・・」」
「打撃の傾向はお前の悪いクセ、いやトットリがそうだろ。
あれから俺も他で色々吸収していたんだ」
「確かに殴りたがりは多かったかもね。
トットリに攻撃的なのが多く、
あたしも散々やられて身に沁みついちゃったのかも」
「そうだったのか・・・」
おそらく、彼女は親の技術漏洩でとばっちりを受けたのだろう。
父の言っていた忌念がマナミの中にもある。事情が何であれ、
自分がどうにかふっ飛ばしてみせる気持ちが大きくなりつつある。
もう試合は終わった、ケイはマナミにかつて交わした約束を
一度確認しつつ、彼女に催促した。
「帰ってきてくれ・・・俺のチームに」
「ケイ・・・」
ケイの顔が真顔になる。戦闘時より顔が赤くなっているが、
こういった男の気持ちなどすでに分かっているのが女だ。
上体を起こして少し離れ、両腕をさする。
ためらわずに従うように応じる言葉をだす。
「この前の約束だもんね、もう上にはいられないし
ずっとあんたのとこに――」
ズドン
1発の銃声音が真上から聞こえた。目の前の彼女の身から
ピアストリーナが飛び散って、自分の体に付着する。
ドサッ
「マナミイイイイイイイイィィィ!」
マナミのカーポは弾に撃ちぬかれた。
液も砂もこびりついた体は崩れその後、倒れ込んでしまった。
「ゲホッ」
「まなみ、しっかりしろ! すぐにAEDを持ってくる!」
彼女は自分の腕をつかみ、放そうとしなかった。
出涸らした声で精一杯に話しかける。
「これで、良いの・・・ただの応報。
当たり前の・・・報い」
「なにが応報だ、死んでいいわけないだろう!」
「体・・・もう・・・うごかない・・・安心して眠れる」
「マナミ・・・おい・・・マ」
およそ1分。
彼女が動かなくなるまでの時間は救助を呼ぶ前くらいで、
自分だけ何度も声をかけ続けているだけ。
もう、返事はない。
あるのは少しぬるくなった体のみだった。
マナミ ロスト
弾は上空から撃ち下されたのが分かる。
空を見上げた先にはディサルトを構えていたエイジの姿があった。
「父親をやったのが、まさかお前だったとはな・・・引き上げるぞ」
「エイジ・・・・よくも・・・・よくもマナミをおおお!」
ズドンズドンズドンズドン
グイイイイイン
何発も撃って撃ち落そうとしても、まったく手ごたえがない。
飛空艇は上昇してしまったきり、去って行ってしまった。
「今晩、ケイに会いにいこうか」
「!?」
マナミは突然、司令からケイと会いに行けと言う。
あまりにもいきなりなので、気が引けて返事しにくくなってしまった。
「あたし、あの子に合わせる顔が・・・」
「では、ずっとここに隠居するつもりか?」
「・・・・・・」
チクリとする言葉で返されるマナミ。
確かに、いつまでもここに居られる猶予もない。
しかし、八方塞がりで行く当てもないからどうしようもなく、
なんとかして違う言い訳も放ってしまう。
「でも、外に出たら・・・」
「あいつは今トットリCNで待機している。
実はな、ケイとトットリ司令を説得しておいた。
砂丘の中心部で待ち合わせするのが良いらしい。
それに私も男だ、ついお前に手を出してしまうかもしれないぞ?
そうなったら、ケイはなんて思うか?」
司令の言い分はマナミの気持ちをとうに読み抜いていた。
このまま匿っても、いずれ見つかって営倉行きにされる。
ならば、総司令の実子のケイの元に戻せば家系特権で
少しでも酌量が付いて再配置を見込めるのではと思い、
彼女を彼の元に置いてやるのが最善だと、手を考えていた。
「公に出ていなかったが、最高司令官への反逆行為は相当な厳罰だ。
一司令官の私がどうにか弁護してみせる」
マナミはそれ以上断れず、承諾する。
「・・・・・分かりました、会いに行きます」
トットリCN トットリ砂丘
(マナミが・・・ここに来る)
ケイは司令の予想外の展開に疑いを隠せなかった。
マナミをかくまっていた件に怒りを向かわせたいところだったが、
彼女はCNから指名手配されており、捕まってしまえば
話すらまともにできなくなる。
だから、心情を知るきっかけを考えれば、
アキヒコ司令の采配に返って感謝するべきだと思った。
「というわけで彼女がすぐにここに来る。待っててくれ」
「分かりました」
トットリ司令官と話し合ってここに来させようと配置してもらう。
周りには他の誰もいない。
現地のトットリ兵すら見当たらず、避けるように目を減らして
この場を設けてくれた司令にある意味嬉しい気もするが。
(本当に来てくれるだろうか・・・)
風で砂が舞い上がる。
これから、ここで起こる出来事の予兆といわんばかりの光景だろうか。
自分もこわばりそうな顔をどうにか正常にさせようとする。
彼女はやって来た。
落ち着いた様子、雰囲気でケイの目線から逸らしつつも
また合わせながら挙動不審な態度だ。
司令は2人きりにさせたいのか、一旦ここから離れていく。
「マナミ・・・」
「ケイ・・・」
砂上で5m間隔で佇む。
お互い一言も話さず、しんみりとした空気が続く。
そして、先にとケイが先制して言葉を終わりまで発した。
「あのね、わた――」
「体調はどうだ?」
「えっ?」
ケイは意外な言葉を聞いてきた。
彼の父親についてではなく、自分の近況について聞いてきたのだから。
「大丈夫よ、よく寝ちゃってた。
司令の家が大きくて落ち着けられたから」
「それにしても意外だったな、お前がトットリ出身だったなんて」
「うん、今まで黙っていてごめんね」
「だから、訓練をなんでもそつなくこなしていたんだな」
「うん、私が山陰にいたときにはすでにグラスホッパーや
基礎軍事訓練を行っていたから・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
また静かになった。
本題を言いだせないケイ、本音を言いだせないマナミ。
ここで、先陣切った様に言葉をだすべきなのが男の方だ。
「俺は許すよ・・・お前を」
「ケイ・・・」
自分はマナミのした事を許すと言った。
今回の出来事は俺達に限った話ではないから、
救済措置として慰めようと伝えたいのだ。
「お前もお前なりに辛い事があったんだろ?
元をたどれば、天主殻のイミフなルールで生かされながら
消されるそんな世界が悪いんだしな」
「・・・・・・」
「他のCNだって同じさ。
家族を失っている兵なんてもっとたくさんいる。
でもな、どこの分からない奴にやられるくらいなら、
仲間にやられた方がまだマシなもんだ」
無茶ぶりな説法だが、経験なりの感情論を使う。
口下手だから、まともな説得もできずに比喩な言葉を言う。
「お、俺は山陽の光だ。だから、お前の山陰の影を照らしてやる」
「!?」
彼女は笑い声をあげた。
「ハハハハハ!」
(いつものクセがつい・・・)
正直、恥ずかしい。ケイの顔が赤くなる。
仕方ない、いつものカッコつけた台詞ばかり言ってるのは
今回ばかりではなかったが、場合が場合だからなおさら
変な気持ちになった。
その場しのぎか、振り払うように近接戦闘を申し込んだ。
「その前に・・・前回の試合の借りを返させてもらうぞ!」
「そ、そうこなくっちゃね!」
「このまま負けていたら隊長のメンツもない、リべンジだ!」
「あたしは簡単には負けないわよ」
マナミは受けて立つ姿勢を見せる。
もちろん、素手で戦う。
女だからなんて関係なく、一兵式として臨んだ。
シュッ
パンチと見せかけて後ろに下がる。
前進からの後退するバックアップカウンターは
マナミの得意技なのはもう知っている。
自分は間合いを離してからの胴体を横へ迂回する急襲法を
オオサカ兵から教わったバリエーションを追加する。
(この瞬間だ!)
「!?」
ドスッ
「うっ」
ヒットした、変化技に彼女は不意をつかれたようだ。
「ふぅん、学習したね。バカなのに♪」
「お前は直線的に真面目すぎる、
馬鹿はバカなりのやり方があるんだ」
星団とはいえ、近江の技術までは熟知しきれていない。
まずは一歩、マナミに近づけた。
次はどう対応してくるのか、彼女の立ち位置を凝視していると。
「砂嵐が強くなってきたか」
一気に視界が効かなくなる。
試合を中断しようと思ったが、彼女は依然やる気のようだ。
(このままやってもゴリ押しされる。)
まさか、環境変化が今起こるなんて予想もつかなかったので
早めに片を付けようと1つの賭けにでる。
2人から教わった近江CNに伝わる不動の構えという、
1点から動かないカウンター技で対抗しようとした。
これは中つ国にはないスタイル。
あの近江から仕込まれた技であったものだ。
「ろくに動けなかったら、隙間からカウンターだ。
人は頭と胸が弱点だから身をかがめて隠す型がある」
「隙間から?」
前にライリーから言われた内容を思い返す。
静止から後手の先へ変える巧手が不動の構えだと言う。
動かずに留まり、腰を落として身をかがめて当たり判定を減らす技だ。
元は銃弾から防ぐモーションの派生であったが、
マナミの直進力を逆手にここで活かそうと考えた。
(当然マナミの拳より、銃弾の方が早い。
この砂嵐なら、うまくできるかも)
似たような体術は中つ国でもあるが、距離が違う。
相手が人の場合でも可能性があると前から思っていた。
だが、実現する能力が今まで足らなかったのだ。
オオサカで学んだ新たな体術、圧倒的な能力をもつマナミに
通用させてみせる。
(当たり判定を減らしている、それにこの砂嵐で・・・)
対するマナミはケイの珍妙なモーションに混乱しかけてゆく。
どこで覚えたのか、継ぎ接ぎな型で整合がとれない上に
追加で視界が奪われがちな状況下、戦闘前の意気不足。
体を利かせるあらゆる要素が彼女の判断力を低下させていたのだ。
そして。
「ここだっ!」
「・・・・・あ!?」
打撃ではなく投げ、彼女の打撃カウンターを見計らって腕を掴み、
地に投げた。
ドサッ
マナミを地に押さえ込む、自分の体も接して上からのしかかる。
抵抗する感じがない、この姿勢のまま小声で発した。
「「こんな短期間でここまでやられちゃうなんて、ケイのクセに・・・」」
「打撃の傾向はお前の悪いクセ、いやトットリがそうだろ。
あれから俺も他で色々吸収していたんだ」
「確かに殴りたがりは多かったかもね。
トットリに攻撃的なのが多く、
あたしも散々やられて身に沁みついちゃったのかも」
「そうだったのか・・・」
おそらく、彼女は親の技術漏洩でとばっちりを受けたのだろう。
父の言っていた忌念がマナミの中にもある。事情が何であれ、
自分がどうにかふっ飛ばしてみせる気持ちが大きくなりつつある。
もう試合は終わった、ケイはマナミにかつて交わした約束を
一度確認しつつ、彼女に催促した。
「帰ってきてくれ・・・俺のチームに」
「ケイ・・・」
ケイの顔が真顔になる。戦闘時より顔が赤くなっているが、
こういった男の気持ちなどすでに分かっているのが女だ。
上体を起こして少し離れ、両腕をさする。
ためらわずに従うように応じる言葉をだす。
「この前の約束だもんね、もう上にはいられないし
ずっとあんたのとこに――」
ズドン
1発の銃声音が真上から聞こえた。目の前の彼女の身から
ピアストリーナが飛び散って、自分の体に付着する。
ドサッ
「マナミイイイイイイイイィィィ!」
マナミのカーポは弾に撃ちぬかれた。
液も砂もこびりついた体は崩れその後、倒れ込んでしまった。
「ゲホッ」
「まなみ、しっかりしろ! すぐにAEDを持ってくる!」
彼女は自分の腕をつかみ、放そうとしなかった。
出涸らした声で精一杯に話しかける。
「これで、良いの・・・ただの応報。
当たり前の・・・報い」
「なにが応報だ、死んでいいわけないだろう!」
「体・・・もう・・・うごかない・・・安心して眠れる」
「マナミ・・・おい・・・マ」
およそ1分。
彼女が動かなくなるまでの時間は救助を呼ぶ前くらいで、
自分だけ何度も声をかけ続けているだけ。
もう、返事はない。
あるのは少しぬるくなった体のみだった。
マナミ ロスト
弾は上空から撃ち下されたのが分かる。
空を見上げた先にはディサルトを構えていたエイジの姿があった。
「父親をやったのが、まさかお前だったとはな・・・引き上げるぞ」
「エイジ・・・・よくも・・・・よくもマナミをおおお!」
ズドンズドンズドンズドン
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何発も撃って撃ち落そうとしても、まったく手ごたえがない。
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