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2章 関東統一編
第13話 フォッサマグナ
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アイチCN 拠点
指令室でジュウゾウがトヤマ司令官に質疑応答を迫っている。
彼は独断でトウキョウCNに侵入していた件で火種を巻き、
無謀かつ勝手すぎる手段に憤りを隠さずにはいられない状況だ。
「で、私に話も通さずに作戦を行ったのだな?」
「「そうです、ニイガタCNを我ら中部によりを戻させる故。
位置的に彼らがいなくなれば、我々が東北の奇襲を受けやすく、
白兵戦において劣勢を招いてしまいます」」
「機甲重視の今において白兵など人材の消費となるだけだ。
それに、奴らとは完全に袖を分かったはずだ。
今さらそんな事をして何になる?」
「「今、そんな事とおっしゃいましたか?
前から懸念していましたが、やはりあなたは器が知れている」」
「なに!?」
「「ナガノ程、ニイガタと強固に連携結託してきたCNはありません。
それを、“そんな事”扱いする時点で
あなたには情の浅さが見えているのですよ。
何気ない一言ですら浮き彫りするのです。
本性というものには」」
「・・・・・・」
「「それはともかく、戦闘のみで解決する方法は好ましくありません。
摩耗高まる情勢の中における同盟というシステムの望みを考慮。
我々は我々の方法で関東との会合を取らせていただきます」
「我々の意見も聞かずにか?」
「「そうとってもらっても構いません。
ついでですが、ナガノCNも同意見のようです」」
「な、なんだと!?」
「「引き続き彼女を説得し、交渉を試みます。
お話は以上です・・・それでは」
プツッ
トヤマ司令官は早々と通信を切る。
総司令官へ反省に応じてくれずに終わる。
ジュウゾウは中部の連携が徐々にほぐれていく感覚に見舞われ、
自らの信念が他との亀裂が生じていく現状を否められなかった。
ナガノCN 拠点指令室
「ヤマガタCNに奇襲を受けただと?」
対するナガノの方はある一件の発生に迫られていた。
ロビンの通信をヨゼフィーネと一緒に聞いている。
市民街のエリアにいた仲間が偵察にきていた敵にアブダクトされ、
人質となってしまったようだ。
「ホワイトキャラバンが積荷を降ろす最中に隙を突かれてしまいました。
「幸いロスト者は出なかったですが、ライオットギア用のキャパシタも
80部以上強奪されてトヤマとの規格も停止してしまい、司令?」
「ウーヴェ君、頼めるか?」
「父ちゃん!」
「そうだな・・・フィーネ、今回はお前も来い」
「良いのか!?」
今回は娘を部隊に加えさせる事にする。
実の娘といえども、1人の兵士だ。
未成年を前線に出させる事は普通なら気が引ける。
しかし、実力は正直いってもナガノにおいてはTOP。
周囲の目から“メインに入れてくれ”と思われるくらい
期待されているのも事実だった。
だから、無理を承知で。そして、前々から本人の希望を含めて
そろそろ一人前なりの扱いをしてやるべきだと判断した。
配置は決定したが、本部にはまだ連絡を入れていない。
「司令、アイチには報告しなくて良いの?」
「・・・止めておく、機会が悪い」
「何かあったのか?」
「最近のアイチは独善的になってきている。
対応は良く見えても、リソースの請求量が日に日に増しているんだ。
まるで連結が裏返る様に消費も苦しくなる」
「言ってる事とやってる事が違うというのか」
仲間という名目の搾取、そんな状況は前から度々あったが
最近ではそれが如実に表れているのを司令は感じていた。
MAFとしたいが、返って疑われやすい。
再び本部の意向を含めない作戦。
2人は承諾し、自分達のCNのみラボリ開始した。
が、その寸前に司令がせき止めた。
「待ってくれ、もう1つあるんだ」
「まだあるのか?」
「トヤマがトウキョウに向かわせたライオットギアを潜入させ、
技術者らしき1人、アブダクトに成功したようだ。
もし、見かけたら先に援護しておいてほしい」
「・・・そうか」
トヤマCNも同時期に関東に対する作戦を実行していたようで、
秘密裏に行っていたという作戦はトウキョウCNへの資源回収だったのだ。
司令は彼らとも独自行動に打って、少しでも優位に立とうと策。
中部から離れるこんな状況だ、綺麗事で済まないのも承知の上。
自分は何も言わずにそれも了承する。
19:00 ヤマガタCN 鷗岡エリア
「ヤマガタ西部、侵入成功しました」
「作戦通り、海岸沿いより林のルートから向かう。
極力戦闘は避けろ、いいな!?」
「了解!」
ロビン分隊がCN間の辺境を到着。
トヤマの船を借りて、海からヤマガタCNに潜入した。
しかし、作戦が聞いていたのと状況が違っている事に気付く。
ヨゼフィーネが辺りを見回して他の味方がいないと言う。
「トヤマは?」
「中部に戻っていないな、奪還を先にするぞ」
今のところ彼らはまだ帰還していないようで、救助を先に行う。
見張りが交代する合間をぬって入り込む。
人質がいるであろうヤマガタの駐屯地の一角を見つけた。
予想範囲をしぼりだして隠密行動で予定地へと向かって行く。
これから救出対象を目標に身を潜めて進む。
できるだけコンタクトを取らずに済ませたいものの。
「ん?」
1人のヤマガタ兵が林をジッと見つめていた。
わずかながらモゾモゾとしている茂みが不自然なまでに波打っていたのだ。
かたわららナガノ兵は低い姿勢で茂みの中を移動している。
最前線にいるロビンのすぐ後ろの部下が申し訳なさそうに話し始めた。
「「た、隊長・・・」」
「「どうした?」」
「「こんな時に話すのもなんですが、身体的に合った兵科による分別って、
我らナガノであまり実施されていないような気が・・・」」
「「そうかもしれんな、兵の適齢数も元々多くはない。
体力と頭脳も含めて中部同士支えあってきたわけだ」」
「「ライオットギアに頼ってきた反動も大きくて・・・
今回も実際に影響がでると思います」」
「「確かに運搬が主の俺達は単身での行動に不慣れだ。
それをここで話してもラチがあかないだろう?
終わってからにしろ」」
「「実はまだあるんですが・・・」」
「「なんなんだ、もったいぶらずにはなしてみろ」」
「「隊長の脇腹が突き出てます」」
「しまった!?」
「コンタクトオオオオオオオ!」
見つかってしまった。
茂みが少しずつ低くなり、ロビンの体格を覆い隠せなくなっていた事に
気付いていなかったのだ。
(なんという凡ミスだ)
「やっぱり親父は接近戦が性に合ってるぞ!」
茂みで体の自由が利きにくい場所での近接戦闘は困難だ。
見つかったものは仕方なく、目的地も近いので作戦を続行。
ナガノ分隊は散開して対処にあたる。
拳の金属を信じ、距離を詰めようとしたところ。
スパァン スパッ
「えふっ!?」
ヤマガタの所持する武器は先が平の槍みたいな物だ。
打撃を平部で受け流し、軸を変えて斬撃。
平部で打撃してから刃部で斬り付けて間合いを見図られてしまい、
接近にこなれた相手とリーチの長さにKDDYでは間が悪く、
巧妙で近づくのは困難だ。
(接近・・・銃・・・あれを使えば)
今、ナガノ兵は銃を携帯していない。
ガジェットをあさり、わずか10m範囲内を乗り越えようと
彼女は瞬時に間合いと有効な武器を考える。
とある1つの装備品を名指しで伝えた。
「釘打ち機を使うぞ!」
「あれを武器に・・・そうか!」
中に釘打ち用の工具が入っていた。
本来、兵器として扱う物ではないが、一応の攻撃性能があるので
この場を凌ぐ為に相手へ撃ち放った。
バララッ
「べバボボッ!?」
釘の様な鉄心はバラになってヤマガタ兵に飛び散っていく。
工具として使われていたそれは、突如武器として用いられ
今の状況を打ち破る手段となる。
(やはり、見込みのある奴だコイツは・・・)
続けてナガノ兵も鉄心をばらまき出した。
命中率は低くも近距離なら人相手に十分な効果で
軌道の拡散が相手にとって脅威さを味わわせていく。
もどかしさとえげつなさにヤマガタ兵はたじろぐ。
ナガノ兵に形勢が有利にさしかかった時だ。
「貴様っ!」
「!?」
逆上した兵の持つ刃が間をかすめてヨゼフィーネに向けられる。
しかし、彼女への攻撃を見極めていたヤマガタ兵がいた。
「駄目だッ!!!」
「お前!?」
ドシュッ
ヤマガタ兵Pに刃が当たった、同士討ちしたのだ。
戦いは同士の入れ違いにより膠着状態に変わっていった。
「違う・・・俺はやってないいいいいいいっ!」
「「こんな女子が・・・死んではならん」」
「なんで、敵兵をかばっただ!?」
「「我が娘もロストしただ・・・そんな光景もう見たくないさ」」
Pが少女兵をかばった理由は彼も同様に娘がいたと言う。
市民と行動する最中に戦闘に巻き込まれて失ったらしい。
人質の中には市民も含まれていたのだ。
「「もう・・・彼らと・・・争うな・・・もう」」
横たわる男の手にドックタグの様な物がある。
ロビンはそれを見て驚きの声を上げた。
「これは!?」
あのヤマガタ村にあったドウソジンと同じ、二対の人像が描かれたレリーフ。
まったく等しい絵があった。
ナガノの中にあるヤマガタの名は偶然とは言えず、
元から何かしら繋がりがあった証明をここで判明させられたのだ。
「・・・・・・」
周囲はこの事実に気付いていない。
ヤマガタ兵Pは息絶え、ロストした。
ナガノ兵達も追撃を止め、攻撃する気配を縮めてゆく。
この機で両兵は戦意が冷めて両腕を下げた。
「フィーネ、タオルは持っているか?」
「あ、ああ」
タオルを受け取り、彼の顔の上にそれを敷いて拝む。
娘をかばったヤマガタ兵を見て自分は彼らに要請する。
「お前達との同盟を勧告する。
願わくば、彼の弔いも同行させてほしい」
「なに!?」
同盟をしたい自分の要請に彼らの顔が困惑している。
理解してもらえるよう、続けて念を押した。
「娘をかばってくれたんだ。
敵といえども曲りなりの気持ちを切り替えてだな」
「司令に聞いてからにした方が良いんじゃ?」
おそらくナガノ司令官は了承するだろう。
関東へのアプローチをどうにかとっていたわけだから、
鞘に収める一手をここぞとばかりに見つけたかった。
何より、ロビンは自国の司令官すらも影響をもたれる存在だからだ。
(そうしたらクロムとは・・・もう)
同時に本部のアイチと袖を別つ事にもなる。
連合というものは全ての同意を得られるとは限らない。
時に、鉱物の端が欠ける様な分別もまた然りに起こるのだ。
アイチCN拠点 指令室
「ナガノ司令・・・・・・貴様まで」
予想通り、ナガノ司令官はロビンの望みに応じた。
対して、ジュウゾウの怒りは増し爆発寸前にまで真っ赤な顔をしている。
そんな総司令官の茹で上がりそうな態度を見ても、
冷静な言葉で同盟受理した説明をする。
「自分は向こう側の可能性を感じ、今回の決断にまで至りました」
「我々のサポートも・・・もう・・・金輪際受けられんぞ?」
引き留める言葉はニイガタの時と同じ。
ナガノCNも中部連合から離脱する結果となった。
事実、中部CNの東側に取り込まれたといってもいい。
冷たい言い方でジュウゾウに別れの言葉を告げる。
「承知の上です。
借りていたライオットギア、及び発動機は全てお返しいたします。
今までありがとうございました」
プツッ
声音と無音の間が狭いくらい、あっけなく速やかに通信を切られた。
また1つCNがここから離れていった。
頭を抱えて深くうなだれる。
「自分の代でことごとくこの仕打ちとは・・・なんたる不覚。おいたわしや」
数日後 アイチCN 豊日エリア
「ナガノも脱退!?」
クロムはイリーナからの報告でいつもより声が上がる。
予想だにしない出来事に頭が呆然としそうになる。
祖父に伝えられたクロムは詳細を問いだして経緯が本当である事を知った。
「どうして、ここ最近になってからこうなった?」
「「よくは分からないけど、ヤマガタとの交戦でそうなったとか。
こっちにも東北への話なんて来なかったし」」
「アイチに黙って同盟CNが勝手に動いてたのか。
東のCNが次々と・・・」
「「クロム・・・」」
つまり、該当CNに所属している者達との決別を意味する。
ロビンやヨゼフィーネも東側の人となるのだ。
それは戦友が敵となる意味も含まれている。
CNの中心部に位置し、境に支えられていたここはまさに
少しずつ分解の予兆が現れ始めていた。
中部に分かたれた深い地溝帯が出来上がる様に、
ここもまた2つに分かたれていく。
指令室でジュウゾウがトヤマ司令官に質疑応答を迫っている。
彼は独断でトウキョウCNに侵入していた件で火種を巻き、
無謀かつ勝手すぎる手段に憤りを隠さずにはいられない状況だ。
「で、私に話も通さずに作戦を行ったのだな?」
「「そうです、ニイガタCNを我ら中部によりを戻させる故。
位置的に彼らがいなくなれば、我々が東北の奇襲を受けやすく、
白兵戦において劣勢を招いてしまいます」」
「機甲重視の今において白兵など人材の消費となるだけだ。
それに、奴らとは完全に袖を分かったはずだ。
今さらそんな事をして何になる?」
「「今、そんな事とおっしゃいましたか?
前から懸念していましたが、やはりあなたは器が知れている」」
「なに!?」
「「ナガノ程、ニイガタと強固に連携結託してきたCNはありません。
それを、“そんな事”扱いする時点で
あなたには情の浅さが見えているのですよ。
何気ない一言ですら浮き彫りするのです。
本性というものには」」
「・・・・・・」
「「それはともかく、戦闘のみで解決する方法は好ましくありません。
摩耗高まる情勢の中における同盟というシステムの望みを考慮。
我々は我々の方法で関東との会合を取らせていただきます」
「我々の意見も聞かずにか?」
「「そうとってもらっても構いません。
ついでですが、ナガノCNも同意見のようです」」
「な、なんだと!?」
「「引き続き彼女を説得し、交渉を試みます。
お話は以上です・・・それでは」
プツッ
トヤマ司令官は早々と通信を切る。
総司令官へ反省に応じてくれずに終わる。
ジュウゾウは中部の連携が徐々にほぐれていく感覚に見舞われ、
自らの信念が他との亀裂が生じていく現状を否められなかった。
ナガノCN 拠点指令室
「ヤマガタCNに奇襲を受けただと?」
対するナガノの方はある一件の発生に迫られていた。
ロビンの通信をヨゼフィーネと一緒に聞いている。
市民街のエリアにいた仲間が偵察にきていた敵にアブダクトされ、
人質となってしまったようだ。
「ホワイトキャラバンが積荷を降ろす最中に隙を突かれてしまいました。
「幸いロスト者は出なかったですが、ライオットギア用のキャパシタも
80部以上強奪されてトヤマとの規格も停止してしまい、司令?」
「ウーヴェ君、頼めるか?」
「父ちゃん!」
「そうだな・・・フィーネ、今回はお前も来い」
「良いのか!?」
今回は娘を部隊に加えさせる事にする。
実の娘といえども、1人の兵士だ。
未成年を前線に出させる事は普通なら気が引ける。
しかし、実力は正直いってもナガノにおいてはTOP。
周囲の目から“メインに入れてくれ”と思われるくらい
期待されているのも事実だった。
だから、無理を承知で。そして、前々から本人の希望を含めて
そろそろ一人前なりの扱いをしてやるべきだと判断した。
配置は決定したが、本部にはまだ連絡を入れていない。
「司令、アイチには報告しなくて良いの?」
「・・・止めておく、機会が悪い」
「何かあったのか?」
「最近のアイチは独善的になってきている。
対応は良く見えても、リソースの請求量が日に日に増しているんだ。
まるで連結が裏返る様に消費も苦しくなる」
「言ってる事とやってる事が違うというのか」
仲間という名目の搾取、そんな状況は前から度々あったが
最近ではそれが如実に表れているのを司令は感じていた。
MAFとしたいが、返って疑われやすい。
再び本部の意向を含めない作戦。
2人は承諾し、自分達のCNのみラボリ開始した。
が、その寸前に司令がせき止めた。
「待ってくれ、もう1つあるんだ」
「まだあるのか?」
「トヤマがトウキョウに向かわせたライオットギアを潜入させ、
技術者らしき1人、アブダクトに成功したようだ。
もし、見かけたら先に援護しておいてほしい」
「・・・そうか」
トヤマCNも同時期に関東に対する作戦を実行していたようで、
秘密裏に行っていたという作戦はトウキョウCNへの資源回収だったのだ。
司令は彼らとも独自行動に打って、少しでも優位に立とうと策。
中部から離れるこんな状況だ、綺麗事で済まないのも承知の上。
自分は何も言わずにそれも了承する。
19:00 ヤマガタCN 鷗岡エリア
「ヤマガタ西部、侵入成功しました」
「作戦通り、海岸沿いより林のルートから向かう。
極力戦闘は避けろ、いいな!?」
「了解!」
ロビン分隊がCN間の辺境を到着。
トヤマの船を借りて、海からヤマガタCNに潜入した。
しかし、作戦が聞いていたのと状況が違っている事に気付く。
ヨゼフィーネが辺りを見回して他の味方がいないと言う。
「トヤマは?」
「中部に戻っていないな、奪還を先にするぞ」
今のところ彼らはまだ帰還していないようで、救助を先に行う。
見張りが交代する合間をぬって入り込む。
人質がいるであろうヤマガタの駐屯地の一角を見つけた。
予想範囲をしぼりだして隠密行動で予定地へと向かって行く。
これから救出対象を目標に身を潜めて進む。
できるだけコンタクトを取らずに済ませたいものの。
「ん?」
1人のヤマガタ兵が林をジッと見つめていた。
わずかながらモゾモゾとしている茂みが不自然なまでに波打っていたのだ。
かたわららナガノ兵は低い姿勢で茂みの中を移動している。
最前線にいるロビンのすぐ後ろの部下が申し訳なさそうに話し始めた。
「「た、隊長・・・」」
「「どうした?」」
「「こんな時に話すのもなんですが、身体的に合った兵科による分別って、
我らナガノであまり実施されていないような気が・・・」」
「「そうかもしれんな、兵の適齢数も元々多くはない。
体力と頭脳も含めて中部同士支えあってきたわけだ」」
「「ライオットギアに頼ってきた反動も大きくて・・・
今回も実際に影響がでると思います」」
「「確かに運搬が主の俺達は単身での行動に不慣れだ。
それをここで話してもラチがあかないだろう?
終わってからにしろ」」
「「実はまだあるんですが・・・」」
「「なんなんだ、もったいぶらずにはなしてみろ」」
「「隊長の脇腹が突き出てます」」
「しまった!?」
「コンタクトオオオオオオオ!」
見つかってしまった。
茂みが少しずつ低くなり、ロビンの体格を覆い隠せなくなっていた事に
気付いていなかったのだ。
(なんという凡ミスだ)
「やっぱり親父は接近戦が性に合ってるぞ!」
茂みで体の自由が利きにくい場所での近接戦闘は困難だ。
見つかったものは仕方なく、目的地も近いので作戦を続行。
ナガノ分隊は散開して対処にあたる。
拳の金属を信じ、距離を詰めようとしたところ。
スパァン スパッ
「えふっ!?」
ヤマガタの所持する武器は先が平の槍みたいな物だ。
打撃を平部で受け流し、軸を変えて斬撃。
平部で打撃してから刃部で斬り付けて間合いを見図られてしまい、
接近にこなれた相手とリーチの長さにKDDYでは間が悪く、
巧妙で近づくのは困難だ。
(接近・・・銃・・・あれを使えば)
今、ナガノ兵は銃を携帯していない。
ガジェットをあさり、わずか10m範囲内を乗り越えようと
彼女は瞬時に間合いと有効な武器を考える。
とある1つの装備品を名指しで伝えた。
「釘打ち機を使うぞ!」
「あれを武器に・・・そうか!」
中に釘打ち用の工具が入っていた。
本来、兵器として扱う物ではないが、一応の攻撃性能があるので
この場を凌ぐ為に相手へ撃ち放った。
バララッ
「べバボボッ!?」
釘の様な鉄心はバラになってヤマガタ兵に飛び散っていく。
工具として使われていたそれは、突如武器として用いられ
今の状況を打ち破る手段となる。
(やはり、見込みのある奴だコイツは・・・)
続けてナガノ兵も鉄心をばらまき出した。
命中率は低くも近距離なら人相手に十分な効果で
軌道の拡散が相手にとって脅威さを味わわせていく。
もどかしさとえげつなさにヤマガタ兵はたじろぐ。
ナガノ兵に形勢が有利にさしかかった時だ。
「貴様っ!」
「!?」
逆上した兵の持つ刃が間をかすめてヨゼフィーネに向けられる。
しかし、彼女への攻撃を見極めていたヤマガタ兵がいた。
「駄目だッ!!!」
「お前!?」
ドシュッ
ヤマガタ兵Pに刃が当たった、同士討ちしたのだ。
戦いは同士の入れ違いにより膠着状態に変わっていった。
「違う・・・俺はやってないいいいいいいっ!」
「「こんな女子が・・・死んではならん」」
「なんで、敵兵をかばっただ!?」
「「我が娘もロストしただ・・・そんな光景もう見たくないさ」」
Pが少女兵をかばった理由は彼も同様に娘がいたと言う。
市民と行動する最中に戦闘に巻き込まれて失ったらしい。
人質の中には市民も含まれていたのだ。
「「もう・・・彼らと・・・争うな・・・もう」」
横たわる男の手にドックタグの様な物がある。
ロビンはそれを見て驚きの声を上げた。
「これは!?」
あのヤマガタ村にあったドウソジンと同じ、二対の人像が描かれたレリーフ。
まったく等しい絵があった。
ナガノの中にあるヤマガタの名は偶然とは言えず、
元から何かしら繋がりがあった証明をここで判明させられたのだ。
「・・・・・・」
周囲はこの事実に気付いていない。
ヤマガタ兵Pは息絶え、ロストした。
ナガノ兵達も追撃を止め、攻撃する気配を縮めてゆく。
この機で両兵は戦意が冷めて両腕を下げた。
「フィーネ、タオルは持っているか?」
「あ、ああ」
タオルを受け取り、彼の顔の上にそれを敷いて拝む。
娘をかばったヤマガタ兵を見て自分は彼らに要請する。
「お前達との同盟を勧告する。
願わくば、彼の弔いも同行させてほしい」
「なに!?」
同盟をしたい自分の要請に彼らの顔が困惑している。
理解してもらえるよう、続けて念を押した。
「娘をかばってくれたんだ。
敵といえども曲りなりの気持ちを切り替えてだな」
「司令に聞いてからにした方が良いんじゃ?」
おそらくナガノ司令官は了承するだろう。
関東へのアプローチをどうにかとっていたわけだから、
鞘に収める一手をここぞとばかりに見つけたかった。
何より、ロビンは自国の司令官すらも影響をもたれる存在だからだ。
(そうしたらクロムとは・・・もう)
同時に本部のアイチと袖を別つ事にもなる。
連合というものは全ての同意を得られるとは限らない。
時に、鉱物の端が欠ける様な分別もまた然りに起こるのだ。
アイチCN拠点 指令室
「ナガノ司令・・・・・・貴様まで」
予想通り、ナガノ司令官はロビンの望みに応じた。
対して、ジュウゾウの怒りは増し爆発寸前にまで真っ赤な顔をしている。
そんな総司令官の茹で上がりそうな態度を見ても、
冷静な言葉で同盟受理した説明をする。
「自分は向こう側の可能性を感じ、今回の決断にまで至りました」
「我々のサポートも・・・もう・・・金輪際受けられんぞ?」
引き留める言葉はニイガタの時と同じ。
ナガノCNも中部連合から離脱する結果となった。
事実、中部CNの東側に取り込まれたといってもいい。
冷たい言い方でジュウゾウに別れの言葉を告げる。
「承知の上です。
借りていたライオットギア、及び発動機は全てお返しいたします。
今までありがとうございました」
プツッ
声音と無音の間が狭いくらい、あっけなく速やかに通信を切られた。
また1つCNがここから離れていった。
頭を抱えて深くうなだれる。
「自分の代でことごとくこの仕打ちとは・・・なんたる不覚。おいたわしや」
数日後 アイチCN 豊日エリア
「ナガノも脱退!?」
クロムはイリーナからの報告でいつもより声が上がる。
予想だにしない出来事に頭が呆然としそうになる。
祖父に伝えられたクロムは詳細を問いだして経緯が本当である事を知った。
「どうして、ここ最近になってからこうなった?」
「「よくは分からないけど、ヤマガタとの交戦でそうなったとか。
こっちにも東北への話なんて来なかったし」」
「アイチに黙って同盟CNが勝手に動いてたのか。
東のCNが次々と・・・」
「「クロム・・・」」
つまり、該当CNに所属している者達との決別を意味する。
ロビンやヨゼフィーネも東側の人となるのだ。
それは戦友が敵となる意味も含まれている。
CNの中心部に位置し、境に支えられていたここはまさに
少しずつ分解の予兆が現れ始めていた。
中部に分かたれた深い地溝帯が出来上がる様に、
ここもまた2つに分かたれていく。
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