Condense Nation

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2章 関東統一編

第11話  オニヤンマ

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チバCN拠点

「フクシマから救難信号が?」

 アレン司令は偵察兵と連絡をとっている。
ただ、確認でエリアを見ると予想もつかなかった場所。
かつて存在していたフクシマCNから救難信号が届いていた。
クリフが事情を聞く。

「なんでそんなとこで斥候に?」
「私が指示したわけではない。
 第23部隊とイバラギとの共同分隊がグンマの要請で
 中部の視察に向かわせたが、勝手にそこへ向かって行ったんだ」

話によるとイバラギ兵と共同して、チバの偵察兵達が
ニイガタへ哨戒しに行く予定だった。
が、急遽きゅうきょ進路が変わり、不意にもフクシマにいるらしい。
敵襲で逃げて移動したのだろうか。

「戦闘でそっちにはぐれたとか?」
「いや、戦闘記録はない。
 本人達の意思でにそこへ向かって行ったんだろう」
「フクシマか、俺がCNに入った時にゃ、もうなかったが」
「そこには何かあったのか?」
「フクシマCNは10年前に壊滅している。
 災害とどこかの侵攻によってな、今では荒野だけのエリアになっている」
「壊滅したCNもあるんですね」


フクシマ

 信号を送ったチバ、イバラギモブ兵達は仲間と相談している。
彼らは東北に行くかどうかでもめ合っていた。
相談というよりは押し問答に近いものであったが。

「この北にヤマガタがある、そこから侵入できるはずだ。」
「たった18人で行けるんですか!?」
「ええい、行かなくてはならん!
 ワタルみたいな、キザな奴が隊長を務めるなどもってのほかだ。
 我らモブ兵の功績を上げるためにも・・・。
 とにかく行かなくてはならあああああんっ!」
「・・・同じCNでも派閥ってあるんですね。
 その人、トオルの兄で若いらしいですけど」
「立場といい、メカケといい、おいしいポジションを取ってるからなァ。
 トチギのエリーちゃんとばっかりイチャイチャしやがって。
 あのヤロォ、ゴアッオアア“ア“ひゅじkぉいおl!」
「それにヤマガタには奇妙な食料があるらしい。
 2つの赤く丸い部分にふさがくっついてる食べ物があると。
 俺らの食料事情ももっと発展すべきだろう」
「・・・・・・はあ」

彼が信号を送った理由はなんとも些細ささいで珍妙な事だった。
イバラギ分隊組の個人的な私情で巻き添えを受けたくないと
呆れたチバ兵が拠点に救難を求めていたのだ。


チバCN 拠点入口

「で、お前らも一緒に出張ってくるってか。
 あそこも一応警戒区域だが、良いのか?」
「「何を今更、敵性区域侵入(だけ)はこっちも得意分野で、
  東北の顔出しも初めてじゃあないぜ」」
「そうだったな、こっちの作戦は前とほとんど同じだ。
 位置はそっちが近い、今までの経験からなんか手を打ってんだろ?」
「「今度は火山帯など地理情報を抑えてるから大丈夫だな。
  攻め手としちゃあ、イバラギもいつもと一緒だ。
  ただ、他CNとは同行しないとの事。
  トチギのエリーちゃんは待機させておくが、他の部隊は来るってよ。
  グンマんとこも向こうで何かしら作戦があるんだと」」

 作戦日時決定後、クリフはイバラギCNと確認し合う。
無線でワタルがそう言っていた話の通りに動いていく。
本部は事態を把握しきれない中において向かう救援作戦。
関東で各地にそれぞれの行動が始まる。


ヤマガタCN 町田山岳エリア

 一方で、ヤマガタCNの斥候が彼らの姿を捉えていた。
それら兵士の外装を観ていたヤマガタ偵察兵はすぐに
関東兵だと気がついたが、いつもと行進が異なっていた。

「関東の奴等、こちらに侵入するつもりか?
 だが、奴ら服装がそれぞれ違うぞ?」
「見る限り、違う所属の兵士達じゃないのか?
 肩のワッペンも異なるCN名だ・・・まさか」
「連合していたのか!?」

東北連合にとって、これは一大事と判断。
彼らは本部にすぐさま連絡、大掛かりな対策を検討させた。


アキタCN拠点 ロビー

 南情勢の情報はすぐに東北にも広まっていった。
各兵士達も、すぐに対策をとるよう迫られている中で
責任者たる司令官も黙々と準備にいそしむ。

「「圧縮空気タンク、整備終わり」」

作業を終えたサラは武器庫を出て部下の働きぶりを見に行く。
お約束とロック分隊の集まりを目にして、何をしているのかと
兵達の近況を伺おうと相談に交じった。

「調子はどう?」
「南の連中がついにやってくんのか」
「大丈夫よ、私が守ってあげるから」
「でも、相手は人口数の多いとこよ?
 普通に太刀打ちできる相手じゃないわ」
「偵察班の話だと、複数のCNが徒党を組んでるって。
 同時に来るという話がでているわね。対抗しきれるかなぁ・・・」

マイも詳しく近況を語る。
今までにない情勢がメンバー達に不安がよぎる。
そんなとき、トモキがある案を話した。

「まともに相手するのはダメさ。
 地元に有利な地の利を活かすのが良いさ。
 母ちゃん司令、タンクを5隻ほど用意できないか?」
「タンクを?」

トモキは1つの提案を打ち出した。
山のふもとにある町田エリア、白岩エリア、北下エリア、高代エリアの
東北の各エリアを通り抜けながら戦車を逆走させて
外周引き撃ちを繰り出す作戦だ。

「おらのアイデアというよりクリーズ司令の一考案だが、
 一点場で対応してもジリ貧になるだけ。
 地形をうまく利用するのさ」
「地形を?」
「相手が陸地から来る可能性はあるの?
 逆に山から来た場合はどうするの?」
「その山で対応するのが本命さ。
 緊急時のみヘリで移動。
 最近強化されたライオットギアを山岳地帯に配置。
 陸地から来た場合にのみ、タンクで逃げ撃ちするさ」

大きく歩行できる人型なら、足場の悪い山岳を有利に展開できる。
平地ならば、スピードの速いタンクで応戦できる。
陸と山で戦法を分けて対応するというのがトモキの案だった。
大いに納得するメンバー達。

「プランCね、多数の場合において想定した作戦。
 アキタからも倉庫から出しておくよう言っておくわ」
「お前天才だな!」
「い、いや、これはアオモリの・・・」
「隊長は決定だけしておいてね」
 (なんか馬鹿にされてる気もするな)

サラがその提案を司令達に伝える。
トモキ及びアオモリの案は承認された。
ただ、もう1つ気になるのはホッカイドウCNの対応だった。
レイチェル司令も何かの準備をしているという話だが、
彼女らがどう動くのかまだ通達が来ていない。
イワテ兵から連絡がくる。

ピピッ

「イザベルちゃん、どうしたの?」
「「例の件を聞きました。
  あなた達の作戦はどうしているかちょっと伺いたくて
  連絡したんですけど・・・」」

イワテとの共同作戦について相談。
先程できたトモキの案を教えると、
その策に兄弟達も大いに賛成してくれたようだ。

「私達は貝津馬ヶ岳に配置するって。
 あなた達イワテの守備はどう?」
「「私達は白岩エリアです、陸路の防衛を任されました」」
「ええっ、どっちもミヤギの範囲内なの!?
 ミヤギの連中、なんで北側を南に?」
「「おそらくミヤギ司令官の一存が入ってると思います。
 色々あるんでしょう」」

サラを通じて同盟CNに通達した結果がこの配置だという。
イザベルとメイソンもミヤギ近隣に加わるらしく、保守派の肩代わりを
任さられて少し移動させられて南部に繰り出すらしい。
カレンは大した度胸だと兄妹にエールを送り、通信を切る。
東北各地で連絡網がめぐりあい、関東対策が施されていく。
ただ1人は異なる思惑をもちつつ。


アキタCN周辺

 一方でデイビッドはモブアキタ兵数人と巡回に出ていた。
東北侵攻の話を聞いて、先に偵察していたのだ。
周囲はただ、美しい緑の自然ばかりでこれといった異変はない。
しかし、そんな状況とは別に独自な違和感を感じていた。
挙動で気付かれたか、女口調の男兵がウットリした眼差しで聞く。

「どうしたかしら、デイビットちゃん?」
「いや・・・今日はずいぶんと静かだな」

メンバー達に思っている事を話さない。
確証なく、憶測だけで言えなかった。
良い意味での静かならば、違和感など生まれない。
証拠もなしに味方に伝えるのも混乱を招くだけだ。
風が身に当たる中、心の中でそっと思いつつしまっている。

 (鉄道兵団の姿が見当たらない)


ホッカイドウCN 拠点

「関東CNの連合が・・・分かりました」

 知らせはすでにレイチェル司令にも届いていた。
突然の南部が活発的になったのは予想外。
あの関東が相手となっては、東北連合でも不利な状況だ。
とはいえ、同盟後といえども直ぐに現地へ向かう訳にもいかず、
あくまでもホッカイドウらしい立ち回りをする作戦で
今回は後方から支援しようとする。
今や副司令官となったヨハンが対策を打ち出すが、内容は以下の通り。

「人員を全て東北に回しますか?」
「ここ北海に裏取りされる危険性がある故、
 Bクラス以下は沿岸地域に配備しましょう。
 Aクラスは東北のサポートに向かいます」

まだ、Bクラス以下はAクラスに届く者達は少ない。
人員不足となったAクラスは多人数の東北連合の助力に
力を注ぐべきだと司令は判断したのだ。
側にいたミロンはリソース分配を気にして大丈夫かと質問した。

「前にも相談しましたが、
 マガジンの弾数をもうちょっと増やしてほしいです」
「あっちだってタンクやギアなんてざらにあんだろ。
 それでも弾は足りるのか?」
「あの圧倒的な数に対抗するには分が悪い。
 普通に撃つだけでは到底しのげないだろう」
「そうね、足場を抑えられる環境を生むのが効果的。
 ならば、氷結弾を使いましょうか」
「氷結弾ですか!?」

レイチェル司令が研究して新たに造り出した弾だ。
液体窒素による氷結効果で、着弾時に広がり目標を固めるのだ。
彼女は今回の作戦でこれを用いると言う。
試作品を1つ渡されたヨハンは精査する。

「超低温の液体を破裂させて範囲攻撃として扱う。
 冷却による速度、行動を削ぐ目的ですか?」
「ただ、氷に変化するにもエネルギーが要ります。
 よって、不足分は大気の摂氏で補います」
「聞くからに、ただの非殺傷兵器に思えますけど、
 効果はどれくらい見込みがあるんでしょうか?」
「戦略的優位性とは破壊のみに限りません。
 大切なのは“場の向上”です」
「場の向上?」

司令は二度聞きするような発言をする。
ただの殺傷で止めるのではなく、“攻略しにくいイメージ”を
植え付けさせる事でこちらの優位性を保ち、次の手を先早に取るためだ。

「相手の行動を制限する作戦ですか・・・なるほど」
「私達ホッカイドウは身を包む様に対応して生きてきました。
 勝ち急ぐのは望ましくありません。
 私達の範囲内を押さえて保守する様に、
 東北の彼らをサポートしてあげましょう」
「はい!」

ホッカイドウはあくまでも陣中をはみ出さない手で周りから
サポートする方針を進めていた。
最北端の結合でさらに大きな力を増し、氷の様な鋭さも補う。
関東と東北、お互いに準備を終えて駒を進めていく。
異なった思惑が何を生み出すのかは誰にも分からない。
ただ、分かるのはこれより1つの大きな波が生まれようとする
人の集いという低温ではない火の混じる塊だ。

こうして、ほんの小さなきっかけで互いの削り合いが始まる。
手違いと警戒、膨らみ、また破裂するだろう。

ロックは蒼き籠手を装備し、闘争心を燃やす。

「準備は整った」

エリザベートはベッドの中で人知れずに内心を込める。

「・・・・・・」

レッドは地面に足を着かせて立ち、空を見上げて決意する。

「東北もムダな争いを抑えさせる、待ってろよ!」
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