146 / 280
2章 関西統一編
第9話 山陽と山陰の境1
しおりを挟む
碧の星団 艦内
「あれが水柱か、一体なんだってあんなものが?」
エイジは上空から四国CNに発生した水柱を監視している。
上空300mにまで伸びているものは、水の塔そのものだと判明。
特に危害を加えてくる様子はないので、文字通り様子見していた。
自分とはうって変わり、マナミはチラチラと下界に目を向けている。
「・・・・・・」
ソワソワ
ここ星団に来てからも、彼女は時々こうして気にしている。
理由は他にないくらい分かっている。
知っていながらも、とりあえず聞いた。
「気になるのか?」
「!?」
エイジに気取られた。
下の世界に対してマナミが気にする事なんて限られた事しかない。
「いや・・・別に」
彼女がこちらに来てからしばらく経つが、素直じゃない。
ケイが気になって仕方ないのだろう。
星団としての立場と言ってやりたいところだが、入りたてで
細かく言うのも少し厳しいかもしれない。
先の時間が空いたから、そんな彼女にオカヤマCNを調査するよう促す。
「と・・・いや、総司令は事務処理で手間取ってるから、
合間に行って来たらどうだ?」
「え・・・行って来ても良いの?」
「やっぱり、行きたいんじゃないか。
今はリーダーの指令は特にないから、来る前に行ってくるんだな」
「わ、分かった!」
オカヤマCN 市民街
マナミは何気なく、かつて住んでいたシェルター街を歩いてみた。
もうここに戻るつもりなどなかったのに、何の引力なのか
結局来てしまった自分の心情もよく分かっていない。
こうして見渡している内に見覚えのある家があった。
(あ、あそこの家は・・・)
1時間前 トットリCN
ケイはシェルター街の自宅へ帰宅しようとした。
トットリ鉱山に埋まっていた金属板について父親を
問い詰めようと行動に移すところだった。
メンバー達も1人で大丈夫か不安がつきまとうが、
ケイは単独で色々聞く方が良いと抑えた。
「隊長、何かあったらすぐに連絡を」
「分かってる。」
「気をつけて行きな」
オカヤマCN ケイの実家
自宅に戻ったケイは父親のいる部屋に行く。
特に気を配る態度も見せず、いつもの普通の会話を混ぜながら
あの金属板の話をした。
「聞きたい事があるんだ。
このマンネリ石って、使い道とかあるの?」
「万成石か・・・墓石や装飾品などで用いるが、
オカヤマだけで加工するもの、まあ色々だな」
「じゃあ、トットリの山で掘り起こしたこの金の板から
父さんの持っている石と同じ鉱石が入っていたんだけど、
どういう事なの?」
「!?」
プラムから教えてもらった誘導尋問で問いだす。
父の顔がひきつって険しくなる。観念したかの様な言葉をだした。
「まさか、あんな所から辿られるとは皮肉なものだな」
「辿られる?」
「まあ、いつかは伝えるべき時がくるはずだからな。
それが今だっただけの事・・・したたかになったな」
「どういう意味なの?」
「鉱石に関する調査記録だ。
一部の者のみが閲覧できる仕組みだが、どうやって確認したんだ?」
「トットリの人に調べて見せてもらった。
これはオカヤマでしか採れない石が中に入ってたって」
「技術漏洩か、置き忘れないよう気を配っていたものを。
やはり人というものは伝えずにはいられないものだな」
「?」
回りくどい父の言葉に振り回されがちなケイは流れが読めない。
もっとハッキリ分かりやすく事情を求める。
「だから、なんでそんな物があそこにあったんだよ?」
「よく聞くんだ。
中つ国はかつて規格分担を目的とした政策を計画していた。
理由はMAFの防止。いや、あくまで表向きの言い方だが。
万成石を混ぜた理由はID判別、
データ改竄を防止するために仕組んだものだ」
「IDを?」
「この深成岩は非常に硬く、ゴム印と異なり細工されにくく
光ディスクの様に反射層とピットの構造によって
石の部分だけピットにする事で書き換えられない様に造られている」
「カードの中に石を!?」
「金属板の閲覧は管理者、権限者のみが可能だからな。
トットリの技術者で確か光学者がまだいたのは意外だったが、
それができる立場の者は限られている」
「つまり?」
カズキ「碧の星団創立者、及び総帥は私なんだ。
だから、私がその板を制作した」
「!!??」
カズキはついに知られざる真実を明らかにした。
碧の星団リーダーはケイの父親だったのだ。
次はケイの顔がひきつって険しくなっていく。
「父さんが・・・・・・星団のリーダー?」
「まずは、落ち着いて聞くんだ。
確かに私は鉱山で調査した事がある」
「落ち着けって、こんなしれっとあっけなく言って・・・。
そんなの聞かされて冷静になれるわけがないだろう!
なぜ、星団を立ち上げたんだ?
どうしてエイ兄は星団に入ったんだ?
なんで、マナミも入ったんだよ!?」
「だから落ち着いて聞くんだ」
いきり立つ自分を父親が落ち着かせようとする。
淡々とした口調で話す父親を黙って聞いているしかなかった。
「今から40年前の話だ。
当時は山陽と山陰に分けて大きな敷地争いがあった」
「昔は地域差別とかがあったんだろ?」
「今は目立つ争いはなくなったが、忌念が残っているんだ。
自分の子どもに呪いを吹き込んでいる親もいた。
当時の司令官達は二度と同じ争いを繰り返さないよう、
暗黙の上で同盟国を結んだのだ。お互いに見張る様にな。
中つ国山地の中心部に基地を設けたのもそのためだ」
そして10年前、中つ国周辺では夜間による襲撃が多発していた。
私は対策を命じられ、過去のデータベースを調べていく内に
暗視ゴーグルの存在を見つけたのだ。
私は人生全てをかけて光学の研究に費やした。
だが、それはすぐに行き詰った。
赤外線照射装置を造るための素材と技術が足らなかったんだ。
幸いに解決できる術は意外にも身近な所で見つかった。
光粒子技術は四国CNが保有。
2年前のあの抗争の混乱に乗じて私は四国CNと接触した。
場所はあの鉱山。
そこでジングウ家がシマネに行った隙に交換成功する。
向こうの要求は四国への侵入を止めろというもの。
手切れ品がてら発動機の差出で許してやるとされたが。
魔が差してしまった。
事態解決で技術を必要とせんがため、引き換えの条件として
反重力エンジンを四国CNに数十機も横流しして渡してしまったのだ。
「父さんが・・・反重力の研究を横流ししていた?」
「そのせいで、当時の工作班は責任をとらされた。
あのマナミの両親だ。
私はいまだにその罪に際悩まされていた。
彼らの居場所はどこにもなくなるだろう。
ここ中つ国を抜けても、受け入れてはくれる保証などない。
だから新たな組織を築いてせめてもの助力をしてやりたかった・・・」
父はA.D90年に碧の星団を設立。
まだ信じられないけど、ここで聞かれた話は本当だった。
同国の技術を他国に売る。これはれっきとした反逆行為だ。
マナミは親の件で根に持って星団に入ったのか。
「じゃあ、マナミは・・・犯人捜しで星団に入ったのか。
なら、父さんの事が知られたら危ないじゃないか!?」
「私にとって、マナミは危険な存在だ。
しかし、星団内に引き入れて無用な被害は抑えたい。
彼女を地上に置いておくことで他の者達にも
再びさらなる差別を生み出すだろう」
現に自分もあれだけ打たれていたから言い分は最もだ。
今まで隠し続けてこれたのが不思議でしょうがない。
しかも、CN法からはみ出そうな組織というのも変だ。
そういえば、自分の意思で品物を敵にあげたらどうなるのか?
天主殻はこの行為に罰を与えなかったのか。
「あの円盤に何か忠告受けたりされなかったの?」
「なかったな。
私の見解では、空域制限についてこれといった内容をもってなく、
上空で拠点を設ける件をまったく警告してこない。
あの天主殻は全ての法律の中で機能していないシステムがあるらしい。
私が星団立ち上げに踏み切った理由もその1つだ」
「機能していない・・・」
「私が総司令という立場でありながら星団を作れた理由は、
あくまでもCNの延長線として成り立たせているからだ。
対して、あれは何も反応を示さない。
組織生成システムが欠如している証拠だろう。
悪く言うなら、法の抜け穴だ」
あの完全と思われていた天主殻も、そんな隙があったとは。
ならば、エイジの言っていた“上は任せておけ”という
言葉の意味とは何だったのか。父に聞いてみた。
「エイ兄は上で何をしているの?」
「空中都市の建設だ。
天主殻と同じ様に空の上にもう1つの人のあるべき場所を築くためだ。
今はエイジに任せている」
「く、空中都市だって!?」
上空1000mはある星団の居住区を作り出す計画。
“合わない者”をきちんと分別し、違う世界に住まわせる。
無意味な争いを生まぬよう、新しい政策を生み出す。
天地の干渉不可こそが碧の星団の全貌だったのだ。
「上下に分けられた世界・・・で、ここ中つ国CNを」
「人の中には差別の禍根が常に渦巻いている。
今はその形が見えないだけで、消える事はないんだ。
“場を丸ごと切り離せば”、人の住む世界そのものを
分断する天主殻と同じ方法をとる道で、因縁を断ち切るしかない」
父の言い分は確かに理はかなっている。
でも、分けるというのは人とのつながりも切るのと同じ。
隠蔽まがいな方法をとってまでそんな事をするのかと反論した。
「父さんのやった事は消えたわけじゃない。
なら、素直にみんなに話して、差別をしないように
なんとか説得して分かってもらえば良いだけじゃないか?」
「若いな」
「え?」
「言葉だけでどうにかなるのなら、
私だってこんなくどい方法なんてとらない。
それどころか、荒ぶる戦争すら起こらないだろう。
領土とは、生きると共に糧の限度も生まれるもの。
同じ大地に足を付けて生きる。
そんな単純な事すら人間は難しいのだから」
「・・・・・・」
父の言うそれは当然ながらも、理解せざるをえない内容だ。
自分が世界を理解していない未熟者なんて身に染みて分かってた。
だから、今までの道があんな風になっていたのだから。
「どうしても、山陽山陰は繰り返し続いていくものなの?」
「ああ、生存と競争は密接して離せず摩擦が生まれる。
擦り減る思いに時々何もかもが見えなくなるのを感じる。
このゴーグルの碧の世界だけが私を癒してくれていた」
テーブルの上にあった暗視ゴーグルを手に取り、上にかざす父。
「だが、光は何を通しても変わらないものだ。
これで通して観ても、星の光は変わらない白色光だ。
光で拓かれた映像も、周りは碧の色を放つ」
「・・・・・・」
「以来、私は誓ったのだ。
私自身が碧の光となり、地を守る側になろうと」
償い、そして同じ過ちを繰り返さないための行い。
天空から中つ国CNをまとめていた根源がそこにあった。
「だが、予想外な出来事も起こった。
逆手に取り、地下施設を設けて敵性CNから
守ろうとする動きが出始めたんだ」
「トットリCNか。
なら、備高竹山駐屯地を僕に任せようと決めたのも父さんだろう?」
「ああそうだ。
お前を地上に、エイジを上空に分けて管理しようと企画しただけだ」
「エイ兄がどうして上に?」
「エイジは私の実の息子ではない。
そして、マナミもオカヤマ出身ではない。
2人ともトットリCNだったのだ」
「マナミとエイ兄も!?」
マナミもオカヤマCN出身ではなく、山陰のトットリCNだったのだ。
しかも、実の子じゃないなんて今になって知らされる。
そんな出身事情があったとは、本人達から耳にした記憶すらなかった。
別に自分は差別する気なんてさらさらないのに。
「金は地に埋もれているもの。
まるで自分の罪と共に隠ぺいする黄金をな。愚かな話だ」
「その鉱山だけど、本当の事を話してほしい。
父さんはあの山で何をしていたの?」
「ああ、それは――」
父が言いかけた次に、一瞬の惨状が自分の目の前に映る。
1人の女とその手前に細長い物体が素早く横切った。
バタン
「あああああああああああ!!!」
ドスッ
「あ゛」
父の腹に銀色の金属が突き刺さる。飛び出してきた女の正体、
皮肉にも視界に正しく映ってしまったのはマナミであった。
「マナミ・・・なんで・・・お前が?」
「嘘・・・ウソよこんなのって。
うわあああああああああああああああああああ!」
彼女はすさまじい速さで部屋の窓から逃走してしまう。
自分は父親を抱えて、ピクリとも動かぬ姿勢を保ったままでいた。
「あれが水柱か、一体なんだってあんなものが?」
エイジは上空から四国CNに発生した水柱を監視している。
上空300mにまで伸びているものは、水の塔そのものだと判明。
特に危害を加えてくる様子はないので、文字通り様子見していた。
自分とはうって変わり、マナミはチラチラと下界に目を向けている。
「・・・・・・」
ソワソワ
ここ星団に来てからも、彼女は時々こうして気にしている。
理由は他にないくらい分かっている。
知っていながらも、とりあえず聞いた。
「気になるのか?」
「!?」
エイジに気取られた。
下の世界に対してマナミが気にする事なんて限られた事しかない。
「いや・・・別に」
彼女がこちらに来てからしばらく経つが、素直じゃない。
ケイが気になって仕方ないのだろう。
星団としての立場と言ってやりたいところだが、入りたてで
細かく言うのも少し厳しいかもしれない。
先の時間が空いたから、そんな彼女にオカヤマCNを調査するよう促す。
「と・・・いや、総司令は事務処理で手間取ってるから、
合間に行って来たらどうだ?」
「え・・・行って来ても良いの?」
「やっぱり、行きたいんじゃないか。
今はリーダーの指令は特にないから、来る前に行ってくるんだな」
「わ、分かった!」
オカヤマCN 市民街
マナミは何気なく、かつて住んでいたシェルター街を歩いてみた。
もうここに戻るつもりなどなかったのに、何の引力なのか
結局来てしまった自分の心情もよく分かっていない。
こうして見渡している内に見覚えのある家があった。
(あ、あそこの家は・・・)
1時間前 トットリCN
ケイはシェルター街の自宅へ帰宅しようとした。
トットリ鉱山に埋まっていた金属板について父親を
問い詰めようと行動に移すところだった。
メンバー達も1人で大丈夫か不安がつきまとうが、
ケイは単独で色々聞く方が良いと抑えた。
「隊長、何かあったらすぐに連絡を」
「分かってる。」
「気をつけて行きな」
オカヤマCN ケイの実家
自宅に戻ったケイは父親のいる部屋に行く。
特に気を配る態度も見せず、いつもの普通の会話を混ぜながら
あの金属板の話をした。
「聞きたい事があるんだ。
このマンネリ石って、使い道とかあるの?」
「万成石か・・・墓石や装飾品などで用いるが、
オカヤマだけで加工するもの、まあ色々だな」
「じゃあ、トットリの山で掘り起こしたこの金の板から
父さんの持っている石と同じ鉱石が入っていたんだけど、
どういう事なの?」
「!?」
プラムから教えてもらった誘導尋問で問いだす。
父の顔がひきつって険しくなる。観念したかの様な言葉をだした。
「まさか、あんな所から辿られるとは皮肉なものだな」
「辿られる?」
「まあ、いつかは伝えるべき時がくるはずだからな。
それが今だっただけの事・・・したたかになったな」
「どういう意味なの?」
「鉱石に関する調査記録だ。
一部の者のみが閲覧できる仕組みだが、どうやって確認したんだ?」
「トットリの人に調べて見せてもらった。
これはオカヤマでしか採れない石が中に入ってたって」
「技術漏洩か、置き忘れないよう気を配っていたものを。
やはり人というものは伝えずにはいられないものだな」
「?」
回りくどい父の言葉に振り回されがちなケイは流れが読めない。
もっとハッキリ分かりやすく事情を求める。
「だから、なんでそんな物があそこにあったんだよ?」
「よく聞くんだ。
中つ国はかつて規格分担を目的とした政策を計画していた。
理由はMAFの防止。いや、あくまで表向きの言い方だが。
万成石を混ぜた理由はID判別、
データ改竄を防止するために仕組んだものだ」
「IDを?」
「この深成岩は非常に硬く、ゴム印と異なり細工されにくく
光ディスクの様に反射層とピットの構造によって
石の部分だけピットにする事で書き換えられない様に造られている」
「カードの中に石を!?」
「金属板の閲覧は管理者、権限者のみが可能だからな。
トットリの技術者で確か光学者がまだいたのは意外だったが、
それができる立場の者は限られている」
「つまり?」
カズキ「碧の星団創立者、及び総帥は私なんだ。
だから、私がその板を制作した」
「!!??」
カズキはついに知られざる真実を明らかにした。
碧の星団リーダーはケイの父親だったのだ。
次はケイの顔がひきつって険しくなっていく。
「父さんが・・・・・・星団のリーダー?」
「まずは、落ち着いて聞くんだ。
確かに私は鉱山で調査した事がある」
「落ち着けって、こんなしれっとあっけなく言って・・・。
そんなの聞かされて冷静になれるわけがないだろう!
なぜ、星団を立ち上げたんだ?
どうしてエイ兄は星団に入ったんだ?
なんで、マナミも入ったんだよ!?」
「だから落ち着いて聞くんだ」
いきり立つ自分を父親が落ち着かせようとする。
淡々とした口調で話す父親を黙って聞いているしかなかった。
「今から40年前の話だ。
当時は山陽と山陰に分けて大きな敷地争いがあった」
「昔は地域差別とかがあったんだろ?」
「今は目立つ争いはなくなったが、忌念が残っているんだ。
自分の子どもに呪いを吹き込んでいる親もいた。
当時の司令官達は二度と同じ争いを繰り返さないよう、
暗黙の上で同盟国を結んだのだ。お互いに見張る様にな。
中つ国山地の中心部に基地を設けたのもそのためだ」
そして10年前、中つ国周辺では夜間による襲撃が多発していた。
私は対策を命じられ、過去のデータベースを調べていく内に
暗視ゴーグルの存在を見つけたのだ。
私は人生全てをかけて光学の研究に費やした。
だが、それはすぐに行き詰った。
赤外線照射装置を造るための素材と技術が足らなかったんだ。
幸いに解決できる術は意外にも身近な所で見つかった。
光粒子技術は四国CNが保有。
2年前のあの抗争の混乱に乗じて私は四国CNと接触した。
場所はあの鉱山。
そこでジングウ家がシマネに行った隙に交換成功する。
向こうの要求は四国への侵入を止めろというもの。
手切れ品がてら発動機の差出で許してやるとされたが。
魔が差してしまった。
事態解決で技術を必要とせんがため、引き換えの条件として
反重力エンジンを四国CNに数十機も横流しして渡してしまったのだ。
「父さんが・・・反重力の研究を横流ししていた?」
「そのせいで、当時の工作班は責任をとらされた。
あのマナミの両親だ。
私はいまだにその罪に際悩まされていた。
彼らの居場所はどこにもなくなるだろう。
ここ中つ国を抜けても、受け入れてはくれる保証などない。
だから新たな組織を築いてせめてもの助力をしてやりたかった・・・」
父はA.D90年に碧の星団を設立。
まだ信じられないけど、ここで聞かれた話は本当だった。
同国の技術を他国に売る。これはれっきとした反逆行為だ。
マナミは親の件で根に持って星団に入ったのか。
「じゃあ、マナミは・・・犯人捜しで星団に入ったのか。
なら、父さんの事が知られたら危ないじゃないか!?」
「私にとって、マナミは危険な存在だ。
しかし、星団内に引き入れて無用な被害は抑えたい。
彼女を地上に置いておくことで他の者達にも
再びさらなる差別を生み出すだろう」
現に自分もあれだけ打たれていたから言い分は最もだ。
今まで隠し続けてこれたのが不思議でしょうがない。
しかも、CN法からはみ出そうな組織というのも変だ。
そういえば、自分の意思で品物を敵にあげたらどうなるのか?
天主殻はこの行為に罰を与えなかったのか。
「あの円盤に何か忠告受けたりされなかったの?」
「なかったな。
私の見解では、空域制限についてこれといった内容をもってなく、
上空で拠点を設ける件をまったく警告してこない。
あの天主殻は全ての法律の中で機能していないシステムがあるらしい。
私が星団立ち上げに踏み切った理由もその1つだ」
「機能していない・・・」
「私が総司令という立場でありながら星団を作れた理由は、
あくまでもCNの延長線として成り立たせているからだ。
対して、あれは何も反応を示さない。
組織生成システムが欠如している証拠だろう。
悪く言うなら、法の抜け穴だ」
あの完全と思われていた天主殻も、そんな隙があったとは。
ならば、エイジの言っていた“上は任せておけ”という
言葉の意味とは何だったのか。父に聞いてみた。
「エイ兄は上で何をしているの?」
「空中都市の建設だ。
天主殻と同じ様に空の上にもう1つの人のあるべき場所を築くためだ。
今はエイジに任せている」
「く、空中都市だって!?」
上空1000mはある星団の居住区を作り出す計画。
“合わない者”をきちんと分別し、違う世界に住まわせる。
無意味な争いを生まぬよう、新しい政策を生み出す。
天地の干渉不可こそが碧の星団の全貌だったのだ。
「上下に分けられた世界・・・で、ここ中つ国CNを」
「人の中には差別の禍根が常に渦巻いている。
今はその形が見えないだけで、消える事はないんだ。
“場を丸ごと切り離せば”、人の住む世界そのものを
分断する天主殻と同じ方法をとる道で、因縁を断ち切るしかない」
父の言い分は確かに理はかなっている。
でも、分けるというのは人とのつながりも切るのと同じ。
隠蔽まがいな方法をとってまでそんな事をするのかと反論した。
「父さんのやった事は消えたわけじゃない。
なら、素直にみんなに話して、差別をしないように
なんとか説得して分かってもらえば良いだけじゃないか?」
「若いな」
「え?」
「言葉だけでどうにかなるのなら、
私だってこんなくどい方法なんてとらない。
それどころか、荒ぶる戦争すら起こらないだろう。
領土とは、生きると共に糧の限度も生まれるもの。
同じ大地に足を付けて生きる。
そんな単純な事すら人間は難しいのだから」
「・・・・・・」
父の言うそれは当然ながらも、理解せざるをえない内容だ。
自分が世界を理解していない未熟者なんて身に染みて分かってた。
だから、今までの道があんな風になっていたのだから。
「どうしても、山陽山陰は繰り返し続いていくものなの?」
「ああ、生存と競争は密接して離せず摩擦が生まれる。
擦り減る思いに時々何もかもが見えなくなるのを感じる。
このゴーグルの碧の世界だけが私を癒してくれていた」
テーブルの上にあった暗視ゴーグルを手に取り、上にかざす父。
「だが、光は何を通しても変わらないものだ。
これで通して観ても、星の光は変わらない白色光だ。
光で拓かれた映像も、周りは碧の色を放つ」
「・・・・・・」
「以来、私は誓ったのだ。
私自身が碧の光となり、地を守る側になろうと」
償い、そして同じ過ちを繰り返さないための行い。
天空から中つ国CNをまとめていた根源がそこにあった。
「だが、予想外な出来事も起こった。
逆手に取り、地下施設を設けて敵性CNから
守ろうとする動きが出始めたんだ」
「トットリCNか。
なら、備高竹山駐屯地を僕に任せようと決めたのも父さんだろう?」
「ああそうだ。
お前を地上に、エイジを上空に分けて管理しようと企画しただけだ」
「エイ兄がどうして上に?」
「エイジは私の実の息子ではない。
そして、マナミもオカヤマ出身ではない。
2人ともトットリCNだったのだ」
「マナミとエイ兄も!?」
マナミもオカヤマCN出身ではなく、山陰のトットリCNだったのだ。
しかも、実の子じゃないなんて今になって知らされる。
そんな出身事情があったとは、本人達から耳にした記憶すらなかった。
別に自分は差別する気なんてさらさらないのに。
「金は地に埋もれているもの。
まるで自分の罪と共に隠ぺいする黄金をな。愚かな話だ」
「その鉱山だけど、本当の事を話してほしい。
父さんはあの山で何をしていたの?」
「ああ、それは――」
父が言いかけた次に、一瞬の惨状が自分の目の前に映る。
1人の女とその手前に細長い物体が素早く横切った。
バタン
「あああああああああああ!!!」
ドスッ
「あ゛」
父の腹に銀色の金属が突き刺さる。飛び出してきた女の正体、
皮肉にも視界に正しく映ってしまったのはマナミであった。
「マナミ・・・なんで・・・お前が?」
「嘘・・・ウソよこんなのって。
うわあああああああああああああああああああ!」
彼女はすさまじい速さで部屋の窓から逃走してしまう。
自分は父親を抱えて、ピクリとも動かぬ姿勢を保ったままでいた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる