121 / 280
2章 関東統一編
第9話 クリアカーテンの内側
しおりを挟む
サド島
ザバン
「ほっ」
クロムが水面から顔をだし、島に上陸して酸素ボンベを外す。
目的のサド島の磯にたどり着けた。
後方からの敵影反応はないようで、ここは察知されていないようだ。
逃げる様に必死で泳いだのか、ニイガタ兵は追ってきていない。
(ここに何かがあるのか)
味方は1人もいない、自分だけで捜索しなければならないのだ。
検知器で放射性物質を調べると、やはり反応があやふやで
もしかして偽情報ではと、なおさら調査したくなる。
すでに雨がやんでいた。地上に水蒸気が充満しつつあり、
ライトで照らすと乱反射を起こしている程だ。
こんな状況は想定外だが、進まなければラボリはこなせられない。
光を頼りに進んでいくと、大きな障害物が目に映った。
「崖か」
早々に茶色の壁に阻まれた。
事前情報では島の中心にウラン鉱山があるらしく、長年にわたって
そのまま放置され続けている。機器としてあやふやな反応もおかしいが、
周囲を見てもとても登れそうにない、回り道して進む事にした。
「今度はクレパスか」
下に向かった大きな裂け目が見えた。
かつて発掘で掘り下げたのか、向かいへの道も見えない。
とても飛び越えられる距離ではない。ここもまた回り道で進む。
「?」
また崖が立ちふさがっている。
サド島はこんなにも複雑な地形だったのか。
仕方ないので、来た道を戻る事にした。
しかし、この後、自分は覆された地の理を垣間見る事になる。
「どこだ・・・どこなんだここは?」
来たはずの道がなくなっていた。
先程まではここから歩いてやって来たはずだったのに、崖になっている。
3Dモールも画面では前と同じ形、ルートを辿ってきている。
しかし、平地が今では山になり、壁に足跡が付いている状態。
道なき道、完全に方向を見失ってしまった。
まるで、異世界に入り込んだ様な感覚でたたずみそうになる。
その瞬間。
「動かないで」
「くっ!?」
後ろから首に大きな刃物を突き付けられた。
パッと見の判断では大鎌だが、こんな武器を使用するCNは見た事がない。
声からして女、姿を確認できなくても性別だけは理解。
不覚にも後ろを取られるとは。
3Dモールですら反応しなかったなんてゴーストのそれだ。
率直に有り得ない現象。
しかし、ほんの物音もせずに近寄って来ていたなんて人間技に思えなかった。
女は静かに問いだす。
「あなた、何しにここへ来たの?」
「仲間を探しに来たんだ、あんたに危害を加える気はない」
とにかく、敵意を表さないのが肝心。
相手が女でも自分は近接戦闘が覚束なく、状況も悪化するだけ。
大鎌が少し動き、女は指に力を入れる。
なんとかして説得させようと言葉を考えようと思った瞬間、
腕ごと下に振り下ろされた。
「ぐああっ・・・・・・・・あれ?」
しかし、何も異常はない。
大鎌を振りかぶられたのに、痛みはない。
それどころか、傷一つついていなかった。
「幻影よ、この武器は実在しないモノ。驚いた?」
訳が分からない、実在しなければ見えるはずがないのに。
やぶからぼうな振る舞いをする正体不明な彼女だが、
とりあえず自分の名を名乗ってみた。
「俺はクロム、アイチCNの兵だ。あんたは?」
「あそこか・・・ライオットギア増産で有名なとこね。
昔から変わってないわね」
「まずは自分の名を名乗るのが普通だろう?
もう一度聞く、あんたは一体何者なんだ?」
「ここで星の観測をしているただの星座学者よ」
「こんな時代、こんな場所で星の観測をするのはおかしいだろう。
不適切なウソをつくな」
メガネをかけたウェーブヘアーの女性はためらってごまかしていたが、
観念して気を許したのかようやく自分自身の話をするようになった。
「私はミゾレ、ここの管理をしている」
「こんな所で何をしているんだ?」
「空の観測をしているのは間違っていないわ。
場所は星よりもっと近い所・・・あの天主殻をね」
「な!?」
なんと、彼女は天主殻を観測していると言うのだ。
監視するものを監視しているとでもいうのか、
サドガCNの役割なのか見当すらつかない。
それに、こんな孤島で独立した行動がとれるのだろうか。
CN法に従わずに食料や生活すらままならないはず。
「しかし、あいつらは上空から監視しているだろ。
こんな島にいても、すぐに見つかってしまうぞ?」
「普通はね、だけど私達は奴らの監視すらくぐり抜けて動いてきた。
これを使えば見つからないの」
「何を使ってるんだ?」
「クロマキーよ、全ての光や電磁波を反射させる幕」
「クロマキーだって?」
彼女は指でなにかを動作する。
すると、突然当たりの光景が一面の海に変わったのだ。
「な、なんだこの光景は!?」
「そこにいる人間以外の背景を変えられる技術。
さらに生体センサーも遮断できる優れ物。
あたしが作成したのよ」
「生体センサー? 赤外線感知とは違うのか?」
「秘密、教えられない」
(幻影か・・・こんな技術があるなんて)
まるで、時代考証の度を超えた技術を見せつけられたようだ。
どこの住人なのだろうか、始めからこの島に滞在していたのか、
正体不明の彼女は人の視線感を語る。
「そこに壁があれば人は立ち止まり、そこに川があれば人は迂回する。
触れもせずに、すぐ認識してそれぞれの対応をとる。
観ただけという先入観によって前もってそういう行動を起こすのよ。
時に、人間は目だけで行動を決めるものなの」
「そういう事だったのか、核物質反応すらセンサーで誤魔化せる。
反応の揺らぎは不調で起きていたわけだ。」
「いつかは地上の人に見つかると思っていたけど、意外に長かったわ。
私もいい加減、外を見直さないとダメね」
「理解が完全に整理しきれていないが、ここはそうなんだろう。
サドガCNと言われているが、どうしてそんな組織を造ったんだ?」
「天主殻を終わらせるためよ。
このクロマキー合成も同様にね。あなた、どうやってサドガを知ったの?」
「・・・タレコミだ。
CNを登録しているなら、わざわざ姿を隠さなくて良いだろう?」
「そうはいかないものよ、こちらも色々と事情があるから。
でも単純な話、CN制作情報を登録すれば
あいつらはすぐには襲ったりしないのよ。
小さくとも“1つの国として認証”されれば、
後は何とでもできるってこと」
「すぐには襲わない? どういう意味だ?」
「今、天主殻の仕様、システムが一部不動状態になっている。
だから、円盤へ攻撃しなければ準備のためにやり過ごせるの。
今まで連中から手を出された事ある?」
「いや、俺の世代では一度もない。
あれは管理体制として支配、巡回していたのかと思っていた。
あんた、一体どうしてそこまで――?」
「ストップ、私もCN法の都合それ以上は言えない」
「そ、そうか。そんなカラクリがあったとは・・・」
ここで想定外な情報を得られた。
あの強大な力をもつといわれる存在は完全ではなかったのか。
何かしら今まで生存してきて期を伺い続けてきたらしい。
放射線に関する事も偽装。
最近起きた不鮮明な反応も不具合でたまたまなったようだ。
全て1人でこの施設をまかなっている。
世界の支配者の件はともかく、地上情勢に戻る。
そんな彼女ならば、スノウの居場所を知っているかもしれない。
肝心の情報について、聞いてみるとしよう。
「天主殻についてもそうだが、まずは当初の目的からだ。
あんたスノウっていう名の人を知らないか?」
「ないわね、外のCN情報には詳しくないわ。
質問なら、私にもあるの。
この地域にこんな形をしたポッドを知らない?」
「知らないな、その形状は中部地方で製造されてない。
黒い装甲をまとった姿も見た事がないか?
最近、ここの近くで見かけたんだが」
「直接はないわね。
だけど、先程近海に人型の生体反応が1つあったわ。海のド真ん中よ」
「やはり、あれは人だったのか・・・」
黒い兵士の中身は確実に人だった、発動機の類ではない。
ならば、船で見つけた2つの事について聞き出した。
「25時という言葉は聞いた事がないか?
あと、このU+3255という暗号について何か?」
「それはunicordね、かなり昔の話だけど。
25時についてはなんとも言えないわ」
「ユニコード?」
U+3255はユニコードとよばれる数値だった。
プログラム言語の一種で、文字や数字の規格を統一させるために
作られたという。自分の知る限りでは端末処理を指していると思うが、
どこからどこまでの統一なのかは不明だ。
スノウはおそらくあの船内で取得したものを読み解いたなど、
工学技術に長けていた彼はどこかで無意識に言ってしまったのだろうが、
当然、今の時代ではそんな単語は使われていない。
コードの謎がさらに謎をよんでしまう。
「かなり昔って、いつからそんな言葉があったんだ?」
「・・・100年前ね」
「100年前?」
実に身の毛がよだつ話だ。
古い知識についてスノウが何故知っていたのだろうか。
それを知る彼女も相当だが、離れた世代についての情報など
こちらでも知りようがなく、ますます謎が深まってしまう。
勘ぐる間に端末で調べている。
「ん~、ヒストペディアを調べてもスノウについて
キーワードが出てこないわね。
男が何故、そんな大昔の言葉を知っていたのか興味あるわね。
まあ、情報の出所は大きな発見につながるかもしれないわよ」
「そうか」
予想外な展開があったものの、意外な収穫があった。
天主殻のシステムはCN法が完全管理しきれていなかった事。
今回の件で不可解だった大まかな情報は少し理解できた。
一旦拠点に戻ろうと彼女に挨拶をする。
「その・・・色々と教えてくれてありがとう」
「何かあったら連絡してあげるから、ここは公にしないで」
「分かった・・・あの」
「なに?」
「あんたが何故ここにいるのかは、やはり話してくれないのか?」
「私は霙よ、空から落ちてきた水分の塊。
だから今は秘密ということにしておくわ。
そうね・・・来るべき時がきたら話してあげる」
「今はそういう設定にしておく・・・では」
ピピッ
極秘事項のミゾレに礼を言って出て行こうとした時、
機材から反応音が聞こえた。自分のではなく、この設備からだ。
「なんだ、誰かが来たのか!?」
「1隻のビークルが到着したみたい・・・艇ね。生体反応は1つだけ」
「1つ・・・ここは他に誰かいるのか?」
「今はいないわ、不明な艇よ。
経路からかなり遠い海域から来たみたい」
「ちょっと行ってみてくる」
もしかしてニイガタではないか、帰る前にその艇を調べようと
自分は外に出て現場に足を運んで行った。
相変わらず外はまだ暗いままだ。
ザバン
「ほっ」
クロムが水面から顔をだし、島に上陸して酸素ボンベを外す。
目的のサド島の磯にたどり着けた。
後方からの敵影反応はないようで、ここは察知されていないようだ。
逃げる様に必死で泳いだのか、ニイガタ兵は追ってきていない。
(ここに何かがあるのか)
味方は1人もいない、自分だけで捜索しなければならないのだ。
検知器で放射性物質を調べると、やはり反応があやふやで
もしかして偽情報ではと、なおさら調査したくなる。
すでに雨がやんでいた。地上に水蒸気が充満しつつあり、
ライトで照らすと乱反射を起こしている程だ。
こんな状況は想定外だが、進まなければラボリはこなせられない。
光を頼りに進んでいくと、大きな障害物が目に映った。
「崖か」
早々に茶色の壁に阻まれた。
事前情報では島の中心にウラン鉱山があるらしく、長年にわたって
そのまま放置され続けている。機器としてあやふやな反応もおかしいが、
周囲を見てもとても登れそうにない、回り道して進む事にした。
「今度はクレパスか」
下に向かった大きな裂け目が見えた。
かつて発掘で掘り下げたのか、向かいへの道も見えない。
とても飛び越えられる距離ではない。ここもまた回り道で進む。
「?」
また崖が立ちふさがっている。
サド島はこんなにも複雑な地形だったのか。
仕方ないので、来た道を戻る事にした。
しかし、この後、自分は覆された地の理を垣間見る事になる。
「どこだ・・・どこなんだここは?」
来たはずの道がなくなっていた。
先程まではここから歩いてやって来たはずだったのに、崖になっている。
3Dモールも画面では前と同じ形、ルートを辿ってきている。
しかし、平地が今では山になり、壁に足跡が付いている状態。
道なき道、完全に方向を見失ってしまった。
まるで、異世界に入り込んだ様な感覚でたたずみそうになる。
その瞬間。
「動かないで」
「くっ!?」
後ろから首に大きな刃物を突き付けられた。
パッと見の判断では大鎌だが、こんな武器を使用するCNは見た事がない。
声からして女、姿を確認できなくても性別だけは理解。
不覚にも後ろを取られるとは。
3Dモールですら反応しなかったなんてゴーストのそれだ。
率直に有り得ない現象。
しかし、ほんの物音もせずに近寄って来ていたなんて人間技に思えなかった。
女は静かに問いだす。
「あなた、何しにここへ来たの?」
「仲間を探しに来たんだ、あんたに危害を加える気はない」
とにかく、敵意を表さないのが肝心。
相手が女でも自分は近接戦闘が覚束なく、状況も悪化するだけ。
大鎌が少し動き、女は指に力を入れる。
なんとかして説得させようと言葉を考えようと思った瞬間、
腕ごと下に振り下ろされた。
「ぐああっ・・・・・・・・あれ?」
しかし、何も異常はない。
大鎌を振りかぶられたのに、痛みはない。
それどころか、傷一つついていなかった。
「幻影よ、この武器は実在しないモノ。驚いた?」
訳が分からない、実在しなければ見えるはずがないのに。
やぶからぼうな振る舞いをする正体不明な彼女だが、
とりあえず自分の名を名乗ってみた。
「俺はクロム、アイチCNの兵だ。あんたは?」
「あそこか・・・ライオットギア増産で有名なとこね。
昔から変わってないわね」
「まずは自分の名を名乗るのが普通だろう?
もう一度聞く、あんたは一体何者なんだ?」
「ここで星の観測をしているただの星座学者よ」
「こんな時代、こんな場所で星の観測をするのはおかしいだろう。
不適切なウソをつくな」
メガネをかけたウェーブヘアーの女性はためらってごまかしていたが、
観念して気を許したのかようやく自分自身の話をするようになった。
「私はミゾレ、ここの管理をしている」
「こんな所で何をしているんだ?」
「空の観測をしているのは間違っていないわ。
場所は星よりもっと近い所・・・あの天主殻をね」
「な!?」
なんと、彼女は天主殻を観測していると言うのだ。
監視するものを監視しているとでもいうのか、
サドガCNの役割なのか見当すらつかない。
それに、こんな孤島で独立した行動がとれるのだろうか。
CN法に従わずに食料や生活すらままならないはず。
「しかし、あいつらは上空から監視しているだろ。
こんな島にいても、すぐに見つかってしまうぞ?」
「普通はね、だけど私達は奴らの監視すらくぐり抜けて動いてきた。
これを使えば見つからないの」
「何を使ってるんだ?」
「クロマキーよ、全ての光や電磁波を反射させる幕」
「クロマキーだって?」
彼女は指でなにかを動作する。
すると、突然当たりの光景が一面の海に変わったのだ。
「な、なんだこの光景は!?」
「そこにいる人間以外の背景を変えられる技術。
さらに生体センサーも遮断できる優れ物。
あたしが作成したのよ」
「生体センサー? 赤外線感知とは違うのか?」
「秘密、教えられない」
(幻影か・・・こんな技術があるなんて)
まるで、時代考証の度を超えた技術を見せつけられたようだ。
どこの住人なのだろうか、始めからこの島に滞在していたのか、
正体不明の彼女は人の視線感を語る。
「そこに壁があれば人は立ち止まり、そこに川があれば人は迂回する。
触れもせずに、すぐ認識してそれぞれの対応をとる。
観ただけという先入観によって前もってそういう行動を起こすのよ。
時に、人間は目だけで行動を決めるものなの」
「そういう事だったのか、核物質反応すらセンサーで誤魔化せる。
反応の揺らぎは不調で起きていたわけだ。」
「いつかは地上の人に見つかると思っていたけど、意外に長かったわ。
私もいい加減、外を見直さないとダメね」
「理解が完全に整理しきれていないが、ここはそうなんだろう。
サドガCNと言われているが、どうしてそんな組織を造ったんだ?」
「天主殻を終わらせるためよ。
このクロマキー合成も同様にね。あなた、どうやってサドガを知ったの?」
「・・・タレコミだ。
CNを登録しているなら、わざわざ姿を隠さなくて良いだろう?」
「そうはいかないものよ、こちらも色々と事情があるから。
でも単純な話、CN制作情報を登録すれば
あいつらはすぐには襲ったりしないのよ。
小さくとも“1つの国として認証”されれば、
後は何とでもできるってこと」
「すぐには襲わない? どういう意味だ?」
「今、天主殻の仕様、システムが一部不動状態になっている。
だから、円盤へ攻撃しなければ準備のためにやり過ごせるの。
今まで連中から手を出された事ある?」
「いや、俺の世代では一度もない。
あれは管理体制として支配、巡回していたのかと思っていた。
あんた、一体どうしてそこまで――?」
「ストップ、私もCN法の都合それ以上は言えない」
「そ、そうか。そんなカラクリがあったとは・・・」
ここで想定外な情報を得られた。
あの強大な力をもつといわれる存在は完全ではなかったのか。
何かしら今まで生存してきて期を伺い続けてきたらしい。
放射線に関する事も偽装。
最近起きた不鮮明な反応も不具合でたまたまなったようだ。
全て1人でこの施設をまかなっている。
世界の支配者の件はともかく、地上情勢に戻る。
そんな彼女ならば、スノウの居場所を知っているかもしれない。
肝心の情報について、聞いてみるとしよう。
「天主殻についてもそうだが、まずは当初の目的からだ。
あんたスノウっていう名の人を知らないか?」
「ないわね、外のCN情報には詳しくないわ。
質問なら、私にもあるの。
この地域にこんな形をしたポッドを知らない?」
「知らないな、その形状は中部地方で製造されてない。
黒い装甲をまとった姿も見た事がないか?
最近、ここの近くで見かけたんだが」
「直接はないわね。
だけど、先程近海に人型の生体反応が1つあったわ。海のド真ん中よ」
「やはり、あれは人だったのか・・・」
黒い兵士の中身は確実に人だった、発動機の類ではない。
ならば、船で見つけた2つの事について聞き出した。
「25時という言葉は聞いた事がないか?
あと、このU+3255という暗号について何か?」
「それはunicordね、かなり昔の話だけど。
25時についてはなんとも言えないわ」
「ユニコード?」
U+3255はユニコードとよばれる数値だった。
プログラム言語の一種で、文字や数字の規格を統一させるために
作られたという。自分の知る限りでは端末処理を指していると思うが、
どこからどこまでの統一なのかは不明だ。
スノウはおそらくあの船内で取得したものを読み解いたなど、
工学技術に長けていた彼はどこかで無意識に言ってしまったのだろうが、
当然、今の時代ではそんな単語は使われていない。
コードの謎がさらに謎をよんでしまう。
「かなり昔って、いつからそんな言葉があったんだ?」
「・・・100年前ね」
「100年前?」
実に身の毛がよだつ話だ。
古い知識についてスノウが何故知っていたのだろうか。
それを知る彼女も相当だが、離れた世代についての情報など
こちらでも知りようがなく、ますます謎が深まってしまう。
勘ぐる間に端末で調べている。
「ん~、ヒストペディアを調べてもスノウについて
キーワードが出てこないわね。
男が何故、そんな大昔の言葉を知っていたのか興味あるわね。
まあ、情報の出所は大きな発見につながるかもしれないわよ」
「そうか」
予想外な展開があったものの、意外な収穫があった。
天主殻のシステムはCN法が完全管理しきれていなかった事。
今回の件で不可解だった大まかな情報は少し理解できた。
一旦拠点に戻ろうと彼女に挨拶をする。
「その・・・色々と教えてくれてありがとう」
「何かあったら連絡してあげるから、ここは公にしないで」
「分かった・・・あの」
「なに?」
「あんたが何故ここにいるのかは、やはり話してくれないのか?」
「私は霙よ、空から落ちてきた水分の塊。
だから今は秘密ということにしておくわ。
そうね・・・来るべき時がきたら話してあげる」
「今はそういう設定にしておく・・・では」
ピピッ
極秘事項のミゾレに礼を言って出て行こうとした時、
機材から反応音が聞こえた。自分のではなく、この設備からだ。
「なんだ、誰かが来たのか!?」
「1隻のビークルが到着したみたい・・・艇ね。生体反応は1つだけ」
「1つ・・・ここは他に誰かいるのか?」
「今はいないわ、不明な艇よ。
経路からかなり遠い海域から来たみたい」
「ちょっと行ってみてくる」
もしかしてニイガタではないか、帰る前にその艇を調べようと
自分は外に出て現場に足を運んで行った。
相変わらず外はまだ暗いままだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる