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2章 関西統一編
第1話 金の鉱脈
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0:00 トットリCN北部 海上
漆黒の海に1隻の船が静かに進んでいる。
光を屈折させたその奇妙な構造は背景に同調し溶け込み、
透明と見間違う外装だ。
中には複数の白衣を着た人達が乗っていた。
先導者の1人らしき人物の元に仲間から連絡が入る。
「「所長、そちらの様子は如何なもので?」」
「まあ、良好だ。だが、ステルスモードに不具合が生じた。
今の状態では修理できん、いずれ見つかるだろう」
「「なら丁度、あの人の手が空いているそうですよ。
まずはそこに預けてみたらどうです?」」
「それはありがたい、どうせここでは収容しきれんしな。
同士達を無事送り届ける為に、一旦そちらに預けよう」
「「その船はどうします?」」
「ここで破棄するがやむおえん。
皆をそちらに送り、時が来るまで待機させておく。
セントラルトライアドを先に見つけるまではな」
「「そう言い続けて、もう100年も経っちゃいましたね。
もう、主任は生きてないんじゃないですか?」」
「そんな事では、いつまで経っても見つからんぞ。
肝心のセレファイスのゲートが開かなくてはままならん。
彼の寿命も、もう灯が消える瀬戸際だ。我々とは違う。
生きている内に顔を拝んでおくべきだ」
「「そうっすね、精進しますよ」」
しばらくして、その者達は青く光る球体から消えて姿をくらました。
動力がなくなった船はまるで船員のいない亡霊船に変わる。
置き去りにされた船はそのまま東へと流れて行った。
1:00 エヒメCN 地下水路入口
深夜の時と同調して静かに五万十川の水が流れている。
昼夜交代でビーバーは任務で見張っていた。
地上と地下の間で虫の声しか聴こえない中で立っていると、
1人の兵士が奥から歩いてくる姿を見かける。
夜型になりつつあるビーバーのコノエが部下から呼び出されて
その姿を観た瞬間、迎え入れて応対した。
「あれ、どうしたのこんな時間に?
え、キューを貸してほしいって?」
彼女は相手がビークルのキューを借りたいと申し出てきた。
時間がてら、怪しい節があったが縁もありためらわずに乗らせて
その者は低空飛行でランプも付けずに飛んで行ってしまった。
トットリCN石美エリア 荒全鉱山
場所は変わり、トットリの一角で採掘ボランティア活動。
地下15m深く掘られた穴から喜々した叫び声が聞こえてくる。
兵達が大量の金を掘り当てたのだ。
大いに舞い上がり、喜びの声を上げる。
「金だ、金がこんなにいっぱい掘れたぞおおおおおおおおおおおお!」
「わずかなテルル反応を辿ったら、まさか金とは!
こんなに採れるとは、どれくらいの価値になるんだ!?」
「こりゃ、2CNくらい食わせられる程の量だな。
中つ国の流通王に成れそうだぞ、うひょひょ!」
採掘された量はおそらく今世紀最大といわれるくらいで、
オペレーターも耳を塞ぐ程響いた歓喜の声は、
中つ国に広がるまでそう時間はかからなかった。
トットリCN 拠点
一息ついて食堂のイスに座るケイがいた。
午前中に中つ国山地から降りて急用に入れた散策を終了したが、
今日はまだトットリCNと合同ラボリが残っている。
山地の駐屯地を任された割にはやたらと関係ない場所へ移動させられて、
人事異動がどうなってるのか変な感じだ。
何やらここら辺のエリアで大量の資源が発掘されたらしい。
最近のトットリの動向をシーナから聞く。
「金の鉱脈が見つかったって?」
「ここから近い鉱山から掘れたんだって。
今まで手を付けてなかった所を調べて。すっかり舞い上がって、
同じCNながら見るも情けないったらありゃしない」
「で、そんな物を何に使うんだ?」
「装甲や発動機の繊維などだな。
希少価値が高い物は貿易面でとても優位性がある。
他にも同盟国のP還元にも有効だろう、イエッホ!」
(イエッホ?)
司令が横からやって来て、詳しく丁寧に説明。
棚からボタモチと言わんばかりに、妙な擬音で息まいて語る。
「そ、そうですか」
自分の身が立ったのか、意気揚々そうだ。
でも、資源の大量回収なんて棚からボタモチからの虎。
この事実が敵性CNに嗅ぎ付けられたら、侵攻がより激しくなる。
トットリの采配をより慎重に行うべきだと伝えた。
「ま、そらそうよ。相手もどこで観てんだか分かんないし。
最近、隣のキョウトは静かすぎるし」
「そ、そうだ。偵察に抜かりはない」
「そーですかい」
彼女はつまらなそうに近況を話す。
ここの司令官も例の件を自分に話さなかった。
自分が備高竹山駐屯地を着任する話、移動の件はまだ来ていなく
資源よりも中つ国の流動に気を向け続けている。
共に就くはずだったシンジもいなくなってしまい、
何かが足されて何かが引かれている流れに心許ない。
あれから碧の星団とも遭遇していない。
言葉では上手く言い表せないけど、金の鉱山の様な
突然これから何かが起こりえるかもしれないと想定してしまう。
(シンジ・・・本当にどこに行ったんだ)
キョウトCN 司令室
「性能の向上が見られた・・・か」
偵察兵の報告でトットリCNの様子を知るキョウト司令官が
発動機の仕様が変わった報告を受けて考慮する。
隣のヒョウゴからきた話はすぐに伝わり、近江の重鎮の一部である
ここが目を光らせていた。それによる対策、及び牽制を取ろうと
1つの画策をアイザックに指示した。
「なにやら大量の物資を輸送しているな。
包装から食料ではない、軍部にとって貴重な何かだろう」
「奪っちまいましょか?」
「新たな技術を手にしたか、新素材を手にしたか。
いずれにせよ、こちらで手を打たせてもらう。采配は任せたぞ」
「はいはーい♪」
そうしてアイザックは拠点から出ようとした。
視点は彼に代わり、並列の木柱から離れる。
一度日差しを受けて視界が正常に変わりつつ、手を戻した時
拠点ゲートの前にヤエが立っていた。
「お、センのとこの姉ちゃんか。
キョウトにまで出張ってどうした?」
「例の桜餅・・・届けに来たわよ」
彼女の背後のビークルにそれは載せてある。
約500kgはあろうかと思われる黒い箱を差し出した。
「それか・・・まさにグッドタイミングってやつだな。
こっちはこれからトットリへ出張ろうとしたとこだ」
「ならちょうど良かったわ。
そのトットリに関する情報をつかんだの」
彼女はタブレット端末を取り出し、彼に見せる。
内容はAuという記号、密度19.32g/㎤と表示されたブツだ。
「資源の大量採取に関するものか。
ん、この記号は確か・・・ダウングレードの?」
「偵察兵の連絡によると、トットリの発動機には
従来と異なる変化が見られた模様」
「中つんとこに飛び回る機体があったな。
これにバッタの足でもくっつけたか?」
「研究班の見解によると、黄色に輝くフレーム。
視認範囲の向上が見られたらしい。素材の特徴から推測すると、
奴らはどこかで金を採掘している可能性が高い」
「!?」
アイザックはそれを聞いて興奮した。
不気味な笑みでその鉱物にありつかんとばかりな口調で。
「ほほぉ・・・・ソイツは極上なモンだなぁ。
んじゃ、ちょいと拝借しにいくとするか」
「トットリは圧倒的な近接戦闘で有名よ。
過去の歴史でも、近江連合で特に死闘を繰り広げてきた相手だから、
何かしら手は打たないと危険よ」
「まあな、その餅も作戦の1つだ。丁重に使わせてもらうぜ」
「今回の作戦は近江の精鋭も参加するそうよ。
ギンジ隊長を始め、シズル姉、ミツルギ、シンヤも同行するわ」
「肝心の隣接してるヒョウゴは相変わらずか?」
「相変わらず、あくまでも守りに徹するとの事。
ヒョウゴは昔から自分から動かないし」
「まあ、しょうがねえさ。お隣さんじゃ遠慮しがちがここの特徴だわ。
トットリかぁ・・・地下世界の住人は出所を掴みにくい。
あいつら2人も、今回ばかりは荷が重いだろうし」
センとライリーは今回作戦に参加しない方針だ。
アイザック、キョウト陣営ははギンジ分隊と同行する作戦を打ち出していた。
「また、あの近畿の面々を拝むとはな~」
「あの人達のことだから、そう簡単にはやられないと思うけど、
万が一何かがあったらサポート頼むわよ」
「ああ。ま、俺なりのペースでやってくわ。
2人に達者でって伝えといてくれ!」
「なんかお別れみたいな言い方だけど、分かったわ。
気をつけて行きなさいよ」
ヤエは必要事項をまんべんなく言って帰っていった。
これからキョウト兵はオオサカ兵達と合流する準備を進める。
今回ばかりはきちんと分隊に参加し、ある物を用意してゆく。
自分はメンバーに合図をだした。
「アレをだせ!」
「ほっ!」
白いケースの形をした何かを射撃する銃装備を持ってきた。
実は今回、キョウトで新たな新兵器を披露するつもりだ。
「この桜餅をマガジンに詰めるぞ、その名もチェリービーだ!」
この桜餅、実は本物の食べ物の類ではなくプラスチック爆弾だ。
キョウト兵達が次々と込めて入れていく。
これから起こりうる戦闘に心躍る。
「今度は楽しい遠足になりそうだ」
ヒロシマCN駐屯地
「ぎゃあああああああ!」
司令官のアイが悲鳴をあげた。
しかし、ヒロシマ兵が駆け付けたにもかかわらず、
彼女に危害が加えられた様子もなかった。
不思議に思って理由を聞いてみる。
「何があったんですか?」
「「なぁい」」
「何がないんですかい?」
「ヒロシマのシンボルが無いって言ってんでしょ!?」
「あー、あれか」
アイが大事にしていたという謎の黒い物体がいつの間にか
無くなっていたという。
ヒロシマの兵すらも何の意味があるのか、
いつからあったのかも分からないオブジェがここにあったらしい。
特に何の役にも立たないのに、置いてある理由はただシンボルだから。
元々、アイ司令は整理整頓が出来ない人物で有名だ。
本人以外、事情がまったく分かっていないまま、次の話へ切り替わる。
トットリCN拠点 ロビー
ケイ分隊はトットリにたどり着く。
いつもの顔を見にきてくれるのが恒例となっているシーナで、
挨拶を交わした。
「こんにちはー、オカヤマ第5部隊到着しました!」
「はいよ!」
迎えるシーナ率いる分隊。
うまく説明できないが、常に毎度ながら出番として回ってくる
お約束の彼女達と入り組む。
ただ、今回はもう1人新たな者を参加させると言う。
彼女が大声で1人のオペレーターを呼ぶ。
「プラムー、あの子が来たぞ!」
「ん~今アルファ波を聞きながら寝ていたのにー」
褐色肌の女が裸足で歩いてくる。
この子は13歳ながらにしてオペレーティングシステムに
参加している、もう1つのトットリの顔だ。
反重力の増産にも携わり、発動機と兵器管理に着手する
超頭脳で未成年CN法違反によろしくすべく抜擢された。
普段は寝ていてばかりの彼女が参加するというなら、
今回は相当な内容なんだろう。
呼ばれた詳細を彼女達から聞き出した。
「キョウトから不穏な動きを察知したって?」
「ああ、これを見てみな」
新型の発動機から撮影した映像にキョウト兵が映っていた。
逆毛の金髪の男がこちらに向かってピースまでしている。
挑発意外のなにものでもない。
「おそらくは陽動、こちらからけしかけてくるのを待っている。
無視推奨」
「なんとも分かりやすい誘い手だな、やめたほうがいい」
この子の言う通り、反射的に手を出すと反撃されるのはすぐ理解できた。
シャリシャリ
「へえ、それはやりがいあるじゃないか」
「「バチェットを研ぎながら言わんで下さい、怖いです」」
シーナが何かを研ぎながら話す。対して彼女はやる気満々だ。
部下が震え声で注意するも、トットリは陣地防衛に徹底するらしい。
それはともかく、向こうから何から仕掛けてくるのは明白。
つまり、今回は防衛戦で対応する作戦だ。
いつもながら、毎回ここは侵入されている感もあるが、
もう深く考えない。中つ国の武闘派としてヤマグチと同じくらい
威厳を見せているなら触発のターゲットにもなるだろう。
トットリ司令官が具体策を打ち出す。
「戦法にこれまでと違いはない。
砂丘からの狙撃には迫撃砲、ライオットギア、突撃兵には人員と発動機で。
そして、奴らの狙いは鉱山だろう。
石美周辺を重点として防衛するんだ」
「了解!」
幾度にも遭遇してきたキョウトCNとの交戦。
いつもながらの隣接国どうしによる抗争であったが、
資源追求はいつになく不変に続くのみである。
大きな火種となる抗争の始まりは、いつもこういった場合だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2章、西編にいきます!
こちらも今までのキャラ、新キャラを一斉に絡めていきます。
関東とはまた異なる展開にするつもりですが、だいぶペースが乱れています。
どこまで書けるのか心配な部分もありますね。
腰も痛くなってきましたw
漆黒の海に1隻の船が静かに進んでいる。
光を屈折させたその奇妙な構造は背景に同調し溶け込み、
透明と見間違う外装だ。
中には複数の白衣を着た人達が乗っていた。
先導者の1人らしき人物の元に仲間から連絡が入る。
「「所長、そちらの様子は如何なもので?」」
「まあ、良好だ。だが、ステルスモードに不具合が生じた。
今の状態では修理できん、いずれ見つかるだろう」
「「なら丁度、あの人の手が空いているそうですよ。
まずはそこに預けてみたらどうです?」」
「それはありがたい、どうせここでは収容しきれんしな。
同士達を無事送り届ける為に、一旦そちらに預けよう」
「「その船はどうします?」」
「ここで破棄するがやむおえん。
皆をそちらに送り、時が来るまで待機させておく。
セントラルトライアドを先に見つけるまではな」
「「そう言い続けて、もう100年も経っちゃいましたね。
もう、主任は生きてないんじゃないですか?」」
「そんな事では、いつまで経っても見つからんぞ。
肝心のセレファイスのゲートが開かなくてはままならん。
彼の寿命も、もう灯が消える瀬戸際だ。我々とは違う。
生きている内に顔を拝んでおくべきだ」
「「そうっすね、精進しますよ」」
しばらくして、その者達は青く光る球体から消えて姿をくらました。
動力がなくなった船はまるで船員のいない亡霊船に変わる。
置き去りにされた船はそのまま東へと流れて行った。
1:00 エヒメCN 地下水路入口
深夜の時と同調して静かに五万十川の水が流れている。
昼夜交代でビーバーは任務で見張っていた。
地上と地下の間で虫の声しか聴こえない中で立っていると、
1人の兵士が奥から歩いてくる姿を見かける。
夜型になりつつあるビーバーのコノエが部下から呼び出されて
その姿を観た瞬間、迎え入れて応対した。
「あれ、どうしたのこんな時間に?
え、キューを貸してほしいって?」
彼女は相手がビークルのキューを借りたいと申し出てきた。
時間がてら、怪しい節があったが縁もありためらわずに乗らせて
その者は低空飛行でランプも付けずに飛んで行ってしまった。
トットリCN石美エリア 荒全鉱山
場所は変わり、トットリの一角で採掘ボランティア活動。
地下15m深く掘られた穴から喜々した叫び声が聞こえてくる。
兵達が大量の金を掘り当てたのだ。
大いに舞い上がり、喜びの声を上げる。
「金だ、金がこんなにいっぱい掘れたぞおおおおおおおおおおおお!」
「わずかなテルル反応を辿ったら、まさか金とは!
こんなに採れるとは、どれくらいの価値になるんだ!?」
「こりゃ、2CNくらい食わせられる程の量だな。
中つ国の流通王に成れそうだぞ、うひょひょ!」
採掘された量はおそらく今世紀最大といわれるくらいで、
オペレーターも耳を塞ぐ程響いた歓喜の声は、
中つ国に広がるまでそう時間はかからなかった。
トットリCN 拠点
一息ついて食堂のイスに座るケイがいた。
午前中に中つ国山地から降りて急用に入れた散策を終了したが、
今日はまだトットリCNと合同ラボリが残っている。
山地の駐屯地を任された割にはやたらと関係ない場所へ移動させられて、
人事異動がどうなってるのか変な感じだ。
何やらここら辺のエリアで大量の資源が発掘されたらしい。
最近のトットリの動向をシーナから聞く。
「金の鉱脈が見つかったって?」
「ここから近い鉱山から掘れたんだって。
今まで手を付けてなかった所を調べて。すっかり舞い上がって、
同じCNながら見るも情けないったらありゃしない」
「で、そんな物を何に使うんだ?」
「装甲や発動機の繊維などだな。
希少価値が高い物は貿易面でとても優位性がある。
他にも同盟国のP還元にも有効だろう、イエッホ!」
(イエッホ?)
司令が横からやって来て、詳しく丁寧に説明。
棚からボタモチと言わんばかりに、妙な擬音で息まいて語る。
「そ、そうですか」
自分の身が立ったのか、意気揚々そうだ。
でも、資源の大量回収なんて棚からボタモチからの虎。
この事実が敵性CNに嗅ぎ付けられたら、侵攻がより激しくなる。
トットリの采配をより慎重に行うべきだと伝えた。
「ま、そらそうよ。相手もどこで観てんだか分かんないし。
最近、隣のキョウトは静かすぎるし」
「そ、そうだ。偵察に抜かりはない」
「そーですかい」
彼女はつまらなそうに近況を話す。
ここの司令官も例の件を自分に話さなかった。
自分が備高竹山駐屯地を着任する話、移動の件はまだ来ていなく
資源よりも中つ国の流動に気を向け続けている。
共に就くはずだったシンジもいなくなってしまい、
何かが足されて何かが引かれている流れに心許ない。
あれから碧の星団とも遭遇していない。
言葉では上手く言い表せないけど、金の鉱山の様な
突然これから何かが起こりえるかもしれないと想定してしまう。
(シンジ・・・本当にどこに行ったんだ)
キョウトCN 司令室
「性能の向上が見られた・・・か」
偵察兵の報告でトットリCNの様子を知るキョウト司令官が
発動機の仕様が変わった報告を受けて考慮する。
隣のヒョウゴからきた話はすぐに伝わり、近江の重鎮の一部である
ここが目を光らせていた。それによる対策、及び牽制を取ろうと
1つの画策をアイザックに指示した。
「なにやら大量の物資を輸送しているな。
包装から食料ではない、軍部にとって貴重な何かだろう」
「奪っちまいましょか?」
「新たな技術を手にしたか、新素材を手にしたか。
いずれにせよ、こちらで手を打たせてもらう。采配は任せたぞ」
「はいはーい♪」
そうしてアイザックは拠点から出ようとした。
視点は彼に代わり、並列の木柱から離れる。
一度日差しを受けて視界が正常に変わりつつ、手を戻した時
拠点ゲートの前にヤエが立っていた。
「お、センのとこの姉ちゃんか。
キョウトにまで出張ってどうした?」
「例の桜餅・・・届けに来たわよ」
彼女の背後のビークルにそれは載せてある。
約500kgはあろうかと思われる黒い箱を差し出した。
「それか・・・まさにグッドタイミングってやつだな。
こっちはこれからトットリへ出張ろうとしたとこだ」
「ならちょうど良かったわ。
そのトットリに関する情報をつかんだの」
彼女はタブレット端末を取り出し、彼に見せる。
内容はAuという記号、密度19.32g/㎤と表示されたブツだ。
「資源の大量採取に関するものか。
ん、この記号は確か・・・ダウングレードの?」
「偵察兵の連絡によると、トットリの発動機には
従来と異なる変化が見られた模様」
「中つんとこに飛び回る機体があったな。
これにバッタの足でもくっつけたか?」
「研究班の見解によると、黄色に輝くフレーム。
視認範囲の向上が見られたらしい。素材の特徴から推測すると、
奴らはどこかで金を採掘している可能性が高い」
「!?」
アイザックはそれを聞いて興奮した。
不気味な笑みでその鉱物にありつかんとばかりな口調で。
「ほほぉ・・・・ソイツは極上なモンだなぁ。
んじゃ、ちょいと拝借しにいくとするか」
「トットリは圧倒的な近接戦闘で有名よ。
過去の歴史でも、近江連合で特に死闘を繰り広げてきた相手だから、
何かしら手は打たないと危険よ」
「まあな、その餅も作戦の1つだ。丁重に使わせてもらうぜ」
「今回の作戦は近江の精鋭も参加するそうよ。
ギンジ隊長を始め、シズル姉、ミツルギ、シンヤも同行するわ」
「肝心の隣接してるヒョウゴは相変わらずか?」
「相変わらず、あくまでも守りに徹するとの事。
ヒョウゴは昔から自分から動かないし」
「まあ、しょうがねえさ。お隣さんじゃ遠慮しがちがここの特徴だわ。
トットリかぁ・・・地下世界の住人は出所を掴みにくい。
あいつら2人も、今回ばかりは荷が重いだろうし」
センとライリーは今回作戦に参加しない方針だ。
アイザック、キョウト陣営ははギンジ分隊と同行する作戦を打ち出していた。
「また、あの近畿の面々を拝むとはな~」
「あの人達のことだから、そう簡単にはやられないと思うけど、
万が一何かがあったらサポート頼むわよ」
「ああ。ま、俺なりのペースでやってくわ。
2人に達者でって伝えといてくれ!」
「なんかお別れみたいな言い方だけど、分かったわ。
気をつけて行きなさいよ」
ヤエは必要事項をまんべんなく言って帰っていった。
これからキョウト兵はオオサカ兵達と合流する準備を進める。
今回ばかりはきちんと分隊に参加し、ある物を用意してゆく。
自分はメンバーに合図をだした。
「アレをだせ!」
「ほっ!」
白いケースの形をした何かを射撃する銃装備を持ってきた。
実は今回、キョウトで新たな新兵器を披露するつもりだ。
「この桜餅をマガジンに詰めるぞ、その名もチェリービーだ!」
この桜餅、実は本物の食べ物の類ではなくプラスチック爆弾だ。
キョウト兵達が次々と込めて入れていく。
これから起こりうる戦闘に心躍る。
「今度は楽しい遠足になりそうだ」
ヒロシマCN駐屯地
「ぎゃあああああああ!」
司令官のアイが悲鳴をあげた。
しかし、ヒロシマ兵が駆け付けたにもかかわらず、
彼女に危害が加えられた様子もなかった。
不思議に思って理由を聞いてみる。
「何があったんですか?」
「「なぁい」」
「何がないんですかい?」
「ヒロシマのシンボルが無いって言ってんでしょ!?」
「あー、あれか」
アイが大事にしていたという謎の黒い物体がいつの間にか
無くなっていたという。
ヒロシマの兵すらも何の意味があるのか、
いつからあったのかも分からないオブジェがここにあったらしい。
特に何の役にも立たないのに、置いてある理由はただシンボルだから。
元々、アイ司令は整理整頓が出来ない人物で有名だ。
本人以外、事情がまったく分かっていないまま、次の話へ切り替わる。
トットリCN拠点 ロビー
ケイ分隊はトットリにたどり着く。
いつもの顔を見にきてくれるのが恒例となっているシーナで、
挨拶を交わした。
「こんにちはー、オカヤマ第5部隊到着しました!」
「はいよ!」
迎えるシーナ率いる分隊。
うまく説明できないが、常に毎度ながら出番として回ってくる
お約束の彼女達と入り組む。
ただ、今回はもう1人新たな者を参加させると言う。
彼女が大声で1人のオペレーターを呼ぶ。
「プラムー、あの子が来たぞ!」
「ん~今アルファ波を聞きながら寝ていたのにー」
褐色肌の女が裸足で歩いてくる。
この子は13歳ながらにしてオペレーティングシステムに
参加している、もう1つのトットリの顔だ。
反重力の増産にも携わり、発動機と兵器管理に着手する
超頭脳で未成年CN法違反によろしくすべく抜擢された。
普段は寝ていてばかりの彼女が参加するというなら、
今回は相当な内容なんだろう。
呼ばれた詳細を彼女達から聞き出した。
「キョウトから不穏な動きを察知したって?」
「ああ、これを見てみな」
新型の発動機から撮影した映像にキョウト兵が映っていた。
逆毛の金髪の男がこちらに向かってピースまでしている。
挑発意外のなにものでもない。
「おそらくは陽動、こちらからけしかけてくるのを待っている。
無視推奨」
「なんとも分かりやすい誘い手だな、やめたほうがいい」
この子の言う通り、反射的に手を出すと反撃されるのはすぐ理解できた。
シャリシャリ
「へえ、それはやりがいあるじゃないか」
「「バチェットを研ぎながら言わんで下さい、怖いです」」
シーナが何かを研ぎながら話す。対して彼女はやる気満々だ。
部下が震え声で注意するも、トットリは陣地防衛に徹底するらしい。
それはともかく、向こうから何から仕掛けてくるのは明白。
つまり、今回は防衛戦で対応する作戦だ。
いつもながら、毎回ここは侵入されている感もあるが、
もう深く考えない。中つ国の武闘派としてヤマグチと同じくらい
威厳を見せているなら触発のターゲットにもなるだろう。
トットリ司令官が具体策を打ち出す。
「戦法にこれまでと違いはない。
砂丘からの狙撃には迫撃砲、ライオットギア、突撃兵には人員と発動機で。
そして、奴らの狙いは鉱山だろう。
石美周辺を重点として防衛するんだ」
「了解!」
幾度にも遭遇してきたキョウトCNとの交戦。
いつもながらの隣接国どうしによる抗争であったが、
資源追求はいつになく不変に続くのみである。
大きな火種となる抗争の始まりは、いつもこういった場合だ。
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2章、西編にいきます!
こちらも今までのキャラ、新キャラを一斉に絡めていきます。
関東とはまた異なる展開にするつもりですが、だいぶペースが乱れています。
どこまで書けるのか心配な部分もありますね。
腰も痛くなってきましたw
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艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
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男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
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「苦しいんです。ここから出たいんです。この狭い宇宙服の中から」
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ゴーグル型の瞳から見える世界。人工の心肺での呼吸。ケイスにとっては潜水服に詰め込まれた感覚。
「苦しいんです」
メイサが無造作に奪ったグロッグをへこんだこめかみの辺りに当てる。躊躇なく引き金を引いた。
ゴキンと痛々しい金属音。首が左に吹き飛ばされるが、上体は崩れていない。首を再び戻すと、もう一度引き金を引いた。
再度、重々しい金属音。ピシャリと何かが飛び散った。
あまりの光景にレイチェルが手で顔を覆う。
損傷した頭部から、青い液体が流れ出す。
「安定液が・・・」
ヴァレティナが口を手で覆った。
頭部を覆っているチタン製の槽が壊れ、内部の安定液、青色の液体が流れ出している。
メイサの上体がガクガクと震え左に傾いだ。それでもまだ、グロックを持った腕がゆっくりと上がっていく。
※小説家になろうをはじめ、複数のサイトへ作品を投稿しています。
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