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2章 関東統一編

第1話  脱出

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2:00 イワテCN 羽奥山脈

ゴオオオオオオオオ

 時は深夜を回っていた。
吹雪が吹き乱れ、東北地方もすっかり辺りは雪に覆われている。
現地の偵察兵すら見落とす暗い視界の土地に、
環形状かんけいじょうに伸び縮みする細長く白い1機の塊が
人目付かずにいずってうごめいていた。
それを無人操作している者が1人つぶやく。

「やはり、見つからない。
 いつまでこんな事を何度も繰り返せば良いのか・・・」

通信が入る、仲間らしき人物が連絡してきた。

「「よお、セレステクライは見つかったかい?」」
「何度探しても見つからない。
 もう、ここにはないのかしら・・・」
「「そんなあんたに、良い知らせがあるぜ。
  イワテから南西に向かって蒼い戦闘機が飛んで行ったそうだ。
  速度、形状から一致して、おそらくそれが目標だろう」」
「本当ですか?
 この時代であれを動かせる人がいたなんて」
「「だな、アリシアのBBAがオートモードにしたのかどうか分からんが、
  本物かマークしといた方が良いぜ」」
「ならば、そこは私の管轄外。彼女に伝えておきましょう」

機体が丸く変形し、宙に浮かぶ。
そして、目にも止まらぬ速さで開けた平地へと飛んで行った。


アイチCN拠点 尋問部屋

ビリビリビリ

「ぐあああああぁぁぁぁ!」
「しゃごおおおおおぉぉぉ!」

 レッドとクリフはアイチ兵に捕まり、尋問を受けていた。
司令官のジュウゾウが部下と共に質疑応答を交わしている。

「貴様らは何故あの山にいた?」
「ゲホッ!」
 (しゃべるな、しゃべるんじゃねーぞ)

クリフは声に出さず、目付きのみでレッドに念を押す。
グンマCNの山中で倒れ、ヨゼフィーネ分隊達に発見されて
ここアイチまで運ばれていた。
一命はとりとめたものの、後には看護とはいえない拷問ごうもんという
真逆の場面が待ち受けていた。

「今時の若者にしては中々タフではないか、そうとなれば・・・。
 ライゾウ、電圧を少し上げてやれ」
「うふふ、電位差の幅の魅力をもっと教えましょう。
 それを肉体に押し付けるときの火花♪
 その感触がまた美しいのよねぇ~。そぅら!」

ビリビリビリ

「うおあああああああああああ!」
「がごおおおおおおおおおおおお!」
「ぷひいっ、すばらしいいいいいいい!」

ビン底ゴーグルの巨漢に2本のスタンロッドを押し付けられ、
レッドとクリフは気絶してしまう。楽しみの終わりに呆れて
2人を牢獄に収監するよう、部下に指示を出した。


1時間後

「「・・・・・・う」」
「目が覚めたか?」
「「クリフ・・・ここは?」」
「兵装から中部のとこだな、あれから俺らは捕まった。
 目標からずいぶんと離れちまったみてえだな」
「そうか、他のみんなは大丈夫なのか?」
「ワタルが率先して大半は逃がしたってよ。
 後は俺らと数人のメンバーだけだ」
「あの状況で逃げたか、やっぱりあいつは手解きがうまいな」

 グンマに足を運んだメンバーは全てここにいないようだ。
ワタルの采配で大半は無事に帰還できたらしく、
自分達もなんとか毒ガスから逃れて今に至る。
しかし、肝心な今をどう抜けるか困り果ててしまう。
生き延びたは良いものの、捕縛されてしまっては身もふたもない。
太った尋問官に電圧を浴びせられて、おもいっきり敵性陣中にいる。
まだ静電気が身体中を巡っている。

「どうやって、ここから脱出するんだ?」
「うーん・・・・そうだな」

こういう時のクリフの沈黙は大抵なにも考えていない。
心を読んでなくとも、態度でそんな感じがするからだ。
そんな時だ、窓の方からしなやかな音が聞こえてきた。

シュパン

「!?」

窓の鉄格子がゴリゴリと音をたてて破片が床に落ちる。
1人の女兵士が姿を現した。

「な、なんだ!?」
「あんな狭い窓から?」

肩が胴体と密接するくらいにまで寄せてぎゅうぎゅう詰めに
侵入してきたその女の姿が見えてくる。淡い期待で味方と思いきや。


ドサッ

「あいたっ!」
「誰だお前は?」
「あれ、部屋間違えちゃったかな」
「・・・お前、グンマ兵か?」
「知ってるのか?」

着地に失敗したその女兵士の身なりを見て言い放つ。
クリフは過去に何度かグンマ兵と遭遇した事があった。
彼女は彼を見て気まずい顔をする。

「ゲッ、チバの魔獣!?」
「だれが魔獣だ、だれが」
「すごい言われようだな・・・」

グンマ兵にとっては面識があるようだ。
意味はサッパリだが、クリフはそれだけ関東地方では有名なのだろう。
しかし、自分達を追って助けに来たとは思えない。
彼女がどうしてここにやって来たのか問いだした。

「なんで、ここに来たんだよ?」
「ウチの仲間が捕まっちゃってね。
 助けに来たんだけど、部屋を間違えたみたい。
 こちらマリサ、目標地点に・・・一応到着と」

彼女の仲間もここに捕らえられているようだ。
たまたま出くわしたのも何かのキッカケ。
立場では敵対関係の彼女だが、せめてもの良心をもっていたら。
救出がてら、こちらも助けてもらうべく自分は頼み込んだ。

「ついでに悪いけど、こっちも助けてくれないか?
 この手錠を外してくれるだけで良いんだ」
「あんた敵じゃない。そんな事する義理ないでしょ?」
「大丈夫だ、解放してくれたらあんたに手は出さない」
「そんな保証どこにあんのよ!?
 こんな世界で約束事なんて・・・・・・・・ん?」

彼女が自分の目を観て、どうやら関心を示したようだ。
珍しい目で自分の顔を見回す、目の事について聞いてきた。

「あんたの目、赤いわね・・・なんで?」
「それは俺でも分からない、どこから来たのかすらも。
 名前もこいつに付けられただけだしな」
「ええっ、ずいぶんとスタンドアローンな人ね。
 うーん、どうしよっかな~」
「じゃあ、こうしないか?
 助けてくれたら、お前の兵士も救出する」
「またか・・・んなとこでもカッコつけやがって」
「待ってくれクリフ。
 いきり立つだけじゃ、解決できない事もあるだろ?
 ここは平穏にいくべきだ。」

前回と同じく隊長を抑える。
ここも事態を切りひらく1つのチャンスだと分からせた。
彼女は承諾しょうだく、手錠を解除してもらい、一時の自由を得た。
お互いに自己紹介をする。

「あたしはマリサ、グンマの偵察兵よ」
「俺はレッド、こいつはクリフだ。
 しばらくの間よろしくな」
「あー、まあ、よろしく頼む」


10分前 アイチCN拠点裏地

 レッド達が捕まっている所から100m離れた拠点の
死界にあたる所にワタルとトオル一隊がいた。
火山ガスから無事に逃れた者達が再びアイチの一角へ侵入。
運が良いのか監視の間から上手く逃れて入り込み、
救出作戦をたてて、向かおうとしている。

「「情報によると、捕まっている尋問部屋はあの建物らしいです。
  拠点から少し離れているようで」」
「「あそこか・・・」」

位置情報をディスプレイで確認。
コンクリートブロックの大きな部分は大抵重要箇所として用いる場所で、
救出位置は幸い離れていた。しかし、こちらは少人数。
この兵力で突っ込んだとしても返り討ちに遭うのが落ちだ。
まずは見つからないよう、匍匐前進ほふくぜんしんでゆっくりと向かう。
そして、建物の壁にまで接近する。部下が方法を問いだす。

「「どうやって助けます?」」
「「こういうときは陽動作戦といこうか。
  あいつらの捕まっている部屋から離れた設備を爆破、
  その後、気を取られている間に救出するぞ」」
「「コックルバーですか・・・あ?
  待機場所に置き忘れちゃいました!」」
「「これを使うわ」」

ワタルの耳に付けていたイヤリングらしき物を取り外す。
壁に貼り付けて破壊、突入する作戦にでようとする。
チバ兵がよく見たら、小型爆弾だったのだ。

「それコックルバーだったのか!?」
「ああ、赤外線付けられんから無線起爆できないがな。
 手動タイプだ」

耳飾りは主導型のプラスチック爆弾だった。
ワイヤー状の導線を伸ばして離した瞬間起爆させる手製だ。
壁の厚さによるが、特殊な威力で30cm程なら壊せるはず。
薄そうな場所を探して壁に突き刺し、導線を伸ばす。
ワタルは作戦に支障なしといわんばかりに語りだした。

「兵器らしからぬ兵装、人の目を欺くやり口の1つよ。
 意外性を追求するのが俺らしいスタイルで――」

ドッカアアァァン

「!?」

突然爆発してしまう。予想外な展開にワタル達はあせった。

「おいぃ、破壊すんなら合図だせよ!」
 (調整不足だったか・・・)
「とにかく、すぐに迂回するぞ!」


尋問部屋

 一方、マリサに助けられたレッド達は部屋から出ようとする。
が、ドアも施錠されてまとめて出られない問題に陥っていた。

「で、出口はどこだ?」
「あたしもここはよく知らないわよ。
 ここから来たから、仲間を見つけたらなんとかして――」

ドッカアアァァン

「爆発!?」

どこかで爆発音がした。
関東製の類だとすぐに分かり、味方が助けに来てくれたのか
一度合流しようと反射的にドアへ向いた時だ。










「どこ行くんだぁ?」

ドアの外から巨漢が入って来た。
さっきの尋問官でスタンロッドを両手に身構えている。
だが、今度は身体の自由が利いてる以上、対処も十分できるはず。
殴って分からせる、狭い範囲ならでは猛獣の如く倒そうと
クリフが果敢かかんに殴りつけた。

「オラァ!」

ゴツッ

拳は弾かれる、300kgの圧力ではめり込めない。
クリフのパンチですら通用しない硬さだ。

「くっ、硬ぇな・・・」
「それもそのはず、偉大なるジュウゾウ司令の御子息が造られた
 この装甲は軽くて硬いっ!」
 (装甲・・・)

藍色の丸々としたその体格に隙を見出そうとする。
金的攻撃も考えたが、そこすら頑丈に覆われていて、
なんとかしてウィークポイントを模索もさくする。
そんなとき、誰かの声がとどいた。

「ひいい、助けてくれえ!」

1人の兵士が助けを求めてきた。
グンマ兵が部屋の外にいて、マリサの仲間のようだ。

「あんた、ここにいたのね!」
「ん、あっちも脱走か?」

巨漢が後ろを向いたその瞬間隙が生じた。
奴の腰に付けていた予備のスタンロッドを掴み取り、関節部に突きつけた。

「じゃあ、ここも効かないのか?」
「なぬぅ?」

ビリビリビリ

「ブブルブルルブブブプン」

ドサッ

巨漢が倒れて痙攣けいれん、気絶した。
自分の予見で当てた電撃は体内までとどいたようだ。

「やったか!」
「あいつは脇の下の部分だけ、肌を露出させていた。
 体格上、汗のれでも嫌って開けておいたんだろう」
「ほえー、よく見てるわね」

全身を密閉させて生活するなど不可能。
通気性や快適度で必ずどこかに穴が空くのが人という者。
この男の場合は熱中による発汗故の弱点だったが、
なんとかこの状況は克服できた。
マリサも目的の仲間を確保し、すぐに逃げようとした時、
外からたくさんの足音が聴こえる。

「増援か!?」
「お前らいるか!」
「みんな、無事でしたか!?」
「トオルにワタル達・・・来てくれてたんだな!」
「ん、こちらの婦人は?
 是非、ご紹介してもらわないと・・・」
「あたしはマリサ、なんか今日は自己紹介ばかりね」
「こいつはグンマ兵だが、説明してるヒマはねえ。
 とにかく、ここから離れるぞ!」

アイチの一部に杭入れたが、全域攻略などできるはずがなく
わずかな一穴から撤退しようとした。
自分達はここ一帯には土地勘がないが、
マリサはこの辺りはよく知っているようで、侵入以前に
森の中にライオットギアを待機させているという。
だから、助けてもらった信用を買ってグンマ兵と合流する。


30分後 東部森林地帯

 しばらくビークルで移動してCN境の森に止める。
緑に包まれた兵士達は彼女の帰還を喜びいさんだ。

「マリサ隊長が戻られたぞおおお!」
「静かにしなさいよ、まだ敵陣なのよ!」
「ははは、そうか」
     ヒョイッ
「ん、あんたこの機械は!?」

ワタルはケニーをこちらに持ってきていた。
マリサは脚の無いライオットギアを見て関心する。

「お気に召しましたかな?
 我がイバラギの技術の結晶でございまして――」
「それ、射出させてるワイヤー。
 あたしらの技術を使っているじゃない!?」
「あ、そうだった」
「ガハハハハハ!」
 (すっかり忘れてる・・・)

彼らに笑われてトオルは内心呆れる。
ワタルはケニーのワイヤー技術がグンマ産のものだと忘れていた。
彼は赤っ恥をかいていた直後、彼女から誘いの言葉を受けた。

「う~ん、そうね。せっかく助けてもらったんだし、
 なんなら一度グンマに来れば?」
「え、良いのか?」

なんと、一隊ごとグンマCNに同行してくれるというのだ。
クリフもやぶから棒に吹っ切れたのか、OKをだした。

「ああ、良いぜ」
「そうか・・・マリサ、ありがとうな」
「OKね、じゃあ撤収よ!」
「おっほほおおおおおう!」
「うるさい!」
「・・・・・・」

陽気で気さくなグンマ兵と共にする事ができた自分達。
同じ関東の1つである自然の多いエリアへ行く事になる。
どんな所なのだろうか、新たなる転地に気を留めつつ、
森と山に囲まれたグンマCNに向かって行った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2章目に突入します!
ここからは全て1章の後日話なので、
先に1章を全てご朗読する事をお勧めします。
場面もころころ変わり、今までの登場人物が一気に絡み、
新キャラもちょろちょろ出てくるので、少し長めな話になります。
できるだけ間を置かずに書いていくので、引き続きよろしくお願い致します。
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