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1章 トウキョウ編
第6話 誇張の人型
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今日も再び機械系と同じくラボリを繰り返す。
また、あの3人のアルビノ少女達がいる部屋に向かう。
上層階への出入りもある程度許可されたから、
いつでもここに来られるようになった。
トウキョウCN 上層階
地上から500mある高さのテラスから外を眺めて見る。
飛空艇ガレオスが1隻、西部へ飛んでいく。
いつもトウキョウの首脳陣が観ている世界。
やはり上層階は景色が違い、地上にはない煌々たる見下ろし感。
今はボクもそれを見ているから、まるでNoになった気分だ。
(いつかはボクが入ってNo10になるんだろうな~。
あれ、10って欠番だったっけ?)
今は1~9までしかいないけど、かつては10もいたらしい。
まったく事情が明かされていない間で枠組みも色々と大変だ。
それはともかくとしてボクは今年で18歳になったが、
この年でここに来られるとはなんとも誇らしい。
いつか地元区の両親達や皆に自慢してやろうと思う。
そして3人のいる部屋へ入っていく。
上層階 特別医療室
「でさ、ウチの主任が1週間かかるデバッグを
たった2日で終わらしちゃったんだ」
「・・・そう」
世話役という立場で日常茶飯事を話す。
相変わらず口数は少ない。話が面白くないのか、理解できてませんと
下層階級との価値観のズレで一方的な会話ばかり。
でもボクはめげずに話し続ける。
面倒を見る役目をNoの1人に任せられたのだ。
この程度で引き下がるわけにもいかない。
そういえば、会話の端々で気にかかるところもある。
アルビノの選定で来たのは以前から聞かされていたが、
安全理事局は身分証明や身体チェックが厳しく、
トウキョウ上層で籍を置くのはかなり難しいはずだ。
彼女達はどこから来たのか知りたくなった。
「みんなはシェルター街から来たの?」
「あたしとノエルはそれぞれカナガワとサイタマから。
コトミはトウキョウ」
「ええっ、超健康優先のここでよく籍を置けたね?
ああっ、身体の性質で選ばれてたんだった・・・ごめん」
「まあ、私だけは・・・」
「ん?」
「・・・いえ」
コトミは何か言いかけて止める。
トウキョウを筆頭にサイタマ、カナガワを支配下に入れた今は
兵士以外の市民がいるシェルター街もある。
さっきから無口だったノエルはボクに聞いてきた。
「肌が白くなっちゃうのは悪いことなの?」
「悪い?」
突然アルビノの話を問いだす。
肉体を蝕む病気でもないけど、外見が彫刻像みたいだから
怖がっているのだろう。
なるほど、彼女達は自分の白肌を根に持っているのか。
ボクは自流に考えた話をする。
「それは人間だけじゃないんだよ」
「?」
「他の動物もアルビノ種とか白変種とかいるんだ。
白き身体は君達だけじゃないってこと」
「他にも白い動物なんていたの?」
「本当にいるよ、ヒストペディアには画像もあるから
今度見せてあげようか?」
普通の市民がヒストペディアなんて見られるわけじゃないから、
本人達も知らなくて当然だ。他への情報がシャットアウトされている今、
情報強者トウキョウ兵の強さがそこにある。
「信仰では白っていうのは純潔、高貴な意味として
あがめられる意味もあるんだって」
「・・・・・・」
ちょっとクサい講釈もたれるが、尊厳を示すのが共有の一歩。
彼女達と良い関係になれるならば、どんな白説も述べてみせよう。
「ところで、君達はここで何をやるか知ってるの?」
「ううん、知らない。いきなり連れてこられたから」
「テレビ画面を操作するお仕事をするって聞いただけ」
「画面を操作?」
部屋のモニター画面に動物みたいな絵が表示された。
それが腕を振り回したり、種を飛ばして花を咲かせたりする
グラフィックが表示されている。
(な、なんつうメルヘンでマイルドな設定なんだ・・・)
彼女達が今回のプロジェクトで巨人を操作するなんて知らなくて当然だ。
現場の映像なんてグロすぎてとても見せられたもんじゃない。
後ろからベルティナがボクに呼びかけた。
「そろそろ時間だ、彼女達に検査が控えている。退出しろ」
「は、はい」
続きを話したかったが、ラボリ規定に止められた。
いつもながらNo9に中層部まで送り迎えてくれる。
そしてまたエレベーターに乗った時、
ボクは3人に関する事をわざとらしく聞き出した。
「彼女達は巨人の事を知らないようですが、やっぱり話さないんですか?」
「今は不可、怯えて逃げ出す危険性があるからな」
「だからモニター画面を通して任務をさせるんですね。
あと、やっぱり地下階に関しては極秘なんですか?
例の巨人製造工房ではないんですか?」
「お前もこちら側に来る身だ、話しても良いだろう」
なんと、あっさりOKしてくれた。前回とはえらい違いだ。
関係者になると、やっぱり扱いが良くなる。
「確かに地下階は巨人プロジェクトの制作区域もある。
だが、他にも使用するフロアは存在する」
「別の?」
「敵性、反逆行為の者には特別な階層へと送られていく。
一切の“自由が無い牢獄”へとな」
「!?」
それは貢献放棄したとみなされる者が入るといわれる階層があったのだ。
トウキョウの闇、陰部とされる知られていないフロアが設計。
ウワサには聞いていたが、本当にあったとは。
「あなたもそこを担当しているんですか?」
「ああ、最近もまた入居者が現れてな。
今はソイツの対応に迫られている」
どこの馬の骨とも分からない者が収監されたらしい。
No9でも手を焼く程の者がいるのか。
どんなならず者なんだろう。
中層階 軍備計画局 通路
「それじゃあ、ありがとうございました」
「また何かあったら連絡する。それまで待機しておけ」
今日の予定はこれで全て終わった。
自室に戻ろうとしたとき、PDから連絡の知らせが来た。
「「トーマスから連絡が届いています。至急、ラボに向かって下さい」」
「下界の方かねぇ?」
主任から連絡が届いたようだ。
上を意識しすぎてすっかりと下の仕事を忘れかけてしまう。
また手紙をくれるのかと思い、ボクはしたり顔で歩いて行った。
軍備計画局 トーマス部署
「皆集まったね。現在、ここトウキョウに敵性CNが
接近しているという情報が安全理事局からきたんだ」
「どこのCNですか?」
「中部CNらしい、カナガワCNの報告だと数隻の艦隊を連れて
接近しているようだ。到着推測時刻は翌日7:00頃」
久々に敵性CNがここへ向かっているという。
こんな時代でもまだ歯向かってくる連中がいるなんて身の程もいいとこ。
軍事執行局のNo2やニトベ補佐官が遠征の数を減らして
退屈な毎日だったが、こういう刺激的な展開も欲しかった。
打って変わったのか、例のトウキョウ湾から侵攻されるそうだ。
我ながら自分の予測の素晴らしさに惚れ惚れするが、
今はそんな事を思ってはいられない。
(アルビノの子達はまだ出られないはず・・・。
まあ、あの子らが出るまでもなく楽勝だけど)
「それで僕達の役目はどのルートで?」
「前線はサイタマとカナガワに任せる作戦で、
僕達は機体で中継、および各分隊の指揮をとれって」
自分らは余計な負担をとらずに、支配下CNに前線とらせるやり方は
確かに効率的に良い作戦だ。ボク達はライオットギアに乗りながら
彼らに指示をだして待ち伏せすれば良い。
「僕は1時間後に行くよ。
すでに2CNは現地入りしていて、待機している。
分隊長に指示を出すための報告書を提出するから
皆は明日に備えて休んでいて」
「分かりました!」
また、あの3人のアルビノ少女達がいる部屋に向かう。
上層階への出入りもある程度許可されたから、
いつでもここに来られるようになった。
トウキョウCN 上層階
地上から500mある高さのテラスから外を眺めて見る。
飛空艇ガレオスが1隻、西部へ飛んでいく。
いつもトウキョウの首脳陣が観ている世界。
やはり上層階は景色が違い、地上にはない煌々たる見下ろし感。
今はボクもそれを見ているから、まるでNoになった気分だ。
(いつかはボクが入ってNo10になるんだろうな~。
あれ、10って欠番だったっけ?)
今は1~9までしかいないけど、かつては10もいたらしい。
まったく事情が明かされていない間で枠組みも色々と大変だ。
それはともかくとしてボクは今年で18歳になったが、
この年でここに来られるとはなんとも誇らしい。
いつか地元区の両親達や皆に自慢してやろうと思う。
そして3人のいる部屋へ入っていく。
上層階 特別医療室
「でさ、ウチの主任が1週間かかるデバッグを
たった2日で終わらしちゃったんだ」
「・・・そう」
世話役という立場で日常茶飯事を話す。
相変わらず口数は少ない。話が面白くないのか、理解できてませんと
下層階級との価値観のズレで一方的な会話ばかり。
でもボクはめげずに話し続ける。
面倒を見る役目をNoの1人に任せられたのだ。
この程度で引き下がるわけにもいかない。
そういえば、会話の端々で気にかかるところもある。
アルビノの選定で来たのは以前から聞かされていたが、
安全理事局は身分証明や身体チェックが厳しく、
トウキョウ上層で籍を置くのはかなり難しいはずだ。
彼女達はどこから来たのか知りたくなった。
「みんなはシェルター街から来たの?」
「あたしとノエルはそれぞれカナガワとサイタマから。
コトミはトウキョウ」
「ええっ、超健康優先のここでよく籍を置けたね?
ああっ、身体の性質で選ばれてたんだった・・・ごめん」
「まあ、私だけは・・・」
「ん?」
「・・・いえ」
コトミは何か言いかけて止める。
トウキョウを筆頭にサイタマ、カナガワを支配下に入れた今は
兵士以外の市民がいるシェルター街もある。
さっきから無口だったノエルはボクに聞いてきた。
「肌が白くなっちゃうのは悪いことなの?」
「悪い?」
突然アルビノの話を問いだす。
肉体を蝕む病気でもないけど、外見が彫刻像みたいだから
怖がっているのだろう。
なるほど、彼女達は自分の白肌を根に持っているのか。
ボクは自流に考えた話をする。
「それは人間だけじゃないんだよ」
「?」
「他の動物もアルビノ種とか白変種とかいるんだ。
白き身体は君達だけじゃないってこと」
「他にも白い動物なんていたの?」
「本当にいるよ、ヒストペディアには画像もあるから
今度見せてあげようか?」
普通の市民がヒストペディアなんて見られるわけじゃないから、
本人達も知らなくて当然だ。他への情報がシャットアウトされている今、
情報強者トウキョウ兵の強さがそこにある。
「信仰では白っていうのは純潔、高貴な意味として
あがめられる意味もあるんだって」
「・・・・・・」
ちょっとクサい講釈もたれるが、尊厳を示すのが共有の一歩。
彼女達と良い関係になれるならば、どんな白説も述べてみせよう。
「ところで、君達はここで何をやるか知ってるの?」
「ううん、知らない。いきなり連れてこられたから」
「テレビ画面を操作するお仕事をするって聞いただけ」
「画面を操作?」
部屋のモニター画面に動物みたいな絵が表示された。
それが腕を振り回したり、種を飛ばして花を咲かせたりする
グラフィックが表示されている。
(な、なんつうメルヘンでマイルドな設定なんだ・・・)
彼女達が今回のプロジェクトで巨人を操作するなんて知らなくて当然だ。
現場の映像なんてグロすぎてとても見せられたもんじゃない。
後ろからベルティナがボクに呼びかけた。
「そろそろ時間だ、彼女達に検査が控えている。退出しろ」
「は、はい」
続きを話したかったが、ラボリ規定に止められた。
いつもながらNo9に中層部まで送り迎えてくれる。
そしてまたエレベーターに乗った時、
ボクは3人に関する事をわざとらしく聞き出した。
「彼女達は巨人の事を知らないようですが、やっぱり話さないんですか?」
「今は不可、怯えて逃げ出す危険性があるからな」
「だからモニター画面を通して任務をさせるんですね。
あと、やっぱり地下階に関しては極秘なんですか?
例の巨人製造工房ではないんですか?」
「お前もこちら側に来る身だ、話しても良いだろう」
なんと、あっさりOKしてくれた。前回とはえらい違いだ。
関係者になると、やっぱり扱いが良くなる。
「確かに地下階は巨人プロジェクトの制作区域もある。
だが、他にも使用するフロアは存在する」
「別の?」
「敵性、反逆行為の者には特別な階層へと送られていく。
一切の“自由が無い牢獄”へとな」
「!?」
それは貢献放棄したとみなされる者が入るといわれる階層があったのだ。
トウキョウの闇、陰部とされる知られていないフロアが設計。
ウワサには聞いていたが、本当にあったとは。
「あなたもそこを担当しているんですか?」
「ああ、最近もまた入居者が現れてな。
今はソイツの対応に迫られている」
どこの馬の骨とも分からない者が収監されたらしい。
No9でも手を焼く程の者がいるのか。
どんなならず者なんだろう。
中層階 軍備計画局 通路
「それじゃあ、ありがとうございました」
「また何かあったら連絡する。それまで待機しておけ」
今日の予定はこれで全て終わった。
自室に戻ろうとしたとき、PDから連絡の知らせが来た。
「「トーマスから連絡が届いています。至急、ラボに向かって下さい」」
「下界の方かねぇ?」
主任から連絡が届いたようだ。
上を意識しすぎてすっかりと下の仕事を忘れかけてしまう。
また手紙をくれるのかと思い、ボクはしたり顔で歩いて行った。
軍備計画局 トーマス部署
「皆集まったね。現在、ここトウキョウに敵性CNが
接近しているという情報が安全理事局からきたんだ」
「どこのCNですか?」
「中部CNらしい、カナガワCNの報告だと数隻の艦隊を連れて
接近しているようだ。到着推測時刻は翌日7:00頃」
久々に敵性CNがここへ向かっているという。
こんな時代でもまだ歯向かってくる連中がいるなんて身の程もいいとこ。
軍事執行局のNo2やニトベ補佐官が遠征の数を減らして
退屈な毎日だったが、こういう刺激的な展開も欲しかった。
打って変わったのか、例のトウキョウ湾から侵攻されるそうだ。
我ながら自分の予測の素晴らしさに惚れ惚れするが、
今はそんな事を思ってはいられない。
(アルビノの子達はまだ出られないはず・・・。
まあ、あの子らが出るまでもなく楽勝だけど)
「それで僕達の役目はどのルートで?」
「前線はサイタマとカナガワに任せる作戦で、
僕達は機体で中継、および各分隊の指揮をとれって」
自分らは余計な負担をとらずに、支配下CNに前線とらせるやり方は
確かに効率的に良い作戦だ。ボク達はライオットギアに乗りながら
彼らに指示をだして待ち伏せすれば良い。
「僕は1時間後に行くよ。
すでに2CNは現地入りしていて、待機している。
分隊長に指示を出すための報告書を提出するから
皆は明日に備えて休んでいて」
「分かりました!」
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