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1章 四国編

番外編  第1話  カナの新兵器?

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時はカナがスイレンとトクシマモブ兵達にオリジナル講座を開いていた話。
司令官来室前の若者講習会という授業を行っていた。
カナも20歳で若者が若者に教えるのも妙だが、彼女は四国の技術者で
こんなに若くして重役ポジションを任される立場となり、
将来、こんな道具が出来ますよと告知したいようだ。
何やら新たな発見があったらしく、
今後の装備品の1つとして技術説明をする。

トクシマCN拠点 視聴覚室

「という訳で、四国の環境に沿ったここ数年の研究によって
 水にも形状記憶効果があるのではっていう結論に達しましたっ!」
「けいじょうきおくこうか?」
「温度変化で元の形に戻る現象よ。
 今までは金属だけの効果だけだったけど、
 液体でも電子操作で変化が可能だというの。
 水の密度は1g/㎤で、固体じゃないのはもちろんだけど
 物理学の世界で1というのは“バランスが良い”意味をもつのよ」

 スイレンは若い子達に交ざって説明を受ける。
カナのパフォーマンスは水に形がないものを形にするといった技術で、
詳しくはあたしにとっても相変わらずだけど、人の体に害をもたらさずに
新しい薬品や備品を作れる可能性を発表した。

「なんか反発係数とか1って数が書いてあるしね。
 割合・・・みたいなものでしょ?」
「そ、そうね。
 低温時はマルテンサイト相、高温時はオーステナイト相とよばれ、
 高温で形を変えても低温になると元に戻ってしまうのだ」
「でも水は金属と違ってやわいっすよ?
 形もない水に原型なんてあるんですか?」
「え、え~と、これを観てみなさい」

カナはモニターに実験のVTRを流した。
早送り再生でトレイに温められたお湯が冷えてきた途端に、
水がトレイの左半分に寄っていってしまう。

「なにコレ・・・ゼリー!?」
「どう、すごいでしょ!? 液体は一応水なの!」
「氷でもないのになんで!?」
「実はこれ、水に砂金を入れて分子操作してみたもの。
 水の原子に金の原子を交互こうご左右に電子配合して、
 結合力で異なる比重でも動くように設定。
 元の形が半分の大きさの塊を別トレイに入れて低温保存してたの。
 そうしたら案の定こうなるわけ」
「すごーい」

カナの実験で水と砂金の形状変化をアピール。
流体と硬体を共有させて、かつ崩されにくい理想をつくり出す。
もしこれが発展したら壊れた物が勝手に修復したり、
動物の傷まですごく早く完治できるという。
加工しやすく滑らかなフレームデザインの可能性を伝えた。
完成品もそうだけど、四国は工程こうていの効率も考えて
出来上がるまでの過程を省き、少ない資源で造る。
それをカナが発見しただけでもスゴイけど、
トクシマの子達もあまり深く理解しきれていないだろう。
書類にはこの子の丸文字であたしにはすぐに分かったけど。
ただお座りしながら感心するだけ。

「流体力学の進化を感じるわ」
「形状記憶合金は金とカドミウムでできてるけど、
 マルテンサイト相の方は特に変形しやすい性質で、
 液状化できるレベルにまで変形できる実験に成功したの。
 励起れいき後でも同様の効果が現れるって分かった」
「液体金属なんて物も造れるのか。
 そういえば、液体って張り付くような・・・」
「そもそも液体には表面張力があるけど、
 粘り気ともまた違う性質があるのよ。
 光電子と液体の配合は未知なる原理で新たな装備も造れるはずよ」
「す、すげえ!」

何というか、水をまとっている様な感じだ。
あんまりよく分からないけど、とにかくスゴイのだろう。
この調子でカナが自慢げに説明をしていく。
そして講座は終わり、司令官訓示後に一同は解散した。


次はカナに整備の手伝いを頼まれた時の事。
あたしが操縦している戦闘機、S-001についても話しあった。
細かい内容をこっちにもってきたから語る。

「え、まだ他にあるの?」
「モノは相談なんだけど、S-001の規格も見直ししたいの。
 四国の兵装もそろそろ次の世代へステップしようと」
「え、また機能を変えるの!?」
「エンジン部を反重力にしたいの・・・良いかな?」

なんと、カナは反重力エンジンをS-001の動力源に変更すると言う。
中つ国の技術を取り入れて取り替えたいらしい。
今までのエンジンはこうのうしゅくばいおえたのーるとかいう燃料に、
電磁エネルギーで推進させて、翼の揚力ようりょくでアゲアゲに飛んでいる。
植物の油を動力にできるくらい、お野菜パワーで動く事ですらスゴイのに。
空を飛ぶ機械なんて他の地方でもあるけど、
技術をどうしたらそんな風に変えられるのか文明の高低さが浮きそうになる。
飛行中にも度々見てきたが、音もなく悠々ゆうゆうと飛び回るそれは
世代のギャップは確かにゆるゆる感じ取ってきた。

「こりゃまたオリジナリティで、お姉さんオドロキ。
 旋回性能ももっと速くなるから判断力ももっと必要になるよね。
 こっちでホントに使いこなせるかな?」
「正直、機動力はこっちが負けてると思う。
 初速度はジェット推進でこっちが有利だけど、後の位置取りは
 空中で変化させやすい向こうの方が有利だから」
模倣もほうで追いつくのも手段だしね、モホホ。
 これにしろって司令の人が言ったの?」
「そうだけど、私も航空機の方に力を入れたいし。
 中つ国も目を見張るくらいすごく技術力あると思う。
 空域展開をもっと大きくした方が良いよ」
「CNとしてはパイロットを増やしたいもんね。
 ところで、エンジンの分解はまだできないの?」
「お・て・あ・げ、A.D90年製ドリルでも無傷。
 あんな物、誰が造ったのか想像もつかない」

こちらは悪い方のアゲの模様。
実は旧来のエンジンは中身が確認できず、
司令官達ですら何エンジンなのかは不明。
誰にも解析できない物をよく扱えると不思議に思うところだけど、
どういう訳かあたしにとって今のエンジンはよく馴染なじむ気がする。
操縦している最中はどこか先立つ感じがしてスムーズに手が進み、
ミスも少なく促されるように動かせるから今までやってこれたのだろう。
そこから手足をまるごと交換されるみたいな感じがして気が進まない。
司令官は強制施工せこうする意思はないらしく、
カナには突然の仕様変更はやりづらいとだけ言っておく。

「う~ん、もうちょっと考えさせて。イキナリ変えられると墜落しそうで。
 お姉さん、追いつくのも大変だし」
「20なのに、何おばさんみたいな事言ってんのよ。
 推進部がちょっと変わるだけでハンドル部はそのままで良いじゃない?」
「い、いや、それでも規格が変わりすぎてもアレで、カンベンしてよぉ~」
「そ、そう・・・分かった」

少し無念そうに返事をする。
まだ司令承認も通ってないから、そのまま企画送りとさせた。
たった1人のワガママで進展を抑えるなんてCNとしてはどうかと思う。
でも、筆頭的に扱われるあたしにだって限界がある。
誰にも言えない事情はまだ、この小さな胸の中に閉まっていたから。

(長生きすればするほど、情報はいくらでも入ってくる)

あの大交戦から50年、運良く生き延びてこれたものの、
色々なものを失っても、まだ生き続けて学ばなければならない。
というより、目を開けて歩いて動けば情報は入ってくるのが人生。
繰り返す日々の間でなんだか少しずつポロポロと落ちてゆく感じがする。
それもそのはず。
60代に着いた“私”はこんな姿でも新時代の中身コンテンツ
老化していないだろう頭ですら取り入れに一苦労するのだから。
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