Condense Nation

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1章 オキナワ編

第7話  水葬の棺

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翌日 19:00 阿覇エリア 市民街

 オキナワ兵3人がロストした報告が入った。
海底に沈んでいた潜水艇Bが発見され、中にあったカーポモルトは
一度拠点に運ばれてから市民街へ戻したという。
すすり泣く遺族や住民に見守られながら葬る事になり、
自分達もその様子を少し離れて見ている。

「「可哀そうに・・・」」
「「まだ若いのに、この年で終わっちまうなんて・・・」」
「・・・・・・」

隊員は俺達と近く、25歳回りの工作兵ばかりだった。
無線連絡ではパニックに陥った叫び声ばかり聴こえたらしく、
とてつもなく恐ろしい物に艇の身動きを縛る様子だったらしい。
彼らの身は外傷など受けなかったが、水圧という適応しきれない力で
亀裂から入ったものにひたされ生涯を終えた。
家族の元に身だけ戻れたのは幸いと言えるのか。
そして棺は船に乗せられて、とある海域まで運ばれていく。
このオキナワは火葬ではなく、水葬による儀式で行われる習慣があった。
水中で絶たれた後にまた水へ送るなど皮肉で、
セリオは面を歪ませ憤慨ふんがいした。

「ついにロスト者がでちまったか、許せねえな。
 早くぶっ飛ばしに行こうぜ!」
「どこにいるのかまだ見つかってないのよ!
 琉球の海域はすごく広いし、どうやって探せば良いんやら」
「やっぱ、どっかの敵艦だったのか。こざかしく逃げ回りやがって!」

メンバー達もいきどおる。しかし、あれから敵の姿は見えず、
雲隠れならぬ海隠れする立ち回りに振り回されていた。
本部も正体をつかめずに右往左往させられて次の指示が来てなく、
ただ訓練するなんて気になれる雰囲気じゃない。
そんな中、住民の1人が叫びだした。

たたりじゃ!」
「なんだと!?」
「海底遺跡じゃ、あそこには何かがおる。
 おそらくは古き海を知る先祖達が訴え始めておるだろう」
「なんだって、あのなんもない遺跡にいんだよ?」
「水葬の墓地はその遺跡の付近じゃ。
 供養が足りてぬゆえにお怒りになったのじゃああ!」
「そんなまさか」

海底遺跡とは矢那国島の海域にある古くから存在していた場所である。
何のために遺跡があるのかは全くもって不明だ。
自分は一度も行った事はないが、墓地がその付近にあるので
いわくつきのうわさで有名でもあった。怪音波との接点は特にないが、
関連性と位置的に繋がりがあるのではと疑う者も多く、
海要素も含めて発祥の所縁ゆかりがあるのではと少し気になりつつある。

 (海底遺跡か・・・)


オキナワCN拠点

 地元に根付くジンクスをのしかけて一同は拠点に戻った。
元からここにいたタツキ目線に戻り、事情を聞く。
他のオキナワ兵も夜になってもせわしない挙動をしている。
そういえば、明日に行う任務について何かやる予定があるのかと
ハナさんに聞こうとしたが、司令の姿は見えない。

「あれ、司令はどこにいますか?」
「今はここにいないのよ、本部にいるわ」
「ええっ、司令まで向こうに行ったんですか!?」

カゴシマCNへ行ったらしい。
先の件で司令会議を始めるようで向こうが本部だから集会するという。
何かあったのか、司令が不在している事について聞いてみると
彼女は驚くべき理由を話し出した。


「コスギ司令は容疑にかけられているの」
「!?」

容疑というワードが心臓の中をとどろかせる。
内容を聞くに、司令は例の起きていた技術者行方不明、
奇妙な潜水艇の件で疑いをかけられていた。
理由はクマモトCNの海域にも現れたそれがオキナワへ逃走したと、
本部の会議にて質疑応答させられているそうだ。

「まさか・・・あの人が?」
「コスギのおっちゃんが、真犯人だってのか!?」
 (あの人が・・・そんな事をするわけがない)

もちろん、こっちでも同じく被害が出ている。
元から権限をもつコスギ司令がそんな事をしてもメリットなんてない。
メンバー達に動揺がはしる。ぎぬだと言わんばかりに、
自分は真っ先に連絡をとるよう催促さいそくした。

「今、司令に連絡はとれますか?」
「とれると思うけど、何をするの?」
「司令、聞こえますか? そちらは大丈夫ですか?」
「ああっ、ちょっと!?」
「「ああ、大丈夫だ・・・」」

ハナさん横へ身を乗り出してマイクで語りかけると、
司令は疲れた声をしていた。ちょうど会議が終わったところみたいで
やはり、向こうで色々と問い詰められていたのだろう。
どういう根拠でコスギ司令に否があるのか分からずとも、
この疑いを晴らさなければならない。

「司令が亡霊艇に関与してるなんてありえない!
 俺もそっちに――!」
「「駄目だめだ、やたらと動けば相手の思うツボだ。
  仕掛けがどこか分からん内で安易あんいに散開してはならん」」
「何かできる事は?」
「「とりあえず、オキナワの身を固めていろ。
  心配するな、すぐに戻るから待機しているんだ」」
「そうだぜ、外に出りゃスキだらけになっちまう。
 他にやるラボあるだろ?」
「たった今入った情報より、解析班からコードの詳細が判明。
 金属物質の1つの予測範囲を見つけたそうです。
 場所は・・・例の海底遺跡周辺とのこと」
「!?」
「そんなの有りかよ・・・?」

奇遇な事に次の目的箇所は噂の海底だと言う。
ハナさんの報告が誰かのおぼしに聴こえた自分は
ある行動に打って出た。

「司令、自分に海底遺跡の調査をさせて下さい」
「「矢那国の遺跡にか?」」

1人で行くと請願する。
自分の見解では、外部からの可能性がすでに薄まりつつなる。
例の亡霊艇は今まで徘徊しながらも、直接手を出してこなかった。
当時の話ではモブ兵Lが先制攻撃をしたらしく、直後に沈没。
相手はやむおえず反撃したと考えるべきだ。
つまり、その潜水艇はオキナワCNが目当てではなく、
のではないかと推測。
さらに、潜水艇の形状は人型像に1つの直方体をもつ姿だったらしい。
画像で映っていたそれを観た自分は見覚えがあった。
古くからオキナワに伝わる水葬法と類似している事だ。
死者を葬る際の “寄り添い鎮める”作法は特有で、
体制が似すぎて明らかに現地人にしか知らないはず。
棺桶らしき形状と接続されるその仕様の理由は他に考えられず、
外の敵性CNによるしわざとはとても思えなかったのだ。
つまり、亡霊潜水艇は明らかに地元の歴史を知る
“オキナワの誰かが造った”ものであるだろう。
その真相を解明するためにも、やらなければならない
使命感がすでに自分を大きく突き動いていた。

「というのが自分の考えです、当てずっぽうもありますが」
「「なるほど・・・そういう事か」」
「謎の暗号を送ってきた人も何かを解かせるために当てにしたと思います。
 おそらく潜水艇の関係者で、止めさせるために通信してきたのかと。
 確かにこれだけでは司令の潔白を晴らしたとはいえないです」
「・・・・・・」
「自分は今までコスギ司令やコウシ先生、ヒサシ隊長に育てられたので、
 今度は自分が恩返しをする番です。なので、無実を証明してみせます。
 オキナワの兵士なんですから!」
「「やはり、お前を育てたのは正しかった。
  失敗の連続でもせば成るものなんだな」」
「え、失敗の連続?」
「「いや、こちらの話だ。用件は分かった、
  今より、この作戦を蛍光灯けいこうとう作戦と名付ける」」
「了解です、任せて下さい!」
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