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1章 中つ国編
第9話 中つ国CNとして
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自分は力を入れ直して立ち上がり、兄を睨み付ける。
やっぱり組織を超えた行動が許せなくて、
もう、この場を下がろうなど微塵も思っていなかった。
「やめておけ、お前じゃ勝てない」
「止める・・・お前達を止めてやる」
あくまでも自分はここ、CNのためにいる存在だ。
自分の地を荒らす者には兄弟、幼なじみなど関係ない。
何よりも、己の心臓が許してくれないのだ。
「俺達が来なかったら、お前はロストしてたんだぞ?」
「それなら、ああまでする必要はなかっただろう!?」
呆れたエイジが側に来ようとした。
だが、目の前に立ちふさがったのはマナミだった。
「アンタの相手はあたし。久しぶりに手合わせしようか、ケイ」
「良いのか?」
「あたしにやらせて下さい」
「お前か・・・良いだろう」
彼女と手合わせした経験はいくらでもあった。
武器は使わず、素手で分からせる。
あいつの手の内など、いくらでも読めるから。
「来なさい!」
「うおおお!」
まずはハイキックと見せかけて、フェイントで彼女の左肩を掴む。
後は締め落として終了だ。
そう思って2m近く接近したそのとき、彼女は構えを変えた。
「!?」
その瞬間、鋭い突きを放つ。
自分はバックしつつもその腕を掴み捻り倒そうとする、しかし。
「な!?」
ドスッ
腕を掴んだ瞬間、左膝蹴りが自分の顔面にくらった。
不意に倒れそうになる。
「オカヤマではそうやって教わってきたものね。
碧の星団がその対策をしていないとでも?」
「くっ」
彼女は星団流にアレンジされた格闘術を学んでいたのだ。
すぐにパターンを変更せざるをおえなかった。
(掴み技はダメか・・・)
ならばラッシュで打撃していく事にした。
男のパンチ力の方が優れているし、
同期の頃なら自分の方が少なくとも女よりも強かったから。
本音では殴りたくないけど、精鋭一兵にそんな事は言ってられない。
「せいやっ、はっ、うおっ!」
シュッ スカッ シュシュッ スカスカ
絶妙な間合いで避けられている。
なら、ここでカウンターを狙う。
が、マナミはそこすらも予想の範囲をとらえていたのか
わずかな隙をつき、懐に入り自分の左顎にフックを入れた。
ガスッ
「ぶっ!?」
ドサッ
KOされた、胴体が地面に落ち伏せてしまう。
視界が空の星空の明かりだけが見えてくる。
「決まりだな」
「馬鹿な・・・」
彼女は格段に強くなっていた。
完全に油断、マナミの近接術にみくびっていたようだ。
実力者の集う星団ならば、これ程までなのだろう。
だが、常に側にいた彼女にすら出し抜かれた事実は1人の隊長、
男である自分のプライドをズタズタにした。
「ちなみに、あたしは0.4秒の移動物体を見切られるようになった。
この調子で0.3秒に挑み続けるわ」
「ぐはっ!」
「隊長・・・」
「さあ、今度こそ終わりだ。全員撤収!」
「良い見せモンだったわ、あんがとな」
トラップに囲まれた味方モブも、曇りの表情だけ。
飛空艇が降下して、星団を乗せていく。
エイジは自分に一声して去っていった。
「上は俺達に任せな、下はお前達に任せるから」
自分は精一杯の呻き声をあげて呼びかける。
何度も何度も呼びかける。
「「マナミぃ、エイ兄ぃ・・・・・・マナミぃぃ、エイ兄ぃぃ」」
その後はよく覚えていない。
中つ国兵がやって来て味方モブは罠を解除されて無事救出された。
トラップには爆薬が入ってなく、結局おちょくられていただけのようで、
自分には意識があったが脳震盪で立てず、悔しさ、屈辱さ、
ここから離れていった虚しさが極まって泣き続けていた。
翌日 備高竹山駐屯地 ロビー
「・・・・・・隊長?」
「・・・・・・」
廊下のイスに座り、うつむく。口が開かない。
メンツなき今の自分には部下に見せる顔すらなかった。
言葉もろくにでなくて1人だけで逃げようと思い、立った直後、
自分のお尻に衝撃が走った。
ズブッ
「カンチョー」
「ぬおあっ!?」
尻肉の割れ目に彼女の指が入る、大いに悶絶した。
「んふぉおおおおう」
「気を入れてやったぞ、元気でたかい?」
トットリの女兵の柔らかく、かつ押し気味強い指に体が硬直。
浣腸されて元気が出るのかは疑問だが、全身に電気が走る感覚はした。
いつの間にか彼女が備高竹山駐屯地にやって来ていた。
「シーナさんか・・・」
「あの子に負けて逃げられたんだってね」
彼女の性格らしいストレートな言い分だ。
次にそれを否定するような言葉を話した。
「“女に負けた”っていうコンプがあるならやめときな。
そんななら、あたしだって隊長になれやしないよ」
「・・・・・・」
確かに言ってる事は正しい。
側にいた部下もこちらの顔を見て静かに語りかける。
「俺達はそんな目であなたを見てはいません。
オカヤマCNの隊長が務まるのはあなたしかいないと思っています」
慰めと励ましの言葉をもらう。自信を失いつつある今、
こんな時に何を話せば良いのかが分からない。
ただ1つだけ小さく口にでた言葉は。
「「山陽と山陰ってなんなんだ?」」
「・・・・・・」
沈黙が漂う。やはり、皆もそれなりの因縁は知っているんだ。
そんな空気を一気に吹き飛ばすシーナ。
「昔は昔、今は今。
そのとき、何が起きてたなんてあたしは全然知らないし。
関わりたくもないね」
「・・・・・・」
「今できることをあたしらがやっていけば良いんだ!」
「あ・・・そうですよね!」
機転を利かせようとしたのかモブ兵が返事をする。
人々の因縁というものは内側同士で起こるもの。
外側からは見えず、中から解決していくしかないのだ。
「やっぱりトットリ兵はある意味強者なんだなぁ」
「なんだい、ある意味って!?」
彼女の返しで空気の場が戻った。
彼女みたいな人にとっては境目など無意味な事に感じる様になってくる。
良くも悪くも雑じり気を乗りこなすプロなんだろう(?)。
「さあ行こうか、今日は巡回だよ。
あたしらとの合同だ!」
「準備は万端です、行きましょう」
彼女に手ではなく腕を引っ張られた。
まだまだエイジの言う“下の世界”にも頼れる仲間がいる。
自分の足で歩いていかなければ、空どころか地上すら
渡っていくことができないのだから。
「では、やはり例の新規基地計画は継続ですか?」
「「ああ、事を早める必要がある。
部下達の瘴気が再び盛んになってきているしな。
鎮静たる地は早々に与えてやらねばならん」」
「この時代になっても、過去の因縁は残るものですね。
何故、人は無意識に衝動に駆られてしまうのか」
「「それを全て受け止めるのも私の責務だ。
お前達はお前達の任務を行えば良い」」
「ただ、天主殻の行動が気掛かりですが、問題は起こらなかったようで?
果たせない貢献など、もはや無意味に等しいですな」
「「リスクは覚悟していたが、上手くいった。
天主殻のCN管理法には穴がある。
交戦権の変革をもたらすのは可能であろう」
「山陽と山陰の境目たる指標か・・・随分と深くなっていきますね」
「いまだに中つ国の奥深くに根付いています。
どこかによる陰険が緩和されるのをただ願うだけです」
「そういえば、お宅の兵士も1人あちらに行きましたよね?
女性の兵士が入隊したと聞きましたが」
「ええ、非常に優秀ですが闇も深い者です。
言動より、親族の何者かの影響が強いかと思われます」
「「あの子も“捉われし者”だったとはな、こちらでなんとかするとしよう。
今日の報告は以上とする、引き続き兵達の動向を監視し続けるように」
「改めてマナミをお願い致します・・・・・総司令」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「上に政策あれば下に対策あり」ということわざがあります。
政策と対策がせめぎ合うその中心にこそ真実があるのかもしれませんね。
という事で中つ国地方編はこれにて終了、次編に行きます。
やっぱり組織を超えた行動が許せなくて、
もう、この場を下がろうなど微塵も思っていなかった。
「やめておけ、お前じゃ勝てない」
「止める・・・お前達を止めてやる」
あくまでも自分はここ、CNのためにいる存在だ。
自分の地を荒らす者には兄弟、幼なじみなど関係ない。
何よりも、己の心臓が許してくれないのだ。
「俺達が来なかったら、お前はロストしてたんだぞ?」
「それなら、ああまでする必要はなかっただろう!?」
呆れたエイジが側に来ようとした。
だが、目の前に立ちふさがったのはマナミだった。
「アンタの相手はあたし。久しぶりに手合わせしようか、ケイ」
「良いのか?」
「あたしにやらせて下さい」
「お前か・・・良いだろう」
彼女と手合わせした経験はいくらでもあった。
武器は使わず、素手で分からせる。
あいつの手の内など、いくらでも読めるから。
「来なさい!」
「うおおお!」
まずはハイキックと見せかけて、フェイントで彼女の左肩を掴む。
後は締め落として終了だ。
そう思って2m近く接近したそのとき、彼女は構えを変えた。
「!?」
その瞬間、鋭い突きを放つ。
自分はバックしつつもその腕を掴み捻り倒そうとする、しかし。
「な!?」
ドスッ
腕を掴んだ瞬間、左膝蹴りが自分の顔面にくらった。
不意に倒れそうになる。
「オカヤマではそうやって教わってきたものね。
碧の星団がその対策をしていないとでも?」
「くっ」
彼女は星団流にアレンジされた格闘術を学んでいたのだ。
すぐにパターンを変更せざるをおえなかった。
(掴み技はダメか・・・)
ならばラッシュで打撃していく事にした。
男のパンチ力の方が優れているし、
同期の頃なら自分の方が少なくとも女よりも強かったから。
本音では殴りたくないけど、精鋭一兵にそんな事は言ってられない。
「せいやっ、はっ、うおっ!」
シュッ スカッ シュシュッ スカスカ
絶妙な間合いで避けられている。
なら、ここでカウンターを狙う。
が、マナミはそこすらも予想の範囲をとらえていたのか
わずかな隙をつき、懐に入り自分の左顎にフックを入れた。
ガスッ
「ぶっ!?」
ドサッ
KOされた、胴体が地面に落ち伏せてしまう。
視界が空の星空の明かりだけが見えてくる。
「決まりだな」
「馬鹿な・・・」
彼女は格段に強くなっていた。
完全に油断、マナミの近接術にみくびっていたようだ。
実力者の集う星団ならば、これ程までなのだろう。
だが、常に側にいた彼女にすら出し抜かれた事実は1人の隊長、
男である自分のプライドをズタズタにした。
「ちなみに、あたしは0.4秒の移動物体を見切られるようになった。
この調子で0.3秒に挑み続けるわ」
「ぐはっ!」
「隊長・・・」
「さあ、今度こそ終わりだ。全員撤収!」
「良い見せモンだったわ、あんがとな」
トラップに囲まれた味方モブも、曇りの表情だけ。
飛空艇が降下して、星団を乗せていく。
エイジは自分に一声して去っていった。
「上は俺達に任せな、下はお前達に任せるから」
自分は精一杯の呻き声をあげて呼びかける。
何度も何度も呼びかける。
「「マナミぃ、エイ兄ぃ・・・・・・マナミぃぃ、エイ兄ぃぃ」」
その後はよく覚えていない。
中つ国兵がやって来て味方モブは罠を解除されて無事救出された。
トラップには爆薬が入ってなく、結局おちょくられていただけのようで、
自分には意識があったが脳震盪で立てず、悔しさ、屈辱さ、
ここから離れていった虚しさが極まって泣き続けていた。
翌日 備高竹山駐屯地 ロビー
「・・・・・・隊長?」
「・・・・・・」
廊下のイスに座り、うつむく。口が開かない。
メンツなき今の自分には部下に見せる顔すらなかった。
言葉もろくにでなくて1人だけで逃げようと思い、立った直後、
自分のお尻に衝撃が走った。
ズブッ
「カンチョー」
「ぬおあっ!?」
尻肉の割れ目に彼女の指が入る、大いに悶絶した。
「んふぉおおおおう」
「気を入れてやったぞ、元気でたかい?」
トットリの女兵の柔らかく、かつ押し気味強い指に体が硬直。
浣腸されて元気が出るのかは疑問だが、全身に電気が走る感覚はした。
いつの間にか彼女が備高竹山駐屯地にやって来ていた。
「シーナさんか・・・」
「あの子に負けて逃げられたんだってね」
彼女の性格らしいストレートな言い分だ。
次にそれを否定するような言葉を話した。
「“女に負けた”っていうコンプがあるならやめときな。
そんななら、あたしだって隊長になれやしないよ」
「・・・・・・」
確かに言ってる事は正しい。
側にいた部下もこちらの顔を見て静かに語りかける。
「俺達はそんな目であなたを見てはいません。
オカヤマCNの隊長が務まるのはあなたしかいないと思っています」
慰めと励ましの言葉をもらう。自信を失いつつある今、
こんな時に何を話せば良いのかが分からない。
ただ1つだけ小さく口にでた言葉は。
「「山陽と山陰ってなんなんだ?」」
「・・・・・・」
沈黙が漂う。やはり、皆もそれなりの因縁は知っているんだ。
そんな空気を一気に吹き飛ばすシーナ。
「昔は昔、今は今。
そのとき、何が起きてたなんてあたしは全然知らないし。
関わりたくもないね」
「・・・・・・」
「今できることをあたしらがやっていけば良いんだ!」
「あ・・・そうですよね!」
機転を利かせようとしたのかモブ兵が返事をする。
人々の因縁というものは内側同士で起こるもの。
外側からは見えず、中から解決していくしかないのだ。
「やっぱりトットリ兵はある意味強者なんだなぁ」
「なんだい、ある意味って!?」
彼女の返しで空気の場が戻った。
彼女みたいな人にとっては境目など無意味な事に感じる様になってくる。
良くも悪くも雑じり気を乗りこなすプロなんだろう(?)。
「さあ行こうか、今日は巡回だよ。
あたしらとの合同だ!」
「準備は万端です、行きましょう」
彼女に手ではなく腕を引っ張られた。
まだまだエイジの言う“下の世界”にも頼れる仲間がいる。
自分の足で歩いていかなければ、空どころか地上すら
渡っていくことができないのだから。
「では、やはり例の新規基地計画は継続ですか?」
「「ああ、事を早める必要がある。
部下達の瘴気が再び盛んになってきているしな。
鎮静たる地は早々に与えてやらねばならん」」
「この時代になっても、過去の因縁は残るものですね。
何故、人は無意識に衝動に駆られてしまうのか」
「「それを全て受け止めるのも私の責務だ。
お前達はお前達の任務を行えば良い」」
「ただ、天主殻の行動が気掛かりですが、問題は起こらなかったようで?
果たせない貢献など、もはや無意味に等しいですな」
「「リスクは覚悟していたが、上手くいった。
天主殻のCN管理法には穴がある。
交戦権の変革をもたらすのは可能であろう」
「山陽と山陰の境目たる指標か・・・随分と深くなっていきますね」
「いまだに中つ国の奥深くに根付いています。
どこかによる陰険が緩和されるのをただ願うだけです」
「そういえば、お宅の兵士も1人あちらに行きましたよね?
女性の兵士が入隊したと聞きましたが」
「ええ、非常に優秀ですが闇も深い者です。
言動より、親族の何者かの影響が強いかと思われます」
「「あの子も“捉われし者”だったとはな、こちらでなんとかするとしよう。
今日の報告は以上とする、引き続き兵達の動向を監視し続けるように」
「改めてマナミをお願い致します・・・・・総司令」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「上に政策あれば下に対策あり」ということわざがあります。
政策と対策がせめぎ合うその中心にこそ真実があるのかもしれませんね。
という事で中つ国地方編はこれにて終了、次編に行きます。
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