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1章 中部編

第9話  鋼鉄の国、アイチ

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「正体不明の装甲兵!?」

 突然現れた紺色こんいろの塊の様な物に両陣営は騒然とした。
1km間の銃弾飛び交う側から非常に低速度で登場。
身長170cmのトコトコ歩いてきた鋼鉄をまとった物体が
ホットゾーンに現れたのだから当然である。

「ライオットギア・・・じゃない!?
 小型機体にしてはリアルモーションすぎる、人が入ってんのか!?」
「司令、指示をお願いします!」
「「じゅじゅじゅ銃が効かないなんて・・・」」

突然現れた謎の物体に、シズオカ兵が混乱。
飛び道具を弾き、何がしたいのか理解できない顔を並べていて、
工房で見計らっていたのが予想通りの成果だ。
集中で狙われているものの、一切の銃弾を弾き返すから
おとりとしても有効で相手の注意を一斉に引きつけられる。
敵の目を引き付けている間に味方に対処してもらう。

「司令、対処を!!」

シズオカ兵がなんとかしろと怒鳴りつける。
とりあえずドラゴンフライで爆破を狙おうとするが、
現場のリソースはもう底になりかけて一発も撃てず。
先のライオットギア戦でもう使えなくなっていた。

「せせせ接近して取り押さえろおひょおおぉぉ!」

シズオカ兵が一気に接近してきた。
数秒前にナガノ兵はあれが敵ではなくアイチの新型と通達を受け、
ロビンもクロムの援護とすぐに察知してデコイの役割で来たと、
好機といわんばかりに自軍を近づけさせるよう命令した。

「奴は味方だ、接近するシズオカから守れ!」
「アイサー!」

ドスッ

「ブッフェ!」

剛体がパンチして殴る。
クロムに近づく敵兵を狙って近接戦闘を展開した。
拠点で聞いていた施策がこれだと分かり、地域ならではの独自開発を
試そうとしたのだろう。

「接近戦はこちらの得意分野だ。
 お前達は今まで迂回戦法しかしてこなかったツケが返ってきたな」
「隊長のパンチ力は500kgはあるぞおおお!
 ・・・味方で良かった」
「護衛するつもりが護衛されるとは。
 戦争は1人でできるものじゃないな・・・」
「当たり前だ、そう気負うなよ。しっかり援護してやるぞ!」
「続けええ、うおおおおおおおお!」



ナガノCN拠点

 ヨゼフィーネ部隊は拠点に戻ってきた。
ロビンの指示通りに緊急時の護衛として待機するが、
後の具体策はまだ聞いていなかった。

「トウキョウまで加勢に来るとは予想外だわ」
「ロビン隊長大丈夫ですかね。連絡はまだきてないですか?」
「まだだな、今はここで待ってるしかないな」

道中で奇襲を受けなかったのも、ノーバディのおかげ。
音もしないヘリで怪我人と一緒に帰ってこれただけで幸いだ。
トウキョウの猛攻で壊滅を防ぐために帰還させたのは分かっていた。
本当は父と一緒に戦いたかったけれど、一大事の時だけは下がらせる。
今はどうなっているのか、現地の様子を心配していると、
ナガノ拠点に通信が届いた。

「父ちゃ・・・じゃなくて隊長?」
「「伝令、グンマCNで偵察兵が行方不明に。反応が消失しました!」」
「なに、偵察兵が?」

内容は父ではなく、分隊の話だ。
ナガノCNは別働隊を北側のエリアに向かわせていた。
ニイガタCNに侵攻するためグンマCNを通って奇襲をかける予定だったが、
途中で消息を絶ったという。ナガノ司令官が彼女に通達を出す。

「帰還早々悪いが救助に向かってくれないか?」
「しょうがない、行ってくる!」


グンマCN 山岳地帯

 彼女達一同は消失したとされる位置にたどり着く。
こっちはこっちで緑の者達に気を付けて景色に惑わされないよう探す。
が、このまま進軍するのは危険だと判断した。

「この辺りは火山地帯もあります。
 火山性ガスが窪地くぼちに充満しているので、
 ガスマスクを装着して行きましょう」
の正体がそれなんて、3Dモールならすぐ分かるのに。
 昔の人の言う事は大げさだな」
「火山ガスは脳神経にも影響を及ぼしますしね。
 私達も巻き込まれないよう、気をつけて進みましょう」

一同は緩やかな窪地を斜め下へと進んでいく。
なにやら底の部分に多くの異物があるような気がするが。
何かを見つけたメンバーが指をさして叫んだ。

「おい、人がたくさん倒れてるぞ!?」

なんと、そこの下部に数人が倒れていた。
7人程で救助対象のナガノ兵、味方ではないようだ。
彼女はどこの者だとガスマスクを装着しながら下ってよく確認をすると。

「ん、こいつらは!?」


古城エリア

ズパァン キィィン ゴツン

(痛っ)

 クロムが前方から鈍い反射音ばかり耳に入れられる。
古い時代からある武器の阻害がまだ全身に見舞われていた。
銃弾が装甲に多く当たって揺さぶられる。
サイズが自身とピッタリではなく、移動の度にラグが生じて
装甲の衝撃で中の体とぶつかってしまう。
それにより自分の体までぐらついてたじろぐ。
ロビン達の援護に頼るしかない。

「あともう少しだ、耐えろ!」
「アイチを・・・守ってみせる!」

ズドン ズドン ズドン

近距離はナガノ兵、遠距離は自分達アイチ兵の連携で
間をつくらせずにシズオカ兵に対抗する。
隙のない打と貫の立ち回りに敵兵がたじろいだ。

「無理か・・・撤退しろ、撤退!」

もう攻略不可だと判断して戦場離脱に切り替える。
自軍の波が引いてゆく様子に気付いたシズオカ司令官が状況を問う。

「どうした? 進軍しろほおおおお!」
「「無理です、退却しますので」」

人の数がみるみる引いていく。
これ以上の交戦に意味がないと、シズオカ兵達は諦めたようだ。
今回の戦況はクロムの一点囮作戦が功を期した。

「・・・・・凌げたか」

バンッ

「うあっ!?」










後ろから張り手された。
その張本人はロビンだが、労いとしての音と銃声と錯覚しがちになる。
辺りにいたナガノ兵もたくさんこっちに集まって来る。

「お前、やったな!」
「突然だったけど、こうして見てみるとよくできてるな」
「俺達にも造ってくれよー!」
(・・・・・・)
「今回のVIPはお前だな」

ライオットギアに乗らなかった自分の初の白兵戦。
装甲に頼ったとはいえ、目線の違いがこれ程までに
違う戦闘の世界を味わうとは思いもしなかった。
この装甲を造った事は、中部にとって大きな貢献になれただろう。
自分はこの技術と共に歩く決意を固めた。
陸上の戦闘は過酷だ、それでもこの地上に足をつけて戦う。
アイツもこんな世界を見続けてきたのだから。


シズオカCN拠点 指令室

 シズオカの司令室で司令官は誰かと通信している。
なにやら必死に弁明しているようだ。

「ままままま待って下さい。
 次はニイガタシーエヌと結託して作戦を練り直しますから
 2次的機会を! そ、そんな事言わずにもう一度、毎度、
 チャンスをおおおおあおあおあお!!」















「残念だが、君はもう御退場だ」
「あなたはニイガタの!!??」

ドンッ

「が」



シズオカ司令官 ロスト



シズオカ司令官はトムに撃たれて絶命。
束の間にニイガタの精鋭達に侵入され、後始末された。

「これで全員だな、帰るぞ」
「サー」

トム分隊はシズオカ拠点を後にする。
周囲には彼だけではなく、護衛で配置に就いていたはずの人の個が
累々るいるいと横たわっていた。
上空にいたはずの巨大飛空艇もいつの間にか姿を消して、
音も出さずに誰1人後を追えずに丘陵場きゅうりょうじょうは静まってゆく。



――――――――――――――――――――――――――――――――――
中京工業地帯の力恐るべし、という事でこれにて中部編は終了します。
全地方編はなにがなんでも書き抜くつもりで頑張ります。
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