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1章 東北編
第10話 分裂
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これが紛うことなき現実、歪な出会いをはたしてしまう。
レイヴンブリッツのリーダーはアキラだった。
側には見慣れないスナイパーライフルが置かれている。
ロックとカレンは信じきれない顔をする間、
先陣をきってサーナが問いかける。
「アキラ・ルーズヴェルト!
元フクシマCNのあなたが総司令を!」
「フクシマCNだと!?」
「書き換えさせてもらった、アキタは各地から流れ者が集まる。
あいつの事だから、根っこまで探しに来るからな」
アキラもロックと同じ出身だったのだ。
攪乱させるために身元を偽装していたのか。
特に近くにいた副隊長のカレンすら気付かれていなかった。
「なんで・・・テロを?」
「単純な理由さ、東北の解放のためだ」
解放とは同盟の共生を終わらせるという意味。
何故、包囲されてまで起こしたのか緊張感が張り詰める中、
サーナは微動だにせず、アキラに銃口を向け続ける。
カチャッ
「動くなと言っている!」
「もうおせえよ」
アキラは片手を上げて指示する。
いつの間にか上空には青色に輝く物体が瞬時に停滞している。
戦闘機のようだが、気づかれない程静かで真上にとどまっていたのだ。
「これはあの色と同じ・・・戦闘機か?」
「全然音がしない・・・こんなの見た事ない」
「あの黒神山地で見つけたんだ。
整備には手間取ったが、うまく動いてくれたようだ。」
カレンの言うように、動力からの音がまったく聴こえない。
この色は明らかに黒神山地で採取した鉱石と同じもの。
アキラがあのとき森林で作業をサボって見つけていた物が
これだったとは。
「池の濃度が高まったのはこれのせいか」
「らしいな、背景に物質ごと溶け込む優れものさ。
隣接する分子も変化させるとは恐れ入るもんだ」
今思えば、アキラは事前に怪しげな動きをしていた。
黒神山地、四陸海岸のときなどあいつばかりが単独で
行動してた理由も納得できる。
が、RBがこんな独自で開発していたなんて想像できない。
サーナも攻撃を警戒して発砲できず、鉄道兵団達も異質そうな目で
様子をうかがうだけだ。
「ま、そういう事で役目は1つ終えた。
お別れの時間だ、もう行かせてもらうぜ」
「させるか!」
俺はアキラへ果敢に突っこんでいく。
奴は素早く足払いをして、俺の足を崩した。
バシッ ドサッ
「畜生ッ!」
「俺は軍事訓練と実戦を十分に経験している。
お前はろくに荒削りな実戦しかしてこなかったろ?
それが俺との差だ――」
「あたしを忘れてるの?」
カレンが横から殴りかかる。
そこも読んでいたのかアキラは彼女の腕を捻り地に倒す。
ロックはアキラに一活する。
「お前にとって、アキタの経験はテロをかつぐためだったのか?
母ちゃん司令に世話になったのも嘘だったのかよ!?」
アキラは一瞬目を瞑って、すぐに開き語る。
「ああ、ウソだよ」
「・・・・・・」
まさに開き直りといえる発言だ。
先からアキラの言葉を黙って聞いていた者が堪りかねて行動に出た。
ズドン
サーナがアキラの足元に向かって発砲する。
しかし、飛び上がって身体が空中を停止。
青い戦闘機の中に上がり込んでしまう。
「えっ!?」
「あいつが・・・浮いてる?」
「遅かったか・・・」
明らかに東北製ではなく、今代の文明を感じない仕様に
戦略性の桁と格が異なるのを思い知らされた。
注目の的にされている中から拡張機で発言する。
「お前にアキタを頼むと言ったのは本当だ。
俺は俺なりにやるべき事がある。
一度、東北から離れさせてもらうぜ」
「なんだと!?」
「待ちなさい!」
「逃がさんさ!!」
バシュッ バシュッ バシュッ
アキラが飛空艇に入った時であった。
トモキの発射したナンブのミサイルが青い戦闘機に向かう。
が、青白い火花が飛び散ってミサイルの軌道がねじ曲がって逸れてしまった。
「トモキ!?」
「我がだけじゃないさ」
「撃てええ!!」
ズガガガガ
「クリーズ司令官!?」
「当てられるかな?」
「応戦します!」
ポンッ ダダダダダダダダダダダダ
メイソンのパルスミノル、イザベルのEEEEも青銀の飛空艇へ弾丸を放つ。
イワテの軍勢も一斉に加勢して集中砲火する。
「お前ら、いつの間に・・・」
「イザベルちゃん、すごいの持ってるわね・・・」
他のメンバー達がこぞって応戦してくれている。
鉛弾は当たっているはずだが、水に貫通する様に抜けていき
ダメージを与える気配がない。
次第に青色の機体は透明へと変わり、地上の兵達を尻目に
アキラは一言告げて離れて行ってしまう。
「じゃあな、もう会うこともないだろう。
東北をしっかり守ってやってくれな!」
「戻ってこい、アキラあああああああああああ!!!」
喉奥から声を上げる。
結局、訴えは何一つ届かずに逃亡されてしまった。
総司令官を撃ったスナイパーライフルを残して。
周りの皆も落胆の色がでている。
後から到着したデイビッドとクリーズ司令も駆けつけて、
未知の機体と1人のアキタ兵を皮肉な見送りをしてしまう。
「無理だったか・・・」
「無事か?」
俺は最初から怪我などしていない。
ただ、再び接近戦で負けて仲間に逃げられてしまう。
“かつての”なんて言い方はしたくないが。
しがれた声で返事をした。
「俺は・・・大丈夫・・・大丈夫」
後に司令官から事情聴取を受け、その後はまた御偉方の施しを繰り返す。
これでもかというくらい人の入れ替わりが激く質問を受けて
メンバー達もてんやわんやだ。
そして辺りも次第に落ち着いてきた。
3日後 アキタCN拠点 ロビー
「ロック、お客さんだよ!」
「またかよ!?」
それから、ほんの少し日が進んで昼食がてら相手が来る。
まさか、また鉄道兵団かと思ったが、1人しかいない。
玄関を見るとあの職人がやってきていた。
「遅くなって悪いな、できたぞ」
ゲンは注文したガントレットを俺に差し出した。
青光りした光沢はそこらにはない素材。
いや、アキラが乗っていた物によって変えられた地元の産物は
東北から新たに生み出された。
「これが、俺の・・・」
「サイズは一度観てっから間違いねえはずだ。
こだわりの逸品、自慢の武器じゃああ」
「あたしが使ってるスナイパーライフルと同じ色。
いや、あいつが使っていた・・・かな」
あいつと同じ色のガントレット、複雑な感情がよぎる。
もしかしたら、“頼んだ”という意味はこれも含めての事だったのか?
手に持った感じはとても軽く、今までのより扱いやすい。
(まったく、とんだ置き土産をよこしたもんだな)
これがあればあいつを止められたかもしれなかった。
だが、もうそんな小さい事に構ってはいられない。
俺にはもっと重要な責務ができたんだから。
「あいつからよろしく頼むって言われたくらいだしね。
新隊長さん♪」
「兵器の監修もお願いしますさ」
「異例の出世だな、頼むぞ!」
「あんたに先越されちゃったわね、ふふふ」
「みんなのために無理せずやりなさいよ。
あの子が成さなかったことをね」
俺は隊長に任命された。
本当なら序列でカレンがやるはずだったが、
RBとの交戦で決まり、一方的に譲られた。
ただの因縁でやらざるをえないだけなのに、口に出さなかっただけで
功績としてみなされていた。
皆からエールを送ってもらっている。
一組織の責任もそんなに軽いわけじゃない。
それでもやるべき事はもう決まっている。
あいつをここに取り戻すこと。
ゲン爺さんの期待にも応えること。
そして、俺を逃がしてくれた隊長のためにも。
俺は真正面に向かってハッキリと発言する。
「俺はアキタCN第2隊長、ロック・バーナーズだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて東北編は一度終わりです。
様々な地方を描くのは大変ですが、どんどん書いていこうと思います。
では他方編に移ります。
レイヴンブリッツのリーダーはアキラだった。
側には見慣れないスナイパーライフルが置かれている。
ロックとカレンは信じきれない顔をする間、
先陣をきってサーナが問いかける。
「アキラ・ルーズヴェルト!
元フクシマCNのあなたが総司令を!」
「フクシマCNだと!?」
「書き換えさせてもらった、アキタは各地から流れ者が集まる。
あいつの事だから、根っこまで探しに来るからな」
アキラもロックと同じ出身だったのだ。
攪乱させるために身元を偽装していたのか。
特に近くにいた副隊長のカレンすら気付かれていなかった。
「なんで・・・テロを?」
「単純な理由さ、東北の解放のためだ」
解放とは同盟の共生を終わらせるという意味。
何故、包囲されてまで起こしたのか緊張感が張り詰める中、
サーナは微動だにせず、アキラに銃口を向け続ける。
カチャッ
「動くなと言っている!」
「もうおせえよ」
アキラは片手を上げて指示する。
いつの間にか上空には青色に輝く物体が瞬時に停滞している。
戦闘機のようだが、気づかれない程静かで真上にとどまっていたのだ。
「これはあの色と同じ・・・戦闘機か?」
「全然音がしない・・・こんなの見た事ない」
「あの黒神山地で見つけたんだ。
整備には手間取ったが、うまく動いてくれたようだ。」
カレンの言うように、動力からの音がまったく聴こえない。
この色は明らかに黒神山地で採取した鉱石と同じもの。
アキラがあのとき森林で作業をサボって見つけていた物が
これだったとは。
「池の濃度が高まったのはこれのせいか」
「らしいな、背景に物質ごと溶け込む優れものさ。
隣接する分子も変化させるとは恐れ入るもんだ」
今思えば、アキラは事前に怪しげな動きをしていた。
黒神山地、四陸海岸のときなどあいつばかりが単独で
行動してた理由も納得できる。
が、RBがこんな独自で開発していたなんて想像できない。
サーナも攻撃を警戒して発砲できず、鉄道兵団達も異質そうな目で
様子をうかがうだけだ。
「ま、そういう事で役目は1つ終えた。
お別れの時間だ、もう行かせてもらうぜ」
「させるか!」
俺はアキラへ果敢に突っこんでいく。
奴は素早く足払いをして、俺の足を崩した。
バシッ ドサッ
「畜生ッ!」
「俺は軍事訓練と実戦を十分に経験している。
お前はろくに荒削りな実戦しかしてこなかったろ?
それが俺との差だ――」
「あたしを忘れてるの?」
カレンが横から殴りかかる。
そこも読んでいたのかアキラは彼女の腕を捻り地に倒す。
ロックはアキラに一活する。
「お前にとって、アキタの経験はテロをかつぐためだったのか?
母ちゃん司令に世話になったのも嘘だったのかよ!?」
アキラは一瞬目を瞑って、すぐに開き語る。
「ああ、ウソだよ」
「・・・・・・」
まさに開き直りといえる発言だ。
先からアキラの言葉を黙って聞いていた者が堪りかねて行動に出た。
ズドン
サーナがアキラの足元に向かって発砲する。
しかし、飛び上がって身体が空中を停止。
青い戦闘機の中に上がり込んでしまう。
「えっ!?」
「あいつが・・・浮いてる?」
「遅かったか・・・」
明らかに東北製ではなく、今代の文明を感じない仕様に
戦略性の桁と格が異なるのを思い知らされた。
注目の的にされている中から拡張機で発言する。
「お前にアキタを頼むと言ったのは本当だ。
俺は俺なりにやるべき事がある。
一度、東北から離れさせてもらうぜ」
「なんだと!?」
「待ちなさい!」
「逃がさんさ!!」
バシュッ バシュッ バシュッ
アキラが飛空艇に入った時であった。
トモキの発射したナンブのミサイルが青い戦闘機に向かう。
が、青白い火花が飛び散ってミサイルの軌道がねじ曲がって逸れてしまった。
「トモキ!?」
「我がだけじゃないさ」
「撃てええ!!」
ズガガガガ
「クリーズ司令官!?」
「当てられるかな?」
「応戦します!」
ポンッ ダダダダダダダダダダダダ
メイソンのパルスミノル、イザベルのEEEEも青銀の飛空艇へ弾丸を放つ。
イワテの軍勢も一斉に加勢して集中砲火する。
「お前ら、いつの間に・・・」
「イザベルちゃん、すごいの持ってるわね・・・」
他のメンバー達がこぞって応戦してくれている。
鉛弾は当たっているはずだが、水に貫通する様に抜けていき
ダメージを与える気配がない。
次第に青色の機体は透明へと変わり、地上の兵達を尻目に
アキラは一言告げて離れて行ってしまう。
「じゃあな、もう会うこともないだろう。
東北をしっかり守ってやってくれな!」
「戻ってこい、アキラあああああああああああ!!!」
喉奥から声を上げる。
結局、訴えは何一つ届かずに逃亡されてしまった。
総司令官を撃ったスナイパーライフルを残して。
周りの皆も落胆の色がでている。
後から到着したデイビッドとクリーズ司令も駆けつけて、
未知の機体と1人のアキタ兵を皮肉な見送りをしてしまう。
「無理だったか・・・」
「無事か?」
俺は最初から怪我などしていない。
ただ、再び接近戦で負けて仲間に逃げられてしまう。
“かつての”なんて言い方はしたくないが。
しがれた声で返事をした。
「俺は・・・大丈夫・・・大丈夫」
後に司令官から事情聴取を受け、その後はまた御偉方の施しを繰り返す。
これでもかというくらい人の入れ替わりが激く質問を受けて
メンバー達もてんやわんやだ。
そして辺りも次第に落ち着いてきた。
3日後 アキタCN拠点 ロビー
「ロック、お客さんだよ!」
「またかよ!?」
それから、ほんの少し日が進んで昼食がてら相手が来る。
まさか、また鉄道兵団かと思ったが、1人しかいない。
玄関を見るとあの職人がやってきていた。
「遅くなって悪いな、できたぞ」
ゲンは注文したガントレットを俺に差し出した。
青光りした光沢はそこらにはない素材。
いや、アキラが乗っていた物によって変えられた地元の産物は
東北から新たに生み出された。
「これが、俺の・・・」
「サイズは一度観てっから間違いねえはずだ。
こだわりの逸品、自慢の武器じゃああ」
「あたしが使ってるスナイパーライフルと同じ色。
いや、あいつが使っていた・・・かな」
あいつと同じ色のガントレット、複雑な感情がよぎる。
もしかしたら、“頼んだ”という意味はこれも含めての事だったのか?
手に持った感じはとても軽く、今までのより扱いやすい。
(まったく、とんだ置き土産をよこしたもんだな)
これがあればあいつを止められたかもしれなかった。
だが、もうそんな小さい事に構ってはいられない。
俺にはもっと重要な責務ができたんだから。
「あいつからよろしく頼むって言われたくらいだしね。
新隊長さん♪」
「兵器の監修もお願いしますさ」
「異例の出世だな、頼むぞ!」
「あんたに先越されちゃったわね、ふふふ」
「みんなのために無理せずやりなさいよ。
あの子が成さなかったことをね」
俺は隊長に任命された。
本当なら序列でカレンがやるはずだったが、
RBとの交戦で決まり、一方的に譲られた。
ただの因縁でやらざるをえないだけなのに、口に出さなかっただけで
功績としてみなされていた。
皆からエールを送ってもらっている。
一組織の責任もそんなに軽いわけじゃない。
それでもやるべき事はもう決まっている。
あいつをここに取り戻すこと。
ゲン爺さんの期待にも応えること。
そして、俺を逃がしてくれた隊長のためにも。
俺は真正面に向かってハッキリと発言する。
「俺はアキタCN第2隊長、ロック・バーナーズだ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて東北編は一度終わりです。
様々な地方を描くのは大変ですが、どんどん書いていこうと思います。
では他方編に移ります。
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