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1章 ホッカイドウ編

第1話  白き偵察兵

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ブシュッ  ズポオオオォォォン

「ンニャオオォォウッ!?」

「ヒット」
「1秒以内でヘッドショットか、さすがだな!」

 ホッカイドウCN内にある朝張山地の頂上付近から
数人のスナイパー達が岩場の隙間から狙撃をしている。
まるで競い合うかのように配置を頻繫ひんぱんに変更し、雪の保護色と
同じ軍服を身に錯覚させながら上手に立ち回っていた。

「「お嬢、エイムされてるぞ!」」
「大丈夫」

まだ、1500m先の森林地帯に残党がいる。
男メンバーに警告されても動じず。
私はサッと窪地くぼちに身を隠し、赤外線センサーで敵の位置を把握はあく
木々の後ろから一向に出てくる気配がない、時間を無駄にしたくなく
3秒後に敵の影を木ごと無駄なブレもなくエイムする、そして。

ブシュッ  ズポオオォォォン

「ウア゛ウオン!?」

狙撃した、見事な早業はやわざであるとメンバーの男がめる。
ここは時々、南から資源を漁りにやってくるので、
常に打ち下ろしポジションから撃退させるのが主だ。
同僚達もエリザベートにエールを送った。

「ナイスサポートだ、助かったぜ」
「クリア、敵殲滅」


ホッカイドウCN拠点 作戦室

 200人はいるであろうスナイパー兵士が集まっている。
まだ着替えもせず、真っ白い兵装のまま画面に注目。
今日のラボリの成績発表をしているようだ。
隊長がモニターの横に立ち、参加者の討伐数を表示。

「今月の討伐優秀者上位10名を発表する」

――――――――――――――――――――――――――――――――――
   1位  エリザベート  19キル
   2位  ヨハン     14キル
   3位  ヘルマン    13キル
   4位  マクシム    10キル
   5位  フェリックス   9キル
   6位  ミロン      8キル
   7位  イーゴル     7キル
   8位  ムスティスラフ  5キル
   9位  ニコライ     3キル
  10位  イヴァン     2キル
――――――――――――――――――――――――――――――――――

一同「う、うーん」

メンバー達はまたかという顔をしている。
隊員の中で唯一の女性であるエリザベートだけ圧倒的なキル数で
ゴツい男ばかりの中で高々たる結果を表示されていた。
続けて隊長が発言する。

「我々ホッカイドウは上陸を許さないよう狙撃を第一としている。
 遠距離陣形は性別関係なく鋭気と感覚を重要視するのが先決だ。
 女でもこれだけの働きぶりを見せている。
 お前達も精進するように、解散!」

供述通りに、ここは島国で他のCNと連携する事なくしのいできた。
ヘルマンとフェリックスが小言を放って約束事のように場を済ませる。

「さすがは隊長の娘だけあって優秀だな」
「ガブリエル隊長の前であんまり言うなよ。
 贔屓ひいきされてると思われちまう」

会議も終わり、椅子から立ち上がって自室に戻ろうとする。
男性兵士達の間を邪魔されずにすり抜けていく。
私はエリザベート・ラヴレーンチェヴァ。
ホッカイドウCNに所属する偵察兵を担当している。
とはいえ、文字通りの待ち伏せだけで従軍するのが主。
ほとんど侵攻を行わずに防衛役として孤島を回り続けて
先の通り、淡々とラボリをこなす毎日が続いていた。

今日の任務は終わり、無音で指令室から立ち去ろうとすると、
司令官のレイチェルから呼び止められた。

「お疲れ様、エリザさん。
 皆で夕食にするので、あなたもご一緒にどうぞ」
「いえ、私は一人で済ますので・・・」
「今日は美味しい物を用意しました。
 ガブリエル隊長が一緒にという事なので」
「そうですか・・・分かりました」

会議室で食事すると言われる。
隊長という言葉で私の気は留められた。
自分は大勢との付き合いが苦手だったが、隊長である父親の言い分には
従わざるをえなかった。命令としてではないが、家族的従属感で
動いているような状態かもしれない。
本人がやってきて話しかける。

「今日は良いサーモンを仕入れてくれたんだ。
 栄養をしっかりつける事も大事だぞ」
「・・・はい」

多くのメンバー達でサーモンの煮込み鍋会だ。
司令が特別に仕入れてきたらしく、今日のために調理してくれた。
漁業は司令官権限で活動しているから当然だが。
鮮やかな深紅色をしたスープで体が温まり、確実な美味びみさがある。
食器の音が目立つくらい聴こえて皆も美味おいしそうに食べている内で、
部隊のメンバー達が天気について語った。

「また最近、天候が悪化しそうですね」
「1000cm超えもまたありえるそうだ。
 浮遊ビークルでも視界が悪く、コントロールが危険だ」
「敵性CNも、それを理解しているようで、
 吹雪ブリザードが激しいときはほとんど侵攻してきません」
「天候を味方につけるのは良策ですよね。
 俺達はそのわずかなスキを見つけて戦うんで」

すでに冬の季節にさしかかっていた。
ここホッカイドウには多くの山岳地帯が存在して、
戦闘は主に頂上付近で狙撃して待ち伏せするのが主。
チームは偵察、衛生兵のみで全隊員5000人はいる部隊だが、
クラスがありA~Dクラスの階級に分けられている。
私はその中の最高位であるAクラスに所属している者で、
太く低い声ばかり交ざる中、女性は私1人しかいない。
発言したわけではないけど、近くにいたメンバーが似た意味を発した。

「俺たちゃ、少数精鋭中の精鋭だ!
 伊達に200人チームに選ばれてないぜ」
「「ちょっと、司令の前でそんな事言わないでっての」」
「いてぇよ!」

小柄のミロンが小声で注意して、フェリックスの尻をつねる。
にぎやかな雰囲気の中で自分のつつましい食事もほぼ終了し、
一段落したところでガブリエルが大きな声で指令をだした。

「という訳で、明日は休暇とする。
 それまでにしっかりと休養して鋭気を養うように。解散!」
プラーズドニックごちそうさまでした!」

料理は確かに美味しかった。
ホッカイドウの広域で作られる他の食事も大きな糧。
ただ、自分だけ黙々と食べ続けても周りが周りだけに、
雰囲気が合わないのでそそくさと部屋に戻ろうとしたら、
今度はガブリエルから呼び止められた。

「明日はまた練習だぞ、今日はもう休むんだ」
「分かりました」

父親の言う練習とは狙撃訓練の事だ。
休日といえども、私だけは練習をおこたる事を許されない。
“1日休んだら3日分なまる” これが父のモットーだから。
良い意味でいえば特別扱いだ。日頃の感謝の気持ちを届けるべく
私は父になにかプレゼントの1つでもあげようかと思った。
メンバー達に贔屓ひいきされるのも悪いので、あまり目につかないように
ガブリエルに持参していた白いハンカチをわたした。

「ん、これをくれるのか?」
「はい、受け取って下さい」
「すまないな、是非使わせてもらおう」

包み物もなく、手渡し。
軍事行動以外は不器用なので、装飾も考えられないから
こうするしかなく、顔も見ずに恥ずかしくも差し出すのみ。
一応、父は受け入れてくれたので落着。
それから自分は寝る前に風呂に入った。
拠点は設備がとても整っている、特に高クラスは良い場所だ。
防寒設備がしっかりしていて、風呂場も露天風呂などの名湯とされる
所も各所に存在している。
確かに今の待遇は良いのだが、何かしら物足りなさを最近感じている。
理由は分からない、何気に懐から隙間が抜けないだけだ。

「「・・・明日もまた雪が積もる」」



――――――――――――――――――――――――――――――――――
ホッカイドウ編を書きます!
今回は女主人公で1CNのみのお話しですが、
東北編と別枠で作りました。
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