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1章 九州編
第4話 犬も歩けば謀に当たる
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フクオカCN拠点 ロビー
「あの敵兵が昏睡状態になったって!?」
「そうよ、ろくに口も聞けないんだって。
救出されてからグッスリと寝てしまったって」
マサキおよびミキ分隊はフクオカ拠点に帰還して、先の交戦報告を
まとめて味方モブ兵が多く行きかう間で一時の休息をする。
戦果はこれといった進展もなく、誰も得をしないまま数時間で終えた。
エイミーも無事に再合流+司令の呼び出しで隊に戻っていった。
助けた敵兵もロストしないまま医務室に運ばれた後、
安心したのか意識がなくなって眠りについてしまったらしい。
情報を聞き出そうと待っていたが機会もなさそうで、
またふりだし状態へ戻されてゆく。
「で、結局技術者の痕跡はなかったわけか。
とても人攫いに来たやり口にも思えなさすぎるけど」
「原因はやけっぱちの発破みたい。
今回攻めてきた相手がアブダクトしたとは限らないし。
そう簡単に見つからないわね」
中つ国兵は単に被害者意識で攻めてきただけ。
こちらの被害状況が隣国の仕業だという証拠も根拠もなく、
敵性からどうヒントを得ようと考えても何も分からなかった。
まるで空をつかむような話。
元から仕掛け人も連れていかれた先も分かりようがないので、
自分達は上から言われるだけで決まり順に動くしかない。
ミキが次の任務の指示を司令部から聞き出そうとした時、
外の広場で大きな声が上がってきた。
「なんだコリャ、新型か!?」
「乗り物みたいだな」
「ん、何だ?」
フクオカ兵がこぞって何かを観ている。
奇妙な物が見えて僕達も気になって外に出て集まりの方へ行ってみると、
固定されて置かれている物体を目にする。何かボードの様な形をした物だ。
オキナワ兵も数人いてヒサシが見張りをしていた。
「ヒサシさん、それは?」
「マサキか、すごく良い乗り物を持ってきた。
これはエリアルボードといって、平地で手早く移動できる物だ」
「ええっ、これオキナワで造ったんですか!?」
「いや、中つ国の発動機を基に改造して造ったって。
コウシ先生が試作品の1つを持ってきたんだ」
「これって、海で乗るサーフィンボード・・・じゃないよね?」
「す、すごい。浮いてる・・・」
突然、彼らが持ってきた乗り物に見物人が湧き立つ。
話によれば、数年前の抗争で拝借した中つ国発動機を研究して
疑似的ビークルをどうにか試作したらしい。
見た目では波乗りの物に似ていて駆動音がとても静かで、
排気ガスなどは一切噴出せずに地上から30cmくらい浮いている。
浮遊原理がまったく分からないリフトであった。
「今度から僕らもこれを使わせてくれるの!?」
「ああ、これを司令官達に許可してくれれば、九州も変われる。
一気に行動が速く、海岸沿いの平地が有利に運べるから。
地元のサーファー達も喜ぶだろうな!」
「私、これ乗りこなせるかな・・・」
「見た感じ、1人乗るだけでいっぱいだ。
犬兵も一緒に乗れるくらい大きいサイズがあればな」
「話だと100kgまでなら耐えられるとかなんとか。
さらにボードを連結すれば十分乗れるかもな。
先生がいずれ造るだろう、楽しみにしておくんだ」
一同は喜々して新たなビークルを見つめている。
失った人材に対して、文明の利器がいきなり目前に登場。
当然ながら、周囲に注目の的を浴びる。
東側は宙に物体を浮かせるのを得意とする噂は聞いていた。
技術の違い、差が戦争で発達するのが皮肉だ。
元からこの形状なのか、先生が造り変えたのかはともかく、
男心をとてもくすぐるくらいな物珍しさに観ていると。
ピクッ
異なる生物は違うリアクションをとっている物がいる。
オルンはそのボードをジーッと見た瞬間、威嚇の態勢で吠えだした。
「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!」
「オルン!?」
「どうしたんだ!?」
突然ボードから離れて警戒している。
凄まじく拒否反応を起こしたようだ。
鳴き声に気付いた周囲も注目し始めて、このままだと収集付かなくなる。
前のめりになるこの子を抑え後ろに下がらせた。
「ウウウウウウウウウウ」
「ウェイト、ストップ、ストップッ!」
「な、なんだってんだ?」
「気に入らない匂いでもしたのか?
そういえば、トルエンを含ませたから臭かったか」
「何か塗ったの?」
「見栄え良くしようと、光沢でるよう磨いた。
とりあえず移動させよう、それじゃあな」
ヒサシは抱えて拠点内に入っていく。
オルンはまたいつものようにおとなしくなる。
中つ国から拝借した機器だったのは意外だが、便利になるなら好都合。
ちょっとしたトラブルが起きたたもの、次の役割を待っていた直後に
クマモトCNの司令官から連絡が入った。
「「ミキちゃん、今どこにいるの?」」
「リョウコ司令、フクオカCNにいます。
ラボリ発行ですか? すぐに戻ります」
「「いや、そのままオオイタCNに向かって。
調査継続してほしい事があって、また技術者が行方不明よ!」」
「なんですって!?」
オオイタCN拠点
「一体何があったんだ!?」
「ほんの数秒間、目を離した隙にいなくなってたんです。
ゴーグルレンズに傷が付いて修理を依頼した直後に姿がなくなって、
まったく外に出た形跡もなくて・・・」
「どうなっているんだ・・・」
オオイタ偵察兵の供述にオオイタ司令官は頭を抱えていた。
また工作兵の技術者が見えなくなったと言う。
外出申請も出していなかったはずの者が一室から姿を消したようだ。
まるで神隠しに会ったかの様な技術者の失踪がここでも起きる。
得体の知れない状況に誰もが不安に怯えている中、犬兵団が到着した。
「ただいま到着しました! 状況はどうですか?」
「見当がつかない、突然姿を消したんだからな」
「イキナリ姿を消したんですか!?」
「ほんの用足しで行ったらもういないんだ。もうなにがなんだか・・・」
オオイタ関係者でも何も理解できない場に陥っている。
この状況では探しようがなく、困り果てた一同であったが
オルンは何かを感づいたかの様に鼻をクンクンさせて歩き周り始めた。
「クンクンクン」
「反応ありそうか?」
「・・・・・・」
廊下を経た先の研究室の中に入ろうとする。
司令がヒントを察知したのではと許可してドアを開けると、
側にあったトイレの手前でピタっと止まってしまった。
「トイレに何かあるのか?」
「私が開けよう・・・」
技術者が入っただろう、ここの中で反応を示したようだ。
司令はそうっとトイレのドアを開けてみた。
しかし、中には誰もいなかった。
便器とチリ紙があるだけで人はいない。
すぐ前まで使われていた感じもあって、肝心の使用者だけ消えている。
オルンは吠えることもせず、ただ見つめているだけだ。
「クリアだ・・・いない」
「「本当に神隠しは存在するのか・・・」」
「ひひぃ~ん」
「「馬鹿な・・・」」
「・・・・・・」
ミキは隊長格として沈黙したまま見渡すが、変化なし。
ここトイレの室内で消えたとでもいうのか。
換気扇のみで小窓はなく、人が移動する隙間の微塵もない。
トリックの域を超えた現象。
悠長にこの状況を黙って見ているわけにはいかなかった。
オオイタ司令官は打開策をとるためにメンバー達に報告する。
事態を重くみたイイダ司令が全ての司令官達を招集させた。
「九州全CNで緊急会議を行う!
これ以上、亡霊の策に嵌るわけにはいかん。
各々、司令官の警護を務めてくれ!
「了解!」
「あの敵兵が昏睡状態になったって!?」
「そうよ、ろくに口も聞けないんだって。
救出されてからグッスリと寝てしまったって」
マサキおよびミキ分隊はフクオカ拠点に帰還して、先の交戦報告を
まとめて味方モブ兵が多く行きかう間で一時の休息をする。
戦果はこれといった進展もなく、誰も得をしないまま数時間で終えた。
エイミーも無事に再合流+司令の呼び出しで隊に戻っていった。
助けた敵兵もロストしないまま医務室に運ばれた後、
安心したのか意識がなくなって眠りについてしまったらしい。
情報を聞き出そうと待っていたが機会もなさそうで、
またふりだし状態へ戻されてゆく。
「で、結局技術者の痕跡はなかったわけか。
とても人攫いに来たやり口にも思えなさすぎるけど」
「原因はやけっぱちの発破みたい。
今回攻めてきた相手がアブダクトしたとは限らないし。
そう簡単に見つからないわね」
中つ国兵は単に被害者意識で攻めてきただけ。
こちらの被害状況が隣国の仕業だという証拠も根拠もなく、
敵性からどうヒントを得ようと考えても何も分からなかった。
まるで空をつかむような話。
元から仕掛け人も連れていかれた先も分かりようがないので、
自分達は上から言われるだけで決まり順に動くしかない。
ミキが次の任務の指示を司令部から聞き出そうとした時、
外の広場で大きな声が上がってきた。
「なんだコリャ、新型か!?」
「乗り物みたいだな」
「ん、何だ?」
フクオカ兵がこぞって何かを観ている。
奇妙な物が見えて僕達も気になって外に出て集まりの方へ行ってみると、
固定されて置かれている物体を目にする。何かボードの様な形をした物だ。
オキナワ兵も数人いてヒサシが見張りをしていた。
「ヒサシさん、それは?」
「マサキか、すごく良い乗り物を持ってきた。
これはエリアルボードといって、平地で手早く移動できる物だ」
「ええっ、これオキナワで造ったんですか!?」
「いや、中つ国の発動機を基に改造して造ったって。
コウシ先生が試作品の1つを持ってきたんだ」
「これって、海で乗るサーフィンボード・・・じゃないよね?」
「す、すごい。浮いてる・・・」
突然、彼らが持ってきた乗り物に見物人が湧き立つ。
話によれば、数年前の抗争で拝借した中つ国発動機を研究して
疑似的ビークルをどうにか試作したらしい。
見た目では波乗りの物に似ていて駆動音がとても静かで、
排気ガスなどは一切噴出せずに地上から30cmくらい浮いている。
浮遊原理がまったく分からないリフトであった。
「今度から僕らもこれを使わせてくれるの!?」
「ああ、これを司令官達に許可してくれれば、九州も変われる。
一気に行動が速く、海岸沿いの平地が有利に運べるから。
地元のサーファー達も喜ぶだろうな!」
「私、これ乗りこなせるかな・・・」
「見た感じ、1人乗るだけでいっぱいだ。
犬兵も一緒に乗れるくらい大きいサイズがあればな」
「話だと100kgまでなら耐えられるとかなんとか。
さらにボードを連結すれば十分乗れるかもな。
先生がいずれ造るだろう、楽しみにしておくんだ」
一同は喜々して新たなビークルを見つめている。
失った人材に対して、文明の利器がいきなり目前に登場。
当然ながら、周囲に注目の的を浴びる。
東側は宙に物体を浮かせるのを得意とする噂は聞いていた。
技術の違い、差が戦争で発達するのが皮肉だ。
元からこの形状なのか、先生が造り変えたのかはともかく、
男心をとてもくすぐるくらいな物珍しさに観ていると。
ピクッ
異なる生物は違うリアクションをとっている物がいる。
オルンはそのボードをジーッと見た瞬間、威嚇の態勢で吠えだした。
「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!」
「オルン!?」
「どうしたんだ!?」
突然ボードから離れて警戒している。
凄まじく拒否反応を起こしたようだ。
鳴き声に気付いた周囲も注目し始めて、このままだと収集付かなくなる。
前のめりになるこの子を抑え後ろに下がらせた。
「ウウウウウウウウウウ」
「ウェイト、ストップ、ストップッ!」
「な、なんだってんだ?」
「気に入らない匂いでもしたのか?
そういえば、トルエンを含ませたから臭かったか」
「何か塗ったの?」
「見栄え良くしようと、光沢でるよう磨いた。
とりあえず移動させよう、それじゃあな」
ヒサシは抱えて拠点内に入っていく。
オルンはまたいつものようにおとなしくなる。
中つ国から拝借した機器だったのは意外だが、便利になるなら好都合。
ちょっとしたトラブルが起きたたもの、次の役割を待っていた直後に
クマモトCNの司令官から連絡が入った。
「「ミキちゃん、今どこにいるの?」」
「リョウコ司令、フクオカCNにいます。
ラボリ発行ですか? すぐに戻ります」
「「いや、そのままオオイタCNに向かって。
調査継続してほしい事があって、また技術者が行方不明よ!」」
「なんですって!?」
オオイタCN拠点
「一体何があったんだ!?」
「ほんの数秒間、目を離した隙にいなくなってたんです。
ゴーグルレンズに傷が付いて修理を依頼した直後に姿がなくなって、
まったく外に出た形跡もなくて・・・」
「どうなっているんだ・・・」
オオイタ偵察兵の供述にオオイタ司令官は頭を抱えていた。
また工作兵の技術者が見えなくなったと言う。
外出申請も出していなかったはずの者が一室から姿を消したようだ。
まるで神隠しに会ったかの様な技術者の失踪がここでも起きる。
得体の知れない状況に誰もが不安に怯えている中、犬兵団が到着した。
「ただいま到着しました! 状況はどうですか?」
「見当がつかない、突然姿を消したんだからな」
「イキナリ姿を消したんですか!?」
「ほんの用足しで行ったらもういないんだ。もうなにがなんだか・・・」
オオイタ関係者でも何も理解できない場に陥っている。
この状況では探しようがなく、困り果てた一同であったが
オルンは何かを感づいたかの様に鼻をクンクンさせて歩き周り始めた。
「クンクンクン」
「反応ありそうか?」
「・・・・・・」
廊下を経た先の研究室の中に入ろうとする。
司令がヒントを察知したのではと許可してドアを開けると、
側にあったトイレの手前でピタっと止まってしまった。
「トイレに何かあるのか?」
「私が開けよう・・・」
技術者が入っただろう、ここの中で反応を示したようだ。
司令はそうっとトイレのドアを開けてみた。
しかし、中には誰もいなかった。
便器とチリ紙があるだけで人はいない。
すぐ前まで使われていた感じもあって、肝心の使用者だけ消えている。
オルンは吠えることもせず、ただ見つめているだけだ。
「クリアだ・・・いない」
「「本当に神隠しは存在するのか・・・」」
「ひひぃ~ん」
「「馬鹿な・・・」」
「・・・・・・」
ミキは隊長格として沈黙したまま見渡すが、変化なし。
ここトイレの室内で消えたとでもいうのか。
換気扇のみで小窓はなく、人が移動する隙間の微塵もない。
トリックの域を超えた現象。
悠長にこの状況を黙って見ているわけにはいかなかった。
オオイタ司令官は打開策をとるためにメンバー達に報告する。
事態を重くみたイイダ司令が全ての司令官達を招集させた。
「九州全CNで緊急会議を行う!
これ以上、亡霊の策に嵌るわけにはいかん。
各々、司令官の警護を務めてくれ!
「了解!」
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