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1章 関東編
第5話 外灯の宝石
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17:00 チバCN内 道中
ある夕暮れの時、レッドはクリフとトオル、その他モブ達と
拠点から離れた駐屯地へと向かう。
大型ビークルにライオットギアを1機乗せて走っていた。
ここ最近、海側に不穏な動きがあると偵察兵の連絡を受け、
敵影を察知して、念の為に亀川エリアへ1機配置するという。
数人が車の上に乗りながら運搬を見守っている間、
景色を眺めていると木造の凸凹が目に入る。
「住宅っぽい所だな?」
「元々、そこそこ人が住んでたエリアだったんだろ。
数十年前に改築して、駐屯地に変えたんだと」
「海側にも居住区があるのか」
「ここ周辺はチバの盆地の中では割と高めの場所ですが、
当然、海から侵入される時もあります。
見渡しの良いエリアにも設けた方が良いらしくて、建造されたんですよ」
チバ南部は森林ばかりだが、波打ち際が見える海沿いにも
かつて人達が利用していた区域がある。
海手前の道路からすぐ内側は山になる場所が多く、
森に入られれば発見が困難になるので、夜間対策として
ここに来る途中の路地に並んだライトがよく点在している理由だ。
駐屯地から少し離れた距離にも設置するこまめさが分かる。
亀川エリア駐屯地
「隊長、待ってたよ」
「アルフィー、異常はなかったか?」
「特になし、百里エリアも敵性反応は無しとの事。
いつも聴こえるさざ波だけで静かなくらいさ」
一同は到着して22700㎡ある駐屯地の中に入った。
中ではアルフィーと他味方モブ達がすでにいて、
視界がこれでもかというくらいに明るい場所だ。
「ずいぶん明かりが多いな。
見やすいけど、逆に敵に見つかりやすいんじゃないか?」
「その逆の役割もあるんだ。
敵兵は“明るい場所へ移動しない”から、ライト設置の外周を狙ってくる」
「だから、暗いエリアに目をつけて警戒する。
囮用の意味を含めての基地らしいぜ、司令がそう言ってた」
「そうか」
話だと、ここ数週間の間で海産資源を横領しに来る者達がいたらしい。
つまり、今回運んできたのは外回りする為のライオットギア。
どんな敵が来るか分からない内で人型の機体を1機運んだ訳がそうだ。
この地域の特徴を考えての案に納得する。
クリフは乗せていた物を起動させる指示をだした。
しかし、関係者達がなにやら騒然としてそこに集まっている。
トオルが何か異常を言った。
「どうした?」
「機体が動きません! 操縦不能となっています」
「なんだって!?」
一緒に運んできたライオットギアが動かなくなっていた。
トオルと工作兵、技術班がカバーを開いて原因を検証すると。
「装甲、筋繊維、伝達経路に異常はありません」
「ですが、動力部に1つ異常が見つかりました。
キャパシタ一部、ガイスラー管が割れています」
「さっきの運搬で壊れちまったか・・・」
「ガイスラー管?」
「ネオンという物質を閉じ込めておいた真空管です。
キャパシタという電子部品で、バッテリーから細かく機能を配分。
光通信で腕や肩に兵器の動力信号を伝えるためで、
照明器具にも使われているものですね」
「そんな事で簡単に動かなくなったりするのか・・・?」
「バッテリーが全ての動力源でこちらは異常がないようですが、
腕や脚などの経路の部分はなけなしの材料を使うしかないんです」
「しょうがねえだろ、ウチらの無線技術はそんな良いモンねえんだし。
人も含めた資源不足だわな」
心臓部から送られる導線や中継器のパーツも満足に整えられない現状。
バッテリーは中をこじ開けられない程堅く、
前にも聞いた通り、中身に詳しい技術者もろくにいない。
光という言葉で何かが気掛かりになる。
(照明器具・・・)
目を閉じて、ここまでたどり着いた道のりを思い出そうとする。
頭の中にかすかに残る光の群像がどこかしら思い浮かぶ。
光を照らす無数のライトの中に1つだけ奇妙な物がどこかで
混じっていた気がした。
出世の記憶を丸々失うくらいに忘れ症なこんな自分でも、
ここに来るまでにそんな光景をどこかで観たのを覚えていたからだ。
「なら青く光っているライトは何なんだ?」
「青く!?」
メンバー達は額を上向きにしながらこっちを見て反応する。
どこから青なんて色があったと返す。
「青いライトなんざ、あったか?」
「いや、俺は覚えてるぞ。
ここに来る前、確かに1つだけ青く光るライトがあった」
「ヒストペディアでは青い光の存在はあったようです。
ですが、ここチバにはそんな技術の記録が・・・」
「で、その青いライト見つけてどうすんだ?」
「なんて言うんだろうか、
何かしら異なる物質でキャパシタに入れさせたらどうなるのか。
シュミレーション実験というか、そんなものだ」
「は、はあ・・・」
メンバー達が自分の解釈を理解できずにため息をつく。
だけど、トオルだけはその言葉に興味をもったもよう。
「僕もそれを試してみたいです。
伝導技術はまだ分からないところばかりですし、
新素材を試すまたとないチャンスかもしれませんし」
「今回はそれだけを探すラボリじゃないしな。
まずは、周辺を調べてみようか」
「しょうがねえ、予定一部変更だ。
亀川エリア巡回(がてら)、及びその謎のライト捜索を開始する。
各自準備しろ!」
「了解」
こうして一同は亀川エリア周辺を散開する。
ビークルでここまで来た道のりを辿ればすぐに見つかるはず。
駐屯地だけあって夜でも比較的明るいので、移動にはそれほど苦難ではない。
だが、それでもライトの数が異様に多く思えるのは気になって仕方なかった。
チバ南部は山が多い、海側の暗さは何だか怖いと思うくらいで
光で安心感を保たせるのも分かる気がする。
駐屯地までやってきた道のりをたどって探そうとした時、
近くのライトから激しい破裂音がした。
ヒュンッ バリンッ バリンッ
「スナイパーだ!」
ライトが次々と壊されていく。
暗闇で奇襲をかけに来たのか、敵性の兵がこのタイミングで来たようだ。
クリフもすぐに察知してメンバー達に連絡を入れる。
「「南東から上陸してきたか、どこのCNかは不明だ。
表に出るな、建物周辺に隠れてろ」」
「このままだと、青いライトも破壊されてしまう」
「「まずは敵数を確認しないとならない。
リーダー、拾ってくれ!」」
「「おうよ!」」
クリフは銃声音を聴き分ける。
敵性総数を4人と判断。
発砲先は暗くて見づらいが、銃声音から人数を的確に言い当てた。
「「こんな少数で来たなんてよ。
駐屯地から700m離れたとこからだ。回り込んで進め!」」
「お前は耳が良いのか・・・」
「「俺をただのデカブツだと思わない事だな。
パンチ力と聴覚なら誰にも負けねえぜ」」
なんと、音の発生源を的確に当てられる素質をもっていた。
クリフはある程度の距離なら音の位置を特定し、おおまかな居場所を
探る能力をもっていた。
スナイパーライフルは1000m以上から狙撃できる銃だ。
主に広けたエリアで発揮する武器で脅威だが、
ここでは隠れられる場所が多いので、まだ防衛できる策がある。
(ああいう類の銃は本来、上から下へ撃ち下す方が当てやすい。
何故、あんな場所から撃ってくるのかは分からないが、
資源目当てなのは間違いない)
だから、資源を漁りにちょくちょく狙われていたのだ。
ライトが破壊されれば当然、一帯は暗くなる。
敵もその箇所をたどって移動してくるはずだ。
気づいていたクリフは足早に1人の敵兵に近づく。
「え!?」
バキッ
「うほぉあ!?」
クリフが後ろから近づき殴る。
ワンパンであっけなく気絶させて捕縛した。
応答がこないと気付いた敵兵が場所を変え始めようとする。
「1人やられたか、場所を特定された。囲まれる前にすぐ移動するぞ!」
「させないよ!」
ビリビリビリ
「おぼろぱろばろびぇ!?」
トオルがスタンガンを放ち、痺れさせて気絶させる。
残る残党が異変に気付き、逃走を図りだそうとした。
「まずい・・・早くここから撤退しないと、ア″ッ!?」
その敵兵の上半身がクルッっとひっくり返る。
自分は待ち伏せして横から腕を引っ張り、足をすくい上げた。
ドスン
「チクショー!」
残るは後1人だけだ。
予測通り、相手はライトアップされない外周の暗闇にいる。
アルフィーはすでに後ろから近付いて台詞を吐きながら引き金をひいた。
「お休み、よく眠ってくれ。
目が覚めたときには、すでに営倉だがな」
バシュッ
「あううううぅぅん」
撃ち放ったのは麻酔銃だ。
頭部に直撃させ、敵兵に睡魔を襲わせた。
「衛生兵ならではの技なんだな」
「そうだな、排除が全てではない。
リーダーの気概もあるけど、後で情報を聞き出す事も大事だしな」
元はクリフのやり方で、皆も従っているようだ。
チバさながらか教えを守り、通じているのだろう。
相手の数も少なく手間をかけずに終わったが、やる事はまだある。
巡回を再開、メンバー達が壊されたライトを点検しに行く。
自分は例の青いライトを探しに向かった。
10分後
「あれじゃないか? こちら第7部隊、なんかそれっぽいのがあった!」
「あった、見つけたぞー!」
「本当にあったんですね!」
工作兵がライトを分解し、その青い光源を調べてみる。
その中に入っていたのは、青く光る3cmの鉱石だった。
「分析結果によると、これは灰重石という鉱石です。
紫外線を照射すると青く光る性質をもっていますが、
普通はライトに用いない物質です」
「蛍光灯にはみんなそれが入っているんじゃないのか?」
「いえ、普通の外灯にはそんな鉱石は含まれていないです。
それに、これを製造する技術なんてチバのどこにも」
「何故、ここだけそんな物が入ってたんだ?」
「ライトを設置したのは亀川駐屯地の奴らしかいないしな。
当時の担当者は誰だっけ?」
「俺らも知らんぞ、こんなの入れろなんて指示だしてないっての」
亀川にいる部隊長も知らないようだ。
不思議に思いつつも、早速その鉱石をトオルを始めとした工作兵達が
加工して内部に収めるよう、綺麗に削っていく。
チュイイイイイイン
(鉱物でさらに動くモノか)
ライオットギアのコアバッテリーは基本、胴体の中央に内蔵する。
そこから電力で起動したエネルギーをアクチュエータで整え、
キャパシタで細かく分流させて
マニュピレータなどへ電線を通して操っているのだ。
これだけの技術力がありながら資源の取り合いをしている現状に、
また悩ませる。奥行きの中にある小さな身籠りを感じた。
トオル達が工房から出てくる、完成したようだ。
「出来ました、装着します」
「早いな」
新たな真空管に入れてみた、すると。
ウイイイィィィン シュシュシュッ
「速え!!??」
ライオットギアはキビキビとした動きで起動した。
機動力はいつもと違ってやけに速くなった感じだ。
まるで元気になった人みたいな状態で動き回っている。
「な、なんかずいぶんと速くなったな・・・」
「灰重石の適合率が動力源からの電力通信適正反応が
こんなに高いなんて知らなかったです、新発見ですよ!」
「遠い世界にある資源ばかりではないんだな。
まさに外灯に煌めく宝石の様だ。」
意外な発見に自分ですら驚いた。
身近にある物でこれ程までに進化を遂げられるとは予想も
していなかった。資源争奪を繰り広げるこの世界では、
収集だけではなく、再利用の重要性も同時に思い知らされる。
技術も戦略性の1つで大切な要素なのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
今の時代は色とりどりに放っている光ばかりです。
カラフルな看板につられて入店する人のように
光に魅入られるのは闇を恐れる習性だけでなく、
視神経が活発になり、人を興奮させる要素があるかもしれません。
花火もその1つだと思います。
余談ですが、灰重石は本当に青く光る性質があります。
通信性能については創作なのでご注意下さい。
ある夕暮れの時、レッドはクリフとトオル、その他モブ達と
拠点から離れた駐屯地へと向かう。
大型ビークルにライオットギアを1機乗せて走っていた。
ここ最近、海側に不穏な動きがあると偵察兵の連絡を受け、
敵影を察知して、念の為に亀川エリアへ1機配置するという。
数人が車の上に乗りながら運搬を見守っている間、
景色を眺めていると木造の凸凹が目に入る。
「住宅っぽい所だな?」
「元々、そこそこ人が住んでたエリアだったんだろ。
数十年前に改築して、駐屯地に変えたんだと」
「海側にも居住区があるのか」
「ここ周辺はチバの盆地の中では割と高めの場所ですが、
当然、海から侵入される時もあります。
見渡しの良いエリアにも設けた方が良いらしくて、建造されたんですよ」
チバ南部は森林ばかりだが、波打ち際が見える海沿いにも
かつて人達が利用していた区域がある。
海手前の道路からすぐ内側は山になる場所が多く、
森に入られれば発見が困難になるので、夜間対策として
ここに来る途中の路地に並んだライトがよく点在している理由だ。
駐屯地から少し離れた距離にも設置するこまめさが分かる。
亀川エリア駐屯地
「隊長、待ってたよ」
「アルフィー、異常はなかったか?」
「特になし、百里エリアも敵性反応は無しとの事。
いつも聴こえるさざ波だけで静かなくらいさ」
一同は到着して22700㎡ある駐屯地の中に入った。
中ではアルフィーと他味方モブ達がすでにいて、
視界がこれでもかというくらいに明るい場所だ。
「ずいぶん明かりが多いな。
見やすいけど、逆に敵に見つかりやすいんじゃないか?」
「その逆の役割もあるんだ。
敵兵は“明るい場所へ移動しない”から、ライト設置の外周を狙ってくる」
「だから、暗いエリアに目をつけて警戒する。
囮用の意味を含めての基地らしいぜ、司令がそう言ってた」
「そうか」
話だと、ここ数週間の間で海産資源を横領しに来る者達がいたらしい。
つまり、今回運んできたのは外回りする為のライオットギア。
どんな敵が来るか分からない内で人型の機体を1機運んだ訳がそうだ。
この地域の特徴を考えての案に納得する。
クリフは乗せていた物を起動させる指示をだした。
しかし、関係者達がなにやら騒然としてそこに集まっている。
トオルが何か異常を言った。
「どうした?」
「機体が動きません! 操縦不能となっています」
「なんだって!?」
一緒に運んできたライオットギアが動かなくなっていた。
トオルと工作兵、技術班がカバーを開いて原因を検証すると。
「装甲、筋繊維、伝達経路に異常はありません」
「ですが、動力部に1つ異常が見つかりました。
キャパシタ一部、ガイスラー管が割れています」
「さっきの運搬で壊れちまったか・・・」
「ガイスラー管?」
「ネオンという物質を閉じ込めておいた真空管です。
キャパシタという電子部品で、バッテリーから細かく機能を配分。
光通信で腕や肩に兵器の動力信号を伝えるためで、
照明器具にも使われているものですね」
「そんな事で簡単に動かなくなったりするのか・・・?」
「バッテリーが全ての動力源でこちらは異常がないようですが、
腕や脚などの経路の部分はなけなしの材料を使うしかないんです」
「しょうがねえだろ、ウチらの無線技術はそんな良いモンねえんだし。
人も含めた資源不足だわな」
心臓部から送られる導線や中継器のパーツも満足に整えられない現状。
バッテリーは中をこじ開けられない程堅く、
前にも聞いた通り、中身に詳しい技術者もろくにいない。
光という言葉で何かが気掛かりになる。
(照明器具・・・)
目を閉じて、ここまでたどり着いた道のりを思い出そうとする。
頭の中にかすかに残る光の群像がどこかしら思い浮かぶ。
光を照らす無数のライトの中に1つだけ奇妙な物がどこかで
混じっていた気がした。
出世の記憶を丸々失うくらいに忘れ症なこんな自分でも、
ここに来るまでにそんな光景をどこかで観たのを覚えていたからだ。
「なら青く光っているライトは何なんだ?」
「青く!?」
メンバー達は額を上向きにしながらこっちを見て反応する。
どこから青なんて色があったと返す。
「青いライトなんざ、あったか?」
「いや、俺は覚えてるぞ。
ここに来る前、確かに1つだけ青く光るライトがあった」
「ヒストペディアでは青い光の存在はあったようです。
ですが、ここチバにはそんな技術の記録が・・・」
「で、その青いライト見つけてどうすんだ?」
「なんて言うんだろうか、
何かしら異なる物質でキャパシタに入れさせたらどうなるのか。
シュミレーション実験というか、そんなものだ」
「は、はあ・・・」
メンバー達が自分の解釈を理解できずにため息をつく。
だけど、トオルだけはその言葉に興味をもったもよう。
「僕もそれを試してみたいです。
伝導技術はまだ分からないところばかりですし、
新素材を試すまたとないチャンスかもしれませんし」
「今回はそれだけを探すラボリじゃないしな。
まずは、周辺を調べてみようか」
「しょうがねえ、予定一部変更だ。
亀川エリア巡回(がてら)、及びその謎のライト捜索を開始する。
各自準備しろ!」
「了解」
こうして一同は亀川エリア周辺を散開する。
ビークルでここまで来た道のりを辿ればすぐに見つかるはず。
駐屯地だけあって夜でも比較的明るいので、移動にはそれほど苦難ではない。
だが、それでもライトの数が異様に多く思えるのは気になって仕方なかった。
チバ南部は山が多い、海側の暗さは何だか怖いと思うくらいで
光で安心感を保たせるのも分かる気がする。
駐屯地までやってきた道のりをたどって探そうとした時、
近くのライトから激しい破裂音がした。
ヒュンッ バリンッ バリンッ
「スナイパーだ!」
ライトが次々と壊されていく。
暗闇で奇襲をかけに来たのか、敵性の兵がこのタイミングで来たようだ。
クリフもすぐに察知してメンバー達に連絡を入れる。
「「南東から上陸してきたか、どこのCNかは不明だ。
表に出るな、建物周辺に隠れてろ」」
「このままだと、青いライトも破壊されてしまう」
「「まずは敵数を確認しないとならない。
リーダー、拾ってくれ!」」
「「おうよ!」」
クリフは銃声音を聴き分ける。
敵性総数を4人と判断。
発砲先は暗くて見づらいが、銃声音から人数を的確に言い当てた。
「「こんな少数で来たなんてよ。
駐屯地から700m離れたとこからだ。回り込んで進め!」」
「お前は耳が良いのか・・・」
「「俺をただのデカブツだと思わない事だな。
パンチ力と聴覚なら誰にも負けねえぜ」」
なんと、音の発生源を的確に当てられる素質をもっていた。
クリフはある程度の距離なら音の位置を特定し、おおまかな居場所を
探る能力をもっていた。
スナイパーライフルは1000m以上から狙撃できる銃だ。
主に広けたエリアで発揮する武器で脅威だが、
ここでは隠れられる場所が多いので、まだ防衛できる策がある。
(ああいう類の銃は本来、上から下へ撃ち下す方が当てやすい。
何故、あんな場所から撃ってくるのかは分からないが、
資源目当てなのは間違いない)
だから、資源を漁りにちょくちょく狙われていたのだ。
ライトが破壊されれば当然、一帯は暗くなる。
敵もその箇所をたどって移動してくるはずだ。
気づいていたクリフは足早に1人の敵兵に近づく。
「え!?」
バキッ
「うほぉあ!?」
クリフが後ろから近づき殴る。
ワンパンであっけなく気絶させて捕縛した。
応答がこないと気付いた敵兵が場所を変え始めようとする。
「1人やられたか、場所を特定された。囲まれる前にすぐ移動するぞ!」
「させないよ!」
ビリビリビリ
「おぼろぱろばろびぇ!?」
トオルがスタンガンを放ち、痺れさせて気絶させる。
残る残党が異変に気付き、逃走を図りだそうとした。
「まずい・・・早くここから撤退しないと、ア″ッ!?」
その敵兵の上半身がクルッっとひっくり返る。
自分は待ち伏せして横から腕を引っ張り、足をすくい上げた。
ドスン
「チクショー!」
残るは後1人だけだ。
予測通り、相手はライトアップされない外周の暗闇にいる。
アルフィーはすでに後ろから近付いて台詞を吐きながら引き金をひいた。
「お休み、よく眠ってくれ。
目が覚めたときには、すでに営倉だがな」
バシュッ
「あううううぅぅん」
撃ち放ったのは麻酔銃だ。
頭部に直撃させ、敵兵に睡魔を襲わせた。
「衛生兵ならではの技なんだな」
「そうだな、排除が全てではない。
リーダーの気概もあるけど、後で情報を聞き出す事も大事だしな」
元はクリフのやり方で、皆も従っているようだ。
チバさながらか教えを守り、通じているのだろう。
相手の数も少なく手間をかけずに終わったが、やる事はまだある。
巡回を再開、メンバー達が壊されたライトを点検しに行く。
自分は例の青いライトを探しに向かった。
10分後
「あれじゃないか? こちら第7部隊、なんかそれっぽいのがあった!」
「あった、見つけたぞー!」
「本当にあったんですね!」
工作兵がライトを分解し、その青い光源を調べてみる。
その中に入っていたのは、青く光る3cmの鉱石だった。
「分析結果によると、これは灰重石という鉱石です。
紫外線を照射すると青く光る性質をもっていますが、
普通はライトに用いない物質です」
「蛍光灯にはみんなそれが入っているんじゃないのか?」
「いえ、普通の外灯にはそんな鉱石は含まれていないです。
それに、これを製造する技術なんてチバのどこにも」
「何故、ここだけそんな物が入ってたんだ?」
「ライトを設置したのは亀川駐屯地の奴らしかいないしな。
当時の担当者は誰だっけ?」
「俺らも知らんぞ、こんなの入れろなんて指示だしてないっての」
亀川にいる部隊長も知らないようだ。
不思議に思いつつも、早速その鉱石をトオルを始めとした工作兵達が
加工して内部に収めるよう、綺麗に削っていく。
チュイイイイイイン
(鉱物でさらに動くモノか)
ライオットギアのコアバッテリーは基本、胴体の中央に内蔵する。
そこから電力で起動したエネルギーをアクチュエータで整え、
キャパシタで細かく分流させて
マニュピレータなどへ電線を通して操っているのだ。
これだけの技術力がありながら資源の取り合いをしている現状に、
また悩ませる。奥行きの中にある小さな身籠りを感じた。
トオル達が工房から出てくる、完成したようだ。
「出来ました、装着します」
「早いな」
新たな真空管に入れてみた、すると。
ウイイイィィィン シュシュシュッ
「速え!!??」
ライオットギアはキビキビとした動きで起動した。
機動力はいつもと違ってやけに速くなった感じだ。
まるで元気になった人みたいな状態で動き回っている。
「な、なんかずいぶんと速くなったな・・・」
「灰重石の適合率が動力源からの電力通信適正反応が
こんなに高いなんて知らなかったです、新発見ですよ!」
「遠い世界にある資源ばかりではないんだな。
まさに外灯に煌めく宝石の様だ。」
意外な発見に自分ですら驚いた。
身近にある物でこれ程までに進化を遂げられるとは予想も
していなかった。資源争奪を繰り広げるこの世界では、
収集だけではなく、再利用の重要性も同時に思い知らされる。
技術も戦略性の1つで大切な要素なのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
今の時代は色とりどりに放っている光ばかりです。
カラフルな看板につられて入店する人のように
光に魅入られるのは闇を恐れる習性だけでなく、
視神経が活発になり、人を興奮させる要素があるかもしれません。
花火もその1つだと思います。
余談ですが、灰重石は本当に青く光る性質があります。
通信性能については創作なのでご注意下さい。
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