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1章 中つ国編
第1話 星空の見える基地
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A.D90年
「兄ちゃん、本当にここを出ていくの?」
「ああ、もう決めたんだ。あの人達についていく。
おれがこれからの中つ国を変えてみせる」
オカヤマCN市民街に兄弟が2人いる。
時刻はとうに夜中であるが、散歩などではなく家出の様子で
兄はここを出ていくようで、別れ際に弟が送り付けようと
なけなしの餞別をわたそうとした。
「100Pとバッジか・・・ずいぶんと重いなコレ?」
「バッジは父ちゃんからもらった物だけど、持っていって」
「そうか・・・もうここに帰ってくるつもりはない。
母さんによろしくな」
「兄ちゃん・・・無事でいてね」
「もう行かないと、じゃあな!」
兄は背中を向けて夜路を歩き去っていく。
夜空には星空が輝くが、地上の先は暗く観えない程に闇は暗く、
自分は追いかける事もせずに立っているだけだった。
現在 A.D100年
ガショォン
「うおあっ!?」
ライオットギアの凄まじい跳躍力に自分は驚く。
翠色に光を反射させて低空を舞うそれは体ごともっていかれそうで、
操縦したのは今回初めてというわけでもなかったが、
この浮遊感は足場が浮きがちで未だに慣れない。
「ハハハ、ケイは相変わらず着陸がヘタねー」
「このグラスホッパー、飛びすぎだろー!
マナミ、そっちと交換してくれ」
「変わんないわよ!
着陸時に姿勢を低くしておくのがコツよ!」
グラスホッパー、いわゆる昆虫のバッタである。
脚部が逆関節で構成されているので前方に向けての
移動力に長けているタイプのライオットギアだ。
円状のハンドルをできるだけ真っすぐにさせようと、風圧に寄せられる。
シマネ産物のこれはちょっと特殊すぎてやりづらい。
ただ、歩行は遅く、滑空式で空を飛ぶこともできない。
「これ、どこまで移動できるんだっけ?」
「地形によるけど、公式では約500mくらいね。
ここみたいな高原じゃないと使いこなせないわ」
自分達はオカヤマCNの兵士だが、
今はシマネCNでライオットギアの操縦訓練をしていた。
ここ中つ国地方ではオカヤマ、シマネ、トットリ、ヒロシマ、ヤマグチの
5つのCNが同盟を組み、他方と対抗している。
内のシマネにある川中高原は広い平原があり、
瞬間的な直線移動が有利になる展開作戦が重要視されている。
同盟国の兵士はこれに乗る訓練が義務付けされているが、
自分は四苦八苦して手間取っていく。
シマネの工作兵が終了の号令をかけた。
「時間だ、そろそろ終了する!」
「了解!」
シマネCN拠点 食堂
昼になり、メンバー達は休憩時間を得る。
自分達は食事がてら前回のラボリについて話をしていた。
「で、誰もいなくてクリアと思ったら急にキョウトの奴らに
不意打ちされたんだ」
「海岸の巡回時か、よく生きてたもんだな?」
「シーナさんらが駆け付けてくれてたんだよ!
素早い身のこなしでスパパッとな」
「砂丘の民トットリは単身強い人ばっかりだよな。
昔から土の中で鍛えられてんだっけ?」
「おま、そこがトットリの全てじゃないだろーよ」
仲間のオカヤマモブ兵の話で自分とマナミが続けて談笑する。
「トットリか」
「1人でなんとかしちゃう人達多いよね。
向こうは突撃兵がほとんどだから行動力あるし」
「単独行動をモットーとしてるのかな?」
前回の任務活動の間で起きた内容だ。
トットリCNは中つ国地方の北東に位置するエリアで、
広大な砂丘が存在している視界が開けた場所。
面積が狭く敵襲されやすい位置にあるため、
拠点や居住区はほとんど地下に設けられている。
地上には最低限の設備しかないのだ。
だから対策で特殊な装備があり、いつも兵達の焦点になるが
話題に沿う様にシマネ司令官がやって来て指令を出した。
「食事中だが、次のラボリだ。
そのトットリと合同で巡回、最近の近畿の動向が多くなり
砂丘周辺を見回る数を増やす方針だ」
「伝令あります。アキヒコ司令は今休養中ですが、
自分達も一緒して良いですか?」
「こっちは構わんぞ、あの人は少々働きすぎだしな。
オカヤマは大丈夫なのか?」
「ええ、しばらくはこっちにいて良いらしいです・・・。
今、オカヤマは上の人達が警備してくれているので」
3日前 オカヤマCN拠点 医療室
アキヒコ司令は極度に睡眠時間を削っていたため、
過労で倒れてしまっていた。
医療室で寝込みながらも、任務予定を決めようと
オカヤマ兵の第5隊長である自分と副隊長のマナミにこう伝えていた。
「しばらくは同盟国に付いてやってくれるか?」
「ここはどうするんですか?
第5部隊が不在中に狙われたら対処できるんですか?」
「ここは高齢部隊に任せる、お前達はまだ若い。
今は他でもっと色々体験させるべきだと決めた」
「お、お気遣いありがとうございます。
司令もお体御自愛下さいね」
「こんなのすぐに治る、私とてまだ35だ。
無理が通らないというのはお前達も同じだぞ」
司令は若くても無茶はするなと言う。
中つ国も人口数はさほど多くはなく、近年は低年齢が減り
高齢層が増えつつあった。
若年層の自分達は各CNを回らせるケースがほとんど。
色々と経験させたい気持ちも分かるけど、内地を中年に任せて
外地をサポートしてくれとはすいぶんと大まか奔放な感じだ。
オカヤマCN拠点 テラス外
「「しばらくここを離れるのか・・・」」
高山の中継地点に建てられたここのベランダで一人、外を見る。
小言の呟きは誰にも聴こえないように放った。
他のCNに出向くのは別に初めてではなかったけど、
若者へ負担軽減させすぎると思う。
司令の言う事も分かるが、本人や高齢の兵方も自重してほしい。
今後の課題も少し気になっていく。
(向こうはどうしてるんだか)
自分は夜空を眺めながら思いにふける。
オカヤマの拠点の基地は最も高い山頂上にあり、
空気が澄んでいるので星空がキレイに見える。
中つ国山地にも駐屯地があり、見晴らしの良さはTOPだ。
だけど、向こうというのはさらに上に位置する者達。
もっと高い所に関係者が従軍している。
いつかはそこで就ければ良いな思いながら景観していると、
視界前方からなにかが横切った。
「なんだ!?」
山の奥から鋭く長い光線が観えた。
その後、すぐに消えてしまったのでそれ以上は分からなかった。
しかし、あの光は一度どこかで見た事がある様な気がする。
あのときもこんな感じだったような。
光に覚えがあるものの、詳しくは理解できずにいた。
翌日 トットリCN トットリ砂丘
一同はトットリに着いていた。
北側は海で、度々敵性CNから襲撃を受けている。
砂丘も海と隣接するため、ここに地下施設を構えて対応。
地上はほとんど盛り込まれた砂だけしか観えない。
「相変わらずの入口の分かりにくさ・・・」
「だな、こっちだったはず」
ほんの3mくらいの物見台に近づく。
この辺りの地上はほとんど建築物がない。
海に面しているここは隠れられる障害物などほとんどなく、
最低限の監視所くらいでとても空いている。
他にも砂丘南部に火山灰露出地があり、
本当に目立たないように入口が設けられているのだ。
当然ながら、カムフラージュを高めた自然に合わせた特徴。
確かに地上には何もないけど、地下なら話は別。
相変わらずセピア色ばかりの視界ばかりだと思いながら
入ろうとした瞬間、突然扉が開きだした。
バンッ
「うわっ、ビックリした!」
「すぐに入って来い!」
「なんですって!?」
トットリ兵が飛び出して一同を地下拠点に招き入れる。
どうやら敵襲の報告が入ってきたらしい。
女兵士が自分達に語りかけてきた。
「間に合ったね、後少し遅れてたらこの世とおさらばしてたよ!」
「シーナさん!」
「兄ちゃん、本当にここを出ていくの?」
「ああ、もう決めたんだ。あの人達についていく。
おれがこれからの中つ国を変えてみせる」
オカヤマCN市民街に兄弟が2人いる。
時刻はとうに夜中であるが、散歩などではなく家出の様子で
兄はここを出ていくようで、別れ際に弟が送り付けようと
なけなしの餞別をわたそうとした。
「100Pとバッジか・・・ずいぶんと重いなコレ?」
「バッジは父ちゃんからもらった物だけど、持っていって」
「そうか・・・もうここに帰ってくるつもりはない。
母さんによろしくな」
「兄ちゃん・・・無事でいてね」
「もう行かないと、じゃあな!」
兄は背中を向けて夜路を歩き去っていく。
夜空には星空が輝くが、地上の先は暗く観えない程に闇は暗く、
自分は追いかける事もせずに立っているだけだった。
現在 A.D100年
ガショォン
「うおあっ!?」
ライオットギアの凄まじい跳躍力に自分は驚く。
翠色に光を反射させて低空を舞うそれは体ごともっていかれそうで、
操縦したのは今回初めてというわけでもなかったが、
この浮遊感は足場が浮きがちで未だに慣れない。
「ハハハ、ケイは相変わらず着陸がヘタねー」
「このグラスホッパー、飛びすぎだろー!
マナミ、そっちと交換してくれ」
「変わんないわよ!
着陸時に姿勢を低くしておくのがコツよ!」
グラスホッパー、いわゆる昆虫のバッタである。
脚部が逆関節で構成されているので前方に向けての
移動力に長けているタイプのライオットギアだ。
円状のハンドルをできるだけ真っすぐにさせようと、風圧に寄せられる。
シマネ産物のこれはちょっと特殊すぎてやりづらい。
ただ、歩行は遅く、滑空式で空を飛ぶこともできない。
「これ、どこまで移動できるんだっけ?」
「地形によるけど、公式では約500mくらいね。
ここみたいな高原じゃないと使いこなせないわ」
自分達はオカヤマCNの兵士だが、
今はシマネCNでライオットギアの操縦訓練をしていた。
ここ中つ国地方ではオカヤマ、シマネ、トットリ、ヒロシマ、ヤマグチの
5つのCNが同盟を組み、他方と対抗している。
内のシマネにある川中高原は広い平原があり、
瞬間的な直線移動が有利になる展開作戦が重要視されている。
同盟国の兵士はこれに乗る訓練が義務付けされているが、
自分は四苦八苦して手間取っていく。
シマネの工作兵が終了の号令をかけた。
「時間だ、そろそろ終了する!」
「了解!」
シマネCN拠点 食堂
昼になり、メンバー達は休憩時間を得る。
自分達は食事がてら前回のラボリについて話をしていた。
「で、誰もいなくてクリアと思ったら急にキョウトの奴らに
不意打ちされたんだ」
「海岸の巡回時か、よく生きてたもんだな?」
「シーナさんらが駆け付けてくれてたんだよ!
素早い身のこなしでスパパッとな」
「砂丘の民トットリは単身強い人ばっかりだよな。
昔から土の中で鍛えられてんだっけ?」
「おま、そこがトットリの全てじゃないだろーよ」
仲間のオカヤマモブ兵の話で自分とマナミが続けて談笑する。
「トットリか」
「1人でなんとかしちゃう人達多いよね。
向こうは突撃兵がほとんどだから行動力あるし」
「単独行動をモットーとしてるのかな?」
前回の任務活動の間で起きた内容だ。
トットリCNは中つ国地方の北東に位置するエリアで、
広大な砂丘が存在している視界が開けた場所。
面積が狭く敵襲されやすい位置にあるため、
拠点や居住区はほとんど地下に設けられている。
地上には最低限の設備しかないのだ。
だから対策で特殊な装備があり、いつも兵達の焦点になるが
話題に沿う様にシマネ司令官がやって来て指令を出した。
「食事中だが、次のラボリだ。
そのトットリと合同で巡回、最近の近畿の動向が多くなり
砂丘周辺を見回る数を増やす方針だ」
「伝令あります。アキヒコ司令は今休養中ですが、
自分達も一緒して良いですか?」
「こっちは構わんぞ、あの人は少々働きすぎだしな。
オカヤマは大丈夫なのか?」
「ええ、しばらくはこっちにいて良いらしいです・・・。
今、オカヤマは上の人達が警備してくれているので」
3日前 オカヤマCN拠点 医療室
アキヒコ司令は極度に睡眠時間を削っていたため、
過労で倒れてしまっていた。
医療室で寝込みながらも、任務予定を決めようと
オカヤマ兵の第5隊長である自分と副隊長のマナミにこう伝えていた。
「しばらくは同盟国に付いてやってくれるか?」
「ここはどうするんですか?
第5部隊が不在中に狙われたら対処できるんですか?」
「ここは高齢部隊に任せる、お前達はまだ若い。
今は他でもっと色々体験させるべきだと決めた」
「お、お気遣いありがとうございます。
司令もお体御自愛下さいね」
「こんなのすぐに治る、私とてまだ35だ。
無理が通らないというのはお前達も同じだぞ」
司令は若くても無茶はするなと言う。
中つ国も人口数はさほど多くはなく、近年は低年齢が減り
高齢層が増えつつあった。
若年層の自分達は各CNを回らせるケースがほとんど。
色々と経験させたい気持ちも分かるけど、内地を中年に任せて
外地をサポートしてくれとはすいぶんと大まか奔放な感じだ。
オカヤマCN拠点 テラス外
「「しばらくここを離れるのか・・・」」
高山の中継地点に建てられたここのベランダで一人、外を見る。
小言の呟きは誰にも聴こえないように放った。
他のCNに出向くのは別に初めてではなかったけど、
若者へ負担軽減させすぎると思う。
司令の言う事も分かるが、本人や高齢の兵方も自重してほしい。
今後の課題も少し気になっていく。
(向こうはどうしてるんだか)
自分は夜空を眺めながら思いにふける。
オカヤマの拠点の基地は最も高い山頂上にあり、
空気が澄んでいるので星空がキレイに見える。
中つ国山地にも駐屯地があり、見晴らしの良さはTOPだ。
だけど、向こうというのはさらに上に位置する者達。
もっと高い所に関係者が従軍している。
いつかはそこで就ければ良いな思いながら景観していると、
視界前方からなにかが横切った。
「なんだ!?」
山の奥から鋭く長い光線が観えた。
その後、すぐに消えてしまったのでそれ以上は分からなかった。
しかし、あの光は一度どこかで見た事がある様な気がする。
あのときもこんな感じだったような。
光に覚えがあるものの、詳しくは理解できずにいた。
翌日 トットリCN トットリ砂丘
一同はトットリに着いていた。
北側は海で、度々敵性CNから襲撃を受けている。
砂丘も海と隣接するため、ここに地下施設を構えて対応。
地上はほとんど盛り込まれた砂だけしか観えない。
「相変わらずの入口の分かりにくさ・・・」
「だな、こっちだったはず」
ほんの3mくらいの物見台に近づく。
この辺りの地上はほとんど建築物がない。
海に面しているここは隠れられる障害物などほとんどなく、
最低限の監視所くらいでとても空いている。
他にも砂丘南部に火山灰露出地があり、
本当に目立たないように入口が設けられているのだ。
当然ながら、カムフラージュを高めた自然に合わせた特徴。
確かに地上には何もないけど、地下なら話は別。
相変わらずセピア色ばかりの視界ばかりだと思いながら
入ろうとした瞬間、突然扉が開きだした。
バンッ
「うわっ、ビックリした!」
「すぐに入って来い!」
「なんですって!?」
トットリ兵が飛び出して一同を地下拠点に招き入れる。
どうやら敵襲の報告が入ってきたらしい。
女兵士が自分達に語りかけてきた。
「間に合ったね、後少し遅れてたらこの世とおさらばしてたよ!」
「シーナさん!」
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