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1章 四国編
第3話 水光の園
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カガワCN拠点 仮眠室
(ん、まだ5:00か)
目が覚めたたタカは時計を見る。
幸いにも今日は休暇なので、ゆっくり寝てようとしたが
ずいぶんと早く目が覚めてしまった。
今日に限らず最近はなんだか早い気がする。
基本、朝食はメンバー達とするのだが、少し時間が早い。
(ちょっと外の様子でも見てくるか)
これといって用事もないが、外の空気の方が美味いから
ロビーを出て見回りにでも行こうかとしたとき、
すでにトミが体操をしていた。
「トミさん、相変わらず早いですね!?」
「今日は4:00起きじゃああ!
早起きは三文の得じゃけえ、健康の〇×△□――!」
「早過ぎです」
隊長はおそらく四国の中で一番早起きする。
年寄りほど朝が早いというのは事実なんだと心の中で思う。
この人だけに限らず、午前枠は老人の出入りとしても有名だ。
習慣はともかくとして、そんな隊長も今日は用があるらしく、
行き先を聞いたところ農場に行くのだという。
「水園じゃ、そこの野菜採りの手伝いじゃな。
司令官から熟成したモンを採ってくれと連絡がきたぞ」
「ウォーターガーデンにですか?」
ウォーターガーデン、そこは野菜や果物など水で育てる
食物の育成をしている水畑エリアだ。
司令官がそこの管理をしていて、時たま出向いては手伝いをしているらしい。
ついでと言ってはなんだが、四国の野菜成長はすごく早い。
超促成栽培より1週間で熟すが、さらに縮めて5日で育成できる。
自然と違う仕組みはどうなっているのかこの年にもなってアレだが、
今日は自分にもその手伝いをするよう誘われた。
「え~と、今日の献立はワサビの回収と。
隊長のご命令なら仕方ないですね、同行しますよ!」
「なーにを言うか、しょくけんらんようなんざするつもりはないわい。
勧誘の1つじゃ」
「そうですか、ならば他のみんなも連れていきますか?」
と言ってみたもの、早朝の刻でメンバー達はまだ寝ているようなので
無理矢理起こすのも酷だ。よって、今回は2人で行く事にした。
後で起きたら無線で出かけたと言っておこう。
カガワCN ウォーターガーデン
数分後、2人は水園に到着した。
朝日の反射で地上一帯が輝いている。
拠点から周囲の川沿い所には広い農園がある。
早朝だけに作業員はほとんどいないが、
1人の人物だけが収穫の作業をしていた。隊長は声をかける。
「おーい、司令!」
「おや、来てくれたのか、助かるよ」
知人、ウォーターガーデンの管理者はカガワの司令官。
拠点から水園まで目と鼻の先で、指令のかたわら野菜の育成にまで
携わっているのも四国の特徴だ。
「今日は2人かい? 今回の収穫はこれらだけだが」
「そーか、なら2人だけでも十分やな。
熟してるモンから採っていてええんやろ?」
「ああ、カゴに入れてくれるだけで良いぞ。ハサミはそこにある。
自分は拠点で用があるから頼めるかい?」
「任せとけい! タカ、やるぞい!」
「了承」
収穫するのは予定通りワサビだけで、2人はさっそく作業に取り掛かる。
年老いた兵が農業をするのは退役後の予行演習と似ているようで、
世の終わりまで仕事をする運命に真顔となる。
「うーん」
透明のパイプ複数頭上に張り巡らせ太陽光を透かす。
いつ見ても綺麗な場所なものの、内装は全て把握していない。
湧き出る地下水を成分調整しつつ、管内の食物成長を管理している。
そこから流れる水道を張り巡らせ、その上に食物を生やしているのだが、
未だによく分からない仕様の設備があった。
「え~と・・・カゴに入れてから検査すれば良いんですよね。
この光っているランプは何のためにあるんですっけ?」
「光検知ランプじゃ、野菜の品質を調べるもんじゃな。
てか、まだ分からんかったのか!?」
カガワは水耕栽培に秀でた技術を取り持っている。
スイレンにより救われた水の奇跡から起死回生され、
以来目覚ましく変わっていった。
ただ、四国を支えているのは水園だけでなく、
話に聞くと昔から光学の研究も行っていたらしい。
ATPとかいう技術で応用されていると聞くが、
ややこしい分野だけに詳細など覚えきれるはずがない。
今こそ、四国で当たり前に利用されているものの、
光ファイバーとよばれるケーブルなど造っている歴史もあったという。
(こんなに発展できたのも、あの人のおかげなんだ)
かつて味わったあの地獄の時代とは程遠いものがある。
あの40年前の光景とは見違えるほどにまで美しい外観だ。
希少な奇跡と言わずして、何と言おうか。
今、こうして生きている事が流れる透明の液体によって生かされる。
自身はあくまでも水分の塊なんだと実感しつつ作業を進めていった。
3時間後
「ふいーっ、今日はこんなもんじゃな」
ある程度の収穫を終えて、山になるそれらを一目する。
とても瑞々しいワサビを見て、隊長は1つ取り出し口にした。
「どーれ・・・」
ガリッ
「ああっ、生で食べちゃってる!?」
「ガハハ、採れたてこそ加工に勝る味じゃああ!
これぞ、収穫者の特権じゃわい!」
カガワ司令官が再び戻って来て休憩する。
あきれた自分がロストした1本分をしっかりと報告する。
「司令、ワサビが喪失。
隊長が1本食べちゃったんですよ~」
「相変わらずわんぱくだねえ。
まあ、手伝ってくれたお礼だ、構わない」
「増懲なんぞ怖くもないわい。
腹に入っちまわん事にゃ、戦なんぞできん。腹が減ってはってな!」
トミの高齢者特権を申請(非公式)。
生でこんな辛い物を食べる人なんて初めて見た。
司令はいつもの事と穏やかに彼を目で見ているものの、
別の方へなにやら浮かない顔をしている。
隊長とうって変わり、最近の近況を語りだした。
「ここカガワも敵国と内海を隔てたCNだ。
大きな戦闘は少ないものの、度々の侵入には参ってしまうよ」
「また盗られたんか!? モグラすら侵入を許さんここなのに
斥候は何しとんのじゃ!?」
「奥の野菜が無造作に無くなっていたのは、それだったんですね」
近江と思わしき者達に度々盗難されていた。
上質な水質であるここ四国の食料事情はすでに敵国に筒抜けで
良い食料がある場所として知られているようだ。
どちらかといえば、連中にとってここに来る理由など資源窃盗以外に
利点も微塵も感じないくらいほぼないだろう。
向かいの地方は数が多いらしく、制圧されないのが不思議な程だ。
「南東の近江はすごく人口が多いようです。
俺達の守りもいつ突破されるか確かに不安ですね」
「無人偵察機の導入も考えているが、部品も心細い。
機械関係もまだ完全に調整が終えてなく、整備士ももっと・・・」
「斥候もどんどん年寄りが増えていて、見落としも増してるのか。
偵察兵の活躍に期待するのみですね」
「ま、若者はまだ学習を重んじてやっていけばええ。
ワシらはワシらの任務をこなすのみじゃな・・・いつっ!?」
「どうしました?」
「いや、体が軋んだだけじゃ。大したコトないわい」
「今日はこれくらいで良い、助かったよ」
ここでカガワ司令のお手伝いをストップ。
はしゃぎっぷりも度を超えれば隊長だって敵わない。
人体という老朽化もここの懸念である。
機械と違って、代わりを易々と交換できれば苦労なんてしない。
隊長もギックリ腰モドキに見舞われてしまい、
今日の作業が体に応えたのだろうか。
司令は朝の収穫をそこそこに終えて年寄りの体の都合を優先し、
2人はこれで拠点に戻ろうとした。
カパッ
カガワ司令官から離れた所の水路の下部にあったハッチが少し開く。
遠巻きにジッと誰かが彼らを見つめ続けている。
3人はそれに気づく機会もなく事の間は過ぎて行き、2人は拠点に着いた。
(ん、まだ5:00か)
目が覚めたたタカは時計を見る。
幸いにも今日は休暇なので、ゆっくり寝てようとしたが
ずいぶんと早く目が覚めてしまった。
今日に限らず最近はなんだか早い気がする。
基本、朝食はメンバー達とするのだが、少し時間が早い。
(ちょっと外の様子でも見てくるか)
これといって用事もないが、外の空気の方が美味いから
ロビーを出て見回りにでも行こうかとしたとき、
すでにトミが体操をしていた。
「トミさん、相変わらず早いですね!?」
「今日は4:00起きじゃああ!
早起きは三文の得じゃけえ、健康の〇×△□――!」
「早過ぎです」
隊長はおそらく四国の中で一番早起きする。
年寄りほど朝が早いというのは事実なんだと心の中で思う。
この人だけに限らず、午前枠は老人の出入りとしても有名だ。
習慣はともかくとして、そんな隊長も今日は用があるらしく、
行き先を聞いたところ農場に行くのだという。
「水園じゃ、そこの野菜採りの手伝いじゃな。
司令官から熟成したモンを採ってくれと連絡がきたぞ」
「ウォーターガーデンにですか?」
ウォーターガーデン、そこは野菜や果物など水で育てる
食物の育成をしている水畑エリアだ。
司令官がそこの管理をしていて、時たま出向いては手伝いをしているらしい。
ついでと言ってはなんだが、四国の野菜成長はすごく早い。
超促成栽培より1週間で熟すが、さらに縮めて5日で育成できる。
自然と違う仕組みはどうなっているのかこの年にもなってアレだが、
今日は自分にもその手伝いをするよう誘われた。
「え~と、今日の献立はワサビの回収と。
隊長のご命令なら仕方ないですね、同行しますよ!」
「なーにを言うか、しょくけんらんようなんざするつもりはないわい。
勧誘の1つじゃ」
「そうですか、ならば他のみんなも連れていきますか?」
と言ってみたもの、早朝の刻でメンバー達はまだ寝ているようなので
無理矢理起こすのも酷だ。よって、今回は2人で行く事にした。
後で起きたら無線で出かけたと言っておこう。
カガワCN ウォーターガーデン
数分後、2人は水園に到着した。
朝日の反射で地上一帯が輝いている。
拠点から周囲の川沿い所には広い農園がある。
早朝だけに作業員はほとんどいないが、
1人の人物だけが収穫の作業をしていた。隊長は声をかける。
「おーい、司令!」
「おや、来てくれたのか、助かるよ」
知人、ウォーターガーデンの管理者はカガワの司令官。
拠点から水園まで目と鼻の先で、指令のかたわら野菜の育成にまで
携わっているのも四国の特徴だ。
「今日は2人かい? 今回の収穫はこれらだけだが」
「そーか、なら2人だけでも十分やな。
熟してるモンから採っていてええんやろ?」
「ああ、カゴに入れてくれるだけで良いぞ。ハサミはそこにある。
自分は拠点で用があるから頼めるかい?」
「任せとけい! タカ、やるぞい!」
「了承」
収穫するのは予定通りワサビだけで、2人はさっそく作業に取り掛かる。
年老いた兵が農業をするのは退役後の予行演習と似ているようで、
世の終わりまで仕事をする運命に真顔となる。
「うーん」
透明のパイプ複数頭上に張り巡らせ太陽光を透かす。
いつ見ても綺麗な場所なものの、内装は全て把握していない。
湧き出る地下水を成分調整しつつ、管内の食物成長を管理している。
そこから流れる水道を張り巡らせ、その上に食物を生やしているのだが、
未だによく分からない仕様の設備があった。
「え~と・・・カゴに入れてから検査すれば良いんですよね。
この光っているランプは何のためにあるんですっけ?」
「光検知ランプじゃ、野菜の品質を調べるもんじゃな。
てか、まだ分からんかったのか!?」
カガワは水耕栽培に秀でた技術を取り持っている。
スイレンにより救われた水の奇跡から起死回生され、
以来目覚ましく変わっていった。
ただ、四国を支えているのは水園だけでなく、
話に聞くと昔から光学の研究も行っていたらしい。
ATPとかいう技術で応用されていると聞くが、
ややこしい分野だけに詳細など覚えきれるはずがない。
今こそ、四国で当たり前に利用されているものの、
光ファイバーとよばれるケーブルなど造っている歴史もあったという。
(こんなに発展できたのも、あの人のおかげなんだ)
かつて味わったあの地獄の時代とは程遠いものがある。
あの40年前の光景とは見違えるほどにまで美しい外観だ。
希少な奇跡と言わずして、何と言おうか。
今、こうして生きている事が流れる透明の液体によって生かされる。
自身はあくまでも水分の塊なんだと実感しつつ作業を進めていった。
3時間後
「ふいーっ、今日はこんなもんじゃな」
ある程度の収穫を終えて、山になるそれらを一目する。
とても瑞々しいワサビを見て、隊長は1つ取り出し口にした。
「どーれ・・・」
ガリッ
「ああっ、生で食べちゃってる!?」
「ガハハ、採れたてこそ加工に勝る味じゃああ!
これぞ、収穫者の特権じゃわい!」
カガワ司令官が再び戻って来て休憩する。
あきれた自分がロストした1本分をしっかりと報告する。
「司令、ワサビが喪失。
隊長が1本食べちゃったんですよ~」
「相変わらずわんぱくだねえ。
まあ、手伝ってくれたお礼だ、構わない」
「増懲なんぞ怖くもないわい。
腹に入っちまわん事にゃ、戦なんぞできん。腹が減ってはってな!」
トミの高齢者特権を申請(非公式)。
生でこんな辛い物を食べる人なんて初めて見た。
司令はいつもの事と穏やかに彼を目で見ているものの、
別の方へなにやら浮かない顔をしている。
隊長とうって変わり、最近の近況を語りだした。
「ここカガワも敵国と内海を隔てたCNだ。
大きな戦闘は少ないものの、度々の侵入には参ってしまうよ」
「また盗られたんか!? モグラすら侵入を許さんここなのに
斥候は何しとんのじゃ!?」
「奥の野菜が無造作に無くなっていたのは、それだったんですね」
近江と思わしき者達に度々盗難されていた。
上質な水質であるここ四国の食料事情はすでに敵国に筒抜けで
良い食料がある場所として知られているようだ。
どちらかといえば、連中にとってここに来る理由など資源窃盗以外に
利点も微塵も感じないくらいほぼないだろう。
向かいの地方は数が多いらしく、制圧されないのが不思議な程だ。
「南東の近江はすごく人口が多いようです。
俺達の守りもいつ突破されるか確かに不安ですね」
「無人偵察機の導入も考えているが、部品も心細い。
機械関係もまだ完全に調整が終えてなく、整備士ももっと・・・」
「斥候もどんどん年寄りが増えていて、見落としも増してるのか。
偵察兵の活躍に期待するのみですね」
「ま、若者はまだ学習を重んじてやっていけばええ。
ワシらはワシらの任務をこなすのみじゃな・・・いつっ!?」
「どうしました?」
「いや、体が軋んだだけじゃ。大したコトないわい」
「今日はこれくらいで良い、助かったよ」
ここでカガワ司令のお手伝いをストップ。
はしゃぎっぷりも度を超えれば隊長だって敵わない。
人体という老朽化もここの懸念である。
機械と違って、代わりを易々と交換できれば苦労なんてしない。
隊長もギックリ腰モドキに見舞われてしまい、
今日の作業が体に応えたのだろうか。
司令は朝の収穫をそこそこに終えて年寄りの体の都合を優先し、
2人はこれで拠点に戻ろうとした。
カパッ
カガワ司令官から離れた所の水路の下部にあったハッチが少し開く。
遠巻きにジッと誰かが彼らを見つめ続けている。
3人はそれに気づく機会もなく事の間は過ぎて行き、2人は拠点に着いた。
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