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1章 近畿編
第1話 関西のサムライ
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1人のオオサカ兵が1人の四国兵と対峙。
CN法の如く1:1の戦況に立たされていた。
戦闘の大まかな部分は終わり、味方はすでに全員退却。
8人いた敵兵は7人ロストし、後1人だけ残っている。
その敵兵はわずか7m先にいる。
使用していた銃器はもう弾がないらしく、
口元を歪めながら単発式のみを構えてこちらを狙い続けている。
(相手は長刀一丁だけか・・・これだけ離れてれば、こっちが有利だ。
ハンドガンにはまだ弾がある、正確にエイムすれば勝てる)
「・・・・・・」
そのオオサカ兵は両手で刀を構えているだけだ。
四国兵は銃の優位性を過信、勝ち目はこちらにあると
すかさず1つ発砲した時だ。
ズドン ヒュンッ
「な!?」
胴体に目がけて撃ったはずの弾丸は外側へと逸れていく。
現実では有り得ない光景に気も逸らしたわずかな間に、
近江の特異性を見誤って今更往生際の悪さが出る。
すでに間合いは詰められて、細長い刃は目前にまで迫っていた。
「銃こそ最強なのになぜなぜなぜえぇ!?」
「せいやっ!」
ズバッ
オオサカCN 拠点
「で、相手はカガワモンやったんか?」
「はい、オオサカ湾を渡って西部から侵入してきたようで。
第99部隊長が最後の1人を殲滅しました」
「ははっ、あの“外様”の若武者か。
数年前は空振りが目立っとったが、ちっとは様になってきたかのぉ」
「我々と距離を置きつつも、真っ当と任務を果たしています。
武力も数ヶ月前よりも向上傾向にありと」
「せやな、ワシとて鬼やない。
組織の端くれだろうと、やる事やってりゃ弾き飛ばしはせんわ」
「そこについても私の攻を立てて・・・キンイチ司令――」
「分かっとる、見立ての件も考えてくれやろ?」
「・・・はい、お願いします」
女偵察兵が先の戦闘について報告している。
彼女の何かの推しをまともに答えず、1つの内容を告げて偵察兵は退室。
司令官は外を眺める、入れ替わりに移動する兵士達を観ながら
一息ついて語った。
「系統はどこまでも続きよるのぉ。
主義を絶対とする近江の掟もそれ相応なんやが・・・」
オオサカCN土界エリア 市民街
俺は長椅子に座り注文したお茶を1杯飲んでいる。
先の討伐仕事を終えてちょっとした休憩をしていた。
隣には相方もいて、手応えがどうのしゃべっている。
「あんときはやばかったな、セン!
奴ら、弾ぶっぱなしまくってマジで撃たれたかと思ったぜ」
「7m先ならまだいける相手だろ?
お前の得物はデカいから無理だけどよ。
対機械専門役だから、対人戦は後ろにいろよ!」
「俺様の漸萬は大型に特化した大剣だしな!
男は大物担いでナンボだろ」
連れは持ち前の武器自慢をする。
戦場にとって命と同等の雷刀、
金髪の逆毛で白と赤の和服を着た2人のやりとりがあった。
ここでは自己紹介として名を名乗るのが仕来りだから話す。
俺はセン・サイミョウジ、オオサカ兵。
こっちはライリー、同じくオオサカ兵。
こいつと話がてらに得物を見直してみる。
名前は舞䢮、細長く伸びた刃で、昔でいうカタナと呼ばれる武器だ。
こいつが手を伸ばして掴んでくる。
「お、おい!?」
「グリップにはスイッチが付いてるんだよなコレ」
ブウウゥゥゥン
「おわっ、逆毛が引っ付いちまう!」
「たり前だ、静電気が出てるんだからよ」
目には見えないが、刃の周りが放電している。
言い換えれば、これは電磁ブレードで中にはバッテリーが内蔵されて
スイッチで放電できる仕組みになっている。
この仕様こそ、先の弾が逸れた現象だ。
電磁波により磁界が曲げられ、銃弾の軌道を逸らしていたのだ。
放電時に刀身を振ると、弾道が外側にでる。
細かい理由は大昔からあるのでもちろん知らないが、
とにかくここ近江地方に継がれる技術をもっていた。
漸萬はこの機能が付いていない。
「他の地方にゃ、人みてえな機械があってそれをズバッとやる。
俺はこっちをもらったけど、電気は付けてくんねーのか」
「電気はあくまで弾掃き用だ。
武器も体格で決められてるしな、筋肉質な奴は漸萬を持たされる」
「ま、これでも特攻役は楽じゃねえわな。
どっちも敵に突っ込むのはおんなじでよ」
「確かにな、昔からここは接近主義が大きいんだよ。
“サムライ”の理念ってやつだと」
特にオオサカCNは大半が突撃兵を占めていた。
堂々とした態度で挑む事、それがここの通例となっている。
偵察兵と工作兵は全体の2割くらいで女しかいない。
建築物や人が着ている服も、昔の時代からあった外見であり
古い文化を重んじる風習が根付いているのだ。
それを眺めていた俺だが、何食わぬ顔で店員が顔を出してきた。
「こんなとこで、そんな得物だすんじゃないの!
市民が怖がるでしょ?」
「そうでした、すんませーん♪
おばちゃん、桜餅おかわり頼んます!」
「はいよ、センちゃんも食うかい」
「俺は遠慮しときます、今日は十分食ったので」
本当はもっと食べようかと思ったがやめておく。
今後でなんとなく同じ事をするような気がしたからだ。
理由は次の様子ですぐ分かる。
「わたしも御一緒してよろしいかしら?」
「ヤエ姉か」
黒い長髪の女性が近づいてきた。
この人はヤエ・ニカイドウという名で、よく共にする。
オオサカCNの偵察兵を務める昔からの付き合いがある人だ。
いや、どちらかというと所縁はあっちの人物だが。
「セン、明日はまたお茶会があるわよ。
もちろん行くんでしょ?」
「行かなきゃ締め上げるんだろ、お袋が!?」
休みの日には、ある人物が主催するお茶会が開かれる。
これが理由でおかわりを寸止めしていた。
それだけならまだ良いが、俺の母親がその主催者と縁があり
強制的に参加させられているのだ。果てしなくウンザリする
そんな俺の気も知らずに、ライリーは和菓子を食ってばかりだ。
ここに来てからは飯の時間もキチッとしている。
時間に合わせて食わないとすごく文句言われてしまう。
漸萬はパワーが要る分、食い物も確かに必要だが。
(もっと食いてーな)
長イスから立ち上がったライリーは店内へ入り、
何をしてるのか勝手に和菓子の箱に手を伸ばし始める。
「ん、どうした?」
「お、この桜餅美味そうじゃん!」
「コラッ、それに触るんじゃないよ!」
店員のおばさんは剣幕で怒り出した。
ライリーが縮こまって反省する。
「す、すんません。特注品だったとは知らなくて」
「それは売り物じゃないから駄目なんだよ」
「・・・・・・」
「欲をかくからだバカ、食いすぎだ!」
「和菓子か・・・明日のお茶のセットメニューは
何か楽しみになってきたわね。
わたしも行くからヒトミ叔母様によろしく!」
「分ーった」
「まあ俺はコイツが行くんなら行くけどよ。
来場人数は溢れないのか?」
「場所もそんなに広くないけど、ちょうど良いんじゃない?
あんたのとこはこれしかいないし」
「ラボリだろうが、茶会だろうが問題ないす!
なんてったって、俺たちゃ最強のコンビチームっすから」
ヤエ姉は立ち去っていった。
これしかいない、意味は単純に数の事。
まあ、こっちの参加人数は少ないが別に気にするほどでもない。
あの人がそういう言い方するのは理由がある。
俺達はいつもコンビチームと言われるのも当然だ。
何故なら、近江の最も人口が多いオオサカの中で
第99部隊は2人しかいないからだ。
CN法の如く1:1の戦況に立たされていた。
戦闘の大まかな部分は終わり、味方はすでに全員退却。
8人いた敵兵は7人ロストし、後1人だけ残っている。
その敵兵はわずか7m先にいる。
使用していた銃器はもう弾がないらしく、
口元を歪めながら単発式のみを構えてこちらを狙い続けている。
(相手は長刀一丁だけか・・・これだけ離れてれば、こっちが有利だ。
ハンドガンにはまだ弾がある、正確にエイムすれば勝てる)
「・・・・・・」
そのオオサカ兵は両手で刀を構えているだけだ。
四国兵は銃の優位性を過信、勝ち目はこちらにあると
すかさず1つ発砲した時だ。
ズドン ヒュンッ
「な!?」
胴体に目がけて撃ったはずの弾丸は外側へと逸れていく。
現実では有り得ない光景に気も逸らしたわずかな間に、
近江の特異性を見誤って今更往生際の悪さが出る。
すでに間合いは詰められて、細長い刃は目前にまで迫っていた。
「銃こそ最強なのになぜなぜなぜえぇ!?」
「せいやっ!」
ズバッ
オオサカCN 拠点
「で、相手はカガワモンやったんか?」
「はい、オオサカ湾を渡って西部から侵入してきたようで。
第99部隊長が最後の1人を殲滅しました」
「ははっ、あの“外様”の若武者か。
数年前は空振りが目立っとったが、ちっとは様になってきたかのぉ」
「我々と距離を置きつつも、真っ当と任務を果たしています。
武力も数ヶ月前よりも向上傾向にありと」
「せやな、ワシとて鬼やない。
組織の端くれだろうと、やる事やってりゃ弾き飛ばしはせんわ」
「そこについても私の攻を立てて・・・キンイチ司令――」
「分かっとる、見立ての件も考えてくれやろ?」
「・・・はい、お願いします」
女偵察兵が先の戦闘について報告している。
彼女の何かの推しをまともに答えず、1つの内容を告げて偵察兵は退室。
司令官は外を眺める、入れ替わりに移動する兵士達を観ながら
一息ついて語った。
「系統はどこまでも続きよるのぉ。
主義を絶対とする近江の掟もそれ相応なんやが・・・」
オオサカCN土界エリア 市民街
俺は長椅子に座り注文したお茶を1杯飲んでいる。
先の討伐仕事を終えてちょっとした休憩をしていた。
隣には相方もいて、手応えがどうのしゃべっている。
「あんときはやばかったな、セン!
奴ら、弾ぶっぱなしまくってマジで撃たれたかと思ったぜ」
「7m先ならまだいける相手だろ?
お前の得物はデカいから無理だけどよ。
対機械専門役だから、対人戦は後ろにいろよ!」
「俺様の漸萬は大型に特化した大剣だしな!
男は大物担いでナンボだろ」
連れは持ち前の武器自慢をする。
戦場にとって命と同等の雷刀、
金髪の逆毛で白と赤の和服を着た2人のやりとりがあった。
ここでは自己紹介として名を名乗るのが仕来りだから話す。
俺はセン・サイミョウジ、オオサカ兵。
こっちはライリー、同じくオオサカ兵。
こいつと話がてらに得物を見直してみる。
名前は舞䢮、細長く伸びた刃で、昔でいうカタナと呼ばれる武器だ。
こいつが手を伸ばして掴んでくる。
「お、おい!?」
「グリップにはスイッチが付いてるんだよなコレ」
ブウウゥゥゥン
「おわっ、逆毛が引っ付いちまう!」
「たり前だ、静電気が出てるんだからよ」
目には見えないが、刃の周りが放電している。
言い換えれば、これは電磁ブレードで中にはバッテリーが内蔵されて
スイッチで放電できる仕組みになっている。
この仕様こそ、先の弾が逸れた現象だ。
電磁波により磁界が曲げられ、銃弾の軌道を逸らしていたのだ。
放電時に刀身を振ると、弾道が外側にでる。
細かい理由は大昔からあるのでもちろん知らないが、
とにかくここ近江地方に継がれる技術をもっていた。
漸萬はこの機能が付いていない。
「他の地方にゃ、人みてえな機械があってそれをズバッとやる。
俺はこっちをもらったけど、電気は付けてくんねーのか」
「電気はあくまで弾掃き用だ。
武器も体格で決められてるしな、筋肉質な奴は漸萬を持たされる」
「ま、これでも特攻役は楽じゃねえわな。
どっちも敵に突っ込むのはおんなじでよ」
「確かにな、昔からここは接近主義が大きいんだよ。
“サムライ”の理念ってやつだと」
特にオオサカCNは大半が突撃兵を占めていた。
堂々とした態度で挑む事、それがここの通例となっている。
偵察兵と工作兵は全体の2割くらいで女しかいない。
建築物や人が着ている服も、昔の時代からあった外見であり
古い文化を重んじる風習が根付いているのだ。
それを眺めていた俺だが、何食わぬ顔で店員が顔を出してきた。
「こんなとこで、そんな得物だすんじゃないの!
市民が怖がるでしょ?」
「そうでした、すんませーん♪
おばちゃん、桜餅おかわり頼んます!」
「はいよ、センちゃんも食うかい」
「俺は遠慮しときます、今日は十分食ったので」
本当はもっと食べようかと思ったがやめておく。
今後でなんとなく同じ事をするような気がしたからだ。
理由は次の様子ですぐ分かる。
「わたしも御一緒してよろしいかしら?」
「ヤエ姉か」
黒い長髪の女性が近づいてきた。
この人はヤエ・ニカイドウという名で、よく共にする。
オオサカCNの偵察兵を務める昔からの付き合いがある人だ。
いや、どちらかというと所縁はあっちの人物だが。
「セン、明日はまたお茶会があるわよ。
もちろん行くんでしょ?」
「行かなきゃ締め上げるんだろ、お袋が!?」
休みの日には、ある人物が主催するお茶会が開かれる。
これが理由でおかわりを寸止めしていた。
それだけならまだ良いが、俺の母親がその主催者と縁があり
強制的に参加させられているのだ。果てしなくウンザリする
そんな俺の気も知らずに、ライリーは和菓子を食ってばかりだ。
ここに来てからは飯の時間もキチッとしている。
時間に合わせて食わないとすごく文句言われてしまう。
漸萬はパワーが要る分、食い物も確かに必要だが。
(もっと食いてーな)
長イスから立ち上がったライリーは店内へ入り、
何をしてるのか勝手に和菓子の箱に手を伸ばし始める。
「ん、どうした?」
「お、この桜餅美味そうじゃん!」
「コラッ、それに触るんじゃないよ!」
店員のおばさんは剣幕で怒り出した。
ライリーが縮こまって反省する。
「す、すんません。特注品だったとは知らなくて」
「それは売り物じゃないから駄目なんだよ」
「・・・・・・」
「欲をかくからだバカ、食いすぎだ!」
「和菓子か・・・明日のお茶のセットメニューは
何か楽しみになってきたわね。
わたしも行くからヒトミ叔母様によろしく!」
「分ーった」
「まあ俺はコイツが行くんなら行くけどよ。
来場人数は溢れないのか?」
「場所もそんなに広くないけど、ちょうど良いんじゃない?
あんたのとこはこれしかいないし」
「ラボリだろうが、茶会だろうが問題ないす!
なんてったって、俺たちゃ最強のコンビチームっすから」
ヤエ姉は立ち去っていった。
これしかいない、意味は単純に数の事。
まあ、こっちの参加人数は少ないが別に気にするほどでもない。
あの人がそういう言い方するのは理由がある。
俺達はいつもコンビチームと言われるのも当然だ。
何故なら、近江の最も人口が多いオオサカの中で
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