Condense Nation

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1章 東北編

第1話  合併国

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A.D92年 フクシマCN 貨物輸送室

 辺りには火の手が激しく上がっていた。
救援要請コールが鳴っているにもかかわらず、室内に閉じ込められて
逃げられない程の業火で視界をさえぎる煙が立ち込めている。
少年が両親と共に灰色の視界へ追い詰められていた。

「父さん、母さん早く逃げようよ!」

家族達は何者かによって奇襲を受け、避難しようとここに来る。
レーン型運搬ポッドが1台だけあったが、3人乗れる余裕すらない。
起動を確認した父親が何かのディスクを子に渡して準備する。

「なんとか間に合ったな、これで・・・・・・」

ガシッ

少年を無理矢理抱え込み、ポッドの中に押し込んでしまう。
2人は入らずに子どもだけでも逃がそうとしていたようで、
ガラス越しで無事を見届けようと別れの言葉を放った。

「お前は逃げるのよ、ここで死なせるわけにはいかない」
「ヤダよ、母さんたちもいっしょに行こうよ!」

少年は拒んだが、両親は共に逃げられないと判断。
父親はスイッチを押し、ポッドを強制的に離脱。
叫び続けて暴れても、ポッドは開けられずに移動して
2人は少年が見えなくなるまでずっと見送り続けていた。

「「こうするしかないんだ、お前だけでも生き残るんだ」」
「「最後の希望なの、頑張って強く生きなさい」」
「いやだ・・・いやだあああああああああああ!」

密閉された中で、声を聴きたくもとどかず。
少年はポッドで遠くの空へと飛び去っていく。
煙がさらに覆いつくし、もう両親の姿は見えなくなっていた。


A.D100年 イワテCN拠点 軍事演習場

 イワテCNのとある大広場がある。
そこには多くの兵士、市民の人達が集まっているが
軍事に関するパフォーマンスではなくアナウンスの一種。
そして彼らの観ている先の舞台の上に立つ1人の男が
祝辞とよぶべき迫力ある演説をしていた。



アオモリ、アキタ、イワテ
ミヤギ、ヤマガタ、  同盟



「数多の犠牲の上に、我々はこの氷固まる地に立ち
 ささやかなる然温さおんに溶ける水をすすり延命をしている。
 人は集いこそ発展を成しえて数少なき我々が手を取り合い、
 今こそ団結を起こし他国からの脅威に抗う一枚岩となり
 東北の未来のために立ち向かうべきだ!」
「わおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

市民達が一斉に湧き立ち、舞台の男に声援を送っている。
A.D100年目にしてようやく一帯の国が地方をまるごと連結。
ここ東北で5つものCNが同盟した事による宣誓を高々に
民衆に向けて発言していたようだ。


同時刻 アキタCN 市民列車内

場所は代わり、辺りには山際に木が生い茂る場所に
2階建ての列車が走っている。内の上階で男は横になっていた。

「今日はこれだけか、ついてねーな・・・」

俺は寝ながら強奪した列車にあった資源を見張っていた。
簡単に言うなら、自分達はカッパライをしている。
各CN間を繋ぐ列車に紛れ込んで拠点の資源をアサり、
ポイントと交換してしのいで生きていた。
武力も他CNとやりあう程強くはない。
しかも、今日はヘマして見つかってしまい、無事に逃げ切ったものの
1人ロストしちまった。

「ロック、1階の奴らの様子を見てきてくれ」
「はいよ」

バンダナを巻いた隊長に言われて下へ降りる。
様子を見ると、小さな寝息でメンバー達は疲れたように
グッタリと寝込んでしまっている。
いつもイビキばかりかく連中なのに、今日は静かだ。
仲間が1人消えたんだ、無理もない。
何の保証もされない世界に身を置き続けて各地を転々と渡り歩き、
俺達は飯を食うためだけで、こんな生活を送っていた。

「おやっさん、たくわえはどれくらいもつんだ?」
「ざっと1週間と3日だな、まあこれでも多い方だ。
 食料以外はいつものように市民街先で売ってPにする」
「て事は、14日後にまたやらなきゃなんねえか・・・」

隊長は少々ウンザリ気味だが、自分も同じ状態だった。
最近は線路沿いも警戒を強化されていて、始めた時よりもやりにくく
取り締まりがキツくなれば強奪もうまくいかなくなる。
いつまでこんな生活が続いていくのか、割に合わない。
この列車と同じ窮屈きゅうくつな感じが抜けきれなかった。
一応、確認だけはする。
2階に戻るのも面倒だから、ここで腰を下ろした時だ。


ポンッ   ドゴオォン

列車に炸裂さくれつ音が発して突き抜けるごとく聴こえてきた。
先頭車両から衝撃が加わり、列車は急停止しかける。

「鉄道兵団だ! 散開しろ!!」
「なんだ!?」

メンバー達があわてて起き上がり、ガラスの破片が顔を横切って
奇襲を受けた様子をすぐに理解して脱出を図ろうとする。

「パルスミノルで足止めしやがったな、お前ら列車から出ろ!
 中にいたら爆死だぞ!」
「散開しろォ!!」

隊長が窓の端から状況報告。
パルスミノル、グレネードランチャータイプで爆撃して
走っていた列車の駆動を抑えられた。
俺達が紛れているのがバレて排除にかかってきたようだ。
炎煙を散らすように列車から外に飛び出そうとする。
ある程度止むと、緊急停止作動されて手前から数人鉄道兵団が入って来た。
仲間達は捕縛され、また攻撃も受けて内の1人が接近。
俺は懐に潜り肘打ちをかまし、アッパーの掌打を打ち上げた。

「ガフォッ!?」
 (逃げ道確保しねえと!)

なんとかして、ここから離れなければならない。
幸いな事に、この辺りは死界の多い森林地帯だった。
窓の目先の周辺にまだ敵はいない。
山の中に逃げ込めば活路があると見込んだが、指示をだす前に
メンバー達は捕縛され、また射撃されていく光景が見える。

「畜生がぁ・・・」
「俺達じゃどうにもならない、諦めろ!」

列車から見計らって飛び出し、2人は道なき道を移動し続けた。
追っ手を巻いたと思いきや、隊長に異変が起こった。
さっきの交戦中のどさくさで足を怪我していたのだ。

「隊長、足が!?」
「かまわねぇ、進め!」

あせりが見える中、隊長はロックの背中を押して逃がそうと
下がった腰なのに背中を押して先に行かせようとする。
それを拒んで言い返すが、初老の体力で難なく抜けられるはずがない。

「あんた1人置いていけるか!」
「お前はまだ若ぇ、こんなとこで死ぬな!」

山のふもとから数人追ってきている。
このままだと追いつかれてしまう寸前だ。
逃げなければ共に捕まり、ロストされるだけ。
俺の脚向きは迷い、置き去りにできる根性など持ち合わせていない。

「「やめろ・・・やめてくれ」」
「行けェ!!!」

隊長の一喝いっかつが次の行動をすぐに切り替えさせて迷いを断ち切る。
俺は無我夢中で山を走り抜けた。
しばらくしてから、背後から大きな爆発音を耳にする。
方角を合わせても隊長がいたあの山の中からだった。

「・・・・・・」

その鈍い音が何かは、大まかに予想がついている。
まだ背中を押された圧力が残っている気がする。
結局残ったのは自分1人だけ。
心身ともに疲れ果てて夜間を彷徨さまよい歩き続けた。
小さな一軒家があった。誰もいなさそうだから
ここで泊まっていくとする。今はなにも考えたくはなかった。


翌日

朝になり、日が俺の顔に差しかかってくる。
どうにかここは捜索されなかったようで助かった。
だからとはいえ、いつまでもここにはいられない。
つい、まぶしくて顔を上げた瞬間であった。

ガラッ

「あ・・・」

ドアが開くと同時に声をあげる。
誰かに見つかったようで、ここの住民だろう。
そこには子どもが俺の顔を見かけてハッとしていた。
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