ハリネズミたちの距離

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三章・私の目標はハリネズミ

四十三話「いつの世も」

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「何とか着きましたね……宮古島」
「本当、よく着いたよ」

 ネックレスを貰ったあと、私が気持ちを整えるのに時間がかかりすぎて飛行機の時間ギリギリで空港について、その上一番端の搭乗口だったのに真反対の搭乗口に走ってしまい、もう今日は無理だと先生と言ってたけど何とか間に合った。

「もしもし、今着いた」

 荷物が流れてくるのを見ながら待ってると、先生が誰かに電話してる。聞かなくてもその誰かはわかるけど……飛行機の中から緊張しててもう疲れた。疲れてるのに、まだ緊張しまくってるから体が持たない。
 流れてきたスーツケースを取って空港を出ると、先生が誰かに手を振ってる。空港の目の前の広い駐車場、手を振り返した相手が車に乗り込んでこっちに来てくれる。

「久しぶり」

 運転席から降りてきたのは男の人。おう、と短く言うと私を見ておや?  なんて顔になる。

「あっ、先生……玄雅さんの家政婦的なことをしてる美本知世です。お世話になりますよろしくお願いします」
「あ、玄雅が言ってた子か。てっきり彼女連れてきたのかと思ったよ」
「お父さんはいらんことしか言わないから無視していいよ」

 先生はお父さんを運転席に詰め込んで、荷物を後ろに積み込んで私たちは後部座席に座る。
 相変わらず煙草臭いな、なんて先生とお父さんが話してて。私は緊張で口がからっから。飲み物がほしい。

「知世さんは宮古島初めて?」
「はっ、い!  沖縄本島も二回目だったので楽しかったです」

 私の言葉にお父さんが二回目……?  と不穏な声で先生に質問する。

「昨日は本島に一泊してた」
「……それをなんで俺らに言わないんだよ。ばぁちゃん一昨日からもやいで本島行ってんのに」
「え、ってことはばぁちゃん今宮古にいないの?」
「一週間ぐらいゆっくりするって言ってた」

 もっと早く連絡しろと怒られてる先生はなんだか新鮮でおもしろい。
 そんな二人の様子を見てるとぴろんとスマホがなる。画面をつけると慶壱から読んだと連絡が来てる。
 そういえば猫の目に映るのデータを渡してたんだった。沖縄旅行のことで頭いっぱいですっかり忘れてた。なんか長文送りつけられてるけど、なんで今このタイミングなの!?  ムカつきながらスマホを鞄に突っ込む。

「美本知世です。お世話になります!  お邪魔します!」
「おっ、元気ないい子が来た」

 空港から車で二十分ぐらいで先生の実家……?  というか先生のご両親の家に到着。

「玄雅、昨日から本島にいたんだって」
「はぁ!?  何それ聞いてないんだけど。そもそも、二日前に来るって連絡するっておかしくない?  もっと前もって連絡しなさい。あんたはいっつもそうなんだから。言ってくれたらばぁちゃんのもやいだってずらせたかもしれないでしょ!?」

 ついてそうそう、口早に怒られまくる先生。先生は先生ではいはい、なんて言うだけで全然聞いてない。
 すごい、なんか先生が子供みたい。年相応って感じがする。

「こっちが父親でこっちが母親。いつもばぁちゃんも一緒に住んでるけど、今は本島にいるらしい」

 先生が私に紹介してくれると、怒ってたお母さんはにぱっと笑顔になる。

「知世ちゃんだったよね?  玄雅が女の子を連れてくるなんて、こんな日が来るとは思わなかった」
「うるさいから、まじでうるさい」

 先生になんと言われても楽しそうなお母さん。先生はもう無理と言わんばかりの深いため息をつく。

「ご飯の用意してるんだけど、知世ちゃんも手伝ってくれる?」
「はい!  頑張ります」

 お母さんに言われるがままキッチンに入ると、もう既に大量のご飯が作られてる。他にも誰かお客さんが来るのかな……?

「玄雅と知世ちゃん来るって思ったら気合い入っちゃって、作りすぎたけど頑張って食べてね」

 お母さんに聞くとほぼ全部沖縄料理らしい。じゅーしーに中身汁、ふーちゃんぷるにグルクンの唐揚げ。ミミガーとテビチ、天ぷらと言って指さしたのはとてつもなく大きいお皿に色んな形のものがこれでもかと盛られてる。
 食べれる気がしない……見てるだけで胃もたれしてくる。そんなことは当然言えないので、美味しそうですねと当たり障りないことを言っておく。

「そのネックレス素敵ね」
「あ、ありがとうございます。昨日先生がくれたんです」
「先生ってことは……玄雅が?」

 はい、と言うとお母さんはにやにやとよからぬことを考えてる顔で私を見つめる。お母さんが考えてるようなことはないんです。ただ、私が先生のことが好きなだけ。

「ミンサーのちゅら玉なんてあいつもいいものあげたね」
「ミンサーって何ですか?」
「ちゅら玉の上の部分に描かれてる柄のこと。五つの四角と四つの四角が交互になってるでしょ?  それはいつの世もって意味が込められてるの。本当は女性が男性に渡すものなんだけどね」

 お母さんいわく、沖縄全体として有名なものらしいけど本当は竹富島のものらしい。竹富島って島がどこなのかあんまりわかってないけど。

「当時の恋愛は女性の元に男性が通う通い婚が当たり前で、女性が男性にいつの世も足しげく通ってくださいって意味で渡したの。つまりは、そういうこと」

 え……?  と短い声を出して固まったままの私にお母さんはうふふ、とにやにやし続けたまま。
 そういうことって、え?  でも、本当は女性が渡すもので、男性が渡すものじゃなくて、でも先生は私に渡してくれて……え?  何それ、つまりはどういうことなんですか?
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