ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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2章 成長

みんなでお尻。

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 鍛錬所にいるであろうサイモンさんに礼を言う為、俺とハミィが町の中を見回っているマジェとカッチェを見つけ、そのまま来たのだが鍛錬所の中にはサイモンさんだけではなく黒光りした筋肉を剥き出しにしている男たち、そしてクコさんがいた、今日は意外とまともなんだななどと思いながらもここに来た目的を済ませる。

 「こんにちわサイモンさん、クコさん、今日は皆で先日のお礼を言いに来ました! 今大丈夫でしょうか?」

 「うむ、よく来たなお前たち! まぁ礼など構わんさ、お前たちもよくやったしな」

 「うん、みんな頑張ってた、特にコウは以外にも最後まで立ってし」

 「クコさん以外にもって・・・でもまぁあそこで立てたのは間違いなくサイモンさんのおかげだと思ってます、そういえばあの時の力っていったいなんだったんですかね? なぜか体の中から力が溢れてくるようですごく軽くなった感じがしたのですが」

  そう、あの時の感覚は何となくではあるけれど覚えている、全身が熱くなるような、自分でもどうしようもできない力が体の中からあふれ出て来るあの感覚を。

 「ふむ、覚えてはいるようだな、あの時の貴様の力を説明すると、ナイトのみに伝えられる技にオーバーチャージという技がある、この技は自身の限界を軽く超える力を一時的にもたらしてくれるという技なんだが、果てしない修行を積んだところでこの技はだれでも習得できるものではない、いや、本来ならば誰も習得が出来なくなってしまっている技だ」

 どうゆうことだ? 誰も習得が出来た事がないならまだわかるんだが出来なくなってしまっているというのは? それにそんな技があったとして何故俺は使えたんだ?

 「お前たちはこの世界にいる女神の話はしってるな?」

 女神、たしか悪神との闘いでお互いに力を使い切ってしまい、今も眠りについているというあの女神だろうか?

 「話くらいは知っています、今も眠りについているという話ですよね?」

 「そうだ、遠い昔に戦いがあったその時に女神の加護によりナイトにはオーバーチャージという名の技が与えられた、しかし知っているように互いの神は眠りについた、その時からこの技は誰も習得できなくなってしまっている、原因はおそらくナイトに掛けられていた加護が消滅しているからではないかと言われてきたのだ、最後にこの技を習得した人物の名はスクードという人らしいのだが彼を最後に誰も習得できていない、ただ伝承の様に伝わって現在にまで至っている」

 「待ってください、それなら何故俺が・・?」

 何故俺がその技を使えた? その話ではどれほど昔の話かは分からないが少なくとも何百年、誰も修得出来なかったという事だろう? 目の前にいるサイモンさんでさえだ、それなのに何故・・・?

 「理由はわからん、それに貴様はまだそれほど修行を積んでもいないしな、だから私はある結論を導き出した! つまりだ!」

 「つまり・・?」

 「貴様のあの時の力はたんなる火事場のクソ力だ! それ以外に思いつかん! よって気にした所でどうしようもない」

 まぁ確かにそう考えた方がしっくりは来る、そんなとんでもない技を俺が使える理由なんてわからないのだから、それなら火事場のクソ力だと思った方が納得はまだ出来る。

 「そしてだ! 今日は以前話にあった全員の修行を行う!」

 そう、修業の話があったんだが俺の修行ならわかるのだが他の皆の修行はどうするつもりなのだろうか? ハンターであるマジェならなんとなく一緒にできそうな気もするのだが他の二人、カッチェとハミィまでもが一緒に修行となると全く想像が出来ない。

 「サイモンさん、さすがに女の子二人に同じ様に肉弾戦の修行はできないと思うのですが、魔法職ですし」

 「いや、今日は体を動かす修行はせんぞ? 今日の修行はお前たち全員の精神面の強化を目的におこなう!」

 先日の一件で心を折ってしまった事や余りの出来事に動く事も出来なかった事に対する精神面の修行だろうか、それなら全員で出来そうではあるが実際問題どういった事をするかだな。

 「それで俺達は何をすればいいんすか? サイモンさん」

 「うむ、よく聞いてくれたマジェよ、まずはあれを見ろ!」

 そういいながら指を指す場所、そこには少し大きめのアナが4つ並んで掘ってある、地面が土であるがゆえに行える修行なのだろうか? しかしこのアナ、人が入れる程の深さがあるのだが・・・まさか・・ね?

 「いいか、これからお前たちにはあの中に入り、首まで埋まってもらう!」

 「「「え!?」」」

 三人は驚いていたが俺は自分の予想が当たってしまった事、そしてその先に待ち受ける修行の内容を考えると寒気がする、おそらくではあるがそのための筋肉達なのだろう。

 「ちょっと待ってくれよサイモンさん! 首まで埋まれって俺達の服とか土まみれになるし、なんでそんな事をしなければならないんだ!」

 俺はもうあきらめている、しかし他の三人はいきなりそんな事を言われたら拒否するのは当たり前だろう、マジェの言う遠り、何故埋められなければならないのかは俺も疑問には思うが。

 「いいかお前たち、今回の修行はいわゆる耐性を身に付けてもらう為のものだ、身動きが取れない戦いなどこれからいくらでもお前たちは経験をしていくことになるだろう、それゆえの修行だ!」

 「えっと、つまり動けない様な状況を想定して行う何かの修行なんですね? 耐性ってなんの耐性を付けるんです?」

 「いいかハミィ、例えばだ、戦闘中で身動きが取れない、そんな時に敵からスリープの魔法をかけられた場合、どうなる?」

 「どうって・・・寝ちゃうと思います、そして・・・」

 死ぬだろう、戦闘中に寝るなんて殺してくださいと言っているようなものだ、寝た相手に慈悲なんてかける敵もいないのだから、相手が魔物であれば全員食われる、人であれば男は殺され、女は凌辱を受ける、そうなってもおかしくない。

 「大体お前たちが想像した通りの結末になるだろう、そこで今回の修行だ、首まで地面に埋まる理由は人間はある程度であれば体を動かし、構える事によって耐えることが出来る、まずはそれを無くすためだ、無防備に近い状態で魔法を受け、耐える事ができる様になればいざというとき必ず役にたってくれるはずだ!」

 なるほど! そんな考えがあったとは!! 確かに耐性さえ付けることが出来ればすこしでも生存率を上げることが出来る! さすがサイモンさんだ。

 「他に質問がある奴はいるか?」

 サイモンさんに向かい合いながら横にならんでいた仲間の顔を見ると嫌そうではあるが各自言われた内容、その必要性を理解したようで真剣に受け止めていた。

 「ないようだな、では各自入れ! 始めるぞ!!」

 言われた通りにアナに入ると筋肉の男達はそれぞれのアナに入っている俺達に土をかけていき、あっという間に首から下が埋まっている状態を作り出して見せた、さすがの筋肉だ。

 「よし、では今からお前たちにスリープの魔法をかけてもらう! もちろんかけるのはクコだがな!」

 「まぁ後輩がこれで生き残れる確率が上がるなら手伝うよ」

 「うむ、そしてお前たちに言っておかなければならんことがある!」

 なんだ? この状態になってから何か言われてもどうしようもない気もするのだが。

 「何も無しにこの修行を行っても実践ではないのだから危機感がないだろう、そこでだ! お前達には罰を与えることにする!」

 「ちょ! なんだよそれ! そんなの先に言ってくれよ!!」

 「先に言えば了承なぞせんだろう! お前たちに与える罰はスリープ一回で寝る事にこの男達が顔に一歩ずつ近ずくというものだ!」

 筋肉もりもりの男が顔に近づいて来るのは確かに嫌だな。

 「お前達! 用意をしろ!」

 サイモンさんの掛け声で動き出した男達は何故かズボンを脱ぎ、パンイチになった状態で俺達の顔から少し離れた位置で四つん這いになった。

 「え・・・・?」

 「ちょ・・!」

 「な、なに!?」

 これは・・・・うそだろ・・・? 四つん這いになった筋肉達の顔が俺達と同じ方向を向いている、つまり、俺達にお尻を向けているこの状況はまさか・・!?


 「大体察したか? この男達は一回寝る事に一歩ずつお前達の顔にお尻を近づけて来る! 最終的にどうなるかは・・・・わかるな?」

 「い、いや~!!コウ助けて~!!!」

 「おいおい、コウ! うそだよな・・?」

 「コウ! なんとかして! コウ!!」

 「ごめん、みんな、無理だ・・・。」(あきらめろ・・・)

 「「「いやだぁぁぁ!!」」」

 「さぁ修行を始めるぞ!! 耐えて見せろお前達!!!」
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