ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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1章

彼女の傷。

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女装。

それは限られた強者のみが欲望をさらけ出すことによって発揮する現象。

カノ者は言う、ワタシキレイでしょ?。

カノ者は見せる、その服装を。

カノ者は触れる・・・アナタノカラダニ・・・・。








俺は夢をみているのか?本当はまだ宿で眠っているのではないか?そうでないと説明がつかない、この事態に。

俺は確かに相方を希望し仲介人に頼んだ、そして来たのが女装した男だ、これはどうゆうことだ?なにかの冗談か?

そう思い回りを見渡すと見えるのは・・・・哀れみの目だ。

なかには笑うのをこらえている人までいる、なぜこうなった?俺のドキドキは?俺のワクワクは?俺の緊張は?どこに行った!!!!

こんなものどう処理をしろというのだ!周りからもこんな目で見られ、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ!!

俺のドキドキを返せ!!俺のワクワクを返せ!!俺の・・・初めてを返してよ・・・。

しかしそんなことは相手に言えるわけがない!向こうがどうゆうつもりかはわからないがそんな事を言ってしまえば確実に傷つけてしまうだろう。

それに今の俺の状態、向こうから話しかけられたこの状態をまずなんとかしなければ!どうすればいい・・・?なんと返せばいい・・??色々返事を返す心構えはできてはいたさ!だがこれだ!どう返せば傷つけずに済むのだ!?わからないわこんなもん!!

そうこうしているうちに口をパクパクさせている俺をみた彼女?は暗い顔をしながらうつむいた。

「そうですよね、こんな私が相手だとこまりますよね・・・。」

いや、うん、困るよ?でもね、その前に聞きたいんだ。


なんで女装してんの!?


聞きたい、すごく聞きたい!でも聞けない!!!

俺自身がそんな状態で返事もまともにできない、そうなってくると先ほどの質問し対する回答は自然と沈黙を持って肯定とかしてしまった。

「ごめんなさい、そうですよね、今の私じゃどう足掻いても相手なんてみつけることはできませんよね・・。」

なにか返事をしなければ!しかしどう返事をすればいい!?いや、そんなことないですよ~とか言ったところで信じてはもらえないだろう、ならいっそ言ってみるか?

なんで女装してんの?と・・・。

言えるわけがない!!!

そんな事を言えば傷つけてしまうのは間違いない、それに今は周りの目もある、この状態で思わぬ相手だったとしてもできれば穏便に済ませたい、なにか・・・・・なにかそうゆう手は・・・・。

思いつかねぇ!!!

「すいませんでした、失礼します。」

俺がそうこうしているうちに彼女?は走り去ってしまった。

悪いことしたなと思う気持ちもないわけではない、しかしまぁあれだ。

世の中色々な人がいるよね!!

走り去る彼女?の背中を見送り、周りからはどんまい!という声をかけられ俺はこの場に居続けることが出来ずにとりあえずギルドに向かった。



その後の俺の記憶はない、気がつくとギルドに戻ってきていた、先ほどの状況の整理がつかない、それが大きな原因だろう、それに俺の胸の中にある思い、なんでよりによってはじめての相手があれなの!?という思いが強いのだ。無理だ、耐えれない・・・愚痴りたい・・・。
そんな俺のどうしようもない感情は誰かに相談か、聞いてもらわないと収まらないだろう。

だれか・・・・そう思い周囲を見るともちろん知っている人や話したことがある人なんていない、カウンターにいるあの人以外は。
俺は自然と彼女の元に向かって行ってしまった。

「あら?コウさん、どうしたんですか?ペアを紹介してもらいに行ったのでは?」

そう、自然と向かって行ったところはラミアスさんの所だった。

人にこんな愚痴を言うのなんて相手にも失礼だとは思うし。
でも誰かに聞いてほしかった。

「行ってきました、それでですね、紹介してもらったヒーラーの人がですね・・・。」

変態でした!とは言えないよな。

「どうしました?お相手のヒーラーさんが?」

「なんといいますか、女性用の服を着た男の人で・・・。」

やんわりと包み言ってみるとそれだけでラミアスさんはなにがあったのかがわかったようだ。

「あぁ、なるほど、そうゆうことでしたか。それでコウさんは彼女に何か言ったのですか?」

なにか?そんなもの言えてない、むしろ向こうは挨拶をしてくれていたのに俺は一言も話せなかった、ショックで・・・。

「いえ、、俺がモタモタしているうちに走り去ってしまって・・・。」

「そうでしたか、それでコウさんはどうなされたいのですか?」

「どうと言われても・・・正直あんな人が相手になるとは思ってもいなかったんで何も考えれてないです。」

それが正直な思いだろう、どうしたい?と聞かれてもわからないとしか言えない。

そんな俺の様子を見ていたラミアスさんは少し話してくれた。

「まず、コウさん、貴方に言っておかなければならないことがあります。
彼女に関してです。」

そう言って話し出すラミアスさんの言葉を聞きながら俺は一人称は彼女でいいのか?などと考えていた。

「コウさんが冒険者になる3年ほど前の話になるのですが、一組のパーティーがダンジョンに潜りました。」

いきなり始まった話になんで今その話を?とは思ったが黙って聞くことにする。

「そのダンジョンは初心者冒険者が戦闘訓練で行く場所で、トリーアの近くにあります、そのパーティーは順調に最深部へとたどり着くことができたのですが、帰って来たのは彼女一人だったのです。」

どうゆうことだ?人数にもよるが最深部まで到達したメンバーなら帰りも簡単に帰ってこれるのではないだろうか?

「ここまでの話を聞いてもらってコウさんも疑問に思っているのではないですか?なぜ、彼女、と私が言うのかを。」

それははじめから思っていた、女装しているんだ、彼か彼女、どちらで呼んでいいのかまずわからない、でもラミアスさんは彼女、と言う。

「そうですね、本音を言えば何故彼女と呼ぶのかわからないです。」

「答えは簡単ですよ、彼女は、本当は女性だからです。」

女性?男にしか見えなかったんですが・・・

「それに言いましたよね?帰って来たのは彼女一人だけだったと。
他のメンバーは全員、死んでいます。」


それを聞いた俺はますますわからなくなった、攻略終了しているダンジョンで後は帰るだけ、そんな状況でなぜ他のメンバーが死に、一人になるような事態になるんだ!?考えられるのは仲間割れ?でもそれで性別が変わるほどの事がおこるものなのか?上級冒険者であればレアなアイテムがあってそれを使いそうなったと言われればまだ納得はできる、そもそもそんなアイテムが存在するのかわからないが。
でも駆け出し、初心者がそんな事にどうなったらなるんだ?

「当時のリーダーの人は男性だったので彼等と言わせていただきますね。
彼等はダンジョンの帰り道で遭遇してしまったのです、本来そんな場所にいるはずがない者、魔族の中でも10人の角を持つ王、その中の一人4の王に。」

「ちょっと待ってください!あの話って本当の話なんですか?俺が聞かせてもらった王の話って。」

「本当の話ですよ、今もこの世界には10人の王が存在しています。」

たしか聞いたときは女神がどうとか言ってたからおとぎ話か何かだと思ってたのにそんなのが本当にいるのか・・・?

「まぁそこは信じてもらうしかありませんね、話を戻しますけど、彼等は王と出会ってしまい、彼女以外のメンバーは王に遊ばれ殺されました、その亡骸はギルドでも確認していますが・・・ひどいものでしたよ。 そして彼女の話になります、彼女は王によって呪いを受け女の体から男の体へと変えられてしまいました。
彼女が一人生きて戻ってこれたのは、王のただのお遊び、でしょうね。
戻って来た彼女からの報告を受け、ギルドから上級冒険者をかなりの人数派遣しましたが王はもういませんでした、残っていたのは無残な亡骸だけです。
そして彼女は性別も変わってしまった事と、王に出会ったことによるショックでしばらく宿に籠っていたんです、つい先日ですね、宿から出てまた出歩く様になったのは。
彼女についてはこれがほとんど全部の話です、何か聞きたいことはありますか?」

なんというか・・・想像がつかないというのが正解だろうか、しかしわからない事と言えば一つある。

「彼女は何故男物の装備を着ないのですか?女物を着ているから見られる目もおかしくなるんじゃないんですか?」

「呪いは性別だけではなく、装備や衣服にもかかっているのです。いえ、彼女がかかっていると言った方が正しいですね、彼女は性別が変わってはいますが装備や衣服は女性ものしか着ることができないのです。何度か試したのですがダメでした。」

ということはあの子は自分の意志ではなく呪いによりあんな状態になっているのか、周りから変な者を見る目で見られ、馬鹿にされ、そんな生活を続けているのか・・・・。
事情を知らなかったとはいえ俺はなんて失礼な事をしてしまったんだ。

「さて、コウさん。今の話を聞いてあなたはどうしたいですか?いえ、どうしますか?」

俺がしなければならない事、まずは謝らないとダメだろう。傷つけたはずだ。

「ラミアスさん、あの子と話をしたいのですが、どうしたらいいですか?」

そう言った俺の言葉を聞き、ラミアスさんはこう言った。

「ちょうど今ギルドに入ってきましたよ!」

その言葉を聞き、振り返ると確かに先ほどの子がギルドに入って来ていた、そんな状況で俺は、自分から、周りになんと言われようと気にしない様にしながら彼女へと歩いて行き、声をかけた。


「さっきはすいません、少し話させてもらってもいいですか?」と。
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