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その24

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千歳はウキウキと出かける準備をしていた。
いつもは当たり障りのないコーディネートで大学に行っているが、少しだけおめかしをしている。
濃紺のAラインワンピースに、ワインレッドのノーカラージャケット。由美子がくれた服達の中には、大人っぽくて素敵な物も多かった。
自室を出て、奥の部屋をノックする。
「さえちゃん先生ー!ちょっと出かけて来ます。」
すぐさまドアが開き、部屋の主が顔を覗かせる。
「聞いてない。すぐ準備するから待って。」
「それは大丈夫です!今日は由美子さんが車で送ってくれるって言ってたから。」
千歳は少しもじもじしながら答えた。
「そう…分かった。千歳、スマホ貸して。」
「え?はい。」
パスを外して渡すと、サッと操作を終えて返された。
「これで大丈夫。気をつけて行ってきて。」
「はい、ありがとうございます!」
ルンルンと去って行く千歳の背中を見送り、さえちゃん先生は首を傾げた。
「あんなに可愛い格好して、誰かとデートでもするの?いや、それはないか。」
しばらく考え事をして、どこかへ電話をかけた。


由美子が出かけるついでに車へ同乗させてもらい、大型商業施設に到着した。
本当は美月を誘ったが、生憎バイトのシフトが入っていて来られなかったのだ。この人混みなら一人でも問題ないだろうし、善は急げとやって来た。
千歳のバストサイズでも入る下着が売っているお店は、近辺ではここにしかない。
「育乳してもらうのに、いつもの下着じゃ恥ずかしいもんね。」
今夜の訪問を想像し、一人照れた。
店には、可愛いものからセクシーなものまで、ありとあらゆるデザインが揃っている。
ーあまりキメキメだと引いちゃうよね。
女性同士だし、あくまで育乳だし、セクシーよりは可愛い方が無難だろう。触られる訳だから、ワイヤー入りではない方がいい。
真剣な表情でアレでもないコレでもないと探し続け、ようやく気に入った物を見つけた頃には、1時間以上が経過していた。
全部で1週間分を購入し、満足して店を出る。
せっかくここまで来たのだから、どこかカフェにでも寄ってから帰ろうかと店内案内図を見上げた。
「…うーん、高そうなとこしかない。」
現在バイト休止中の為、資金が足りないのだ。
「あれ、千歳ちゃん?」
後ろから声をかけられて振り向くと、昨日見知った顔があった。
「光大さん。」
「千歳ちゃん、一人?」
「はい、買い物に。光大さんは?」
「俺もー!」
オーバーサイズのストライプシャツに、オーバーサイズのズボンを合わせ、サスペンダーをつけている。玄人っぽい服装だ。
「光大さん、昨日もですけど今日もおしゃれですね。」
「えっ、本当?!ありがとう。千歳ちゃんも、大人っぽくて雰囲気違うね。可愛いよ。」
言われ慣れない褒め言葉に、恥ずかしいやら嬉しいやら。
「ありがとう、ございます…」
「ねえ、せっかくだからお茶しない?俺、おごるよー!パンケーキ?パフェ?」
おごるという言葉に、満面の笑みで反応した。
「ケーキ食べたいです!」
「分かった!オススメのお店があるから、そこへ行こう!」
光大の車に乗り、少し離れたカフェへ行くことになった。


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