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その13
しおりを挟む校内カフェは、誰でも利用することが可能だ。
さえちゃん先生は部外者なので、本当は研究室や教室に入ってはいけない。
だから、送り迎えはカフェにしようということになったのである。
数日、二人での通学を続けていたが特に何か起こることもない為、今日はこのまま警察に相談しに行こうかということになっていた。
美月と並んでホットティーを飲んでいると、入り口に麗しの美少女が見えた。
「さえちゃん先生ー!こっちー!」
「美月、声が大きい。」
本日の服装は、膝下までの総レースのワンピース。肌寒くなってきたから、カーディガンの上にデニムのジャケットを羽織っている。
「ひーん!さえちゃん先生、今日も可愛い。」
毎日見ている千歳もそう思った。
「帰りに警察行くよ。美月も来るの?」
コテンと首を傾げたさえちゃん先生に、美月が頭を振る。
「行きたいんだけど、バイトなんです。千歳のことよろしくお願いします。」
「ん、分かった。」
「じゃね、美月。また来週!」
「またねー!」
さえちゃん先生と並んで校内を歩くと、大概の人間が振り向く。
毎日必ずカフェに来るから、きっと周りも彼女の存在を認識し始めているだろう。
「さえちゃん先生、可愛いから気をつけてくださいね。変な男に声かけられても、逃げてくださいね。」
「…千歳に言われたくない。」
それもそうだ。
「私も気をつけるので、出来るだけ気をつけてください。」
「ふふふ、笑える。」
そう言う割には、表情は動かない。
花のような笑顔や、ニヤリと笑う悪い顔は、あれ以来見ていない。
「さえちゃん先生って、感情が顔に出ないタイプですね。」
「んー、まあ。探偵だし。」
ということは、ポーカーフェイスにしているのだろうか。
「探偵って言うより、何でも屋さんですよね。」
千歳の送り迎え以外にも、近所の人から色々な相談を受けているらしい。
由美子に聞いてみると、報酬はお菓子だったり野菜だったりの現物支給、金券や図書カードだったりすることもあるとか。
「困ってる人の話を聞くのも、探偵の仕事。」
町内会長の話を聞いたって耳にした時は驚いたけれど、なるほどそれなら納得がいく。
「そっか、素敵な仕事ですね。」
「うん。」
ポーカーフェイスのままだけど、声は楽しそうだった。
そこそこ遠い警察署へ着くと、相談窓口にて相談員を紹介された。
今までにされたこと、あったことを話すと、相談員は優しく受け答えをしてくれた。
隣にさえちゃん先生がいたのもあり、そこまで緊張することもなく終えることができた。
今後は、見回りの強化をし、また何か動きがあればすぐに110番をすることで、一旦落ち着いた。
「初めて警察に来たけど、思ったより怖くなかったです。」
「ん、良かった。話しておくだけでも、安心するし。見回りの回数が増えれば、おいそれと近づけないから。」
無表情だけれど、さえちゃん先生の眼差しと声は優しい。
「はい、あとはできるだけ一人にならないように気をつけます。」
「校内も、立ち入り禁止だからって入れない訳じゃないから、トイレに行くのも気をつけた方がいい。」
「…そっすね。はあ…何でこんなに運が悪いんだろう。私って、ついてないんです。」
夕暮れの空、陽が落ちるのが早くなった。
「ん、それはあるかも。でも、死んでなくて良かった。火事でも、ストーカーでも、元気に生きてる。」
「運が悪いけど、生命力は強いってことですかねえ。」
「素晴らしいな。」
いまいち褒められている気はしないけれど、千歳はフォローに感謝した。
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