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40・やっと二人

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「こんなに楽しそうにしている疾風くんを見られて、本当に良かった。渡辺さん、招待してくれてありがとう。これからも、疾風くんをよろしくお願いします。」
疾風さんのお父さんが、にっこり笑って頭を下げる。
「そんな、来てくださってありがとうございます。とても楽しいパーティになりました。」
二人でぺこぺこしていると、後ろから低い声が呼びかけた。
「お父さん、お母さん、もうお帰りの時間でしょう。舞台が始まってしまいますよ。」
「おお!そうだった!では、ありがとう渡辺さん。」
「こちらこそ、お気をつけて。」
疾風さんのご両親が手を振って帰って行った。
誕生日の感謝の気持ちで、毎年何かしらのプレゼントをしているらしい。今年は二人の好きな舞台のチケットなんだそうだ。
誕生日プレゼントをもらうんじゃなくて、渡すのか。中身は割と変なのに人間が出来てるな。
「さて、僕たちも出かけましょうか。」
眼光鋭く嘴は音を立て、上機嫌な猛禽類がそこにいた。
「そうですね。」
リビングに寄って、みんなに声をかける。
「残った料理は食べててもいいし、持って帰ってもいいからね。」
ふにゃふにゃしている波琉が手を挙げた。
「やったー!明日のご飯にしよー!」
「食べ過ぎて後悔しても遅いぞ。」
「うるしゃい!」
「姉さん、忘れ物ない?」
「なーい!」
「楽、鷹司さんと仲良くね。」
「もちろんです、お母さま。」
「待って今日のノリはなんなの?!専務の誕生日でしょ?!」
みんな私がお嫁に行くみたいなノリで話してくる。
全くもう。
「では、行きましょうか。」
ウキウキした専務に手を引かれて、家を出る。
いつの間に呼んだのか、家の前には外車のハイヤーが止まっていて、運転手さんがドアを開けてくれた。
さすが、富豪。


またここに来てしまった。
広い室内、見晴らしの良い階層、大きなベッド。
初めて夜明けを迎えた場所。
専務の誕生日なのに、どうしてこうなるんだ?
でも本人の希望が強いのだから、もう割り切って行くしかないんだろう。
経済を回すのもお金を持っている者の務めなんだって、専務が言ってた。確かに、私の財産じゃ大して経済回せないもんな。
使うところで使う、それが大切なんだろう。
慣れるかどうかは別として。
「楽さん、また難しい顔してますよ。」
ふわふわの指先で眉間をぐりぐりと押される。
「この国の経済について考えていました。」
「それは素晴らしいですね。今度、社長とディベートをしてはいかがですか。」
「遠慮しときます。」
眉間にあった指が額から耳に移動し、手のひらが頬を包むから、うっとりと目を閉じる。
このところ専務も私も忙しくて、ゆっくりする時間がなかったし、この前の膝枕タイムも社長が来てしまったから、こんな風にくっつくのは本当に久しぶりだ。
ああ、羽毛が気持ちいい。
この羽毛に包まれたい。触りたい。埋まりたい。
指を突っ込んで撫で回して、顔を埋めて呼吸して、頬ずりして抱きしめたい。
そう思ったら、居ても立っても居られなかった。
頬を包む手を上からさすり、手首をガッチリ握る。
「疾風さん、脱いでもらっていいですか。」
「えっ?」
「さあ、早く!今すぐ!」
驚いている専務を待つのももどかしく、着ていたスーツからネクタイを外し、ジャケットを脱がせる。
普段の仕事用と違って、パーティだからと仕立ての良い、高そうな生地のスーツを着て来ていた。だから、シワになると申し訳なくて、脱がせたジャケットはハンガーに引っ掛けに行った。
「ご丁寧にありがとうございます。」
「はい、じゃどんどん脱いでください。」
「積極的ですねえ。嬉しいです。」
いそいそとワイシャツのボタンを外し、見えた胸元の羽毛が私を呼んでいる。
もうだめ、待てない。
なんとか最後のボタンが外れるまで耐えて、がばりと胸元に飛び込んだ。
「るんるん、そんなに俺のこと好きなの?それとも、俺の羽毛が好きなの?」
久しぶりに聞いたるんるん呼びと、敬語を崩した話し方にドキドキする。
「羽毛が好き。」
「……結構ショック。」
「嘘ですよ、ちゃんと疾風さんのこと好きですよ。」
なんせ、熱を出して寝込むくらいですからね。
「それならいいけど。はい、ご希望通り全部脱いだよ。」
抱きついている間にズボンも下着も器用に脱いでくれていた。
どこを触ってもフワフワのもふもふだ。
ああ、気持ちいい。幸せ。
下腹部の辺りに何だか硬い物が当たってる気がするけど、とりあえずそれは無視しておく。
「るんるんも、脱いでよ。」
「それはいいや。」
ふわふわの指が頭を撫で、髪を梳き、耳をくすぐる。
「んふふ。」
「肌で直接抱きついた方が、絶対に気持ちいいのに。るんるんが喜ぶと思ったから、念入りにブラッシングしてきたのになあ。」
あーだからこんなに滑らかなのね。
うっとりと羽毛に顔を埋めて深呼吸をすれば、ほんのりと石けんのような香りがする。
「いい匂い…。」
「今日のは新作のバブルの香り。翼は無理だったけど、体は全部綺麗に毛繕いしてきたのになあ。たくさん撫で撫でしてあげるのになあ。」
首筋をするすると撫でられて、ついつい声が出てしまう。
「んっふ…。」
ゆるゆると肌を撫でられながら、もう片方の手で押し付けるように抱きしめられる。
うわー、この弾力、ふかふか感、最高に気持ちいい。
「ほら、触って欲しくなってきた?」
「んふふ…どうしようかな。」
こうして困らせるのって、楽しいんだな。
どうにかして私を裸にさせたくて、触ったり抱きしめたり、試行錯誤してるのが、可愛くて嬉しい。
「るんるーん、ねえ、脱ぎ脱ぎしよう?」
うひゃー!なんなのその言い方、可愛すぎなんだけど。
そろそろ、脱いであげてもいいかな。
でも、もうちょっとだけいじわるしたいなあ。
胸元から顔を離して、専務を見上げる。
「脱いで欲しい?」
「うん!」
「じゃあ、今日はずっと抱きしめてて。」
最後にセックスしたのは会社だし、昼休憩以外は一緒にいられなかったし、パーティの準備で忙しくて定時退勤してたし、専務も忙しかったから後半はほとんど会社にいなかったし、以外と私も寂しかった。
だから、ベタベタに甘えたくなったんだ。
「もちろん、喜んで。」
嘴を鳴らしながら、私の服を脱がして行く。ちゃんと抱きしめたまま、片手で体を少し持ち上げて、ストッキングから下着までするりと引き抜かれてしまった。
これから抱かれるんだと思うと、ぞくりと肌が粟立った。

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