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第42話

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始まりが唐突なら、終わりも唐突だ。
好きになった女は、自分勝手で気まぐれで、気が強ければ性欲も強くて、振り回されてばかり。
処女喪失の手伝いをさせられ、今度は童貞卒業だとアナルを侵され、公共の場で襲われたり、頭がおかしいことがたくさんあった。
でも、断言する。
‪—‬鉄壁な外面も、内に秘めた変態性も、全部受け止めて愛してるのは俺だけだ。
他の人間の手に負えるものか。


「おいコラ、四葉。」
いつもフリースペースでコーヒーを飲んでいるのは知っていた。一人でゆっくりするのが好きなのだろうと、邪魔をしないようにしていたが、今となってはそこでしか捕まえられない。
呼びかけにビクっと震えた背中が固まっているのも構わず、肩に手を置く。
横顔は気まずげで、目をそらしている。
何かあったのだと知れる、とても分かりやすい反応だ。
あの夜も、数日時間を置いても、一切話す気のない四葉に、志信はイラついていた。
「四葉、無視すんな。」
「話すことないので。あと苗字で呼んでもらえます?周りに勘違いされたら困ります。」
確実に怒っている。
何を怒らせたのか皆目検討がつかない。
「周りはどうでもいいんだけど…で、何でそんなに機嫌悪いんだよ。俺が何かしたなら、言ってくれなきゃ分かんねえよ。」
メッセージも電話も無視された。
「私のことはもう放っておいて。あんたのアシスタントでもないし、彼女でも友達でもないんだから。早く八潮さんのとこ戻りなさいよ、さっき困ってたわよ。」
プイッと顔を背けて、もう話すことは何もないと無言を決め込む。
「…絶対に吐かせるからな。見てろよ。」
売り言葉に買い言葉、志信もつい喧嘩腰になった。
完全拒絶の四葉から離れ、自席に戻る。
‪—‬どうして、あんな風になったんだ。
何かが四葉を刺激したのだろう。
とりあえず、怪しい人間から聞いてみることにした。


丁度良くマイクを外した先輩に声を掛け、淹れてきたアイスコーヒーを渡す。
「おー郷田、サンキュー。」
「単刀直入に聞きますけど、東雲が機嫌悪いの先輩のせいですか?仕事の話すら出来ないんですけど。」
「いやいや、絶対俺じゃないから。だって東雲ちゃん、先週からずっとピリピリしてて怖えから話しかけてねえもん。」
「だから、それが先輩なのでは?」
「…お前、俺のことなんだと思ってんの。」
「迷惑ストーカー男。」
先輩は手をブンブン振って否定した。
「そりゃちょっと強引かもだけど、そこまで酷えことしねえし、相手の反応見てやめるよ。東雲ちゃん、全然脈ないしよ…」
残念そうに溜め息をついて、アイスコーヒーを飲んだ。
「だから、俺は関係ない。」
「じゃあ、先輩は東雲に金輪際、交際を申し込まないと?」
「えっ…何、お前…そういうこと?」
途端にニヤつき出した先輩が、偉そうに腕を組む。
「難攻不落だぞー、あれは。」
「先輩よりは深い仲なんで、そういうの大丈夫です。じゃ、失礼します。」
「うわー、男の嫉妬は醜い。」
先輩だろうと完全無視を決め込み、志信は次の相手の元へ向かった。


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