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第48話
しおりを挟む「マジ?!良かったじゃん!!!ってかそんなこと起きるんだ!!世伶奈びっくりなんだけど!!」
サングリアをがぶ飲みした世伶奈が、ジョッキを置いた。
このお店は様々なアルコールがジョッキで出されるので、世伶奈が飲み過ぎやしないからハラハラしている。
「うん…私も驚いてる。未だに夢だったのかもって」
「え、夢なの?世伶奈は都合のいい妄想話を聞かされてるの?」
ジトっと睨まれて首を振る。
「ちがっ…夢じゃないけど」
夢みたいに幸せな時間だった。
まさか、紅子さんから交際の申し込みをされるなんて思ってもみなくて。胸の奥に仕舞い込んだ気持ちが、喜んで飛び出してきた。
紅子さんの特別になりたい。
パートナーなんて端から選択肢にもなかったけれど、少しでもそばにいたかった。
紅子さんをお慕いしている。
「良かったわよ幸せそうで!でもさ、水を差すみたいで悪いんだけど、これから聖のライバルは男ってことじゃん。どうやって戦うの?」
世伶奈の言葉に、意識が現実へと戻る。
「そ、そうでした…男の人…え…どうしよう。紅子さんの美しさを放っておく男の人なんていないよ!」
あんなに可憐で美しくて、誰からも愛される笑顔と優しさを兼ね備えていて、歌は上手いしカッコいいし、女性ファンも多くて、欠点が無さすぎる。
こんなに魅力的な人を放っておく訳がない。
考えただけで身震いした。
「ま、そもそもゲイな訳だしね。今が特殊な状況なんだと思うけど」
「うん、そうだよね。今の状況に胡座をかかず、一層努力していかなきゃ…努力って何すればいいの?」
「いや、世伶奈の方が分かんないけど!ゲイと付き合ったことないもん!」
「確かに!」
二人でジョッキを煽りながら、ああでもない、こうでもないと唸った。
それすら楽しかった。
恋とは、こういうことなのかもしれない。
スマホが短く振動して、メッセージの通知を告げた。
『今夜、来る?』
たったそれだけの言葉が嬉しい。
「何、紅子さんから?」
「うん、なんで分かったの?」
「顔がゆるゆるだからだよ!全く、前にも増して分かりやすいな。で、なんて?」
指摘された頬を両手で押さえる。
「今夜来る?って。行く?」
「行くわよ!行って根掘り葉掘り聞いてやるんだから!」
世伶奈が息巻いて、本日何杯目か分からないサングリアを飲み干した。
これ、大丈夫だろうか。
心配しつつ、紅子さんに返事を送る。
「聖を泣かせたらぶっ飛ばすって言っとかないと」
「う…」
「えっ、何?!もう泣かされてんの?!」
ギョッとした世伶奈から視線を外す。
「えっと…紅子さんて私の泣き顔が好きみたいで…」
「そっちの性癖かい…!」
指摘に顔が熱くなった。
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