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第34話

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最後のお客を帰した後、ホールスタッフのキミちゃんが気づいた。
「紅子、お客さんの忘れ物みたいよ。」
クラフト紙のバッグから、透明なビニールに包まれた見覚えのある服が見えた。
「あら、これ私宛てだわ。」
聖ちゃんが忘れて帰ったのだろう。
今夜は普段より忙しくて、あまりお話をすることができなかった。
遠慮がちのあの子は、きっと何度も返すタイミングを伺っていたに違いない。
バッグの中から取り出すと、きちんとクリーニングに出されていたのが分かる。
「やだ珍しい、私服貸したの?」
どう見ても男物のシャツに、キミちゃんが目を丸くする。
「んふ、だってお泊まりしたんだもの。」
「えー!紅子が?!女の子を泊めたの?!」
キンキンと響く声で絶叫されて、耳を塞いだ。
「キミちゃん、声が大きいわ。」
「大きくもなるわよ!だってお客ってことは女の子じゃない!」
そうなのだ、相手は女の子なのだ。
「でもね、見た目が抜群にタイプなのよねえ。」
「…もしかして、アイドルみたいな顔した背の高いボーイッシュな子?」
目を細めて笑うと、キミちゃんがカウンターに突っ伏した。
「紅子…アタシ、今年一番驚いてるわ。」
「私もよ、キミちゃん。」
「で、ヤったの?」
ガバッと顔だけ上げて聞くのは、下世話なこと。
首を振って否定する。
「ベッドでイチャイチャはしたけど、大したことはしてないわ。」
「やっぱりねえ…女の子相手じゃ勃たないんじゃないの?」
どうだろうか。
真っ赤になって恥じらう姿が可愛くて、何度もいじめてしまった訳だが。
「上半身はイケるわね。下半身はまだ試してないから分からないわ。」
小さくてぷっくりプニプニの乳首を、クリームで保湿しながらイジるのはとてつもなく楽しくて、腰が甘く痺れたのは確かだ。
「イケるの?!衝撃なんだけど!逆に何で下も試さなかったのよ?!」
「だって、あの子ってばペッティングだと思ってないんだもの。どう見ても処女だし、気を許してるのに怖がらせたくないじゃない。」
聖ちゃんは、私がゲイだから信頼しているのかもしれない。
それを興味本位で壊すのは嫌だった。
「えー、なによそれ。バリタチガン攻めの紅子が、そんな優しいこと言っちゃうの?」
「失礼しちゃうわ!私ってずっと優しいわよ?」
「セックスに入るまでは、でしょ!」
まあ男相手だし、ちょっと乱暴になることもあるかもしれない。でも基本的には相手の反応を見ているし、酷いことはしていない。
ねちっこいとは言われるけれど。
「ニコニコしちゃってさ、楽しそうで良いわね。アタシは彼氏と別れたばっかりだって言うのに!」
「私だって、最近ご無沙汰だったわよ!もう全然いい男がいないんだもの。」
「あーもう、ハプバーでも行こうかしら。」
キミちゃんは大きなため息を吐いて、テーブル席を片付けに行った。
私はあの日から何度も思い出す、聖ちゃんの可愛い乳首をお供に、グラスを洗うことにした。



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