【R18】みだりに近づかないでください！

24-1

　夜の海が怖いから、砂浜には降りない。
　折角来たのにも関わらず、車から降りた瞬間に怖くなった。
「ごめん、日晴くん」
　なんか青春っぽいことが始まりそうな予感がしたのに、怖くて震えている。昼間の海は楽しそうなのに、夜になるだけでこんなに怖いなんて聞いてない。
「いいよ、っていうか…後部座席に移動する？」
　フロントガラスから顔を背けているのに気付いた日晴くんが、運転席と助手席の間から移動し、後部座席のシートを倒して広い空間を作った。
「おいで」
　伸ばしてくれた手に捕まって移動すると、日晴くんがごろんと寝転がるので、引っ張られるように隣に転がった。
「ふふ、楽しい」
　日晴くんが真横で笑っている。
「良かったね」
「倫音さんは？」
　楽しくないわけがない。
「…楽しいけど」
「良かった」
　手が繋がれたままで、落ち着かない。
　これ、日晴くんの友達の距離感なの？アメリカに十年も住んでたらこうなるの？ずるくない？アメリカってこうなの？住んだことないから知らないんだけど？アメリカってお試し期間あるっていうし…そういうやつ？いや、そもそも友達って言われてるし…全然分かんない！！
「倫音さん、何考えてるの？」
　クスクス笑って頬をつつかれた。
　やめて、何そのスキンシップ！友達にする？！するわ！灯里にするもん！元要にもするわ！でも異性の友達だよ？！距離感近い！！
「日晴くんのこと、全然分かんないから」
「ああ、それね。大した人間じゃないから、面白いこと何もないよ？」
　眉尻が下がって、困り顔になる。
「日晴くんの公的なことは、名前と年齢しか知らない」
「…そうだね、フェアじゃないよね。えっと…なにが知りたい？」
「何でも」
「難しいなぁ…」
　しばしの間、波の音がザーン、ザザーンと聞こえた。
「えっと、朝丘日晴、十九歳。八歳から十八歳まで親の転勤でアメリカに住んでました。今は色々な事情で事業を起こしたり、学生やったりしてます。で、良いでしょうか？」
「は？全然だけど。アメリカではどんな生活してたの？友達いた？」
　交友関係と接し方が分かるかもしれない。
「普通だよ、学校で勉強して家に帰って勉強して、また学校に行くだけ。友達はまあ、話す程度の人たちはいたけど」
　生活が何も見えてこない。説明が下手なの？！
「休みの日は？友達と遊ばないの？」
「うーん…外部の講義を受けに行ったり、事業展開したりしてたから…」
「ずっと働いてるの？！」
「まあ、そう言われるとそうかな？」
　だから大したことないって言ったでしょ、なんてちょっとむくれている。