上 下
43 / 108

15-1

しおりを挟む


 我が家の無駄に広い駐車場に日晴くんの車を停めた。
「あれ、日晴くん。最近免許取ったの?」
 明るい所で見ると、初心者マークが貼られているのが分かった。
「うん、そうなんだ」
 確かに、都会に住んでいたら電車で事足りるから、車はそんなに必要ないもんな。私も持ってないし。
「仕事で使うの?」
「うーん、私用かな」
「そうなんだ。あ、鍵、鍵…」
 私用って言われるとそれ以上聞きにくい。慌てて鍵を取り出して玄関を開けた。
「ただいまー」
「お邪魔します」
 基本的に、特に誰かが出てくることはないので、そのままリビングへ向かう。
「はじー?いるー?」
「んー!」
 リビングでは、ソファでゴロリとしている元要がいた。
「おろ?」
 私の後ろにいる人物を見て、びっくりしている。灯里以外を家に連れてきたことがないし。
「はじ、日晴くん」
「こんばんは、お邪魔します」
「おお…りんの双子の弟の、元要です」
 ソファから起き上がってきちんと挨拶をすると、そのまま立ってリビングを出て行く。
「どしたの?」
「え、母さんと父さん呼ばないと」
「パパいんの?」
「…いなかったかも。本番中…かな」
「だよね」
 父がいないのは見越していた。もしかしたら、母もいないのではないかと思っていたけれど、今日はいるらしい。
 元要が会いたいと言っていたから、それだけでいいと思ってたし、ただ少しでも引き止めたいだけだったから。
「日晴くん、ソファ座ってて」
「うん」
 我が家はコーヒーよりも紅茶派のため、色んな茶葉がズラっとならんでいる。母の為に父が揃えて、入れ方なんかにこだわっているんだけれど、飲めれば何でもいい私は、取り敢えずポットに茶葉を適当に入れて、ウォーターサーバーから熱湯を注いだ。
 トレーにポットとマグカップを四つ載せてリビングへ運ぶと、同じタイミングで母がやってきた。
「こんばんは、倫音の母です」
 きちんとソファから立ち上がり、日晴くんが挨拶をする。
「夜分にお邪魔しております。倫音さんの友人の、朝丘日晴と申します」
 母が両手で口を押さえて元要を見ると、元要がこくりと頷いた。どういうコミュニケーションだよ。言わんとすることは分かるけど。
「ゆっくりしていってくださいね。私はこれから出かけるので、お気になさらず」
「え?どこに」
 母は満面の笑みでピースサインまで出してきた。
「お父さんの打ち上げ、来てって言われたから。会場がホテルだから、そのまま泊まりになると思う」
「バカップル。いってらっしゃい」
 母は否定をせずに、リビングを出て言った。
「ご両親、仲良いんだね」
「あーうん、そうなんだよね」
 三人でソファに座ると、私はちょうど良く茶葉が開いた紅茶をカップへ注ぎ、それぞれに渡した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界

レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。 毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、 お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。 そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。 お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。 でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。 でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

処理中です...