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しおりを挟む我が家の無駄に広い駐車場に日晴くんの車を停めた。
「あれ、日晴くん。最近免許取ったの?」
明るい所で見ると、初心者マークが貼られているのが分かった。
「うん、そうなんだ」
確かに、都会に住んでいたら電車で事足りるから、車はそんなに必要ないもんな。私も持ってないし。
「仕事で使うの?」
「うーん、私用かな」
「そうなんだ。あ、鍵、鍵…」
私用って言われるとそれ以上聞きにくい。慌てて鍵を取り出して玄関を開けた。
「ただいまー」
「お邪魔します」
基本的に、特に誰かが出てくることはないので、そのままリビングへ向かう。
「はじー?いるー?」
「んー!」
リビングでは、ソファでゴロリとしている元要がいた。
「おろ?」
私の後ろにいる人物を見て、びっくりしている。灯里以外を家に連れてきたことがないし。
「はじ、日晴くん」
「こんばんは、お邪魔します」
「おお…りんの双子の弟の、元要です」
ソファから起き上がってきちんと挨拶をすると、そのまま立ってリビングを出て行く。
「どしたの?」
「え、母さんと父さん呼ばないと」
「パパいんの?」
「…いなかったかも。本番中…かな」
「だよね」
父がいないのは見越していた。もしかしたら、母もいないのではないかと思っていたけれど、今日はいるらしい。
元要が会いたいと言っていたから、それだけでいいと思ってたし、ただ少しでも引き止めたいだけだったから。
「日晴くん、ソファ座ってて」
「うん」
我が家はコーヒーよりも紅茶派のため、色んな茶葉がズラっとならんでいる。母の為に父が揃えて、入れ方なんかにこだわっているんだけれど、飲めれば何でもいい私は、取り敢えずポットに茶葉を適当に入れて、ウォーターサーバーから熱湯を注いだ。
トレーにポットとマグカップを四つ載せてリビングへ運ぶと、同じタイミングで母がやってきた。
「こんばんは、倫音の母です」
きちんとソファから立ち上がり、日晴くんが挨拶をする。
「夜分にお邪魔しております。倫音さんの友人の、朝丘日晴と申します」
母が両手で口を押さえて元要を見ると、元要がこくりと頷いた。どういうコミュニケーションだよ。言わんとすることは分かるけど。
「ゆっくりしていってくださいね。私はこれから出かけるので、お気になさらず」
「え?どこに」
母は満面の笑みでピースサインまで出してきた。
「お父さんの打ち上げ、来てって言われたから。会場がホテルだから、そのまま泊まりになると思う」
「バカップル。いってらっしゃい」
母は否定をせずに、リビングを出て言った。
「ご両親、仲良いんだね」
「あーうん、そうなんだよね」
三人でソファに座ると、私はちょうど良く茶葉が開いた紅茶をカップへ注ぎ、それぞれに渡した。
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