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しおりを挟む「気を使わせちゃったかな」
「あ…う…」
カァッと顔に熱が集まって、何も返事ができない。
「倫音さん、隣、座らない?」
頷くことしかできなくて、無言でそろりと隣に座った。
「やっと会えた」
ブレンドを口に含み、ゆっくりと嚥下すると、日晴くんの喉仏が上下した。それだけなのに、なぜか耳まで熱くなる。
「困ったこととか、危ないこととか、なかった?」
「うん…」
いつも日晴くんがそばにいるみたいに、何もなかった。
「良かった。俺、今はすぐに動けないから、心配だったんだ」
優しさに、つい涙が出そうになって首を振る。
「気持ちだけで、嬉しい」
日晴くんが私の方を向いて、頬杖をつく。
「倫音さん、可愛いからなあ」
「ま、まあ…私は美し可愛いから」
どうして言われ慣れてる言葉なのに、こんなにも胸が躍るんだろう。つい顔も崩れそうになる。
「うん、可愛い。顔もだけど、中身も同じくらい可愛い」
恥ずかしくて、泣きそうになる。
「そういうの、いいから」
「ふふふ、照れてる倫音さんが一番可愛いよ」
心臓に悪いから、やめて欲しい!麻痺して救急車を呼ばなきゃいけなくなる!
「まだ少し忙しいのが続くんだけど…来年、あと二ヶ月くらいしたら、いつもみたいに会いに来れるから」
日晴くんの言葉に、あと二ヶ月もあるのか…という気持ちと、あと二ヶ月でまたいつもの日々が始まるのかという気持ちが、体の中で跳ね回る。
「そうなんだ…頑張ってね」
ああ、何でもっと気の利いた言葉が出ないの?美し可愛い顔に甘えてたせいで、語彙力が足りてない!倫音、いくら自分が世界一の造形美だからって、胡座をかいてるぞ!
「うん、ありがとう」
それなのに、日晴くんは嬉しそうに笑った。
「ねえ、倫音さん」
「うん?」
「今日、車で来たから…お家まで送って行ってもいい?」
ひ、日晴くんの車?!自家用車?!車内で二人きり?!失神したらどうしよう…!
「いや、かな?」
「あ、ううん、大丈夫!ありがとう!」
全然大丈夫なんかじゃない!
「良かった…買ったばっかりだから、人を乗せるの初めてなんだ。っていうか、初めて乗せるの倫音さんが良いなって思って」
多分きっと、日晴くんに分かるくらい、首まで真っ赤になってると思う。恥ずかしい。今すぐこの場から離れたい。
「そうなんだ…」
本当に何も言えない。何を返せば正解なのか分からない。
「うん、そう」
もうすぐ、閉店の時間で…きっと小田さんが戻ってきたら、締め作業をして、日晴くんの車に乗って帰るのだ。そしたら、次に会えるのは二ヶ月後で……
「日晴くん、私を送ったらそのまま帰る?」
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