【R18】みだりに近づかないでください！

3-2

　ホッとして再び小田さんに答える。
「こういう変なのばっかり寄ってくるじゃないですか…大体みんな私の顔目当てだし。いや、分かってるんです。美し可愛く生まれてしまった宿命だというのは」
　途端、小田さんがツボにハマってしまった。
「そ、そういうとこ…本当、史乃と俺は、倫音ちゃんの…いいところ…だと…思ってるから…」
　苦しそうに笑いすぎて、最後の方は言葉になっていなかった。
「そんな笑います？」
　苦しそうに息を整えて、たどり着いた駐車場で車の鍵を開けた。
「思ってもみなかった方向からジャブが来たから…はあ腹筋痛い」
　手でどうぞと促され、車に乗り込んだ。人の車の匂いがする。
「二人の雰囲気感とか、お互いのこと理解してるのとか、いいなって」
「そう見える？」
「え、違うんですか？！」
　小田さんはエンジンをかけて、ふっと笑った。
「違ってないけど、合ってもないかなぁ」
「どこが？！どこが？！」
　駐車場を出ると、夜の街並みをゆっくりと移動していく。一方通行が多いから、少し遠回りになるのだ。
「理解してるかって言われると、自信ない」
「小田さんが？！」
「俺のことなんだと思ってるの」
「え、神？」
「なにそれ！普通の三十路男性だけど」
　儚そうな見た目と違って、笑い方は豪快だ。
「史乃はねえ、何しでかすか分かんないんだよ。だから、いつまでも理解はできない。俺にできることは、史乃がやらかした時にフォローすることくらいなの」
　優しい包み込むような愛だと思った。こういう人と結婚したい。なんて素敵な二人なんだろう。
「理想なんですけど…なんなの…二人とも一生幸せでいろ！」
「ありがとうございます」
「はー…どうしたら私もそんな人と出会えるんだろう」
　大きなため息を吐いて窓の外を見る。車は大通りに出て、街頭を抜けていく。
「なに、彼氏でも欲しいの？」
「別にいらないです。ただ、周りが私を‪放っておいてくれないんです」
「そうだねえ、倫音ちゃん目当てのお客さんも多いしね」
　俺は助かってるけど、とおどけて言うから気が楽になる。迷惑かけてばっかりだと、少なからず思っていたから。
「彼氏ができれば、ちょっとは減るかなあ」
「倫音ちゃんの彼氏は、器が大きくないと大変そうだね」
　それには大いに頷いた。
「周りがうるさいですからね」
「もし彼氏ができたら、店に連れてきてよ」
「見たいんですか？」
「史乃がね！俺も見たいけど」
　どうやら、私には女性のガーディアンが多いらしい。
「できたらですよ、できたら」
　それから、家に着くまでカフェの新作メニューについて意見を出し合った。