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最終章
12-2ささやかな食事会
しおりを挟むみんなの前で、ご挨拶。
すっごく緊張する。
両親たちと、仲のいい友達数人しかいないのに。
喋るのはみーちゃんで、私はお辞儀するだけなのに。
隣に立つみーちゃんが、精悍な顔つきで話し出した。
「今日はお忙しい中、僕たち2人の為にお集まりいただきありがとうございます。たくさんのお祝いの言葉をいただき、本当に感謝しています。」
「瑞樹ー!硬ーい!もっとハッピーに!」
「そうだそうだー!瑞樹くんらしさが足りないぞー!」
既にウェルカムドリンクで酔っ払っている、みーちゃんパパとうちのお母さんから野次が飛んだ。
しばらく無視して挨拶を続けていたけれど、止まらない野次にみーちゃんが言い返す。
「うるさい!このバカ両親ズが!」
あーあ、みーちゃん怒っちゃったよ。
「瑞樹にバカって言われた!パパ、ドキドキしちゃったなあ!」
「和くん、良かったわねえ!」
みーちゃんママも酔ってる。
うちのお父さんは声を出さずに号泣してる。
そして、そのやり取りを見て、友人達が大笑いしていた。
「金沢家が面白すぎる!!」
「綾菜のご両親もね!」
「金沢くん、ちょっと同情するなあ。」
「このノリあってこその、あの2人なのねえ。」
「さすが綾ママと瑞樹パパだわ。久しぶりでも変わんない。」
「金沢先輩のご両親、初めて見ましたー。」
みーちゃんが横でブチっと切れた音がした。
「お前ら全員黙れ!そして、俺たちを祝福しろ!俺の嫁の可愛さを末代まで語れ!挨拶はもう終わり!」
後は知らん、勝手にしろと、みーちゃんが踏ん反り返ってイスに座った。
みーちゃんも、両親ズにかかると形無しだ。
大爆笑の中、みんなから祝福されて、私はとっても幸せだった。
乾杯をして、それぞれ食事を始める。
みんなが楽しそうに話しているのを見てるだけで、私もとっても楽しい。
「綾、瑞樹、改めておめでとう!」
「綾先輩、金沢先輩、お久しぶりです。」
「ひかちゃん!さくちゃん!2人とも来てくれてありがとう!」
「ひかりか。あー、あーにゃの部活の後輩の子。」
「ひかりかって何よ!」
「存在を知っていただいているだけで、光栄です。」
「みーちゃんたらー!」
こうして集まると、子どもの頃に戻ったみたい。
「ひかちゃんは今、爽介くんと遠恋中なんでしょ?」
「うん、まぁね。」
ぽっと頬を染めてはにかむひかちゃんは、爽介くんとずっと付き合っている。
「せっかく戻って来たんだし、会わないの?」
さくちゃんがニヤついて、ひかちゃんに肘鉄を食らわせている。
「綾先輩、違うんですよ。ひかり先輩は昨日から爽介先輩の家に滞在してるし、今日は送り迎えしてもらってますよ!」
「やーん!ラブラブじゃんひかちゃーん!」
照れ屋のひかちゃんは、真っ赤になって持っていたグラスのワインを飲み干した。
「だっ、大丈夫?!そんなに呑んで!」
「どうせ彼氏のお迎えがあるから、大丈夫だろ。」
みーちゃんの発言が追い打ちをかける。
「なによー!瑞樹のくせに!綾のことこーんなちっちゃい頃から、ずっと追っかけてさー!綾がいないと泣いてどうしようもなかったくせに!!」
「うるさい!」
何故かこの2人は、昔からすぐ口げんかになるのだ。仲は良いのに。
「なにそれー!その話聞きたーい!」
お酒のグラスを持って、めーあちゃんと伊知地さんが耳聡くやって来た。
「金沢くんて、どんな子だったのかしらー!」
さくちゃんが伊知地さんを見てはしゃぐ。
「きゃー!ずっと気になってたキレイなお姉さんじゃないですかー!背も高いしモデルさんじゃないかって、ひかり先輩と話してたんですよー!」
伊知地さんは満足そうにモデル立ちをして、ウィンク。隣のめーあちゃんがとっても誇らしそう。
「この人、男だよ。」
みーちゃんがサラッとネタバラシをしてしまう。
「えっ?!」
「嘘でしょ?!」
騒つく2人を見て、伊知地さんがアメリカンに両手を上げる。
「やだ、金沢くん!もうちょっと超絶美女でいたかったのに。いけず!」
「トーコちゃんは、いつだって超絶美女ですよ!」
「ありがとう!私の彼女は最高にいい女よねぇ。」
顔を見合わせて、2人がウフフと笑い合う。
「彼女?!」
「彼女さんまで可愛い!!ロリ可愛い系!」
ひかちゃんとさくちゃんは、驚いてばっかりだ。
「今日もよく化けてるな。」
「ありがとう!女装参加オッケーしてくれて、ありがとね。」
ニコッと嬉しそうに笑う伊知地さんに、みーちゃんが呆れる。
「あんたがしたい格好すればいいでしょ。ここにいる人は、誰もダメなんて言わない。」
「そうですよ!私、伊知地さんが超絶美女で来てくれて嬉しい!」
「私も、こんなにキレイなお姉さん見たことなかったので、お会いできて嬉しいです!」
伊知地さんが眉を下げて笑う。
「ありがとう。」
「やっぱ、瑞樹と綾の友達は、自分を持ってて強い人が多いなぁ。」
何故か、めーあちゃんが自慢気である。
「ひかちゃんだって、そのうちの1人だからねっ!」
ひかちゃんが照れて、またお酒を飲んだ。大丈夫かな。
「あ、伊知地さんさぁ。うちの親があんたに興味あるらしくて、ずっとソワソワしてるんだよね。気が向いたらで良いから…後でちょっと行ってやってくれない?」
「きゃー!本当!?私、金沢家に気に入られてるの?!やばくない?明亜ちゃん!」
「大変!名前売っておきましょう!そして金沢家に何かしらの形で爪痕残してきましょう!」
めーあちゃんがマネージャーみたいになってる。
「じゃ、行ってくるわね!」
「あやにゃん、まったあーとでー!」
パーっと2人が行ってしまった。
「後でって言ったのに。」
「2人とも行動力あるからねえ。」
「私達も、ご両家にお邪魔しに行こうか。」
「行きますー!」
ひかちゃんとさくちゃんまで行ってしまい、ちょっぴり寂しい。
「あーにゃ、ご飯食べたら?」
「そうだねぇ。あ、マリネ食べたいマリネ。」
「マリネじゃお腹いっぱいにならなくない?」
「生魚が食べたいんだよお。」
もぐもぐと白身魚のマリネを食べていると、楓ちゃんと仁くんが来てくれた。
「綾菜、金沢くん、この度はおめでとうございます。」
「2人とも、おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「ありがと。」
キャハーっと楓ちゃんと話していると、仁くんが不思議そうに言った。
「金沢くんは、友達呼ばなかったの?」
楓ちゃんが仁くんの腕を引っ叩く。
「いてっ!」
「俺、友達いないから。」
みーちゃんはアッサリしている。そんなみーちゃんを見て、仁くんが悲しそうにしていた。
「えっ…俺は?」
キョトンとしたみーちゃんは、なかなか見られない。珍しい光景だ。
「みーちゃん、仁くんが悲しんでるよ!」
「金沢くんは友達だと思ってたから、色々相談したのに…!」
「仁、そんなに金沢くんと話してたの?!仲良かったんだね。」
楓ちゃんも驚いている。
「あー、そっか。ごめん、そうだね。そっか…友達か…」
「仁くん、みーちゃんが喜んでるよ!」
「あー、良かったー!」
「えっ、これ金沢くん喜んでるんだ。良かったね、仁。」
なんだか不思議な会話だけど、みーちゃんに友達ができて良かった。
「綾菜、あっちのテーブルめちゃくちゃ盛り上がってるよ。お母さんたち、キャラが濃いね。」
酔っ払った家族と、超絶美女がダンスバトルを繰り広げていた。
「両親ズはね、昔からああなの。いっつも酔っ払うとパーリナイって感じになって。ねえ、みーちゃん。」
うんざりした顔で、みーちゃんがため息をつく。
「手がつけられない。あいつらに酒を飲ませなきゃ良かった。」
「いやいや、金沢くん。晴れの日にお酒を飲ませないのは、いくらなんでもかわいそうでしょうよ。」
楓ちゃんのフォローにも、首を振っている。
「俺とあーにゃが、一体どれだけ迷惑をかけられたことか。」
「確かに…挨拶の時は、俺も同情しちゃったよ。金沢くん、大変そうだったもんね。」
「仁くん…!分かってくれる?!」
急に、男子2人に熱い友情が芽生えた。なんのかんのと話している。
「楓ちゃん、みーちゃんこんな風に言ってるけどね。両親ズの隙をついて、色々してたからね。」
「でしょうね、想像に難くないよ。」
ふふっと笑いながら、みんなを眺める。
ダンスバトルは、みーちゃんママが勝利を収めたようだった。
大好きな人たちと話して、食べて飲んで、とっても楽しい食事会だった。
結婚をお祝いしてもらえるって、とっても嬉しくて幸せだ。
みんなを見送って、私とみーちゃんも家路に着く。
レンタカーを借りたので、みーちゃんが運転をしている。もちろん、みーちゃんは、この為に一切アルコールを摂取しなかった。ずっとお水を飲んでた。
運転するみーちゃんも、とっっってもかっこいいです。
「楽しかったねー!」
「まぁ、楽しかったけど、疲れた。早く帰りたい。」
「あら、疲れちゃった?じゃあ、早めに寝ようか。私もお風呂入ってゆっくりしたいな。」
「えっ、それはダメだよ。結婚初夜だよ?!」
「ですよねー。」
みーちゃんブレないなぁ。さすがたよ。
荷物を一旦下ろして、レンタカーを返しにみーちゃん一人で運転して行った。
「さて、お片づけと準備、しよっかな。」
みーちゃんが戻ってくるまでに、こっそり一仕事。
喜んでくれるといいな。
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