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明亜と女装男子編

10-17天使が地上に舞い降りた

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あの子の連絡先を教えてもらったら、どんな風にアプローチしよう。
そのことばかり考えていた週末を終え、俺は研究棟に向かった。
「金沢くーん!」
振り向いた彼から、後光が差していた。眩しい、眩しくて顔がよく見えない。
「えっと…大切な予定が無事完了したってとこかな。」
心なしかご機嫌そうに、返事が返ってくる。
「まぁね。それより、また来たの?」
「自分が来いって言ったんじゃん!」
「そうだっけ?」
しらばっくれて!自分ばっかり幸せそうにしちゃってさ!
「ひどいよ!金沢くん!」
いつもの空いているイスに座って、ぷんぷん怒る。
「今日は、女装じゃないんだ。」
「うん、帰りに買い物する予定だから、道具は一式持ってるけど。」
「ふうん。じゃあ、すぐ使うことになりそうだね。」
言ってることの意味が分からない。
「何で?」
「まぁ、待ちなよ。」
スマホを取り出して、どこかに電話を掛けている。
「もしもし、あーにゃ?」
急に声が甘くなった。相手は彼女だろう。金沢くんも、そんな声が出るんだなぁ。
なんとはなしに会話を聞いていると、女装喫茶のこととか、俺のことを聞いている。
「金沢くん!?どういうこと?!ねえ!金沢くん!」
「ちょっと、うるさい。」
慌てて話かけると、手でシッシッと払われた。
金沢くんは彼女のそばに誰かいるのか、確認している。
「いやいや、え?!もしかして、そこに天使がいるの?!ねえ!金沢くん!」
「うるさいな、こっちが彼女と話してるんだから、少し黙ってなよ。」
金沢くんの手が俺の頭に乗って、近づかないように抑えつける。
「て、天使ー!!話したい!天使と話したい!金沢くんー!頼む!」
必死でジタバタすると、手が離れた。
「あーもう、分かったよ!」
彼女に何か言って、電話を切った。
「切っちゃった!」
絶望に打ちひしがれていると、上から楽しそうな声がした。
「良かったね、あと40分でこっちに来るってさ。準備した方がいいんじゃない?」
「えーーーー?!」

それから怒涛の準備が始まった。
俺の女装は時間がかかる、平均しても1時間半はかかる。
40分なんて、絶対に間に合わない。
天使とご友人を待たせるのは必至だ。
「金沢くん!間に合わない!ねえ!間に合わないよ!」
「うん。」
「うんじゃないよ!」
「喋ってないで手を動かせば。」
その通りだ。
着替えて化粧が半分くらい終わったところで、金沢くんが立ち上がった。
「俺、彼女を迎えに行ってくる。学食で待たせとくから、頑張って。」
あんまり応援してなさそうに笑って、部屋を出て行く。
なんなんだよー、金沢くん。
まじでありがとう。
後で絶対にお礼をする。

最後にウィッグを被って支度が完了した頃には、1時間経っていた。
「急ぎなよ…。」
既に部屋に戻って来ていた金沢くんが、パソコンでレポートを書いている。
「うん!じゃあ、行ってくる!」
慌てて学食に走っていく。
入り口付近で、自動販売機のココアを人数分用意しお盆に乗せた。
どこにいるかな、と探すとすぐに見つかった。
あの3人に違いない。髪の色味もこの前と一緒だ。
やっと、やっと天使に会える。
胸の奥から、温かくてキラキラした気持ちがとめどなく溢れている。
ゆっくり歩いて近づいていくと、話し声が聞こえた。
この前も思ったけれど、3人の声はよく通るから、結構はっきり話の内容が分かる。

「…本当に自信ないんだね。」
「好意を持ってもらって、どうしたらいいか、本当に分からないの。何でもなければ話せるんだよ……とか。」
まだ少し距離はあるけど、天使の声がする。
「普段は平気で……もんね。……女装喫茶に行った時も、話せてたもん。」
学祭の話だ。
「意識すると、話せなくなる。」
俺のことだよね…?
「いつものめーあちゃんで、充分いけると思うし。そういう、奥ゆかしいめーあちゃんも、すごく良いよ…」
天使の名前、めーあちゃんって言うのか。
「そうかなぁ。」
「私と綾菜もいるし、安心して。」
ご友人が天使を元気づけている状況なのかな。
俺に会うから?
俺と会うのが怖いってこと?
それとも……
覚悟を決めて、声をかける。
「とっても仲が良いのね、あなた達って。」


それからはもう無我夢中だった。
天使を怖がらせないように必死で言い回しを考え、ご友人2人と雑談し、和やかな雰囲気を意識しつつ、たくさん話した。
天使の名前は、桜井明亜ちゃん。
読みも字面も可愛い。まさに、天使の為の名前。
話している間ずっともじもじしていたけれど、好きな服の話になると元気で饒舌になった。
そっか、緊張してるのか。俺と同じだ。
緊張するとやたら話すタイプの俺は、反応が真逆だけれど気持ちは一緒。意識してると話せないって言っていたのは本当なんだな。

そして、明亜ちゃんに、盗み聞きの謝罪と感謝の気持ちを伝えることが出来て、良かった。
それが俺の今日のメインだったのだけれど、ご友人2人、吉崎さんと磐田さんのナイスアシストで、一緒に買い物まで行くことになった。
まさか、まさか服やコスメを見に行って、しかも口紅を塗らせてもらうことになるなんて。
明亜ちゃんの唇は、柔らかくてプニプニしていて、温かくてツヤツヤで……3回くらいオカズにさせてもらった。
本当にごめんなさい。天使を汚してごめんなさい。
ちなみに、学祭で手を触った時も、4回…いや5・6回ほどオカズにさせてもらっている。
だって俺、男だもん!

あと、明亜ちゃんが連絡をくれなかった理由が、メモを失くしたからだって判明してホッとした。
嫌われて怖がられたとかじゃなかった。

ここで、畳み掛けるしかない。
決意してからは全力でアプローチさせてもらった。
その日の夜に電話を掛けて、明亜ちゃんが断れないのをいいことに、デートの約束を取り付けた。
もちろん、意識してもらう為に、できることは何でもした。
デート当日も、明亜ちゃんが俺のことを考えてくれるように行動したし、俺のことを知って欲しくて色々話した。ちょっとボロが出ちゃったけど。
明亜ちゃんも段々慣れて来て、笑ったり驚いたり、くるくると表情が変わって、控えめに言っても極上に可愛かった。
そして、明亜ちゃんの警戒不足により、俺は明亜ちゃんの家に上がることとなった。
もっと、警戒して欲しい。男は狼なんだよ。明亜ちゃん、天使だからなぁ。心が清いんだよ。
テンションマックスの明亜ちゃんが、私服を次々と出してファッションショーをすることになり、俺は至福の時を過ごした。私服だけに。
うん、ごめん。寒かったね。
好きな女の子の服で女装できるなんて、恐悦至極。何度も勃ちそうになる自身を鎮めるのに、どれだけ苦労したことか。
欲望が直結してるから…。

で、だ。
明亜ちゃんが夕飯に誘ってくれて、ピザ頼んで待ってた訳だよ。
今日の楽しかったこととか話しながら、のんびりしていたら、急にじっと見つめてくるから…思わずキスしてしまった。
堪えきれなかった。
だって、可愛いんだよ!瞳なんかうるうるしてて、頬はバラ色で、誘ってるようにしか見えない。
もう、気持ちを抑えるのは無理だった。好きだってことをこれでもかって伝えると、明亜ちゃんが泣いてしまって…申し訳なく思う反面、一層ムラムラしてどうしようもなかった。
でも、泣きながら笑って、頷いてくれたんだ。
俺の彼女になってくれるって。
嬉しくて、何度も何度もキスをした。

夕飯を食べて、そろそろお暇しようとした時。
明亜ちゃんが、帰っちゃやだって引き止めたんだ。
うん、ちゃんと理由も説明して帰ろうとしたんだよ。このまま一緒にいたら、絶対にセックスしちゃうって。
それでもやだって言って、俺の服の袖をぎゅって引っ張るから、帰れないよね。
こんな可愛いことってある?!
付き合えた喜びで、頭がおかしくなったのかなって自分を疑ったよ。

セックスの正直な感想は、今までで一番最高に気持ちよかった。
っていうか、多分なんだけど。
明亜ちゃん、名器なんだと思う。
ほら、あれ。ミミズ千匹、数の子天井ってやつ。
処女なのに、すごく具合が良くて…指を入れただけでやばかった。
でも、名器じゃなくても最高だったよ。
だって、好きな子が俺のことを全部受け入れてくれたから。
それにね、今度は女装姿の俺としたいんだって。
そんなこと、初めて言われた。
想像しただけで、いきそう。
っていうか、それをオカズにしばらく生きていける。
いやその前に、実際した感覚を思い出して、2週間はいけるな。

地上に舞い降りた天使は、いじけた俺を救ってくれて、そして俺の彼女になった。



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