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綾菜と瑞樹編
6-2みんなで学祭をまわる(現在)
しおりを挟むみーちゃんの大学最寄駅で、みんなと待ち合わせ。
「おはよー!綾菜!」
「お、おはよう!」
「待って、あやにゃんが緊張してない?!」
実際、めちゃくちゃ緊張してる。
ソワソワして胸がドキドキして、手が冷たい。
「金沢くんは全然緊張してなさそうだよね。」
仁くんが言う通り、今朝家を出たみーちゃんは普段と同じ、授業を受けに行くような様子だった。
4人で歩いて大学へ向かう。
「優勝どうので緊張してるんじゃないの。あのね、みーちゃんのコーディネート完璧にしたからね、絶対にみーちゃんのこと好きになる女がたくさん出てくるんだよ!私はみーちゃんが、美貌を露わにしていない時から、みーちゃんのことを好きなのに!」
ただでさえかっこいいのに、髪型も衣装も完璧だったら、みーんな好きになっちゃう!
「分かる…分かるよあやにゃん。私も、全然興味ないって言ってた奴が、手のひら返して急に好きって言い出した時は、殺意が芽生えたよ。」
その出来事を思い出しているのか、めーあちゃんがブルブル震えている。
「落ち着け綾菜。ここにいる明亜は、金沢くんに微塵も興味ないよ。」
「あ、うん。私は金沢くんに微塵も興味ないわ。趣味じゃない。」
「はっ!ありがとう、めーあちゃん。」
「どういたしまして。」
「何だこの会話。」
仁くんが大笑いしている。
「明亜みたいな女もいるんだし、そこまで大変なことにはならないと思うよ。とりあえず落ち着け。」
「うん、妄想で疑心暗鬼になってた。もう大丈夫。」
大学へ着き、みーちゃんに連絡をしておく。
「ミスターコンテストはね、午後14時からなんだって。準備があるから、12時までなら一緒に回れるって言ってた。」
「学祭って何あんの?」
「んー、色んな催し物があるらしいよ。飲食店が多いけど。」
パンフレットを開くと、案内図と催し物が記載してある。
「演劇、軽音部のバンド演奏、映画研究部のミニシアター、この辺は定番だね。」
「あ、漫研のコスプレ体験がある。ワンコインだって。」
「え!!やってよ!楓ちゃんコスプレして!!」
「やだよ!」
全力で拒否する楓ちゃんの腕をぎゅうぎゅう抱きしめて懇願する。
「おーねーがーいー!」
「俺も見たい。」
挙手した仁くんが、真面目な顔で頷いている。
「仁まで…」
「じゃ、私もー!はい、民主主義!」
「くっそー!」
「何盛り上がってんの。」
悔しがる楓ちゃんの後ろの方から、みーちゃんがやってきた。
「楓ちゃんがコスプレするの。」
「あぁ、漫研のね。磐田さん行くんだ?」
「民主主義よ、金沢くん。」
ニヤッと笑ったみーちゃんが、挙手した。
「はい、俺も。」
「くっそ!」
ニヤニヤを私の方にも向けてくる。
「ついでに、あーにゃも。」
「えっ?!私?!」
「じゃあ明亜もね。」
楓ちゃんが、ビシッと指をめーあちゃんに向ける。
「はぁ?!」
「めーあちゃんの、見たい!」
「ほら、民主主義だよ!」
「やられた!」
女子3人ともコスプレ体験をすることになり、会場となる教室に向かう。
男子勢は、2人してニヤニヤしていた。
漫研の方々は、とても優しかった。というか、好きなものに熱い。
キャラクターは自分で選べたけれど、漫研の人がコレが良さそうアレも良いとアドバイスをくれたから、いっそ好きにしてもらおうとお願いしたのだ。
男子を外で待たせて、衣装とウィッグを装着する。もちろん、漫研の方々が手伝ってくれた。
メイクは落とせないので、そのままになってしまったが、コス趣味の人が魔法みたいに可愛くしてくれたので、中々の完成度だった。
「楓ちゃん…可愛すぎる…」
「…そう?」
「それで仁くん誘惑しなよ。」
「写真撮りたい!」
カーテンを開けて、外にいる2人を呼ぶ。
ドアを開けて入ってきた男子は、目をまん丸にして驚いていた。
私は、体型を活かしましたと言われて選ばれた、学校アイドルグループに所属する、胸の大きな女の子。関西弁風の喋り方が特徴らしい。
「嘘つくと、ワシワシするよ。」
めーあちゃんは、細身童顔を活かしてツインテールに吊り付きスカート、大きなリュックを背負った小学生風の少女。
「失礼、かみました!」
楓ちゃんは、子どもの頃よく見てた、日曜日の朝にやっている女の子が変身して悪と戦うアニメのキャラクター。すっごく似合ってるし、すっごく可愛い。
「ぶっちゃけ、ありえなーい!」
「楓ちゃん、そっち黒い子のセリフ。」
「そうだった。」
3人できゃぴきゃぴしていると、男子2人が打ち震えていた。
「あーにゃ、可愛い。」
「俺、そのアニメ見てたし、白い子好きだった。」
なんだか、とても照れる。
サービスでチェキを撮ってくれて、一枚はもらえて、もう一枚は教室の黒板に張り出すらしい。
自分の面影がないし、流出や悪用をしないならと快諾した。
おすすめのポーズを教えてもらい、スマホでも撮影をして、最後は5人で集合写真を撮って、着替えた。
「コスプレ楽しかったー。知ってるキャラだともっと楽しいんだろうね。」
「そうだよね。知らないキャラだと、漫研の好きな人に申し訳ないから、原作見なきゃって気にされられる。」
「私は結構恥ずかしかった…。」
「楓ちゃんは尋常じゃなく似合ってたから安心して!」
撮影中、照れまくっている楓ちゃんはとてつもなく可愛かった。
「あーにゃ、そろそろ準備あるから、離脱するね。」
「もうそんな時間?!みーちゃん、頑張ってね。」
手をぎゅっと握ると、頭を撫でられた。
「旅行券、手に入れてくるから。」
「見守ってるね。」
お決まりの光景に、めーあちゃんがポジティブやじを飛ばす。
「公衆の面前で、お熱いねぇ。ヒューヒュー!いいぞ、もっとやれ!」
「アメリカのドラマみたい。」
「いいなぁ。」
「えっ…仁もやりたいの?」
後ろで3人がわちゃわちゃしている間に、みーちゃんは手を振って去って行った。
お腹が空いたので屋台を巡ることにした。
焼きそば、フランクフルト、串焼き、お好み焼き、たこ焼き、お祭りって感じの食べ物を、空いているベンチに座ってもぐもぐする。
「綾菜、フランクフルトちょっとちょうだい。」
「はい、あーん。」
楓ちゃんのぷにっとした可愛いお口に、フランクフルトを突っ込ませていただく。
「はぁ…楓ちゃん…可愛い。えっちなお口しちゃって。」
楓ちゃんはフランクフルトを噛みちぎって、真っ赤な顔で憤慨している。
隣にいる仁くんも、顔が赤い。
「はっはっは!あー楽しい!」
めーあちゃんはそれを見て大笑い。下衆なめーあちゃんは、面白いシーンを見逃さないのだ。
満腹になったところで、歩きながら、校舎を見て回る。
みーちゃんは、ここで勉強したり、研究したり、ご飯食べたり、しているんだなぁって思ったらドキドキした。
今度、こっそり覗きに来ちゃおうかな。それで、2人でお散歩なんてしちゃったりして。
でへへ。
「次、どこ行く?」
「ねえねえ!さっき看板見たんだけど、お笑い芸人の舞台あるって!」
「それ、事前にチケット買っておかないと見られないやつだよー!」
「そっかぁ。じゃあいいや。」
基本的に調べが甘い3人なので、行動が行き当たりバッタリになる。
「お嬢さん方、好きそうなやつありますぜ。」
仁くんがパンフレットを指差す。
「なに?女装喫茶?!」
「ロリからガチムチお姉さんまで?!」
「行かなきゃ!!」
めーあちゃんの鼻息が荒い。好きだもんね、オトコの娘。
「仁くん、一緒に行って大丈夫?」
「うん、何で?」
「人には得手不得手があるから。」
「別に、何とも思わないよ!」
「仁も女装すれば?着物とか似合いそう。顔的に。」
腕を組んで挑戦的に楓ちゃんが笑う。さっきのコスプレをさせられたお返しなのかもしれない。
「まぁ、機会があれば。」
「よっしゃ、機会作ろう。」
これは、仁くん絶対に女装させられることになると思う。
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