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5章
58・プルメリアとジャスミン
しおりを挟む「どうしたらも何も、付き合っちゃえばいいでしょ?っていうか、まだ付き合ってなかったんだっけ?もう付き合ってるんだっけ?分からなくなってきたわ。」
「正確に言えば、両想いで付き合う寸前という感じですが、事実上は交際関係でするような事柄を既に済ませていらっしゃいます。」
真っ赤になったジャスミンが、テーブルの上に突っ伏した。
「ああっ…やめてっ…羞恥で死ぬわ。」
「もう付き合ってるで、いいんじゃないの?」
「屋敷内でも、交際されていると思っている者がほとんどです。奥様は公爵様に既にお伝えになっておりましたし、外堀は埋まっておりますね。アレク様の作戦勝ちです。」
「…アレクの作戦なの?」
プルメリアがニヤニヤと笑う。
「逃がさないし、逃げられないわよ。」
「ジャスミン様、悪足掻きはおやめになって、もうお好きだと言ってしまわれたらいかがですか。」
「好きって言ったら、もっとゲロ甘なことされそう。」
「ああっ…私、そういう耐性ないのよー!プルメリアみたいにゲームもやったことないし、男の人とそんな感じのこと…ほとんどないから…どうしたらいいか分からないの!」
ちびちびとお茶で唇を湿らせている困り顔のジャスミンを見て、プルメリアが納得した。
「だからずっと、どうしたらいいって言ってるのね。」
「ジャスミン様は、あんなに憧れていた恋愛を15歳の時に諦めてしまわれたので、今も尚初心者なのです。」
「なんで?何かあったの?」
プルメリアの言葉に、あの日のことを思い出す。
虚無感や寂しさ、無力感、どうせ自分では何もできないという諦観が心を締め付けた。
「…寂しい人生だった前世を思い出したから。」
プルメリアはキョトンとしている。
「えっ、前世を反面教師に幸せになろうとは思わないの?だから私は今こうなのよ。」
何も知らないプルメリアの発言に、ジャスミンが声高に反論した。
「私なんかに、そんなこと出来ないわ!せめて、今の地位を使っての社会貢献くらいよ。」
友人にも気持ちを分かってもらえないという事実が、ジャスミンに突きつけられる。
「なにその言い方…私、ケンカ売られてる気分なんだけど。」
イラッとしたのか、プルメリアが眉を寄せた。
「そうじゃないわ!でも私は…プルメリアみたいには、なれないの。今は行動力のあるあなたのこと、すごいと思ってるわ。」
「ずっと思ってたけど、前世の自分にとらわれ過ぎじゃない?過去は過去、今は今よ。アレク様の前世説はロマンス的に面白いし、素敵だなって思ったけど、そういうことばっかり考えてるなら賛成できない。今のアレク様がかわいそう。」
「だけど、私には…」
しょぼくれたジャスミンと心配するミュゲを交互に見て、プルメリアが頬杖をついた。
「世の中には色んな人間がいるのね。ジャスミンのこと、私より中身が年上だから大人なんだと思ってたけど、違ったわ。色んなことを諦めてたから、大人っぽく見えただけね。」
ジャスミンは、グッと胸の奥が痛くなった。
「まあ、いいんじゃない?諦めてても個人の自由だし。あと50年近くは生きると思うけどね。ただそれで、あなたのことを大切に想ってる人を傷つけるってことも、覚えておいた方がいいわよ。ジャスミンお姉さん。」
プルメリアが席を立ち、スカートを持ち上げてお辞儀をした。
「お茶会に呼んでくださってありがとう。もうお暇するわ。さようなら。」
声をかける暇もなく、プルメリアは去って行った。
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